紀伊半島南部にある和歌山県の白浜町は、「海と温泉」で知られる日本有数のリゾート地です。日本三古湯の一角を占める「白浜温泉」、ワイキキビーチの姉妹浜である「白良浜海水浴場」、パンダと出会える「アドベンチャーワールド」など観光スポットが充実。羽田空港から飛行機で 65 分程度の距離という事もあり関東圏からも多くの人が訪れ、ワーケーションの聖地としても知られています。

南紀白浜の地で 2020 年 3 月に設立したのが、まん泊リゾートです。同地のオーナーの委託を受けて 111 棟の別荘を管理し、観光客などに宿泊施設や日帰り旅行施設、ときには CM 撮影やプロモーションのロケ地として提供する貸別荘業を展開しています。コロナ禍で観光ホテルへの宿泊者数が減少する一方、大家族向け、天然温泉付き、オーシャンビュー、ペット同伴可、バーベキュー設備ありなど、好みに合った別荘を一棟貸し切りで選ぶことができる貸別荘は、利用者が急増しています。
「貸別荘の利用はご家族連れが多く、利用者の口コミで来られる方や、2 度、3 度訪れるリピーターが増え、設立から 1 年間でリピーター率は 5 倍に拡大しています」と語るのは、代表取締役の上野真虎氏です。

利用者からの宿泊・利用予約は、自社サイトでの受付が 6 割以上を占め、一部で民泊用サイトからも受付けています。電話での宿泊・利用予約は、口頭での言い間違い、聞き間違いを避けるために受付けておらず、原則として自社サイトへ誘導しています。

一棟貸しの別荘は、ホテルや旅館と運用ルールが異なるため、施設や設備の利用に関して電話による問い合わせが多く寄せられます。電話による問い合わせは、同社の予約センターで 9 時から 18 時まで、平日 2名、土日や繁忙期になると 4 名体制で対応しているものの、コロナ禍で予約数が想像以上に伸び、比例するように電話による問い合わせが増えました。その結果、現状のオペレーションでは電話対応が回らず、宿泊者管理の限界を感じていました。
「電話を受けるとお客様の名前をその都度お聞きして確認し、予約管理システムで検索してから要件を伺っていました。一棟貸しの場合、各施設の設備が異なるため、幹事さんなどから何度も問い合わせを受けることが多く、そのたびに名前を確認するためにお客様にストレスを与えているのではないかという不安がありました。リピート予約のお客様に対しても一元的な対応しかできず、サービスレベルの向上が課題となっていました」（上野氏）

そこで同社は、顧客満足度の向上と電話オペレーターの負荷軽減を目的に、Amazon Connect と Salesforce を連携した顧客管理システムの構築を決めました。
「7 年ほど前に、倒産寸前の老舗旅館が IT 活用で業績を V 字回復したというテレビのドキュメント番組を見たことが記憶に残っていました。改めて調べてみると同じ和歌山県の白浜町に Salesforce のサテライトオフィスがあることがわかり、運命的な出会いだと感じました。その後、AWS パートナーのロジカル・アーツ株式会社から Amazon Connect との連携を提案いただき、迷うことなく導入を決めました」（上野氏）

Amazon Connect を採用した理由は、Salesforce とシームレスにつながること、Salesforce 上で着信相手が瞬時にわかること、着信ポップアップ/クリック to ダイヤルの機能を装備していること、通話録音が可能であることでした。
「電話対応で私がやりたいと思ったことが、すべて網羅していたことが採用の決め手です。通話録音の機能も、お客様と対応者の間で、“言った、言わない”を避けるためや、“なぜお客様にそのような誤解を生んでしまったのか？弊社のコミュニケーションに問題があったのなら、今後どのように改善していくべきか”など、社内の改善を図るためにも必要な機能と考えていました」（上野氏）

採用決定後、2021 年 5 月から設計を始め、6 月から 7 月にかけて Amazon Connectと Salesforce を導入。新システムは、Amazon Connect の標準機能を活用して実装しました。複数人で別荘を利用する一棟貸し固有の要件に対しては、電話をかけてきた予約代表者だけでなく、同伴者もすべて Salesforce 上で登録・管理し、どの利用者からの電話でも受電時にリピーターとして判別できる機能も実装しました。

導入を支援したロジカル・アーツに対して上野氏は次のように評価しています。
「言われたことをただこなすのではなく、私たちの要望をくみ取り、知恵と経験を駆使しながら、どうすれば効率的に実現ができるかを寄り添って考えてくれました。私たちの想像していた以上の提案をいただくことができ、非常に満足しています」

Amazon Connect と Salesforce の導入により、受電段階で顧客情報が確認可能になり、顧客対応の質の向上と応対スタッフの負担軽減を同時に実現しました。
「これまで電話 1 件あたり 30 秒ほどを費やしていたお客様確認のためのやり取りがなくなり、1 年間でおよそ 71 時間分の時間が削減できました。名前確認のための時間削減分、スタッフを別の仕事に振り分けることが可能になり、施設運営も効率化されています。ワイヤレスヘッドセットの導入で、フリーハンド対応が実現し、電話応対しながら必要な書類を取りに行ったり、印刷したりすることもできるようになりました」（上野氏）

受電時に「お待たせしました。○○様」と出ると、顧客から驚かれたり、喜ばれたりすることも多く、確実に手応えを感じていると、笑顔で話してくれました。また、Amazon Connect の導入を機に 10 回線に増やしたことで、話し中でつながらないこともなくなったようです。 

電話応対の悩みを解消し、上野氏の理想を実現した Amazon Connect と Salesforce による顧客管理システムは、今や同社にとってなくてはならない存在となっています。今後もリピーターの満足度を向上させる取り組みを進めていく予定です。
「例えば、何度も利用する VIP 顧客へのきめ細かな対応を通して、より満足していただくための施策を実施することを考えています。Salesforce が標準で装備するマーケティングオートメーションツールとも連携し、顧客の好みや興味に応じてメールを送信したり、Amazon Connect のアウトバウンドコールで架電したりすることも検討中です。Salesforce については、予約管理だけでなく、チェックイン/チェックアウトの管理などにも用途を拡大し、清掃漏れの防止などの業務改善も進めていきます」（上野氏）

ようやくスタート地点に立ったまん泊リゾートの Amazon Connect と Salesforce の活用。上野氏の夢の実現に向け、AWS への期待も膨らんでいます。

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