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【開催報告】資産運用業務における、データ活用最前線~データアナリティクスから生成AI活用まで~

はじめに

アマゾン ウェブ サービス ジャパン(以下、AWS ジャパン)はファクトセット・パシフィック様(以下、FactSet )との共催で 2024 年 11 月 19 日に、 資産運用会社向けイベントを開催しました。
本イベントでは、資産運用業務に携わる企業の方々( 96 名)にご参加いただき、データ活用及び生成 AI の最新情報を AWS ジャパン、お客様セッション、パートナーセッションを通じてご紹介いたしました。また資産運用業界内のネットワーキングを目的とした懇親会も実施しました。本記事では、イベント開催概要と当日の内容をご紹介いたします。

【開催概要】  

開催日時: 2024 年 11 月 19 日(火)
開催場所: AWS ジャパン 目黒オフィス
参加者人数: 96 人

当日のアジェンダ

第一部をセミナー、第二部を懇親会と分けて開催いたしました。第二部の懇親会では登壇企業、参加者同士のネットワーキングを実施しました。

オープニング

AWS ジャパン 金融事業統括本部 銀行営業本部長 金子 達也

イベント冒頭では、AWS ジャパン金融事業統括本部 銀行営業本部長 金子 達也より開会のご挨拶をいたしました。本イベント開催の目的について、資産運用業界のデータ駆動型意思決定の加速と共創の場(コミュニティ)の醸成、業界全体の成長促進であることを述べました。
最後に「 AWS は、データ分析および AI / ML 、生成 AI によりイノベーションを提供し、データ駆動型の意思決定を行う為の DX 推進をパートナーと共に支援します。また本イベントを通じて、資産運用業界のリーダーや革新的な企業と連携し、ナレッジシェアとベストプラクティス共有の場を作ることで、未来志向の解決策を共に模索することができ、持続可能な成長支援を行ってまいります」と結びました。

金融業界のイノベーションを支える AWS

AWS ジャパン 金融事業開発本部長 飯田 哲夫

次に AWS ジャパン 金融事業開発本部長 飯田 哲夫が登壇し、クラウドにおけるデータ活用の広がりとして金融機関の事例を紹介し、資本市場を始めとした金融領域においてクラウドがビジネス変革を推進している要因について述べました。
資産運用業界では、データ・生成 AI の広がりとして、投資判断、運用アドバイスのパーソナライゼーション、アナリスト支援など、様々なユースケースが出てきており、金融サービスにビジネス価値をもたらしていることを解説しました。
また、AWS の活用は、責任共有モデルや第三者認証による評価からも安全なデータ管理の下で活用することができるため、AWS パートナーとの連携を通じて、業務のライフサイクル全体に渡ってご支援させていただくことについても紹介しました。

お客様、パートナーセッション

お客様、パートナーセッションでは、ニッセイアセットマネジメント株式会社と FactSet 、株式会社ナウキャストの 3 社が登壇しました。

ニッセイアセットマネジメント株式会社

ニッセイアセットマネジメント株式会社 デジタルイノベーション・ヘッド 山田 智久氏

まずは、ニッセイアセットマネジメント株式会社デジタルイノベーション・ヘッドの山田 智久氏によるご登壇です。
生成 AI の活用として大きく 2 つの事例を発表いただきました。
1 つ目の事例は、分析業務特化型 AI チャットボットです。投資先企業へのインタビューを行う前の調査業務を効率化するため、生成 AI ( Amazon Bedrock-Claude 3 Opus )を活用した分析業務特化型 AI チャットボットを構築されました。これにより、統合報告書や ESG 関連書類からの情報抽出や、自社独自の評価観点に基づく情報整理などの分析作業効率が 3 ~ 5 倍に向上されたことや、利便性が認められ、他の運用部門への利用も拡大予定ということをお話いただきました。
2 つ目の事例は、自社ファンドへの投資を検討中の機関投資家などから会社概要やファンドの運用内容について照会を受け、回答を作成する Request for Proposal 業務(以下、RFP 業務)の改善に向けた取り組み事例についてです。RFP 業務は処理すべき情報量が多いだけでなく、依頼元ごとにフォーマットや書き方が異なるため、資産運用会社にとって非常に業務負荷の高い作業です。そこで、RFP 業務の効率化を図るため、生成 AI( Amazon Bedrock-Claude 3.5 Sonnet / Amazon Titan )を活用し、担当部署の振り分け作業、回答作成作業の 2 つの業務で本格活用に向け PoC を開始しているとご説明されました。
また、事例とは別に、資産運用会社同士で様々な業務への生成 AI 適用の検討を目的とした勉強会を主催する取り組みについてもご発表いただき、複数社合同でナレッジ共有やディスカッションを通じて、生成 AI を活用したソリューションを具体的に検討していきたいと今後の展望についても語られました。

FactSet

FactSet 日本アナリティクス担当ディレクター 若林大毅氏

続いては、FactSet 日本アナリティクス担当ディレクター若林大毅 氏にご登壇いただきました。
安全なデータプラットフォームの構築と、多様なデータの統合が重要な課題となっている状況下で、FactSet がどのように環境構築の支援を出来るかについてご説明いただきました。
FactSet の強みとして、100 種類以上のデータセット80 以上のプロバイダーからのデータを統合し、20 以上のカテゴリーのコンテンツを保有し、資産運用の各種業務領域に求められるデータ統合、分析、配信を一気通貫で提供していることを挙げられました。さらに、API やデータ共有機能を使用することで、リアルタイムでのデータ更新や変換が可能となり、社内データと外部データをスムーズに統合することができるだけではなく、一般的なマーケットデータや企業独自のデータを統合する際にも、ポートフォリオの要因分析やシナリオ分析など、多角的な視点からデータを評価することができるようになることについてもご紹介いただきました。
また、昨今では FactSet の持つデータプラットフォームに生成 AI を連携させることで、異なる種類のデータの統合、分析、共有をより効率的に行うことができ、こうした強力なデータ管理体制と多様なデータ統合を実現することで、AI や ML 技術を活用した高度な分析環境の構築に繋がると述べました。

株式会社ナウキャスト

株式会社ナウキャスト データ & AI ソリューション事業責任者 片山 燎平氏

最後は、株式会社ナウキャスト データ & AI ソリューション事業責任者 片山 燎平氏によるご登壇です。
生成 AI を駆使し、資産運用業務の効率化を目指した事例、および本格的な活用に向けたポイントについてご紹介いただきました。
生成 AI 活用事例のパートでは、3 つの事例についてお話いただきました。1 つ目は、膨大な決算短信・有価証券報告書から情報を抽出・要約する業務。2 つ目は、顧客専用の高精度書き起こしモデルを半自動で構築するサービスの提供。3 つ目は、JCB消費NOW における消費動向データに対し、LLM によるコメントレポートを生成する業務の試験的な導入についてです。
さらに、資産運用業務の効率化に向け生成 AI を様々にご活用いただく中で、企業における生成 AI の本格的な活用に向けたポイントとして①埋め込み型のユースケース、②データ蓄積、③組織作りの 3 点が重要であると述べました。生成 AI がタスクをこなすために十分なデータを裏側で AI に与え、その機能を業務システムやサービスに埋め込むことで、シームレスに高付加価値の機能を利用することができます。それに伴い、これまで以上にデータ基盤構築の重要性が高まり、データを活用することができる組織作りが求められてくるとお話いただきました。
最後に「資産運用業界における生成 AI 技術は、単なる業務の自動化を超えて、より戦略的で価値の高い業務に集中できる環境を創出しつつあります。今後も、技術の進化と組織的なアプローチの深化が期待されます」と結びました。

※JCB消費NOW: 株式会社ナウキャストが提供する匿名加工されたクレジットカード決済データをもとにした国内消費指数

懇親会

懇親会の様子

第二部の懇親会では、資産運用業務に携わる企業の方々とセッションに登壇いただいた方々によるネットワーキングを実施しました。この機会を通じて、普段は接点の少ない方々との意見交換が活発に行われ、新たなビジネスチャンスや関係性構築に繋がる可能性を秘めた有意義な時間となりました。

おわりに

本イベントを通じて、資産運用業務におけるデータ・生成 AI 活用がもたらす無限の可能性を目の当たりにしました。本イベントは、ご参加いただいた企業の皆様、そして共催の FactSet 様のご協力なくしては実現しませんでした。心より御礼申し上げます。今後も皆様に役立つ情報をセミナーやブログで発信していきます。どうぞよろしくお願い致します。