Amazon Web Services ブログ

データ利活用で顧客満足度向上!海外の空港における取り組み

こんにちは!

アマゾン ウェブ サービス (AWS) で事業開発を担当しております、吉田です。

私は AWS の先進的なサービスが、日本の公共のお客様にどのような価値を提供できるのか、海外の事例なども参考にしながら、日本の状況や課題に合せて分かりやすくお届けするサポートをさせて頂いております。

今回は、最近利用者が増加傾向にあり、賑わいが戻っている『空港』に着目しました。新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後初めての夏休みということで、久しぶりに飛行機で国内や海外への旅行に出かけられた方も沢山いらっしゃるのではないでしょうか。多くの人にとって、快適な空の旅の実現には、目的地に辿り着くまでの待ち時間が少ないことが欠かせないというのは世界共通です。空港がそのような乗客体験を実現するには、データの利活用が不可欠なのです。

そこで、空港におけるデータ利活用について興味深い AWS のブログを見つけましたのでご紹介したいと思います。
合わせて、「空港におけるクラウド活用のベストプラクティス」を資料にまとめましたので、ダウンロードリンクより是非ご確認ください。


空港と航空会社は、データの有効活用を望んでいる

一般にはあまり知られていませんが、空港は、他空港や航空会社、グランドハンドリングエージェント(空港内でチェックイン、手荷物運搬、配車などのサービスを多くの航空会社に提供する会社)とデータを共有し、業務プロセスを改善することにおいて大いに成功しています。例えば、A-CDM(Airport Collaborative Decision Making)では、空港の遅延を10%、CO2排出量を7.7%削減するなど、このコラボレーションは効率化に大きな影響を及ぼしています。

空港はこれをさらに進めたいと考えています。大韓航空やライアンエアーなどの航空会社が、AWS を使って予防整備や機内食の予測を行うなど、データがいかに産業を変革しているかを目の当たりにしているのです(その好例が Ryanair のパニーニ予測)。正確な予測、パーソナライズ、すべての関係者間での簡単なデータ共有によって空港運営と乗客体験が向上することは、彼らには察しがついています。最近、国際空港評議会(ACI)が、”空港のデータ共有とコラボレーションは、乗客の満足度を向上させる鍵である “と述べたことは、驚くことではありません。

空港はデータプラットフォームを構築している

フランスの Nice Côte d’Azur をはじめ、多くの空港が最近 AWS 上にデータプラットフォームを構築しています。データプラットフォームは、一般的に複雑なビジネスルールを持ち、高度に構造化されたデータベースである空港運用データベース(AODB)とは異なり、空港のシステム全体、航空会社、第三者からさまざまな種類の情報を吸収、理解、視覚化、予測、共有するための柔軟なデータベースなのです。

シンシナティ空港では、データを予測分析とプロアクティブな通知に利用しており、これを Enterprise Awareness & Situational Exceptions(EASE)と呼んでいます。EASE は、マネージドサービスの集合体である Amazon Relational Database Service(Amazon RDS)や、サーバーレスでイベント駆動型の計算サービスである AWS Lambda などの AWS サービスを利用して、企業のあらゆる部分から構造化および非構造化データを収集します。これにより、最も異質なデータセットであっても、動的な意思決定を改善することができます。シンシナティ空港は、空港プロセスにおける職員数を改善するだけでなく、ソーシャルメディア上の感情をモニターしています。例えば乗客がオイル流出事故に関するツイートを送信した場合、ほぼリアルタイムで対応することができます。また、空港は天候や現地の交通状況もモニターしており、運航計画の調整、および乗客への注意喚起の両方を行うことができます。

シンガポールのチャンギ空港は、DIVAイノベーションラボの基盤としてデータプラットフォームを構築し、新しいコンシェルジュアプリによって乗客への情報提供を向上させ、スタッフ向けの Where-To-Clean アプリによって、空港内で最近利用者が多いエリアを優先的に清掃するなどの取り組みを行っています。

空港の手荷物搬送システムで世界をリードするも Siemens Logistics、空港のあらゆる業務データを取り込み、分析し、可視化するための航空データハブを AWS 上に構築しました。例えば、同社の Baggage360 システムは、複数の情報源を利用して手荷物データを分析し、手荷物の流れを予測します。Siemens Logistics の航空データソリューション担当ディレクター、 Stephan Poser 氏は、「手荷物の流れを監視し、手荷物の処理時間を予測し、リスクのある接続を特定し、手荷物が重要な処理工程に入る時間を予測することができます」と述べています。「私たちは、手荷物受取りのベルト上で乗客にバッグが見えるようになるタイミングまで予測することができます。」

データプラットフォームを構内に持つ空港の中には、ニーズが高まるにつれ、拡張性や新サービスの追加に限界があることを発見しているところもあります。例えば、AWS パートナーの Wipro は最近、 Toronto Pearson 国際空港のデータプラットフォームをオンプレミスシステムから AWS に移行し、スケールと俊敏性を活用し、人工知能(AI)、機械学習(ML)、ほぼリアルタイムのデータインジェストなどの新機能を追加しました。 Wipro Canada のジェネラル・マネージャーである Anudeep Kambhampati 氏は、「AWS 上の新しい Databricks Lakehouse Platform は、さまざまなソースからほぼリアルタイムのビジネスインサイトを導き出し、継続的なイノベーションを促進するのに役立ちます」と述べています。

私は、なぜ空港が最近になってデータプラットフォームの構築に乗り出したのかに興味を持ちました。この技術は以前から存在していたのに、なぜ今になって?その答えとして、欧州の 30 以上の空港で、データによる業務改善を支援している Azinq のマネージングディレクター、 Chris Taylor 氏に話を伺いました。「AWS が提供するインフラやデータサービスを活用するため、当社の顧客はクラウドベースのデータプラットフォームに急速に移行しています。空港は、旅客とステークホルダーとの関わりを理解し、改善する上でのデータの価値を長い間認識してきましたが、これまではコストや技術面での障壁のため、データプラットフォームを構築することが困難でした。AWS 上の Airport Hive プラットフォームにより、空港は運営に関する洞察を容易に得ることができ、また小さな変化が財政的にも旅客体験的にも大きな影響を与え得るということも可視化されます。AWS のスケーラビリティと弾力性は、お客様がオンプレミスの導入にかかるコストや煩わしさを回避し、長期的な成長余地を確保することに役立ちます。“

データプラットフォームは、非常に特殊な問題を解決するのに役立ちます。例えば、米国のある主要空港では、短期駐車場でタクシーが待機しているという問題がありました。これはつまり、乗客が駐車するスペースが少なくなり、空港の収益が減少することを意味します。この問題を解決するために、空港は AWS パートナーの Slalom に依頼し、過去のフライト、天候、タクシー利用者のデータを利用したデータ予測モデルを構築し、事前にタクシーの需要を予測、必要な時だけタクシーを要請するようにしました。これにより駐車場のスペースが解放され、乗客の利便性が向上、空港は運営改善により約 500 万ドルの収益を回収することができました。

データ共有の課題を克服する

空港の課題のひとつは、必要なデータへのアクセスです。空港は、空港で活動するすべての航空会社や企業から必要なデータを入手することが困難であると述べています。AWS とパートナーは、空港がこの障害を克服するのを支援しています。

AWS は、空港と航空会社との連携、データ共有を支援してきました。私たちは、乗客体験の共有にこだわることで、空港と航空会社が協力関係を築ける可能性があると見ています。例えば AWS は空港と共に、乗客の明確なペインポイントを理解した上で、それを解決するのに必要となるデータの特定を支援し、そのデータをパートナーの航空会社と共有するため、実践的なアプローチをとっています。

サードパーティ企業は、空港のオペレーションを改善するために特別にデータフィードを提供しています。例えば Passur は、AWS 上に構築された API を通じて、フライトポジション、フライト予測、フライトイベントデータなどのほぼリアルタイムのデータフィードを空港に提供しています。Passur の CEO である Brian Cook 氏は、「空港は、資産管理、キャパシティプランニング、航空会社とのコラボレーションを改善するために当社のデータを使用しています」と述べています。「当社のデータフィードは、空港に遅延を事前に通知するため、空港は混乱に対処するための業務調整を事前に行うことができます。」また、サードパーティーのデータを1つのデータカタログで簡単に見つけることができる AWS Data Exchange には、気象やフライトデータなど数千ものデータセットがあります。


いかがでしたでしょうか?

今後空港でのデータ利活用が進み、皆様の空の旅がますます快適になることを願うばかりです。

わたしは心配性なので、「何時までにチェックインしないといけないんだっけ?」「ラウンジはあったっけ?」「この荷物は機内に持ち込めるかな」「帰りのバスはちょうどいい時間にあるのか」などなどいろいろ気にしてしまうのですが 、データの利活用が進んで空の旅がますます快適になれば嬉しいと思います。そのために AWS もお役に立てればなお嬉しいですね。

関連情報

サイト、問い合わせ

資料

この記事を書いた人

Photo of Naoko Yoshida
吉田 尚子
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 パブリックセクター
事業開発マネージャー
“AWSのサービスが、公共のお客様にどのような価値を提供できるのか、海外の事例を取り入れなが分かりやすくお届けいたします”