8%
クラウド移行によるコスト削減
IaC 活用によるシステム構築工数削減
遠隔地バックアップによる BCP 対策
概要
岩手県盛岡市は令和 2(2020)年から総務省が主導する「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」に基づいて、業務の効率化と市民の利便性向上に取り組んでいます。デジタル庁の「ガバメントクラウド先行事業」にもいち早く応募し、住民記録や税情報などを管理する基幹システムの一部をアマゾン ウェブ サービス(AWS)環境に移行。現状と 5 年後を比較した検証結果で全体コストを 8% 削減するとともに、BCP(事業継続計画)も実現しています。
ビジネスの課題 | DX 推進の一環としてガバメントクラウド先行事業に応募
盛岡市は、「自治体 DX 推進計画」を遅滞なく進めるとともに、デジタル技術やデータを活用した市民の利便性と行政事務の効率化に取り組むため、令和 3 ~ 7 年度の 5 年間を対象に「盛岡市行政デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」を策定しました。この計画では行政手続きのオンライン化やオープンデータの推進、情報化人材の育成に取り組むほか、情報システムの標準化・共通化も重点目標としています。
そして同市は、政府機関や自治体向けの共通クラウドサービス利用環境であるガバメントクラウドをいち早く活用するため、令和 3 年にデジタル庁の「ガバメントクラウド先行事業」に応募し、52 件から選ばれた 8 団体の 1 つとなりました。
「ガバメントクラウドの提供予定は令和 5 年であり、自治体 DX 推進計画で定められる移行期間の令和 7 年まで 3 年間しかありません。しかし、先行事業に参加すれば令和 3 年から使えるため、経験を積みながら移行作業期間を確保できます。当初は様子見も考えましたが、当市のシステム開発 / 運用を依頼している株式会社アイシーエスの後押しもあり、応募しました」と語るのは、盛岡市 デジタル推進事務局の本舘真隆氏です。
盛岡市の住民記録や税、年金などを扱うシステムは、アイシーエスが提供するパッケージソフトを同社管理のハウジングサービスで使用してきましたが、利用しているハードウェアのリース期限が令和 4 年に迫っていました。
盛岡市は先行事業の計画として、パッケージシステムに含まれる基幹 8 業務と付属・密接する 6 業務をクラウドへの移行対象としました。デジタル庁の先行事業において盛岡市の計画が採択された理由は、計画における現状と 5 年後の費用対効果の比較検証や、クラウド利用実績がない団体のクラウド移行モデルケースとなりうると評価されたためです。
そして盛岡市はガバメントクラウド事業者の選定についてアイシーエスと協議し、現行パッケージがクラウド環境でも問題なく動作すること、複数の文字コードが存在するデータの互換性に加え、障害復旧に迅速に対応できるもの、開発のしやすさを考慮して、実績豊富な AWS を採用しました。
コロナ禍やデジタル庁発足で、DX への注目が高まる今こそがチャンスと考えています。自治体としての業務効率化を進め、そのメリットを住民に還元していきたいです”
本舘 真隆 氏
盛岡市 デジタル推進事務局
ソリューション | コードを用いた設定によって、インフラ配備を効率化
盛岡市は令和 3(2021)年の 9 月頃からガバメントクラウド移行を開始しました。デジタル庁とも調整しながら、翌年 6 月頃に AWS 上にテスト環境を構築。その後テストと本番環境の構築を経て、窓口を休止する年末年始の 3 日間を使って移行を実施。令和 5 年 1 月 4 日から、滞りなく本番環境での業務を開始しました。
本番システムは、AWS の東京リージョン内の論理的に分離した 2 つの AZ(アベイラビリティーゾーン)にアプリケーションとデータベースを展開して構築。移行対象とならない他のシステムとの連携は、盛岡市の庁舎にあるサーバー室と専用線で接続して行います。
仕様の検討にはアイシーエスが全面協力し、既存のシステムが従来のオンプレミス環境と同様のパフォーマンスを AWS 上で出せるように CPU やメモリなどのスペックを決めていきました。さらに、クラウドならではのオートスケールに対応するための改修も実施。構築はスムーズに進み、あわせてガバメントクラウド上に構築する環境に求められる、セキュリティや可用性といった標準非機能要件についても検証を行いました。
システム構築においてアイシーエスは、サーバーなどのシステムインフラの構築や管理をコードによって行う IaC(Infrastructure as Code)を採用しました。IaC の手法を使うことで、インフラ環境の再現性が担保され、テスト環境から本番環境まで生じる数々のリソース配備を効率化しました。
また、BCP(事業継続計画)対策として DR(ディザスタリカバリ)環境を大阪リージョンに構築し、バックアップデータが定期的に転送される仕組みとしています。「東日本大震災の際、東北の自治体ではサーバーが壊れるケースや、津波に流されてデータが復旧できないケースが多く発生しました。震災当時、当市も災害対策として遠隔地バックアップを検討したものの、対応する事業者が少なく、費用面でも難しかったのでなかなか踏み切れずにいましたが、クラウド移行を機に整備できました」(本舘氏)
移行対象となるシステムを担当していた盛岡市の職員はわずか 2 名でしたが、アイシーエスの協力のもと無事にクラウド環境の整備が進みました。「私たち行政の職員は情報処理に精通しているわけではありませんので、利用者の目線でどのような影響があるか逐一アイシーエスとすり合わせをして、IaC 活用や冗長性、BCP 対策、クラウドと他のシステムとの連携など、さまざまな面でサポートいただきました」(本舘氏)
導入効果 | ガバメントクラウドの活用で、誰一人取り残されない社会を目指す
デジタル庁は令和 4(2022)年 9 月、ガバメントクラウド先行事業における机上検証の結果を発表しました。従来環境とガバメントクラウド移行後の費用を試算/評価するもので、盛岡市のプロジェクトはイニシャルコスト/ランニングコストともに経費の削減効果があり、全体で 8% の削減という結果になりました。その要因は、依頼先ベンダーが 1 社であることや、既存環境の一括移行など、コスト効果が出やすい条件がそろったことであると考察されています。
盛岡市とアイシーエスは、IaC によって工数を抑えられたこともイニシャルコストの削減につながったと考えています。なお、ランニングコストは、データセンター利用料やハードウェアのリース料・保守料がなくなった一方で、AWS 環境と本庁環境間での通信回線費用が増えましたが、今後他のシステムのクラウド移行により削減可能と見込んでいます。
本舘氏は「窓口を止めることなく、クラウド上へのシステム構築ができました。AWS 環境を利用することで、これまでアイシーエスに依頼してきた保守の負担も減るのではと考えています。また、BCP 対策として遠隔地バックアップを実現できたのは、本当に大きなメリットです」と語ります。
盛岡市は令和 7 年までの行政 DX 推進計画において、今回は移行しなかったシステムについても順次移行を進め、さらなる利便性向上を図っていく方針です。今後について、本舘氏は次のように語っています。
「『デジタルのチカラで、市民の多様なライフスタイルに寄り添う、徹底的に便利な市役所の実現』を目指し、各種手続き・申請のオンライン化やシステム標準化・共通化を推進しています。自治体が対応していくのは大変な作業ではありますが、コロナ禍やデジタル庁発足で、DX への注目が高まる今こそがチャンスと考えています。自治体としての業務効率化を進め、そのメリットを住民に還元していきたいです」
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カスタマープロフィール:盛岡市
AWS 公共部門パートナー
株式会社アイシーエス
1966 年岩手県盛岡市に設立以来、自治体や医療機関など公共性の高い情報サービスを提供している。市町村向けである住民情報統合システム INSIDE、内部情報トータルシステム Bestside をはじめ、県向け給与システムや医療機関向け電子カルテ MediClover など多数のシステムを自社開発。アプリケーション開発技術のみならずサーバ・ネットワークなど IT インフラを構築する高い技術力が評価され、東北エリアを中心に実績を重ねており、近年では全国のお客様にアイシーエスのシステムが利用されている。システム構築のその先へ、人の暮らしがより良い方向に向かうよう、技術と経験で希望あふれる未来づくりを目指す。
ご利用中の主なサービス
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Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) は、安全でサイズ変更可能なコンピューティング性能をクラウド内で提供するウェブサービスです。ウェブスケールのクラウドコンピューティングを開発者が簡単に利用できるよう設計されています。
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