120 %
旧システムの独自言語を容易に解釈し、属人化を解消
各部門における業務効率化の加速
生成 AI 分科会を発足
概要
沖縄県を代表する小売企業として、スーパーマーケットやショッピングセンターを展開する株式会社サンエー。同社は 1980 年代から内製してきた基幹システムのクラウド化を進めてきましたが、旧システムでの独自言語使用により、移行に時間を要していました。そこで生成 AI 技術に着目し、開発現場で Amazon Bedrock を活用。エンジニアの開発効率が大きく向上し、全社的な生成 AI 活用を推進しています。
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ビジネスの課題 | レガシーシステムが属人化して移行計画が停滞
沖縄県を代表する小売事業者として、スーパーマーケットやショッピングセンターなどを多店舗展開する株式会社サンエー。独自の県内物流ネットワークを活かしたフランチャイズ事業にも取り組み、レストランやドラッグストア、大型ファッション施設なども運営しています。「当社では、1980 年代ごろから競合優位性をシステムへ反映するため、IBM AS/400(現 IBM i)を活用した基幹システムを内製してきました。いまでは情報システム部門の若手エンジニアは、ほぼ全員が小売の現場から異動してきたメンバーです。そのため現場との意思疎通が図りやすく、競争力をシステムに反映しやすいことが強みです」と語るのは、情報システム部長の下門健太氏です。
しかし、IBM i/AS400 の運用や開発には高度な専門性が必要になりますが、専門スキルを有するエンジニアの高齢化と若手への技術継承という課題に直面しました。また、急成長するモバイル市場への対応にも苦心していました。
そこで 2013 年頃から DX の一環としてWeb アプリケーションへの移行を開始。2014 年には一部システムで AWS を導入し、2016 年からはレガシーシステムからのクラウド移行を本格化させています。さらに、2021 年には内製化支援推進プログラム「Angel Dojo」に参加し、社内の開発体制を強化しました。
とはいえ、移行の課題は残されていました。長年自社の中核を支えてきた基幹系システムには、ビジネスに不可欠となる多様なアプリケーションが実装されています。一方で、レガシーシステムから Web アプリケーションへの移行には開発言語の違いによる大規模な再構築が必要となり、プロジェクトの長期化は避けられない状況でした。
「そもそも IBM i/AS400 を理解しているエンジニアが乏しく、属人化が進んでしまっていることが要因の 1 つです。既存システムのソースを読み解いて Web アプリケーションを再構築していくため、旧システムの知識がないと作業が停滞しがちになってしまうのです」と、情報システム部 課長の丸山海理氏は振り返ります。
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Amazon Bedrock を活用することでエンジニアの生産性が劇的に向上し、内製で構築してきた当社特有の環境のクラウドへの移行を加速できました"
下門 健太 氏
株式会社サンエー 情報システム部長
ソリューション | Amazon Bedrock と GenU を活用し内製による開発を強化
移行のボトルネックの課題に直面していたサンエーは、2023 年頃、突破口を見出します。それは国内でも急速に注目度が高まっていた生成 AI 技術の活用です。
しかし、いくつかの懸念もありました。まず情報漏えいのリスクです。基幹系システムのソースコードはサンエーの知恵の結晶であり、同社の競争力の源泉でもあります。それらの情報は社内に限定し、AI の再学習に利用されないことが必須の条件でした。また、コストも懸念の 1 つでした。ID 課金型では、スタッフの利用状況によって無駄が生じるからです。
「Amazon Bedrock なら従量課金制のため、低コストで済むとわかりました。ハルシネーションも懸念点でしたが、プロンプトエンジニアリングと呼ばれる生成 AI への指示を工夫することで抑制できることもわかりました。また、AWS のコンソールからのアクセスのみでは社内の利用ユーザー拡大において障壁を感じていましたが、『Generative AI Use Cases JP(GenU)』がその問題を解消してくれました。AWS との定例ミーティングでよいツールがあると聞き、会話しながら GenU を試していたら、その場でデプロイできてしまったのです。簡単に使いこなせることを実感し、すぐに導入を決めました」(丸山氏)
丸山氏は定例ミーティングの後、その日のうちに情報システム部全員が直感的に生成AI を利用できる環境を整備。旧システムのソース解析やコードのデバッグなど、基幹システムの移行作業の一部に Amazon Bedrock を活用し始めました。
導入効果 | 移行作業が大幅加速、生成 AI 活用を全社で推進
システム再構築で重要なのは、旧システムのソースコードを理解し、そのプロセスを新しい Web アプリケーションへ実装することです。しかし、すべてのエンジニアが旧システムに精通しているわけではありません。そこで、Amazon Bedrock を利用し、旧システムのソースコードを読み込ませるだけで概要をすぐに理解することができるようフローを構築しました。
丸山氏によれば、100% の正解を得られるわけではないものの、一般的なプログラミングの内容はおおよそ回答してくれると言います。直接的な回答が得られなかったとしても、Amazon Bedrock が何をチェックすればよいか、どこが問題なのかなどの情報を伝えてくれるため、中核となる部分だけベテランエンジニアに聞けば済みます。両者のやり取りがスムーズになり、コミュニケーションコストが大幅に軽減されました。
「従来は数名の AS/400 エンジニアにしか理解できなかったコードが、生成 AI の支援により、AS/400 に関する知識のないエンジニアにも解析可能になりました。ベテランへの問い合わせ回数が減り、移行のスピードが格段に向上しています。Amazon Bedrock と GenU は、内製開発を強力にサポートするソリューションだと感じています。今や開発チームの全員が、常に AIチャットを開いた状態で作業を進めています」(丸山氏)
この取り組みにより、エンジニア 1 人あたりの年間デプロイ数がかつては 60 件台だったものが、2024 年は約 20% 増の 75件まで向上する見込みとなっています。システム開発における生成 AI の活用に大きな効果を感じた丸山氏は、生成 AI の全社活用が望ましいと考えました。サンエーでは、情報システム部員が現場からヒアリングした情報をもとに、経営層に改善策を提案するシステム改善会議が定期的に行われています。そこで丸山氏が提言したところ、経営陣の後押しを受けて「生成 AI 分科会」が発足。本格的な生成 AI/Amazon Bedrock 活用が始まっています。
現在、分科会には情報システム部のほか事業部門からも参加者を募り、計 25 人のメンバーが毎月生成 AI の活用法や最新事例の共有、ツールのレクチャー、ディスカッションなどを行っています。実際、議事録や社内報の作成、アンケート分析、工場での作業効率化などがユースケースとして報告され、個人業務改善ツールとしての有用性が確認されています。また、分科会では社内FAQ やデータ分析のため RAG の活用を推進しており、将来的には Advanced RAG システムの構築も検討されています。さらに、情報システム部でもいっそうの開発効率化に向け、Amazon Q の活用が計画されています。
「内製を突き詰めすぎると、“外がわからなくなる”という弊害がありますが、AWS はAWS Summit、ユーザー会、トレーニングなど、さまざまな領域を学べる機会が多く、非常に助けられています。また、AWS のエンジニアと課題や疑問をディスカッションできるオフィスアワーでは、コスト削減や最適化の方法なども積極的にアドバイスしてくれ、単なるサービス提供者ではない“顧客起点”の理念を強く感じます。今後も当社のビジネスに寄り添ったサポートを期待しています」(下門氏)
カスタマープロフィール:株式会社サンエー
創業者・折田喜作氏が 1950 年に沖縄県宮古島市で創業した個人雑貨店が前身。同氏は 1970 年にチェーンストア経営を目的として同那覇市にサンエーを設立、総合衣料セルフサービス店「那覇店」を開店した。県内にスーパーマーケットやショッピングセンターなどの幅広い事業を展開しながら、自社の県内流通網を強みとしてさまざまな有力ブランドとフランチャイズ契約を締結し、小売業として県内トップの売上高を誇る。
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下門 健太 氏
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丸山 海理 氏
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Amazon Bedrock
Amazon Bedrock は、単一の API を介して AI21 Labs、Anthropic、Cohere、Meta、Mistral AI、Stability AI、および Amazon といった大手 AI 企業からの高性能な基盤モデル (FM) を選択できるフルマネージドサービスで、セキュリティ、プライバシー、責任ある AI を備えた生成 AI アプリケーションを構築するために必要な幅広い機能を提供します。
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