メインコンテンツに移動
2021 オリオンビール株式会社

本社の移転を機にオンプレミス環境の社内システムを 6 か月で AWS に移行。 IT 担当者を保守作業から解放し、戦略的な業務に集中

概要

沖縄を代表する名産品として知られる『オリオンビール』の製造・販売を手がけるオリオンビール株式会社。社内システムをオンプレミス環境で運用してきた同社は、本社の移転を機にクラウド化を決断。約 6 か月間でアマゾン ウェブ サービス(AWS)へ移行しました。これにより IT 管理者はサーバーの再構築や、故障時の保守対応などから解放され、戦略的な業務への集中を実現。また、BCP 対策を強化し、台風などに見舞われることが多い沖縄においてより堅牢なシステムを実現しています。  

Two hands holding and toasting with Orion beer glasses filled with golden beer and foam on top.

本社移転を機にサーバー室を社外に移しサーバー管理に関する課題の解消へ

「人を、場を、世界を、笑顔に。オリオングループ」を企業理念に、同社と接するすべての人を幸せに導くブランドを目指すオリオンビール。基幹商品の『オリオンザ・ドラフト』をはじめ、発泡酒の『麦職人』、新ジャンルの『サザンスター』など、魅力的な商品をラインアップし、沖縄県を中心に日本全国に販売しています。

業務を支える社内システムは、本社のサーバー室に設置した物理サーバー上に仮想サーバーを構築していました。ところが、2020 年 5 月より本社機能を沖縄本島中南部の浦添市から、南部の豊見城市に移転することが決まり、サーバー室の移転が必要になりました。

新本社の移転先は商業施設内にあるため、サーバー室のスペースを設けることが困難です。そこで同社は、本社移転を機にサーバー室を社外に移し、サーバー管理にまつわる課題を解消することにしました。
「大型台風などで停電や空調の故障が起こればシステムはダウンし、復旧のための作業が発生します。また、オンプレミス環境であれば、5 ~ 6 年おきにサーバーの再構築によるコストと作業工数が発生します。これらを解消するために、サーバー室のシステムをクラウド環境に移転することにしました」と語るのは、経営推進本部 IT ソリューション部 IT ソリューション課 主任の新里紹太氏です。

当初はハウジングを検討するも資産を持たない AWS の採用を決定

同社は当初、外部のデータセンターで運用するハウジングサービスを検討しました。しかし、ハウジングでサーバーの保守作業や再構築作業自体は残ってしまいます。そこで今後は物理的な資産を持たずに運用するという判断のもと、クラウドサービスの AWS への移行を決定しました。パートナーには琉球銀行の友好会社のシステム会社で、沖縄の IT 業界を牽引している AWS パートナーの株式会社リウコムを採用しました。
「他のサービスも含め情報収集をしましたが、知名度とユーザー数の多さ、セキュリティ面、安価なコスト体系を評価し、AWS の採用を決定しました。クラウド活用は当社にとって初めてのチャレンジでしたが、経営層の理解もあり、スムーズに決まりました。移行支援をリウコムに依頼したのは、沖縄の IT ベンダーとして身近で頼りになる存在であり、AWS を活用したシステムの構築実績があったからです」(新里氏)

移行プロジェクトは 2020 年 7 月にスタートし、2021 年 1 月までにシステムの移行を完了しました。今回移行したシステムは、情報システム(グループウェアや営業支援システムなど)と情報システムの開発環境、クライアント管理システム(Active Directory)、総務系 ERPシステム(人事・給与・経理の一部など)、ファイルサーバーです。基本的には Amazon EC2 上に移行していますが、ファイルサーバーはフルマネージド型で重複排除機能を装備した Amazon FSx for Windows File Server をレスポンスなどを検証したうえで移行しました。バックアップには AWS Backup を活用し、AWS の海外リージョンに日次でバックアップしています。

移行作業は、主に休日の土・日曜日を使って実施。周囲に与える影響が少ない Active Directory や総務系 ERP システムから開始し、順次複雑なシステムの移行を進めていきました。アーキテクチャの設計と移行作業を支援したリウコムの米須祥子氏は「仮想マシンの移行は AWS の専用ツールである VM Import を利用しました。イメージサイズが大きかったため、移行作業時で使用する中継ポイントを置いている拠点を調整することや、リハーサルを繰り返すことで、短時間に移行できるように工夫しました」と振り返ります。

当時、オリオンビール側でプロジェクトに関わったメンバーは新里氏と外部コンサルタントの 2 名のみ。社内への影響確認、ネットワークの切り替え、オンプレミス環境との連携など、多くの作業が発生する中、少ない人数で対応できたことにはリウコムの支援があったからと評価しています。
「リウコムは、私たちの問い合わせや要望に対していつも適切な答えを用意してくれました。大量データの移行も粘り強く対応していただき、無事完遂することができました」(新里氏)

サーバー再構築や運用から解放され他の業務への注力が可能に

今回、AWS 上に移行したサーバーは、サーバー室で管理していた物理サーバー全 7 台のうち 3 台、仮想サーバーは全 30 台のうち 18 台です。移行時に多大な改修コストが見込まれた基幹システム(販売・出荷・会計)と、サーバー OS の関係で移行ができなかった一部システムは、バックアップサイトとして利用していた名護市の工場にハードウェアを移転しています。

AWS への移行により本社のサーバー室を撤収する目的は達成し、IT 管理者はオンプレミスで残ったシステム以外については、ハードウェアの管理から解放されました。
「IT 管理者がサーバーの保守・運用から解放されたことで、他の戦略的な業務に集中できるようになりました。AWS 上に構築したサーバーは利用状況を踏まえてスペックを変更することができるため、リソースの余剰や不足の発生を抑えることができ、無駄なコストも発生していません。中長期的な TCO も、当初検討したハウジングサービスと比べると、圧倒的に低いコストで抑えられています」(新里氏)

その他にも、台風などで発生するサーバー停止のリスクが減り、安心感が高まっています。これまで県内の別拠点で保管していたバックアップも、AWS の海外リージョンの活用により、より強固な BCP 対策が実現しています。

数年がかりでフルクラウド化へAmazon Redshift によるデータ分析も検討

今後は、サーバー OS の関係で移行ができなかった一部のシステムを、終了または SaaS への移行や AWS 上に再構築する計画で、将来的にはフルクラウド化を実現する考えです。

新たなクラウド活用については、販売データや POS データなどを利用して売上傾向を分析する統合データ基盤の構築を検討中で、Amazon Redshift の活用を視野に、アーキテクチャの設計を開始しています。その他、今後も継続的に AWS の新たなサービスに注目し、システム基盤の強化を図っていく考えです。新里氏はリウコムに対して「沖縄の IT を牽引する存在として、他社の AWS 事例の紹介や、AWS のサービスを活用した新たな提案を期待しています」と語ります。

A person wearing glasses and a floral shirt with a red lanyard, standing in front of a brick wall. This image is used for an Orion Beer solution case study on the AWS Japan website.
Orion Beer logo with Japanese slogan text below, blue lettering on a white background.
IT 管理者が少ない体制の中、サーバーの保守・運用から解放されたことで、他の戦略的な業務に集中できるようになりました。中長期的な TCO も、当初検討したハウジングサービスと比べて圧倒的な低コストで抑えられています

新里 紹太 氏

オリオンビール株式会社 経営推進本部 IT ソリューション部 IT ソリューション課 主任

アーキテクチャ図

A system architecture diagram, labeled in Japanese, depicting Orion Beer's use of AWS cloud infrastructure. The diagram illustrates components such as private and public subnets, servers, dedicated hosts, and file servers within two availability zones, showing how Orion Beer organizes its IT environment on AWS.

オリオンビール株式会社

  • 設立: 1957 年 5 月 18 日

  • 資本金: 3 億 6,000 万円

  • 従業員数: 295 名(2021 年 3 月現在)

  • 事業内容:ビール類製造販売、清涼飲料販売、リゾートホテル事業

AWS 導入後の効果と今後の展開

  • 旧本社のサーバー室の撤収、物理的な IT 資産の削減
  • サーバーの再構築からの解放による運用負荷の軽減、他業務へのシフト
  • 中長期的な TCO の削減
  • AWS の海外リージョン活用による BCP 対策の実現
  • 将来的なフルクラウド化を検討
  • Amazon Redshift による統合データ基盤の構築を検討

株式会社リウコム

AWS セレクトコンサルティングパートナー

1973 年創立。 琉球銀行の友好会社として、安定した経営基盤を基に「新しい挑戦」と「持続的なサポート」を行っている。企業や自治体、大学など沖縄県内のお客様を中心に多様な業種で培った技術力と AWS のさまざまなサービスを活用することで、お客様にあったベストなソリューションを提供している。

The Ryucom company logo featuring a stylized blue and black design with Japanese text.