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没入型テクノロジーが小売業界にもたらす変革

本記事は How Immersive Technologies Are Changing the Retail Landscape を翻訳したものです。

リテール領域における消費者の e コマース利用は COVID-19 により加速しました。この増加は買い手の購買体験を改善するテクノロジーへの需要も押し上げています。デジタル資産が小売業者の旗艦店になりつつある中で、ファッションから美容、眼鏡等のアイウェアから家庭用品まで、たくさんの製品カテゴリが 3D モデリングや拡張現実(AR)、仮想現実(VR)などの没入型テクノロジーを消費者と交流するための新しい方法として組み込みました。これらの小売業界のトレンドと機会は WebXRWebAR のような高度なテクノロジーにより加速しており、これらはアプリケーションのダウンロードを必要としない Web ベースのソリューション提供を可能にします。

3D、AR、VR は劇的に小売業界の状況を世界的に変革しており、 APAC の 68% の消費者とヨーロッパの 58% の消費者が没入型テクノロジーによる体験を支持したと報告されています。最近の研究は 2023 年までにアメリカの人口の 20% 近く(6600 万ユーザー)が VR を、そして 33%(1 億 1000 万ユーザー)が AR を少なくとも一度は使うと示しています。これらの数字は消費者が没入型テクノロジーを日常の生活に取り入れる準備ができたことを示し、そして小売業者に対してデジタルコマースについて再考し、没入型体験に対する新たな需要に向き合うことを促すものです。

あなたの創造性を刺激し、何が可能であるかを示すために、小売業者とブランドが没入型テクノロジーを活用してバーチャル上に新たな機会を生み出している例をお見せしましょう。

バーチャル試着/3D モデリング

バーチャルで「買う前に試す」体験については、使ったことがある、または見たことのある方がほとんどでしょう。その体験は家具の設置から、メイクアップのお試しや眼鏡の試着まで多岐に渡ります。現状は単に現実世界に製品を可視化するだけに留まらず、多くの衣服と靴のブランドが AR を有用な情報を提供することに使用しています。例えば体や靴のサイズを AR で計測するといったものです。Nike は Nike Fit というコンピュータビジョンと AI の組み合わせにより AR 上で適切な靴のサイズを携帯ユーザーにお薦めする機能を発表しました。

AR に対応した 3D 製品は、従来の手動プロセスをデジタルプロセスに置き換えることで、ビジネスにより持続可能性をもたらします。物理的なサンプルをデジタルモデルに置き換え、従来の物流上の課題(例えば、従業員への新製品のトレーニング、e コマース用の写真やパッケージデザインの作成)を無くすことで市場投入までの時間を短くすることにもつながります。さらに物理的な製品をデジタル化し消費者に没入型の試用体験を提供することは彼らの決定をより自信のあるものにし、結果として購入が増え、返品が少なくなります。例えば従来、家具ビジネスの主要な課題は返却が多いことでした。消費者がショールームである家具を気に入ったとしても、自宅に置いてみると気に入らなかったということがよくあります。この問題は没入型テクノロジーによって大きく緩和されました。2020 年 8 月だけで 30 万ダウンロードされた IKEA の人気 AR アプリ、 IKEA Place が良い例でしょう。消費者はこのアプリで彼らの家に様々な製品をバーチャル上で仮置きすることができるのです。製品を自動で部屋の寸法に合わせるだけでなく、消費者は生地の質感や様々な照明の影響を見ることもできます。AR アプリを実装したことで、IKEA の eコマース売上は前年比で 43% 増加しました。

バーチャルポップアップストア

変わりゆく消費者の行動により、小売業界は製品の発表についてより創造的になることが求められ、多くの企業が AR を活用し店舗体験をいつでも世界中の誰に対しても届けることのできるバーチャルポップアップストアを始めています。

いくつかのブランドにとっては、バーチャルポップアップストアを運営することは新製品の宣伝以上のものです。彼らは物理店舗への回帰の流れを作り出すことを目標にしています。例えば、Burberry のグローバルポップアップストアは新作の Olympia ハンドバックコレクションの発表に合わせて、ギリシャ神話の Elpis 神をを描き出し現代的な古典主義を称賛する AR 体験を提供しました。Burberry の AR ポップアップ体験における目標は、最新のコレクションを宣伝するだけではなく、顧客を物理店舗に回帰させることです。

また他のブランドにとって、没入型体験を提供することはソーシャルメディアを通して世界の聴衆と繋がるためのものです。大手アパレルチェーン Footlocker とバスケットボール選手レブロン・ジェームズの AR ポスターキャンペーンは 2D のポスターを 3D のデジタルモデルに変換する体験を提供し、映像はオンラインにポストされた 1 時間で 125 万回以上試聴されました。

バーチャルアバターエコノミー

未来のデジタルコマースにおいてもう一つの重要なトピックがあります。大手のゲームプラットフォームは自動車、芸術、ファッション、メディア、エンターテインメントといったさまざまな分野にまたがるマーケットプレイスとして機能するということです。2020 年 3 月に消費者が屋内でより多くの時間を過ごし始めたため、世界のビデオゲームに対する消費は毎月 100 億ドルを超え、プレイ時間は 75 %増加しました。
Epic Gamesフォートナイトは驚異的な 3 億 5 千万人の月間アクティブユーザ(MAU)を持ち、その数は米国の総人口を超えます。フォートナイトの他、マインクラフトの MAU は 1 億 2600 万人、Roblox の MAU は 1 億 5800 万人です。ゲームの枠を超え、仮想環境はコンサートのハブとなり、信じられない使用量と売上をもたらしています。例えば大手 EDM フェスティバルの Tomorrowland は Epic のゲームエンジン Unreal Engine を使って独自のオンライン仮想体験を作り出しました。1 枚 20 ドルのチケットが 100 万枚売れました。フォートナイトでは、2019 年の Marshmello のコンサートに 1000 万人以上がリアルタイム参加し、2020年の「トラヴィス・スコットの天文学的体験」には約2800万人が参加しました。

しかし、なぜ小売業界がこれらの使用量や売上の統計に関心を持つべきなのでしょうか?なぜならこれが人々がイベントに参加し、友人と社交し、多くの時間を過ごす現代のデジタルワールドであり、必然的に新たな小売環境が生まれるからです。何年も前は多くの人々が物理的なショッピングモールで時間を過ごしていましたが、今やそれらはオンラインです。今日では、ほとんどの小売ブランドが Instagram、Snapchat、Youtube に進出し、新たな顧客と繋がり、既存顧客との関わりを深めています。新しい形の仮想空間、メタバース(「高次の」を意味する “meta” と「宇宙、世界」を意味する “universe” からなる造語)は現実のデジタルな重なり合わせを提供するのです。eコマース、ソーシャルネットワーク、エンターテインメントを集約し、メタバースはビジネスモデルと人々の交流に対して多大な影響を及ぼすでしょう。

仮想商品の市場規模は 1900 億ドルに達しました。その成長は仮想キャラクター(アバター)用のスキンの需要と非代替性トークン(NFT)の登場によって加速しています。デジタルネイティブな先発ブランドは一般に Direct To Avatar(D2A)のコンセプトで先を行き、他のオンラインチャネルでは複製が難しいショッピング体験を作り出しています。例えば Nike の Jordan ブランドリーバイス、ラルフローレンは Snapchat と共同でBitmoji のアバター用の洋服を売り出しました。さらに Nikeグッチルイヴィトンはそれぞれフォートナイト、Roblox、League of Legends と仮想の洋服を売り出すために手を結んでいます。

もしバーチャルアバターエコノミーについてまだよくわからないと思ったら、オンライン上の自分のためにショッピングをすると考えてみてください。オンライン上の自分というのは新しい考えではありません。意見をツイートしたり Instagram で創造的な画像をシェアするように、Z 世代の消費者はバーチャルアバターをもう 1 つの媒体として用いているだけです。バーチャルな自分の着こなしが素敵なほど、自分の評価が上がるのです。これはフォロワーやいいねの数がソーシャルメディアでその人の評価を上げる現象と類似しています。

没入型テクノロジーとイノベーション

革新を求める消費者向け小売ビジネスにとって、3D、AR、VR のような没入型テクノロジーはユニークで、記憶に残り、インタラクティブな体験によって顧客とつながる無限のポテンシャルを提供しているように見えます。数年前には無謀に見えたものが今や現実的なものとなり、多くの企業が革新的なチャンスを日々生み出しているのです。

AWS はトップ小売ブランドのビジネスニーズに合致するソリューションを見つけるため、没入型テクノロジーをついてもお客様のご相談に乗ってきました。あなたの没入型コマース戦略についても、 AWS がどのようにお手伝いできるか担当チームがご説明いたします。ぜひこちらからコンタクトして下さい。

著者について

Vince Koh

Vince Koh は AWS に置いてデジタルコマースの世界的な戦略と思想的なリーダーシップをリードしています。AWS の小売と消費財のリーダーシップチームとの協力に基づき、Vince は Go To Market 戦略を形作り、オンライン、ソーシャル、モバイルコマースのための新しい方法によってビジネスをどのように変革するかについて、そしてどのように点を繋いで統合された商取引体験を作り出すかについてガイダンスを求める消費者企業のためにパートナーソリューションを革新しています。彼の 15 年のキャリアの中で、 Vince はグローバル企業と急成長するスタートアップの両方に対してデジタルコマースをリードし、Direct to Consumer(DTC)、マーケットプレイス、オムニチャネルなどの小売戦略を開発、実行しました。AWS に入社する前、Vince は Weber Shandwick の Commerce & Conversion における SVP、Iconix Brand Group の e コマースにおける VP、ベンチャーキャピタルに投資を受けるスタートアップ企業(Keaton Row & Fab)における商品化、戦略、運営のリード、Accenture における世界的な小売コンサルティングプロジェクトのリードを努めました。彼はコーネル大学 SC Johnson 経営大学院の MBA を取得しています。

翻訳はソリューションアーキテクトの阿南が担当しました。原文はこちらです。