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2025

WHI、Amazon Bedrock を利用したタレント検索&社員紹介文生成機能『COMPANY Bizmatch』を Prototyping Program を活用して 5 か月でリリース

IT サービス

概要

統合型人事システム『COMPANY®』の開発・販売を手がける株式会社 Works Human Intelligence(以下、WHI)。同社は『COMPANY® Talent Management』シリーズにおいて、Amazon Bedrock を活用したタレント検索&社員紹介文生成機能『COMPANY Bizmatch』を開発しました。アマゾン ウェブ サービス(AWS)のPrototyping Program を活用し、着手から 5 か月間の短期開発を実現しています。

A man in business attire stands smiling in the reception area of WHI Holdings. The company logo and names of affiliated companies, including Works Human Intelligence and ワークスビジネスサービス, are prominently displayed on a glass wall in Japanese and English.

課題・ソリューション・導入効果

課題

散在した人事データから生成 AI を活用して最適なタレントを検索

1996 年にリリースされた『COMPANY®』は、人事管理、給与計算、勤怠管理、タレントマネジメントなど、人的資本マネジメントにまつわる業務領域を広くカバー。約 1,200 法人グループへの導入実績を持ち、510 万人以上の従業員データを管理している、ERP 市場 人事・給与業務分野 シェアNo.1※の製品です。

2019 年にはクラウドニーズの拡大を見据えて、AWS を活用した SaaS 版の提供を開始しました。現在、2027 年までに全顧客を SaaS 版へ移行する計画を推進しています。

『COMPANY®』シリーズとして、人事管理、給与計算、勤怠管理、タレントマネジメントなどの業務領域をカバーする中、2024 年 11 月には『COMPANY® Talent Management』において、WHI と同じくWHI Holdings のグループ会社であるサイダス社が提供する人材データプラットフォーム『CYDAS』を融合した新しいタレントマネジメント製品のシリーズがリリースされました。

日本企業のタレントマネジメントに必要な業務機能を網羅する『COMPANY® Talent Management』において、2024 年 12 月に β 版として先行リリースされた新機能が、HR に特化した AI 技術を活用して業務効率化と戦略的意思決定を支援する『COMPANY Bizmatch(ビズマッチ)』です。『COMPANY Bizmatch』では、生成 AI を活用して自然文によって検索された人材イメージやポジション、ジョブに基づいて AI がマッチング度合いを分析し、高い適合性を持つ候補者をレコメンドする機能や、社員の紹介文を自動生成する機能を提供しています。

同機能の開発の背景には、企業ニーズの拡大と生成 AI 技術の急速な発展がありました。

「企業では新規プロジェクトの立ち上げなどで人材をピックする際、異動履歴、スキル、資格、評価、キャリアプランなど、複数の人事データを参照しながら探すのに苦慮しています。そこで、自然文で入力するだけで求める候補者がリストアップできる機能の開発を検討したのが始まりです」と語るのは、VP of Technology の加藤文章氏です。

『COMPANY Bizmatch』の特長は、『COMPANY®』で管理している約 510 万人の人材データを背景にした精度の高さにあります。

『COMPANY®』シリーズの年間継続利用率は 98%(2023 年度、金額ベース)、平均継続利用年数は 12 年(2023 年末時点)と高い継続率を誇ります。こうした実績をもとに製品化しているため、導入企業は新たに人事データを追加することなく、高い精度を得ることができます」(加藤氏)

ソリューション

厳しいセキュリティ要件や精度要件を Amazon Bedrock でクリア

『COMPANY Bizmatch』の開発に際しては、生成 AI に Amazon Bedrock を採用し、AWS のPrototyping Program を活用しました。

Prototyping Program は AWS の Prototyping Engineer がシステムのプロトタイプを開発することで、プロジェクトの加速を支援するプログラムです。今回、2024 年 5 月~6 月末の 2 か月間でプロトタイプを開発して新機能の実現方法を具現化し、AWS から提供されたサンプルコードをベースに同社の開発部隊が製品化に取り組みました。その結果、着手から 5 か月の短期開発を実現しています。

「SaaS 版の『COMPANY®』は AWS のクラウドサービスを活用しており、エンドユーザーの人事データも AWS 上に保存されています。そのため、システム連携やアーキテクチャの親和性を考慮し、Amazon Bedrock を採用しました。Prototyping Program はこれまでに複数回利用しており、その有用性を感じていたので、今回の採用に至りました。また、既存サービスの開発・保守・運用に社内の開発リソースを集中しているため、『COMPANY Bizmatch』のような研究領域に近い機能の開発に割ける社内リソースはそれほど多くありません。しかし、その反面で優秀なエンジニアでなければ、こうした新機能の開発は不可能です。そこで Prototyping Program の支援を受けてプロトタイプを開発し、1 か月~2 か月でサービス化の可否を判断できる点が非常に重要でした」(加藤氏)

基本的なアーキテクチャは AWS の Prototyping Engineer が設計し、スモールスタートで開発を進めました。Amazon Bedrock で使用する大規模言語モデル(LLM)には高い精度を持つ Claude 3.5 Sonnet を採用し、SaaS で提供するサービスとしての高い品質を確保しています。

LLM の制御ではサーバーレスの AWS Lambda を機能単位で複数に分割し、各種データ取得用の API と連携しています。

開発においては、権限に応じた検索表示、検索精度、生成するプロファイルの内容が課題となりました。権限については、タイプを本人、一般社員、上長、フルの 4 段階に分け、参照できる情報を要約した上で、検索した権限に応じてフィルタリングができるように対応しました。検索精度は、取得したベクトル検索結果をさらに LLM でマッチ度を判定することで向上させています。生成するプロファイルの内容については、さまざまなプロンプトエンジニアリングの改善手法を試し、出力は一定の単位で行を区切って出力するようにしました。

導入効果

SaaS 基盤と生成 AI を AWS で統一し、セキュアな新機能を開発

個人情報を含むデータを取り扱う『COMPANY Bizmatch』において、SaaS 基盤と生成 AI サービスを AWS で統一することで、セキュアかつ高パフォーマンスな新機能を開発できたことが大きな成果です。

「Amazon Bedrock がなければ、開発コスト的にも社内リソース的にも、自社で対応するのは困難で、開発の土俵に立てなかった可能性があります。今回、Prototyping Program を活用したことでクイックにスタート地点に立つことができました。

Amazon Bedrock については、複数の LLMを選べるように提供している AWS の製品開発思想に共感しています」(加藤氏)

今後については、データガバナンスの強化対応策として、マネージドサービスの Amazon Bedrock Guardrails の導入を進めています。これにより、コンテンツフィルターや機密情報フィルターなどを自前で用意する必要がなくなり、業務負荷が軽減される見込みです。

『COMPANY Bizmatch』以外でも生成 AI を活用した新機能として、『COMPANY®』による人事アウトソーシングサービス向けに、Prototyping Program を活用して人事業務の AI エージェントの開発も進めています。AI エージェントにより、人手で実行していた処理が自動化され、業務効率化が進むことが期待されます。また、HR 領域に特化した小規模言語モデル(SLM)の活用も構想しています。

「私が部門長を務めている Advanced Technology Dept は WHI の中で組織横断的に最新技術を研究する役割を持っており、生成 AI のさまざまな研究を続けていきますので、AWS には引き続きのサポートをお願いします」(加藤氏)


※ 2022 年度 ERP 市場 - 人事・給与業務分野:ベンダー別売上金額シェア
出典:ITR「ITR Market View:ERP 市場 2024」

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SaaS 版の『 COMPANY®』が AWS のクラウドサービスを活用しており、エンドユーザーの従業員データが AWS 上に置かれていることから、システム連携やアーキテクチャの親和性を考慮して Amazon Bedrock を採用しました

加藤 文章 氏

株式会社 Works Human Intelligence VP of Technology

アーキテクチャ図

Architecture diagram illustrating the AWS infrastructure for the WHI Bizmatch Case Study, including Amazon S3, Amazon Bedrock (Anthropic Claude 3.5 Sonnet, Haiku, and Cohere embed-multilingual), Amazon Aurora (PostgreSQL pgvector), AWS Lambda functions (get-emp-id, llm-summary, llm-embedding, get-summary, search), Amazon API Gateway, and GenAI-Profile VPC. Japanese annotations describe step functions workflow, periodic execution, and employee information retrieval.

株式会社 Works Human Intelligence

『複雑化、多様化する社会課題を、人の知恵を結集し解決することで「はたらく」を楽しくする』をミッションに、日本の大手企業および公共・公益法人向け統合型人事システムの開発・販売・サポートの他、HR

関連サービスを提供。『COMPANY®』は、人事管理、給与計算、勤怠管理、タレントマネジメントなど、人事資本マネジメントの業務領域を広くカバーし、ERP
市場の人事・給与業務分野でトップクラスのシェアを誇る。

取組みの成果

  • 5 か月
    新機能の開発期間 
  • 2 か月
    プロトタイプ開発の期間 
  • Prototyping Program を活用したサービス化可否の早期判断 
  • 権限に応じた結果表示 
  • 高い検索精度の実現