投稿日: Nov 15, 2024
日本の医療 DX 推進への貢献に期待
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社(以下、AWS ジャパン)と国立大学法人浜松医科大学(以下、浜松医科大学)は本日、スマートヘルスケアの実現に向けて包括連携協定を締結したことを発表しました。本連携で AWS ジャパンと浜松医科大学は、人口減少・少子高齢化における静岡県内の医療課題に対して、クラウド・ 人工知能(AI)技術の導入により、県民がいつでも、どこでも、安心して必要な保健・医療・介護サービスが受けられる医療体制の実現に向けて連携して取り組みます
(写真左)国立大学法人浜松医科大学 学長 今野 弘之氏
(写真右)AWS ジャパン 常務執行役員 パブリックセクター 統括本部長 宇佐見 潮
AWS ジャパンは静岡県や浜松医科大学が目指す高度な医療提供体制の構築をクラウドサービスや生成 AI ソリューションの提供をベースに技術面から支援し、地域医療の質の向上と持続可能性の確保に貢献します。浜松医科大学は、医療データの活用に関して、県内の地域医療支援病院を中心とした各医療機関の診療情報を共有する医療情報基盤の実現を目指します。
厚生労働省の電子カルテ情報共有サービスのモデル事業※1にも参画している浜松医科大学と AWS ジャパンの連携は、医療ビッグデータの効率的な活用を通じて、地域の医療課題解決に向けたデジタル化を促進する先駆的な取り組みとして、日本の医療 DX 推進への貢献が期待されています。
現在、日本の医療を取り巻く環境は、少子高齢化による医療の需要増加、地域間の医療格差、医療人材不足、財政圧迫など大きな変化と様々な課題に直面しています。静岡県の現況も同様で、人口減少、高齢化の局面を迎えています。また、静岡県は地理的に東西に長く広がっており、すべての地域において平等な医療の提供実現に課題が残されています。
このような状況下で、限られた人的及び財政資源で増加する医療及び介護需要に対応していくためには、医療機関の病床機能分化の促進、医療機関相互の連携の推進、在宅医療を支える関係機関の連携体制の構築などの取り組みを通じて、今まで以上に医療機関相互及び医療と介護の連携を効率化し強化していく必要があります。
静岡県においては、浜松医科大学が静岡県の地域医療体制の中核的存在として、地域医療構想※2の策定、地域で求められる医師、看護師等の医療従事者の育成、医療支援・提供などの役割を担います。
AWS はヘルスケア領域において、クラウドコンピューティングや最新の AI などのテクノロジーを提供することにより、個人中心の医療へのアクセスと提供を可能にし、より低コストで成果の向上を推進し、医療データのデジタル化と活用を加速することを目指しています。
静岡県の地域医療構想の実現のために浜松医科大学が AWS のクラウド技術を活用することで、安全性の高い医療データ管理基盤の構築や医療機関間のデータ共有、連携の効率化を実現し、限られた医療資源を最適化することができるよう AWS ジャパンは支援します。また、AI や IoT (Internet of Things)などの先端技術の導入により、遠隔医療や予防医療の推進、医療従事者の業務効率化にも貢献します。
また、本連携により、AWS ジャパンと浜松医科大学が市民・県民向けに医療サービスのデジタル化を推進します。クラウドを活用することにより災害時などには医療データへの安定したアクセス体制を確保し、平常時には健康データプラットフォームを基盤としたデジタルヘルスケアアプリや AI 健康予測モデルの導入を通じて、効果的な健康づくりを実現します。
本連携の主な協力事項は以下の 5 つの分野に及びます。
(1)静岡県民の健康づくりに関すること
1. 県民健康データプラットフォームのクラウド上での構築
2. 県民向けデジタルヘルスケアアプリや健康予測 AI モデルの導入による健康管理
3. 遠隔健康相談・モニタリングシステムの整備
4. データ分析基盤の構築とダッシュボードによる県民健康状況の可視化
5. デジタルリテラシー向上のための県民向け研修・普及活動
(2)静岡県内の医療支援及び医療・介護連携の促進に関すること
1. 県内の医療・介護データを統合するクラウド上の地域医療情報プラットフォームの構築
2. 患者データを安全に共有できる基盤と連携アプリの提供
3. 中山間地域等の遠隔診療・遠隔介護体制の強化
4. データ分析環境とダッシュボードによる医療提供状況の可視化と意思決定支援
(3)救急・災害時等の持続可能な医療提供体制に関すること
1. クラウド上での医療データのバックアップ・レプリケーション環境の構築
2. 災害医療救護活動時等、非常時の医療データへの堅牢なアクセス体制の確保
3. 遠隔診療・オンライン医療相談体制の強化
(4)医療従事者の働き方改革に関すること
1. クラウド上での電子カルテ構築とモバイルアクセス環境の実現
2. 夜間・休日の遠隔診療システムの拡充
3. AI を活用した診療支援・業務効率化による医療従事者の負担軽減
4. AI を活用した文献レビューの効率化、データ分析支援、論文作成支援等による研究者の負担軽減
(5)デジタルトランスフォーメーションによる医療の高付加価値化(高度化)に関すること
1. 医療 DX 人材の育成とスキル底上げの支援
2. 医療データの統合と高度な分析による治療研究・医療イノベーションの促進
3. ヘルスケア・デジタル分野を含む県内スタートアップ支援によるイノベーション推進
4. 医療機関、企業、個人からのデータ融合によるデジタル・イノベーションの創出
本連携の第 1 ステップとして、浜松医科大学は 2024 年 4 月施行の医療従事者の働き方改革に対応するため、医療現場における生成 AI 活用プロジェクトを実施します。このプロジェクトを通じて、各職種の専門性を活かしたタスクシフトを行い、患者により質の高い医療を提供することを目指します。今後は、生成 AI の具体的なユースケースの特定から実証検証を経て、医療現場への本格実装を共同で進めていきます。さらに、2029 年に予定されている浜松医科大学の電子カルテシステム更新に際しては、浜松医療センターとのクラウドサービスを活用したシステム統合も検討されています。
AWS ジャパンは、2022 年 9 月に浜松市とデジタル・スマートシティ浜松の実現に向けた連携を発表し、スタートアップや地域のクラウドエンジニアコミュニティの発展に連携して取り組んでいます。ここで得られた知見やノウハウを、今回の浜松医科大学との連携で最大限活用していきます。
浜松医科大学 今野弘之学長は、AWS ジャパンとの連携にあたり、次のように述べています。「浜松医科大学とAWS ジャパンとの連携は、クラウド技術を活用して静岡県の医療の未来を創造するという、非常に意義深い取り組みです。我々は、AWS の最先端のクラウド技術を活用し、静岡県民の健康づくりから高度医療の提供まで、幅広い分野でイノベーションを推進します。特に、県民健康データプラットフォームの構築や地域医療情報プラットフォームの整備により、医療の質と効率性を大幅に向上させることができると確信しています。また、災害時の医療提供体制の強化や医療従事者の働き方改革など、喫緊の課題にも取り組みます。診療支援における AI や IoT の活用により、医療従事者の負担軽減と同時に、より質の高い医療サービスの提供が可能になると期待しています。
この連携を通じて、我々は静岡県の医療の未来を創造し、県民の皆様により安心で質の高い医療を提供できるよう、全力を尽くしてまいります。AWS ジャパンの協力により、デジタル時代における地域医療の新たなモデルを構築し、全国に発信していく所存です」
アマゾン ウェブ サービス ジャパン 合同会社 常務執行役員 パブリックセクター 統括本部長 宇佐見 潮は次のように述べています。「AWS ジャパンは、浜松医科大学との包括連携を心より歓迎いたします。私たちは、浜松医科大学が掲げるビジョンに深く共感し、その実現に向けて全面的にサポートしてまいります。さらに、医療 DX 人材の育成やスタートアップ支援を通じて、静岡県が医療イノベーションの先進地域として発展していくことを、私たちも楽しみにしています。この連携を通じて、静岡県民の皆様により安心で質の高い医療を提供できるよう、AWS ジャパンは技術面だけでなく、人材育成や地域活性化の面でも全力でサポートしてまいります。浜松医科大学とともに、デジタル時代における地域医療の未来を切り開いていけることを大変光栄に思います」
※1 厚生労働省 電子カルテ情報共有サービスについて
※2 2014 年 6 月に「医療介護総合確保推進法」により、都道府県は地域の医療提供体制の将来の目指すべき姿である「地域医療構想」を医療計画の一部として新たに策定することが定められました。この構想では、構想区域ごとに各医療機能の将来の必要量を含め、その区域にふさわしいバランスの取れた医療機能の分化と連携を適切に推進することが求められています。その取り組みの一環として、 2025 年 4 月には浜松医科大学と浜松市の運営する浜松医療センターが、高度な医療を提供するため国の制度である「地域医療連携推進法人」を設立する見通しで、この法人を通して県西部の医療体制の充実を図る予定です。