概要

課題・ソリューション・導入効果
課題
業務変革に向けたクラウドファースト戦略の実行
メディカル業界、航空業界、製造ラインの業務代行などの請負サービス、国内外の物流・倉庫サービスを手掛ける鴻池運輸。1880 年に鴻池忠治郎氏が大阪で労務供給・運輸業を開始して以来、140 年以上にわたって物流だけでなく幅広い領域で事業を拡大してきました。現在は国内に 193 拠点、海外に 33 拠点を構える KONOIKE グループとして 2030 年ビジョン『技術で、人が、高みを目指す』のもと、先端技術の活用、これまで培ってきた匠の暗黙知の共有、次世代事業創出力の強化を目指しています。その一環として、IT インフラや社内のコミュニケーション基盤強化など、デジタルトランスフォーメーション(DX)にも積極的に取り組んでいます。
「少子高齢化や労働人口減少、長時間労働問題、SDGs など、企業を取り巻く環境が大きく変わっています。鴻池運輸においても事業変革が急務となるなか、システムの乱立/サイロ化に加え、ネットワークやセキュリティもオフィスで働くことを前提としたものになっており、IT 環境が技術の進歩に追いついておらず、事業変革の足枷になっているという問題がありました。そこで2018 年から、IT 組織を刷新し、クラウドファースト戦略を掲げ、システム基盤の再構築に乗り出しました」と語るのは、ICT 推進本部 デジタルトランスフォーメーション推進部 部長の佐藤雅哉氏です。
従来のオンプレミス環境では、物流システムに利用していたハードウェアの保守期限が迫り、運用していたファイルサーバーは容量不足が生じていたものの、拡張には多大な追加投資が必要となる状況でした。また、一部で進めていたリモートワークは専用 PC を借りて行うなど、さまざまな制限があり、柔軟性に課題がありました。
鴻池運輸はまずクラウドシフトに向け、グローバル活用も視野に大手 3 社のクラウドベンダーを比較した中から AWS を選定しました。「2018 年当時、他社よりも大手企業の事例が豊富で、基幹システムの実績もあったのが AWS だったためです」(佐藤氏)
さらにオンプレミスのデータセンター環境を縮小し、社員にもモバイル PC やスマートフォンを提供し、社外から社内システム利用を促進する方針を進めました。ICT 推進本部 デジタルトランスフォーメーション推進部の戸松聡氏は「これまでは社内で働くことが前提になっていたため、お客様先に訪問すると、その後オフィスに戻って作業しなければなりませんでした。そのため外出先でもレポートしたり、スマートフォンで情報をチェックしたりできる環境に改善したいと考えました」と語ります。そこで、社内ネットワークへのアクセスについては、自社で VPN 装置を持たずにクラウド上でファイアウォール機能やエンドツーエンドの暗号化が可能な Zscaler の「Zscaler Private Access」を導入しました。
ソリューション
複雑なシステムのクラウド移行とリモートワークの環境整備
AWS への移行は、ハードウェアの保守期限が迫っていた物流システムを優先的に進めました。「複数の外部システムとも連携がある非常に複雑な仕組みです。現行システムをすべて 1 年ほどで AWS に移行しました。このとき、利用していた商用データベースをクラウド環境に移行するとライセンス料が非常に高額になる問題がありましたが、Amazon RDS のライセンス込みモデルならかなり費用を抑えられるということで、利用することを決めました」(佐藤氏)
また、オンプレミス環境を構築する場合、5 年後の更改を想定したサイジングが必要ですが、クラウドであれば状況に応じて柔軟に拡張できます。佐藤氏は「現行と同等か、不足している箇所だけ少しプラスをした形で移行し、その後足りない部分は増強しました。こうした柔軟性は非常に大きなメリットと感じています」と評価しています。
また Zscaler Private Access により、ユーザーが意識することなく自動的にセキュアな接続を確立する利便性を得ることができました。「PC でもスマートフォンでも、どこからでも VPN などを意識することなくインターネットに繋がり、社内のシステムにもアクセスができるという環境ができました。そしてシステム構築中に新型コロナウイルスによるパンデミックが起き、本社が閉鎖されたことでリモートワークが一気に進みました。結果的にタイミングよく、皆が新たな働き方にシフトできることを認識することになりました」(佐藤氏)
一方、据え置き型のデスクトップでしかできない業務もあったため、出社できない状況で役立ったのがリモートデスクトップの Amazon WorkSpaces です。戸松氏は「緊急にワーキンググループを立ち上げ、環境の構築を進めました」と振り返ります。
導入効果
インフラ配備の俊敏性が高まり、働き方も大きく変化
AWS への移行によって得られた効果として佐藤氏が挙げるのは、迅速なリソース確保や設定の手軽さです。「新しいシステムのためにサーバーを用意したいというリクエストは今もよくあります。これまでは見積もりや稟議を経て 2 ~ 3 か月はかかっていましたが、今はパートナー企業の運用チームに依頼すれば最短では当日に用意できます。また、事業継続の観点から冗長化も手軽で柔軟に設計できるのもメリットと考えています」
移行後に継続して運用するリソースに関しては、定期的にリザーブドインスタンス契約に変更し、コストの最適化も行われています。リモートワークの促進も進んでいます。
「Zscaler Private Access 運用開始時のライセンス数は 1,200 でしたが、今は 2,100 まで増やして、さらに増やしてほしいと言われそうな勢いで利用が進んでいます。また、社内の会議はオンラインのビデオ会議システムを通じて行われることが多くなっていて、どの会議にも必ずビデオ会議用の URL が設定されています。リモートワークのユーザーが増え、柔軟な働き方がしやすくなっていると実感しています」(戸松氏)
クラウドファースト戦略が着実に進んでいることに対しては、経営陣も含めて社内からの評価を得られています。佐藤氏は「矢継ぎ早にクラウドソリューションを展開したため、混乱への懸念はありましたが、『社内の IT 環境変化により、働き方も大きく変わった』という声があり、効果が出ていると実感しています」と語ります。
鴻池運輸はこれからも DX 推進に向け、クラウドを活用していく構えです。佐藤氏は最後に、「コンテナ技術や NoSQL のデータベースを使った、よりモダンなシステム構築や事業継続性の強化を検討しています。AWS に移行した物流システムは複雑なため、将来的にはシステムを刷新し、東京と大阪、海外のリージョンも含めた冗長性も考えていきたい」と展望を語っています。

オンプレミスなら 5 年後の更改を想定したサイジングが必要ですが、クラウドなら状況に応じて柔軟に拡張できます。今回は現行と同じ構成で移行し、足りない部分は後で増強できました。この柔軟性は非常に大きなメリットです。
佐藤 雅哉 氏
鴻池運輸株式会社 ICT 推進本部 デジタルトランスフォーメーション推進部 部長企業概要
1880 年、鴻池忠治郎氏が労務供給業・運輸業として個人創業。その後、鉄鋼分野において工場構内荷役や運搬作業なども開始。1945 年に鴻池運輸株式会社を設立。現在は、製造業界・サービス業界向けの請負サービスや、国内外の物流サービスを手掛ける。さらに KONOIKE 2030 VISION として「技術で、人が、高みを目指す」を掲げ、新たな技術を活用しながら自社の知見や創造性に磨きをかけ、顧客と社会の需要に応えている。
取組みの成果
- IT 基盤のクラウド化
- インフラ配備の柔軟性・俊敏性向上
- リモートワークの推進
ゼットスケーラー株式会社
AWS アドバンストティアソフトウェアパートナー
ゼットスケーラーは従来の境界線型セキュリティであるファイアウォール/VPN のセキュリティアーキテクチャをゼロトラストアーキテクチャへと変革するソリューションを提供する AWS パートナー。
AWS をお使いいただいている多くのお客様が Zscaler を利用してゼロトラストセキュリティに変革され、高度なセキュリティを実現している。
