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寄稿:株式会社 JPX 総研による「Amazon Quick Sight を活用した JPX 保有データ(J-LAKE)活用推進の取り組み」のご紹介

本稿は、日本取引所グループの戦略的なデータ・デジタル事業を担う株式会社 JPX 総研による「Amazon Quick Sight を活用した JPX 保有データ(J-LAKE)活用推進の取り組み」について、アーキテクティングと開発をリードされた箕輪 郁雄 様、鹿島 裕 様に寄稿いただきました。

イントロダクション

JPX 総研は、市場全体の機能強化および効率化に繋がるマーケット・サービスの創造を追求することを目的に、2022年4月に子会社として事業を開始しました。主に金融商品市場に関係するデータ・インデックスサービス及びシステム関連サービスを提供しています。

JPX 総研では、日本取引所グループのグループ会社及び協業会社(以下「JPX グループ等」)が保有するデータを蓄積するJPX のデータレイク(J-LAKE)を構築しました。J-LAKE が社内外から積極的に活用(民主化)されるための取組みとして、社内のデータ活用を推進するために実施した「社内 Amazon Quick Sight ダッシュボードコンペ」の事例についてご紹介します。ブログの中では、J-LAKE 構築、 Amazon Quick Sight 社内ダッシュボードコンペの実施に至った背景や AWS の活用方法についても解説いたします。

J-LAKE 構築の経緯

JPX グループ等では、旧来のオンプレシステムにおいても JPX のデータを集約して貯めておくコンセプトが存在しており、基幹系の各システムからデータを1か所に蓄積するシステムが存在しておりました。ただ、このオンプレシステムに蓄積されていたデータを全社で有効に活用できる仕組みにはなっておらず、ビジネスニーズに合わせて逐次システム改修が必要となり、利用する度に費用が発生し完成まで時間がかかってしまうデメリットが生じておりました。

またデータは蓄積されていましたが、機密度の高いデータとそれ以外のデータが混在しており、社内の各部のユーザが自由に利用できるような環境がなかったため、データが必要となった際は、IT 部署への依頼が必須となってしまっていたため、各部でのデータ活用が進んでいかない状態でした。そのような状況の中、こちらのシステムが老朽化のためリプレース時期を迎えていたこともあり、前述の課題も含め解消すべく、AWS 上にデータレイク(J-LAKE)を構築しました。

J-Lake

J-LAKE 構築にあたっての課題

  • オンプレミスシステムの老朽化
  • データ管理上の制約によるユーザの利用困難
  • ユーザが能動的にデータを使える環境・文化の醸成の必要性
    社内でデータの民主化を進め、ユーザが自らデータを活用できる環境や文化を醸成することが求められていました。これにより、データビジネスの加速や新たな価値創出が期待されていました。

J-LAKE 構築にあたってのソリューション

  • データメッシュ構造を取り入れた J-LAKE の構築
    AWS 上にデータメッシュ構造を取り入れたデータレイク「J-LAKE」を構築することで、機密性の度合いによるデータの管理を容易にし、柔軟なデータ管理の運用が可能となりました。
  • Amazon Quick Sightを基軸とした分析環境の提供
    J-LAKE 上のデータを活用し、Amazon Quick Sight を中心とした分析環境を整備することで、ユーザが自らデータ分析を行える環境を提供しました。これにより、各部門の業務効率化を可能としました。
  • DCoE(Data Center of Excellence)の設立
    データ活用推進のための専門組織として DCoE を立ち上げ、データの投入から利用におけるガバナンス整備、セキュリティ担保の方法について議論し、その内容を社内で共有していくとともに、J-LAKE の開発・運用にフィードバックを行い DCoE の決定に従いセキュリティ等の仕組みを構築しました。
  • DCoE ポータルサイトの構築
    上記のデータを利用するにあたってのアナウンスや、Amazon Quick Sight の利用方法、J-LAKE データを活用いただくための AI でのデータ検索機能や簡易的なデータ取得環境を提供するポータルサイトを立ち上げました。

社内データ活用の啓蒙活動について

社内でデータを活用できる環境やルールの整備を進めてきましたが、もともとデータ活用の文化が根付いていなかったことから、Amazon Quick Sight の利用が思うように進まない状況が続いていました。そこで、この課題を解決するために、まずは経営層が日常的に利用するデータ可視化の取り組みを開始しました。

従来、役員向けの財務状況の報告は、Excel で作成した資料を元に紙ベースで四半期ごとに実施していましたが、Amazon Quick Sight を活用し、月次で確認できるダッシュボードを構築しました。また、日々 Excel マクロで作成しメール送信していた売上予測についても、いつでもアクセスできるダッシュボードとして再構築しました。

役員向けダッシュボードはシングルサインオン(SSO)を導入することでログインの手間を省き、さらに、売上予測ダッシュボードでは従来の表形式に加え、グラフによるビジュアル化コンテンツを追加することで、より直感的にデータを把握できるよう工夫しました。

これらの取り組みにより、日々 Excel 作業で発生していた作成工数が、ダッシュボード作成の自動化で大幅に削減されました。この部分においても経営層にとって Amazon Quick Sight の導入が効果的であると認知していただけました。

これをきっかけに、役員から「こんなデータが見たい」といった具体的な要望が各部門に寄せられるようになり、必要な情報を早期にダッシュボード化して共有することで、Amazon Quick Sight の価値を社内全体で実感できるようになりました。

経営層が Amazon Quick Sight の有用性を認知したことを受け、役職員のスキルアップや業務への適用が急務となりました。そこで、AWS 様のご協力のもと、社内向け Amazon Quick Sight ハンズオンを実施しました。

まずは、データ活用が今後の JPX のビジネス展開に不可欠であることを説明し、世間や他部署での Amazon Quick Sight 利用ユースケースを紹介しました。その流れで、簡単なグラフ作成などを体験できる初級編ハンズオンを開催し、社員が Amazon Quick Sight を身近に感じられる機会を提供しました。

さらに半年後には、JPX 内での Amazon Quick Sight 最新の利用方法の紹介と、AWS 様より Amazon Quick Sight の便利な利用方法をご紹介いただいたうえで、具体的なインサイトを得られる分析手法を学べる中級編ハンズオンを開催しました。

各ハンズオンの後には懇親会を設け、他部署との交流を深めるとともに、事務局として各部の利用状況の実態を把握する場としても活用しました。

また、ハンズオンや懇親会を通じて得られた各部門のデータ活用状況に合わせて、個別に相談会を実施し、チャットを活用した気軽な質問環境も整備しました。これにより、JPX 内で業務に活用できるダッシュボードの構築が徐々に広がり、Amazon Quick Sight が各部門の業務効率化や意思決定の迅速化に寄与し始めてきました。

Amazon Quick Sight ダッシュボードコンペによる社内データ活用の促進

上記の取り組みにより、社内で Amazon Quick Sight を利用するユーザの広がりや、利用方法の多様化を実感することができました。そこで、社内全体のデータ活用スキル向上と Amazon Quick Sight のさらなる認知拡大を目的として、「Amazon Quick Sight ダッシュボードコンペ」を企画しました。

コンペの募集にあたっては、日常業務で活用されるダッシュボードから、J-LAKE のデータを用いた新たなインサイトを得られるダッシュボードまで、幅広いテーマで募集を行いました。応募されたダッシュボードについては、AWS 様のご協力のもと相談会を実施し、参加者がダッシュボードを磨き上げる機会を設けることで、より質の高いアウトプットを目指しました。

コンペのプレゼン大会当日は、CEO を含む役員および AWS 様にも審査員としてご参加いただき、各ダッシュボードに対して多くのコメントやフィードバックが寄せられました。時間が足りなくなるほどの大盛況となり、社内のデータ活用に対する熱意や関心の高さを改めて感じるイベントとなりました。

このイベントを通じて、以下のような新たな気づきや成果が得られました。

  • コンペ実施まで Amazon Quick Sight をほとんど触ったことがないユーザでも、約1か月の作成期間の中で、自部署の業務と並行しながらダッシュボードを構築することができました。これにより、Amazon Quick Sight の操作性や学習のしやすさを実感する機会となりました。
  • 各部門には、J-LAKE に格納されていない多様なデータが存在していることが明らかになり、今後のデータ活用の可能性が広がることを認識しました。
  • 経営層が求めるデータや視点を理解する良い機会となり、現場と経営層のコミュニケーションの促進や、より価値の高いダッシュボードの構築につながると感じました。

今後の展望

これまでの活動を通じて、JPX グループ内でのデータ活用が各部門で徐々に広がり始めていることを実感しています。一方で、まだまだ活用の余地が大きいと感じており、Amazon Quick に AI 機能が搭載されたことで、今後さらに活用の幅が広がっていくと期待しています。

今後も継続的に社内のデータ活用を推進するため、各部門が保有するデータを J-LAKE に集約し、Amazon Quick の新機能を紹介するハンズオンを実施することで、今回あまり参加いただけなかった部署にも積極的にアプローチしていきたいと考えています。

また、J-LAKE のデータを社外に単純に販売するだけでなく、Amazon Quick を活用した新たなデータサービスの開発にも取り組み、JPX グループ全体のデータ価値の最大化を目指してまいります。

JPX では今後も AWS のサービスを活用し、データドリブンな業務改革とイノベーションを推進していきます。Amazon Quick を中心としたデータ活用の取り組みをさらに拡大し、社員一人ひとりがデータを活用した価値創造に貢献できる環境づくりを目指してまいります。

執筆者

箕輪 郁雄 日本取引所グループ・株式会社 JPX 総研 IT ビジネス部 シニアアーキテクト
箕輪 郁雄
大学卒業後、パッケージ開発 IT ベンダーにてプログラマ、DBA 、PM を経験の後、当時の東京証券取引所に入社。ERP パッケージの導入や基幹系システムの新規立ち上げから構築などを担当したのち、現在のデータを活用したシステムの立ち上げ・開発を担当。
鹿島 裕 日本取引所グループ・株式会社 JPX 総研 IT ビジネス部 統括課長
鹿島 裕
大学卒業後、当時の東京証券取引所に入社。株式売買システムの開発を経験の後、2013年より社内 DWH システム担当として組織統合におけるデータの集約・一元管理に取り組む。データレイク構築に携わったのち、データ活用に関する企画・開発を担当。