無線通信機能を兼ね備えた BGM サービス
『U MUSIC』 の音楽配信基盤を AWS のサーバーレスアーキテクチャで構築

2021

DX 時代の店舗総合サービス事業への転換を図る株式会社 USEN は、業務用無線通信サービスと、クラウドから遠隔制御が可能な IoT デバイスを使ったソリューションをワンストップで提供する『USEN IoT PLATFORM』を展開しています。そのサービスの 1 つである AI BGM『U MUSIC』の音楽配信基盤に、アマゾン ウェブ サービス(AWS)を採用。楽曲編成の際に発生する大量のアクセスにも対応し、500 万曲の楽曲データから、数十万店舗向けの BGM を 5 分で編成する環境を実現しています。

AWS 導入事例  | 株式会社 USEN
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AWS を使った一番の効果は、ビジネスとして成り立つコスト感でサービスの立ち上げができ、スケールに応じて拡張ができていることです。今後、5G、AI といった技術の進化が加速していく中で、その時点で最高のスペックでシステムが構築できることも大きなメリットです

野村 拓史 氏
株式会社USEN
事業開発統括部IoT PLATFORM事業推進部長

無線通信ルータ内蔵で手軽に利用できる AI BGM『U MUSIC』の展開

1961 年の創業以来、店舗向け BGM サービスを軸に発展してきた USEN。顧客数は飲食店や美容院を中心に全国で約 80 万件に達し、現在も年間 5 万件のペースで新規顧客を獲得しています。サブスクリプション型の BtoB モデルで、ハードウェア/ソフトウェア開発、インフラ工事、コンテンツの調達まで一気通貫で対応できるのが強みです。

AI BGM『U MUSIC』は、従来の有線ケーブルや衛星通信に代わり、無線通信を使って音楽を配信する新コンセプトのサービスです。業務用に最適化された L2 接続の無線インターネット網(MVNO)経由で、店内の Wi-Fi インターネット環境を提供可能な専用のセットトップボックス(STB)の中に、BGM 再生基盤を内蔵し、リモコン用の専用タブレット端末で構成され、STB の電源をコンセントに差すだけで回線工事不要で利用が可能です。

音楽配信基盤には独自の AI エンジンを搭載し、同社が提供している 500 万以上の楽曲の中から、お店の雰囲気などに合わせて最適な BGM をプレイリストに編成し、時間帯や天気情報なども加味して音楽を流します。プレイリストだけでなく、店内に設置したカメラと連携して来店客の男女比などを分析し、状況に応じて流す楽曲を切り替えることも可能です。

『U MUSIC』は、2020 年 9 月から開始した、IoT と無線の技術を用いた 『USEN IoT PLATFORM』で提供するサービスの 1 つです。USEN IoT PLATFORM には、通信、レジ、決済、店舗 BGM などをワンストップで提供することで、店舗の DX 化を支援するねらいがあります。「これまでのインターネット配信タイプの BGM サービスでは、店舗へ光回線を引き込むための面倒な工事手配に加え、通信回線費用が別途必要で、お店にとってはコスト負担増となっていました。『U MUSIC』では、1 つの STB の中に工事が不要な無線インターネット通信機能を搭載することで、BGM 配信に加え、店舗の DX 化に必要不可欠な通信環境が、より手軽に安価で導入可能となります」と語るのは、IoT PLATFORM 事業推進部長の野村拓史氏です。

AI を使ったチャンネル編成に対応する AWS Lambda と Amazon DynamoDB

USEN は『U MUSIC』の音楽配信基盤を開発するにあたり、インフラ調達のスピード、リソース拡張の柔軟性、初期コスト、運用負荷、豊富なサービスなどを考慮してクラウドを選択。AWS を採用した理由は、他社での導入実績、リファレンスや技術情報の充実度、AWS 開発経験があるエンジニアが多い、コワーキングスペースなどの開発サポート体制などが挙げられます。

「大きかったのは、サーバーレスの AWS Lambda とマネージドサービスの Amazon DynamoDB の存在です。AI で配信チャンネルを編成する際、1 時間ごとに数十万店舗分の BGM プレイリストを約 5 分間で作成します。その際に分析処理とデータベースへのアクセスが集中するため、瞬間的な大量処理に対応できる一方で未使用時はコストがかからない AWS Lambda と、大量アクセスを高速に処理する Amazon DynamoDB にメリットを感じました」(野村氏)

音楽配信基盤を含む『U MUSIC』の開発は 2019 年 9 月から始め、翌年 9 月にリリース。実現に際しては、USEN IoT PLATFORM のバックエンドシステム(監視系、出荷・物流系など)や、ハードウェア、アプリケーションの開発も同時に進める必要がありました。
「クラウド開発の利点は、わずかな設定変更でもすぐに対応できる柔軟性の高さです。またオンプレミス環境であったような制限事項も少なく、与件どおりのレスポンスのシステムをより短期間で構築することができました」(野村氏)

音楽配信基盤では、USEN の編成チームが作成したチャンネル情報、楽曲管理サーバーに保存されている約 500 万の楽曲情報、外部から取得した天気情報、店舗の来店客情報を Amazon API Gateway、AWS Lambda、Amazon SQS を利用して収集し、Amazon DynamoDB に蓄積。蓄積したデータは 1 時間ごとに AI エンジンを用いて自動学習を実行し、店舗ごとのプレイリストを生成、データセンターの配信サーバーからプレイリストに基づいて BGM を配信。従来の有線放送では編成チームが人力で対応していた楽曲配信リストの作成が自動化されたことで、ユーザーニーズに即した BGM を即座に配信できるようになりました。

初期コストを約 6,000 万円削減し開発期間を数ヶ月単位で短縮

『U MUSIC』は、新規開店の飲食店などを中心に採用が進み、2021 年 7 月時点で 3 万台を突破。今後も新規顧客を中心にサービスを拡大していく予定です。

稼働開始以来、音楽配信基盤は安定して運用を続けており、AWS のマネージドサービスによって運用工数も最小限となっています。特に Amazon SQS と AWS Lambda との連携により、効率的に処理やエラーの自動リカバリーが実現しています。

「AWS の基盤は負荷変動に強く、リソースの増減を気にすることはほとんどありません。インフラを管理する必要もないため、継続的に機能追加に時間を割くことができています。セキュリティや可用性の面でも AWS に任せることができるため、社内の負担を軽減できました。また、初期費用なしで導入ができたことで、オンプレミスと比べて約 6,000 万円を削減できました。さらにビジネスの拡大や技術の進歩に合わせて最新のリソースを柔軟に追加できることに優位性を感じています」と、ネットワークデザイン部長の伊藤裕氏は語ります。
「一番の効果は、ビジネスとして成り立つコスト感でサービスを立ち上げ、スケールに応じて拡張ができていることです。必要なリソースを即座に調達できるため、オンプレミスと比べて数ヶ月単位で開発期間を短縮できました。今後、5G、AI といった技術の進化が加速していく中で、その時点で最高のスペックでシステムが構築できることも大きなメリットです」(野村氏)

IoT プラットフォーム基盤を AWS のサービス中心に構築へ

今後『U MUSIC』は、大規模なチェーン店向けのサービス提供に向けて機能を拡張し、より多くの店舗での利用を提案していく予定です。USEN IoT PLATFORM で提供する無線通信(U AIR)、IP 電話(U PHONE)、防犯カメラ&分析(U EYES)などの各種サービスも、AWS を中心にプラットフォームを構築していく構想です。現在は U EYES の CLOUD PREMIUM サービスの開発・構築を進め、AWS の動画配信サービスである Amazon Kinesis Video Streams の活用を検討しています。

5G 無線時代の到来を見据えて、新たな時代の店舗経営の課題解決に向けたソリューションを追求する USEN。野村氏は AWS に対して、「5G デバイスとクラウドがダイレクトにつながる MEC(マルチアクセスエッジコンピューティング)の世界の実現に期待しています」と語っています。

野村 拓史 氏

伊藤 裕 氏


カスタマープロフィール:株式会社 USEN

  • 創業:1961 年 6 月 1 日
  • 設立:2017 年 12 月 1 日(株式会社 USEN から吸収分割により音楽放送事業及びエネルギー事業を承継)
  • 資本金:1,000 万円(2020 年 8 月 31 日現在)
  • 事業内容:IoT プラットフォーム事業、音楽配信事業、エネルギー事業

AWS 導入後の効果と今後の展開

  • マネージドサービスによる運用工数の削減
  • 開発期間をオンプレミスと比較で数ヶ月短縮
  • ビジネスの拡大や技術の進歩に合わせて最新のリソースを柔軟に追加が可能
  • 大規模なチェーン店向けのサービス提供に向けて機能を拡張

ご利用中の主なサービス

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Amazon Simple Queue Service (SQS) は、フルマネージド型のメッセージキューイングサービスで、マイクロサービス、分散システム、およびサーバーレスアプリケーションの切り離しとスケーリングが可能です。

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フルマネージド型サービスの Amazon API Gateway を利用すれば、開発者は規模にかかわらず簡単に API の作成、公開、保守、モニタリング、保護を行えます。API は、アプリケーションがバックエンドサービスからのデータ、ビジネスロジック、機能にアクセスするための「フロントドア」として機能します。

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