AWS 導入事例
株式会社ZOZOテクノロジーズ
一大イベントである冬セールに備え既存インフラと親和性の高い VMware Cloud on AWS を導入
ベアメタルインスタンス約 100 ノードをクラウドに拡張し、通常の 3 倍のトラフィックの処理を実現
2020
ファッション通販サイト『ZOZOTOWN』などのプラットフォーム開発・構築を手がける株式会社ZOZOテクノロジーズ。『ZOZOTOWN』を支えるインフラ基盤は、オンプレミス環境を中心に構築されており、毎年最大のトラフィックを迎える冬セールへの対応が課題となっていました。そこで、既存環境を拡張するべく従来のインフラとも親和性の高い VMware Cloud on AWS を導入し、従量課金型インフラへ移行。2019 年の冬セールでは、ベアメタルインスタンス 約 100 ノードを拡張し、3 倍のトラフィックを処理。機会損失を防止するとともに、効率的なインフラ運用を実現しました。
クラウド上にデータセンターを
拡張することは我々にとって大きな
チャレンジでした。VMware Cloud on AWS を活用することで、
弊社最大のアクセスが集中する
冬セールを無事に乗り切れただけでなく、
社内にノウハウが蓄積されたことで
今後のさらなる活用が可能になりました。
渡邉 宣彦 氏
株式会社ZOZOテクノロジーズ 技術開発本部 SRE部 ZOZO-SREチーム
チームリーダー
巨大なオンプレミス環境における年間最大のピークへの対応が課題に
日本最大級のファッション通販サイト『ZOZOTOWN』や、ファッションコーディネートアプリ『WEAR』のインフラストラクチャー開発・構築を手がける ZOZO テクノロジーズ。ZOZOグループのサービス運用・技術開発部門として、エンジニアやデザイナーなど制作に携わるスタッフを集結させた企業です。
常時 73 万点以上の商品アイテム数と毎日平均 3,200 点以上の新着商品を掲載する ZOZOTOWN や、コーディネート投稿総数 900 万件以上の WEAR といったプロダクトを支える巨大なプラットフォームの中核部分は 10 年以上前から構築してきたオンプレミス環境にあります。
同社の技術開発本部 SRE部 ZOZO-SREチームを率いる渡邉宣彦氏は「会社としては現在、クラウドファーストの方針となっています。アマゾン ウェブ サービス(AWS)については以前から、商品画像を Amazon S3 に保存し、コンテンツ配信ネットワークの Amazon CloudFront を通じて高速に配信するなど活用していました。こうした中で、年間最大のイベントである年始セールの際に多くのエンドユーザーを迎えるインフラの構築について、これまでのオンプレミスでの増強の方法でいいのかという議論がありました」と当時を振り返ります。
ZOZOTOWN 恒例の冬セールは年が明けた瞬間に開催され、トラフィックは年間で最大のピークを迎えます。機会損失を招かないためにアクセスの規模を予測し、相応の設備を準備しておくことが求められます。ところが、最大需要に合わせて物理サーバーの増強を行った場合、セール時以外の余剰リソースが生じてしまうといった課題もありました。
オンプレミス環境と同一ネットワークに AWS のクラウド環境を拡張
年々規模が拡大する冬セールへの対応のため注目したのが、オンプレミスで展開しているサーバー仮想化環境の VMware vSphere を AWS のクラウドに拡張できる VMware Cloud on AWS です。これは、VMware と AWS によって共同開発された、Amazon EC2 のベアメタルインスタンス上で VMware vSphere 上の仮想マシンが稼働できるサービスです。VMware との高い親和性に加え、AWS 上で稼働するサービスのため、ネイティブ AWS サービスと連携できるという特徴があります。
VMware Cloud on AWS 導入プロジェクトの中心となった横田工氏は「オンプレミス環境に構築されている Web サーバーは VMware vSphere 上に展開されていたので、アプリケーションの挙動に大きな影響を与えないと判断しました。L2 延伸によって、IP アドレスを変更せずにオンプレミス環境の拡張として VMware Cloud on AWS を使える点が導入の決め手となりました」と話します。
オンプレミス環境では、エンドユーザーのトラフィックの入り口にはロードバランサーがあり、約 500 台のサーバーに処理が振り分けられます。トラフィックが増えて処理能力を超えた場合の対応方法として、同社が選択したのは VMware HCX による L2 延伸です。VMware Cloud on AWS で提供される本サービスによりオンプレミスの L2 ネットワークを VMware Cloud on AWS 側まで延伸することが可能になります。これにより、トラフィックが増えた場合に、その量に応じて VMware Cloud on AWS 側にサーバーを追加して処理を分散できるようになります。
ベアメタルインスタンス約 100 ノードをクラウドに追加
通常の 3 倍のトラフィックを処理
オンプレミス環境にて展開されているサーバーの約半数は Web ブラウザー版のプロダクトの処理に割り当てられており、残り半分がアプリ版のプロダクトが使う API 向けとなっています。今回 VMware Cloud on AWS によって追加されたのは、後者の API 処理に関わるサーバーです。構築に携わった中道真太郎氏は「今回冬セールのピーク時に拡張したのは、最終的にベアメタルインスタンス約 100 ノードで、通常の 2~3 倍のトラフィックを処理できました」と説明します。
2020 年の冬セールに向けた VMware Cloud on AWS の導入スケジュールは、まず 2019 年の 5 月に VMware のイベントで動作や機能を確認したうえで採用が決定されたのち、7 月に社内に導入、そして本格的な構築は 11 月に開始されました。
「L2 延伸による AWS との接続などについて、詳細な打ち合わせをして構築を進め、およそ 2 週間で理想の構成にたどり着きました。オンプレミスの場合は、環境を用意するのに 2 ヶ月ほどかかりますが、VMware Cloud on AWS であれば、今後は数日でサービスインできます。クラウドなら導入後の保守も考えなくていいので、新しいことにチャレンジできる時間を作ることができたと実感しています」(横田氏)
導入に当たっては手厚いサポートがあったといいます。「VMware のチャットサポートでは VMware Cloud on AWS に関することは何でも確認できましたし、サポート担当者から私どものことを気遣って問い合わせいただくことさえありました」(中道氏)
これまで外部の IT ベンダーに調達や設計・構築を依頼していた ZOZOテクノロジーズにとって、今回の VMware Cloud on AWS 導入は社内に多くの知見を蓄積するプロジェクトとなりました。
「クラウド上にデータセンターを拡張することは我々にとって大きなチャレンジでした。VMware Cloud on AWS を活用することで、弊社最大のアクセスが集中する冬セールを無事に乗り切れただけでなく、社内にノウハウが蓄積されたことで今後のさらなる活用が可能になりました」(渡邉氏)
さらなるクラウド活用を推進のためインフラ構築における選択の幅を広げる
ZOZOテクノロジーズでは今後も突発的なトラフィックに対処する施策の 1 つとして VMware Cloud on AWS を活用していく方針です。 AWS に対しては、利用者コミュニティの活性化やベストプラクティスの共有を期待しているといいます。そして今後展開していくのが、VMware Cloud ENI(Elastic Network Interface)を経由し、ネイティブの AWS 環境に低遅延かつプライベートで接続するという実装です。エンドユーザーに対するレスポンスを早くしながら、流れる帯域を減らしたり、オンプレミス側の負荷を軽減したりする効果を期待した検証を行っていく予定です。
今後はアプリチームと連携を深め、古くなったアプリケーションを切り離して、クラウドへ移行していく方針です。
「今回は、突発的にアクセスが集中するセール時の対策として、新たに VMware Cloud on AWS という選択肢を得ることができました。今後はインターネットから直接 AWS ネイティブ環境のサーバーが応答するシンプルな構成についてもアプリケーションチームとやりとりして進めていきます。また、会社として BCP(事業継続計画)を考えた場合、東京以外の場所に VMware Cloud on AWS で構築して備えるということも考えていきます」(渡邉氏)
渡邉 宣彦 氏
横田 工 氏
中道 真太郎 氏
カスタマープロフィール:株式会社ZOZOテクノロジーズ
- 設立年月日:2018 年 4 月 1 日
- 従業員数:412 名(2020 年 4 月時点)
- 事業内容:ZOZOグループのサービス開発、新規事業の創出、ZOZO研究所を中心とした R&D
AWS 導入後の効果と今後の展開
- 2週間という短期間でベストな環境を構築
- 冬セールにおいて通常の2~3倍のトラフィックを処理
- 外部の SI に依頼するだけでなく、社内にインフラ構築のノウハウを蓄積
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