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【開催報告】CyberAgent/AWS 共催ビジネスワークショップ:データコラボレーションによる新たな広告・マーケティング・販促支援の実現
はじめに
2024 年 12 月、リテールメディアにおけるデータコラボレーションワークショップを開催しました。本記事では、本ワークショップの開催背景と当日の内容をご紹介いたします。
Retail Media は「第3の広告」として注目され、2019年頃からアメリカを中心に市場を牽引しています。しかし、日本ではまだまだこの市場はアーリーステージにあります。本領域が加速しない原因の一端として、異業種間のデータコラボレーションによるCustomer360 の実現というデジタルマーケティングのノウハウにとどまらず、実店舗の購買体験向上に向けたオフライン施策にまで踏み込む難しさが存在します。この市場を加速させるため、AWSはCyberAgent Inc.(以下CA 社)と共同でワークショップを開催しました。Retail Media に高い興味を持つ日本を代表する企業にお集まりいただき、AWS Clean Rooms を活用したデータコラボレーションのユースケースの議論を実施しました。加えてCA 社のSolution を組み合わせることで、実店舗でも十分活用可能な協業に踏み込んだアクションプランを策定できる場を提供することを目指しました。
開催概要
参加者 | 5 社 / 36名 |
参加企業様 | イオン様 |
アダストリア様 | |
SIROK 様 | |
オンデーズ様 | |
ヴィンクス様 | |
アジェンダ | 開会のご挨拶 / 参加企業ご紹介 |
CA のRetail Media サービスの紹介 | |
AWS コラボレーションテクノロジーのご紹介 | |
テーブル別ディスカッション | |
Next Step のご案内 / 閉会のご挨拶 |
前半をセミナー、後半をディスカッションと分けて開催いたしました。後半のディスカッションでは、各企業ごとにデータコラボレーションする際の協業内容について議論を行いました。
データコラボレーションの基本
データコラボレーションとは
本ワークショップのメインテーマであるデータコラボレーションと、それを支える AWS のサービスについてご説明します。まず、データコラボレーションとは、複数の組織が保有するデータを安全かつ効果的に共有・統合・分析し、単独では得られない洞察や価値を生み出す取り組みです。例えば、小売業とメディア企業が匿名化された顧客データをコラボレーションすることで、より精緻なマーケティング戦略の立案や新サービスの開発が可能になります。重要なのは、各組織のデータプライバシーとセキュリティを維持しながら、必要な情報のみを共有することです。これにより、安全性を確保しつつデータの価値を最大化することができます。
なぜ今データコラボレーションが注目されているのか
データコラボレーションの注目が高まっている背景には、デジタル化の加速、消費者行動の複雑化、個人情報を含むデータの保護に関する規制環境の整備があります。さらに 1st party data (自社で直接収集したデータ) の重要性が増していることも大きな要因です。サードパーティ Cookie の廃止や個人情報保護の厳格化に伴い、企業は自社の顧客データをより効果的に活用し、同時に他社のデータと安全に連携する必要性が高まっています。このデータ活用と連携が、企業の競争優位性を生み出す鍵となっています。実際、多くのグローバル企業がデータコラボレーション強化を推進しており、日本においても今後のビジネス戦略において重要な役割を果たすことが予想されます。
各セッションのハイライト
CAのRetail Mediaサービスの紹介
CyberAgent, Inc. AI 事業本部 AI POS カンパニー プロダクト責任者 早川 裕太氏
CA 社早川氏より、Retail Media を取り巻くマーケットの状況とCA社の取り組みをご紹介いただきました。CA 社は創業期よりインターネット広告事業を展開してきました。近年では、広告効果最大化を実現する中で培ったノウハウや、約100名規模のAI研究者の技術力などを活かすことで、協業によるパートナー企業のDX推進および広告事業の創出等を行っております。Retail Media においては、消費者、小売、広告主の三方良しを目指した技術の価値転換を図っており、デジタルサイネージ(ミライネージ)をはじめとしたいくつかのサービスをすでに展開しています。お客様の購買体験向上に向けて、コンサルテーションからソリューション提供まで一気通貫して協業が可能な旨を語られました。
AWS のコラボレーションテクノロジー
アマゾン ウェブ サービス ジャパン 合同会社 ソリューションアーキテクト 黒澤 蓮
アマゾン ウェブ サービス ジャパン 黒澤より、データコラボレーションを AWS 上で実現する方法についてご説明を行いました。まずはデータコラボレーションを支える AWS Clean Rooms というマネージドサービスについてご紹介しました。主な特徴として、暗号化技術によるセキュアなデータ共有、SQL を用いた柔軟な分析環境、実行する SQL の制御機能、緻密なアクセス制御、大規模データセットに対するスケーラビリティがあります。このサービスにより、企業は自社データを保護しつつ、連携先企業とのデータコラボレーションを実現し、新たなビジネス機会を創出できます。これに加えて新機能で企業間で類似セグメントの作成を支援する AWS Clean Rooms ML、名寄せのサービスである AWS Entity Resolution のご説明をいたしました。
テーブル別ディスカッション
ワークショップのメインとなったテーブル別ディスカッションでは、具体的なデータコラボレーションのユースケースについて活発な議論が交わされました。参加企業の皆様には事前に各社のデータ資産や活用課題を伺った上で、実践的なユースケースを準備したことで、より深い議論が可能となりました。イオン様、アダストリア様のテーブルでは、グループデータ戦略としてどのようにデータを活用するかの話と、それが実現した上でのポイント戦略や広告効果の測定など幅広いテーマについて、個別課題の解決に向けた議論を実施しました。オンデーズ様、SIROK 様は新規ユーザーをどのように増やしていくかの課題感に対して、Retail Media を通じた顧客開拓の戦略を議論されました。最後にヴィンクス様は、CA 社と両社の強みを活かし、リテールのお客様のビジネス成長に寄与するためのデータ活用における協業の新たな可能性を見つけることができました。
お客様の声
本ワークショップは、Retail Media におけるデータコラボレーションの可能性を探る貴重な機会となりました。参加企業の皆様からは、「事業領域の異なる企業間でのディスカッションが想像以上に有意義な時間でした」「自分たちだけでは想像もできないアイディアがたくさん出てきた」といった前向きな声を多数いただきました。ワークショップ後のアンケートでは、参加者のCSAT が4.8/5.0 と本ワークショップに対してポジティブなフィードバックを頂き、データコラボレーションに対する高い期待が伺えます。
おわりに
本ワークショップを通じて、Retail Media 実現に向けた大きな可能性と、参加企業の皆様の熱意を肌で感じることができました。ここに改めて、ご参加いただいた企業の皆様、そして共催であるCyberAgent 社の皆様に心より感謝申し上げます。AWS は、今後もこの様なデータコラボレーションを推進する取り組みのご支援や、皆様に役立つ情報をセミナーやブログで発信していきます。どうぞよろしくお願い致します。
本ブログは、Customer Solutions Managerの池田 飛鳥が担当しました。