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AWS Client VPN を活用して 1,000 名規模のリモートワーク環境をわずか 10 日間で構築。必要に応じた拡張で出社率の抑制に大きな効果
概要
1905 年の創業以来、文具の製造・販売を発端に、オフィス空間構築、オフィス用品の仕入れ・販売を展開していく中で、お客様の「はたらく」「まなぶ」「くらす」が、より創造的に、快適になるよう提案を続けるコクヨ株式会社。従業員の多様な働き方の支援にも積極的に取り組む同社では、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、2020 年 3 月に AWS Client VPN を活用して 1,000 名規模のリモートワークを支える環境をわずか 10 日間で構築。その後も必要に応じてこの環境を拡張しながら、現在は 4,000 名規模の従業員が在宅で勤務できる環境を提供するなど、社会の要請への対応と働き方改革の両立を推進しています。
新型コロナウイルスの感染拡大を受けてリモートワーク環境の拡張が急務の課題に
モノ、コト、サービスを含む事業変革と同時に、すべての従業員が創造性を発揮しながら成長できる環境整備を何よりも重視するコクヨにとって、IT は社内外のプロセスを支える重要な経営資源です。同社における IT の位置づけについて、情報システム部 統括部長の山村隆氏は次のように説明します。
「新たなサービスの創出や効率的な事業運営、また従業員の働き方改革において、IT は重要な意味を持っています。IT にもさまざまな選択肢がありますが、なかでもクラウドは大きな可能性を秘めており、その存在は決して小さくはないと考えています」
働き方改革について、同社は 2016 年から従業員が場所にとらわれずにどこでも働ける環境整備を推進してきましたが、2019 年の時点ではそれほど利用が浸透していなかったといいます。その状況が一変したのが、新型コロナウイルスの感染拡大の兆しが見えてきた 2020 年 2 月です。情報システム部 インフラプランニングユニット ユニット長の弁木純氏は、当時を次のように振り返ります。
「すでに VPN を使ってオンプレミスで構築していたリモートワーク環境のキャパシティは、最大で 550 名くらいでした。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大によって東京や大阪のオフィスが閉鎖になる可能性も出てきたことから、1,000 名規模の従業員が在宅で勤務を行える環境をすぐにでも用意しなければならなくなりました」
AWS Client VPN を活用してわずか 10 日間で VPN 環境を構築
大規模なリモートワーク環境を短期間で構築するためのさまざまな選択肢を検討した結果、コクヨが白羽の矢を立てたのが AWS Client VPN でした。
「オンプレミスで新たに VPN を構築する方法だと、最低でも 1~2 ヶ月の時間を要することから、この選択肢は早々に見送られました。AWS Client VPN は迅速な構築が可能であることに加えて、ユーザーの増加に対しても柔軟な拡張性を備えています。さらにセキュリティ面でも当社の要件を満たしていたことから導入を決定しました」(弁木氏)
コクヨからの支援要請を受けて、導入パートナーとしてプロジェクトに参加した株式会社サーバーワークス シニア・ソリューションアーキテクトの田斉省吾氏も、次のように話します。
「やはり短期構築が可能である点と柔軟な拡張性、スムーズな運用管理は AWS Client VPN の大きなアドバンテージです。当社の側でも他の仮想アプライアンスとのコスト比較などを踏まえて、AWS Client VPN を提案させていただき、早期の設計合意を目指しました」
コクヨでは、もともと AWS Direct Connect Gateway を使ってオンプレミスと既存の Amazon VPC を結んでおり、今回は AWS Direct Connect Gateway に加えて新たに AWS Client VPN のサブネットを立て、Amazon VPC を紐づけることでクライアントからオンプレミスのリソースにアクセスするように構築を進めました。また、並行して Active Directory を使ったユーザー認証のための AD Connector の設定なども行い、クライアント用の設定ファイルもスムーズに配布することで、わずか 10 日という短期間で 1,000 ユーザー規模の利用に耐えうる VPN 環境を整備していきました。
3 月の段階で 1,000 名規模のリモートワーク環境を整備した後、緊急事態宣言が発令された 4 月半ば以降も同社は 2,000 ユーザー、3,000 ユーザーと段階的に規模拡張を続け、現在は全国の拠点の従業員の在宅勤務を想定した 4,000 ユーザー規模にまで利用人数を拡大しています。
「状況に合わせて利用者数を増減できる点は、クラウドならではのメリットです。現状における従業員の出社率は 3 割程度(2020 年 11 月時点)で、今後も全社員が在宅勤務しなければならない状況になっても対応可能な環境を整備しておくことが重要で、そのためにも AWS Client VPN は不可欠な基盤です」(山村氏)
ミーティング時間の短縮など業務の効率化に一定の成果
わずか 10 日間という短期構築やその後の運用、また状況に合わせた拡張などについて、情報システム部の奥田直紀氏は株式会社サーバーワークスと AWS のサポートを次のように評価します。
「前例がないほどの短期構築への貢献はもちろんのこと、サーバーワークスからはスムーズな運用のためのさまざまな提案もあり、新たなリモートワーク環境へストレスなく移行することができました。何か問題が発生した場合でも、サーバーワークスと AWS が連携してサポートしてくれるので安心できます」
また、AWS Client VPN を活用した新たなリモートワーク環境の成果について、山村氏は次のように話します。
「ミーティングの時間が短縮されるなど、業務効率の面では一定の成果が生まれています。とはいえ、在宅とオフィスのどちらが有効かは仕事内容によっても異なるだけに、全社一律のガイドラインを作っていくことは難しいのが現実です。重要なのは、社内にいるのか、社外にいるのかを意識させないような環境を作っていくこと。さまざまな選択肢を提供することで従業員の可処分時間を増やし、個々の従業員と会社の成長につなげていけるように、AWS のサービスを含めた IT の可能性をさらに模索していきたいと考えています」
新たなリモートワーク環境の海外拠点への展開を推進
当面の課題として、コクヨでは今回国内で構築したリモートワーク環境を海外の拠点にも展開していきたいと考えています。情報システム部の矢田哲也氏は「ASEAN 地区のコクヨのグループ会社への AWS Client VPN の展開を計画中で、すでに AWS のシンガポールリージョンで AWS Client VPN を利用し、マレーシアでの展開を完了させました。現在は 2020 年 12 月中に ASEAN 地区での整備を完了できるように、AWS やサーバーワークスとも話を進めているところです」と説明。
また、中長期的な事業目標を達成するための施策として、同社ではデジタルの重要性が再認識されています。
「新たなテクノロジーを使って企業価値を高めるための施策とそれを実践できる人材の育成は、これから避けて通れない必須の事業課題です。こうした点についても、AWS の活用の可能性があるのではないかと期待を寄せています」(山村氏)
「はたらく」「まなぶ」「くらす」のさまざまなシーンでのコクヨの新たな価値創出において、AWS のサービスはますます大きな貢献を果たしていくことになりそうです。
AWS Client VPN で構築したリモートワーク環境を含め、さまざまな選択肢を提供することで従業員の可処分時間を増やし、個々の従業員と会社の成長につなげていくために、AWS のサービスのさらなる可能性を模索していきたいと考えています
山村 隆 氏
コクヨ株式会社 情報システム部 統括部長コクヨ株式会社
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創業年月:1905 年 10 月
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売上高:3,202 億円(連結 2019 年 1 月 1 日~2019 年 12 月 31 日)
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従業員数:連結 6,961 名、単体 2,214 名(2019 年 12 月末現在)
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事業内容:文房具の製造・仕入れ・販売、オフィス家具の製造・仕入れ・販売、空間デザイン・コンサルテーションなど
AWS 導入後の効果と今後の展開
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550 名のキャパシティのリモートワーク環境を 1,000 名規模に拡大
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わずか 10 日間という短期間での構築を実現
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柔軟な拡張性を活かして 4,000 名規模まで拡大
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海外拠点(ASEAN 地区)における AWS Client VPN の展開も推進
株式会社サーバーワークス
AWS プレミアコンサルティングパートナー
AWS に特化したインテグレーション事業とサービスを提供しており、870 社、9,600 プロジェクトを超える AWS 導入実績を持つクラウドインテグレーター。2013 年より AWS プレミアコンサルティングパートナー。移行や運用、デジタルワークプレース、コンタクトセンターなど多岐にわたって認定を取得し、AWS 事業を継続的に拡大させている。(2021 年 2 月現在)
本事例のご担当者
山村 隆 氏
弁木 純 氏
矢田 哲也 氏
奥田 直紀 氏