お客様事例/不動産

2023 年
森ビル株式会社

森ビル、ヒルズの利用データを AWS 上で統合し活用することで都市のデジタル化と利用者体験の向上を推進

顧客動向の把握

来街頻度・顧客の支出額の向上

社内の事業連携の促進

経営陣のデータ活用への理解促進

概要

オフィスや住宅、商業施設、文化施設など、複合的な都市づくりを手掛ける森ビル株式会社は、都市のデジタル化と豊かな都市生活・顧客体験を実現するデジタルプラットフォーム『ヒルズネットワーク』にアマゾン ウェブ サービス(AWS)を活用しています。オフィスや住宅、ショップなどの利用者情報を統合 ID で管理し、AWS サービスによって利用動向を把握。CI/CD の取り組みも行いながら、利用者個人に最適化したサービスを提供しています。

森ビル株式会社

ビジネスの課題 | 複合施設の利用者により良いサービスを提供

森ビルは、東京都港区を拠点に都市再開発事業などを展開する総合ディベロッパーです。「都市を創り、都市を育む」という理念を掲げる同社は、オフィスや住宅、商業施設や文化施設など都市生活に欠かせない施設や機能を垂直方向に積み上げ複合的に開発した都市づくりと、タウンマネジメントにより街の価値を高め続ける運営手法で知られています。

同社は各施設やサービスの利用者に向けて、都市の魅力を高めることを目的にデジタルプラットフォーム『ヒルズネットワーク』を構築しました。これまでオフィスや住居などの施設ごとに管理していた利用者 ID を共通の『ヒルズ ID』に統合し、顧客ごとに最適化した情報やサービスの提供を通じて、都市自体のアップデートをしていくことが狙いです。

「たとえば、ヒルズ内のオフィスで働く方がランチメニューをお得に利用できたり、イベントに参加できたりする仕組みや、ポイントカード『ヒルズカード』の会員は利用状況に応じて駐車場の割引を受けられる仕組みなど、複合的にサービスをつないでいきたいという想いがありました」と語るのは、同社のタウンマネジメント事業部 TM マーケティング・コミュニケーション部 ヒルズネットワーク推進グループ 課長の北尾真哉氏です。

ヒルズネットワークの構想は 2017 年ごろから本格化し、2019 年にはヒルズネットワーク推進グループが組織化され、開発要件定義やベンダー選定が行われました。

そして、ヒルズネットワークとヒルズ ID は日本電気株式会社(NEC)が提供する『Smart Connectivity』というサービスをもとに構成されました。そして顧客接点にはスマートフォンアプリ『ヒルズアプリ』と Web サイトを活用し、システム基盤とデータ分析基盤のインフラには AWS を採用して、外部のポイント・クーポン基盤とも連携できるようにしました。

インフラ構築を指揮した IT 推進部 IT 基盤グループ課長の藤田知明氏は NEC のソリューションと AWS を採用した理由について、次のように振り返ります。

「当社の方針を RFP で提示して複数社から提案を受けましたが、1 つの ID という考え方に最もフォーカスした NEC の提案ならば目的を具現化しやすく、パッケージと開発を組み合わせるため自由度、コスト面でも優れていました。プロジェクト自体がベンダー 3 社 4 環境の同時並行で開発を進めていくという難題であり、NEC Smart Connectivity には各システムを連携する API 基盤が標準実装されていることもポイントとなりました。AWS 選定の理由は、開発ベンダー各社の推奨です。裏付けとして、コミュニティなども含めノウハウが豊富であること、迅速かつ安価にサービスを利用できることも挙げられました」

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ヒルズ ID の情報を通じて、お客様一人ひとりのご利用状況がわかるようになりました。ここから蓄積したデータを組み合わせ、パーソナライズした情報をお届けするなどサービス向上につなげていきます”

北尾 真哉 氏
森ビル株式会社 タウンマネジメント事業部 TM マーケティング・コミュニケーション部 ヒルズネットワーク推進グループ 課長

ソリューション | CI/CD 環境とデータ分析基盤に AWS サービスを採用

ヒルズネットワークのシステム基盤やヒルズアプリ、データ分析基盤の構築は AWS を活用し、 2020 年に行われ、2021 年 3 月にはヒルズアプリをリリースしました。複数のベンダーと森ビルのメンバーが限られたプロジェクト期間で効率的に開発を進めるために DevOps 体制を整備しました。

「複数のベンダー同士が円滑に連携できるようプロジェクトの管理方法を整備し、CI/CD についても AWS CodeBuildAWS CodeDeploy を利用して成果物の管理を行い、デプロイやデリバリにもなるべく人手を介さなくて済むように自動化の仕組みを構築しました。アプリや Web 側は定期的なアップデートを行っていますが、システム基盤はメンテナンスやサービスのアップデートなどのタイミングで改修します」とIT 推進部 IT 基盤グループ リーダーの釣賀靖景氏は語ります。ヒルズネットワークは、複数のベンダーが共存する環境で構築を進めており、各ベンダーのシステムを相互に接続する仕組みも必要となりました。そこで当時日本(東京リージョン)でローンチされたばかりの仮想ハブサービスである AWS Transit Gateway を採用しました。

ヒルズ ID への統合による新たなデータ分析基盤には、データ設計の専門家の意見を取り入れて AWS のサービスを採用。「データ統合の AWS Glue やデータウェアハウスの Amazon Redshift、汎用クエリーの Amazon Athena など、AWS なら必要なサービスがすべて整っていました。導入事例が多いことも強みでした」(藤田氏)

ヒルズ ID のデータ分析基盤は、顧客一人ひとりに対して細かな指標を設定。それらの指標に基づいて特徴を分類し、ヒルズアプリや Web サイトを通じて提供する情報やクーポン、割引などのサービスを個別に最適化できる仕組みを整えました。従来は、オフィスで働く人、居住者、ショップやレストランの利用者、施設の利用者など利用タイミングや場所ごとにしか情報が得られませんでしたが、ID に紐づけることにより、利用者単位でいつ、どのようなサービスを利用したのかが横断的に理解できるようになりました。

導入効果 | データ活用による顧客エンゲージメントの向上

ヒルズネットワークの活用によって、森ビルの社内でデータの可視化・活用を行い、さまざまな企画の立案や実施を今まで以上のスピード・精度で実施できるようになりました。カードの情報をアプリと連携して、アプリだけで駐車場の割引が受けられるといったユーザビリティも好評です。その成果は、来街頻度や売上の向上として現れています。北尾氏は「ヒルズアプリの提供によって、ヒルズカードの会員数が大幅に増えました。セールの招待など、お客様のニーズにそってパーソナライズ化した情報提供ができたことで非常に多くのお客様のエンゲージメントが高まりました」

と効果を語ります。社内の各事業部とともに、ヒルズネットワークの活用を推進しているタウンマネジメント事業部 TM マーケティング・コミュニケーション部 ヒルズネットワーク推進グループの草川雄介氏は「社内の各事業部側からデータ連携をしたいという声が挙がっています。今後も複合的に施設やイベントの案内などを提供し、より一層のご利用につなげたいと思っています」と語ります。森ビルの経営層も自らヒルズアプリを利用しているため、各種施策提案への理解も深まり、データを元にした仮説立て、お客様向けのキャンペーンの実施、効果検証、新しい施策の立ち上げというサイクルを素早く回していける体制に繋がっています。

都市生活の質向上のため、柔軟なサービス提供を目指すヒルズネットワーク。2023 年には“ヒルズの未来形”とされる麻布台ヒルズという新たな街が誕生します。今後の展望について北尾氏は次のようにコメントしました。「ヒルズは、常に進化していかなければならないと思っています。パートナーである NEC や AWS から、未来を見据えてより良いものを届ける思想のもとで協力を得られるのは非常にありがたいことです。新しい街ができ、顧客が増えるとシステム連携もデータ連携も複雑になっていくでしょう。蓄積したデータを組み合わせ、さらなるサービス向上につなげていきます」

カスタマープロフィール: 森ビル株式会社

「都市を創り、都市を育む」という理念のもと、オフィスや住宅、商業、文化施設、ホテルなどを複合的に集積した再開発事業を手掛ける総合ディベロッパー。『アークヒルズ』『六本木ヒルズ』『虎ノ門ヒルズ』そして現在開発中の『麻布台ヒルズ』が位置する東京・港区の中心を戦略エリアと位置づけ、日本を牽引する東京の新たな経済圏「国際新都心」を構築するべく、都市づくりを推進している。

北尾 真哉 氏

北尾 真哉 氏

草川 雄介 氏

草川 雄介 氏

藤田 知明 氏

藤田 知明 氏

釣賀 靖景 氏

釣賀 靖景 氏


AWS プレミア ティア パートナー

日本電気株式会社

NEC は、AI や IoT などさまざまなテクノロジーを活用したデジタルトランスフォーメーションにより、安全・安心で効率・公平な都市実現を支える NEC Safer Cities と、人・モノ・プロセスをバリューチェーン全体で共有し新たな価値を生み出す NEC Value Chain Innovation の提供に取り組んでいる。AWS プレミア ティア パートナーに認定されている実績、経験を活かし、お客様のデジタルトランスフォーメーションの実現をサポートしている。

日本電気株式会社

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