Amazon Web Services ブログ
株式会社サンブリッジ様のAWS生成AI事例「採用担当向け育成 AI コーチの構築により育成業務の一部を自動化し、年間 360 時間の工数削減と育成の質の高度化を実現」のご紹介
本ブログは株式会社サンブリッジ様と Amazon Web Services Japan が共同で執筆いたしました。
※ サンブリッジ様の Website でも本事例を技術コラムとして公開されています。詳細はそちらも併せてご参照ください。
みなさん、こんにちは。AWS で営業を担当している垣見です。本記事では、採用担当者の育成効率化という社内課題に対し、生成 AI を活用して大きな成果を上げている株式会社サンブリッジ様(以下、サンブリッジ様)の取り組みをご紹介します。
株式会社サンブリッジ様は、企業のビジネスモデルに合わせて AWS や Salesforce をはじめ、お客様の課題解決において最適なクラウドサービスを用いたビジネス分析や導入、運用までをワンストップでトータルコーディネートし、ビジネス拡大・業務改善を支援する企業です。同社では、採用担当者が未経験者であることに起因する CEO の育成負荷や、面接同席が困難な場合に CEO 視点での適切な回答ができないといった課題を抱えていました。これらの課題を解消するため、同社は Amazon Bedrock を活用して 採用担当向け育成 AI コーチを構築し、育成業務の自動化と品質向上を実現しました。
背景と課題
サンブリッジ様では、事業拡大に伴って採用活動が活発化する中、採用担当者の育成に関する課題が顕在化していました。特に、採用担当者の経験が浅い場合、面接準備や候補者対応における判断軸を CEO が直接指導する必要があり、育成に大きな時間を割かざるを得ない状況でした。また、CEO が面接に同席できない場面では、採用担当者だけでは CEO の視点に基づいた回答が難しく、候補者に対して一貫した質の高い説明を行うことが困難になることもありました。
採用面接は年間 720 回にのぼり、その半数以上に CEO が関与していたため、負担の軽減と育成プロセスの仕組み化が急務となっていました。育成ノウハウも CEO 個人に蓄積される傾向が強く、組織として採用力を高めるためには、知見の共有とプロセスの標準化が求められていました。
ソリューション構築のアプローチ
こうした課題に対して、サンブリッジ様は Amazon Bedrock を中心に据えた「採用担当向け育成 AI コーチ」の構築に取り組みました。採用担当者が日常的に抱く疑問を即座に解消できるよう、Bedrock の大規模言語モデルを活用した対話型チャットボットを開発し、CEO が普段重視している判断ポイントや候補者との向き合い方を学習させることで、担当者がいつでも CEO の視点に近い回答を得られるようにしました。
あわせて、ナレッジの最新化を継続するために Slack と連携し、運用メンバーが日々の気づきや更新情報を手軽に蓄積できる環境を整備しました。また、採用業務に必要な基礎理解を確認できるよう、RAG (Retrieval-Augmented Generation)を利用したテスト機能も実装し、問題作成から採点、フィードバック生成までを自動化しました。これにより、育成の進捗や理解度を定量的に把握することが可能になりました。
さらに、開発プロセスには AI コーディングアシスタントを活用し、新人エンジニア 1 名でわずか 2 週間という短期間でシステム全体を構築することに成功しました。アジャイルに試行錯誤できる環境が整ったことで、現場が求める機能を迅速に形にする体制が実現しました。
導入効果
育成 AI コーチの導入後、面接同席にかかる CEO の負担は大きく軽減されました。年間 720 回の面接のうち、これまで CEO の同席が必要とされていた場面の半数が AI による育成支援で対応可能となり、年間で 360 時間の削減につながりました。これは採用活動全体の効率化に大きく貢献しています。
また、面接中の質問対応についても、AI が CEO の視点を補完することで、年間280回の質問機会で社長視点で候補者へ回答することができるようになり、安定した回答品質を確保できるようになりました。採用担当者が CEO の意図を正確に理解するための情報提供が強化され、人によって対応がばらつくといった属人化の課題も解消に向かっています。加えて、RAG を活用したテスト機能により、担当者の理解度を把握しながら継続的にスキル向上を支援できるようになり、育成そのものの質も向上しました。
今後の展望とまとめ
サンブリッジ様は生成 AI コンテストという外部イベントに参加することで、育成AIコーチのアイデアを短期間で具体化し、さらに実際の業務上の課題を解決する段階まで速やかに移行できました。今回構築した育成 AI コーチを基盤として、採用業務以外の領域への展開も視野に入れています。Slack を軸にしたナレッジ運用の仕組みは他部門でも活用可能であり、AI による判断支援の仕組みを組織全体へ広げていくことで、さらなる生産性向上が期待されています。
「AWS が提供する豊富な AI 関連ソリューションとアクセスしやすいインターフェイスの Slack を組み合わせることにより、弊社の育成課題の解決に繋がりました。継続的にアップデートしていきたいと考えています。」と語るのは株式会社サンブリッジ 代表取締役社長 兼 CEO の梶川 拓也氏です。今回の取り組みは、属人化した知見を AI によって標準化し、限られたリソースでも高い品質の育成と採用活動を実現するモデルケースとなりました。AWS を活用した迅速な開発と運用の仕組みが、今後の採用戦略における重要な基盤となっていくと考えられます。
垣見 健一 | Kakimi Kenichi
広域事業統括本部 広域営業本部 第一営業部
