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AWS Supply Chain の需要計画プロセスでビジネス価値を最大化
今日のグローバルサプライチェーンの複雑な状況において、正確な需要予測は極めて重要ですが、それだけでは十分ではありません。企業は予測精度を向上させ、最適な在庫を実現するために、高度な分析能力や機械学習(ML)の導入に投資を行ってきました。しかし、これらの広範な取り組みにもかかわらず、2021年以降、在庫売上高比率 は上昇を続けており、需要と供給の変動に対応するために過剰在庫を抱えていることを示しています。この事実は、予測の改善と実際のビジネス価値の実現との間に、まだ重要な要素が欠けていることを示唆しています。
サプライチェーンの混乱が深刻な時期には、企業間の業務知識がより一層重要になります。効果的なステークホルダーとのコミュニケーションがなければ、どんなに高度な予測でも急速に陳腐化し、ビジネス価値が低下し、組織は急激な市場の変化に対して脆弱な状態に置かれてしまいます。
サプライチェーンの真の価値を引き出す鍵は、最先端の需要予測と効果的なステークホルダーの協働を組み合わせることにあります。この投稿では、AWS Supply Chain の革新的なソリューションが、機械学習を活用した高品質な予測を実現するだけでなく、有意義な協働を促し、重要なビジネスインサイトを捉え、あらゆる市場環境で経済的価値を最大化する需要計画を作成する方法について探ります。
高付加価値な需要計画の構築
従来の需要計画は、過去のデータを元に可能な限り正確な予測を生成することのみに焦点を当てた単一ステップのプロセスです。今日のような非常に変化が激しい環境では、過去の出来事から同じ結果が生じない可能性があり、専門家からの追加的な意見も重要であるため、そのようなやり方では限定的な成功しか得られません。
AWS Supply Chain は、真に価値のある需要計画には 2 段階のアプローチが必要であることを認識しています。
Step 1: 機械学習を使用して強力なベースライン予測を構築する
最初のステップでは、需要プランナーは AWS Supply Chain の高度な分析・機械学習機能を活用して、ベースライン予測を生成します。次に予測モデルの分析機能が組織のデータセットで実行され、プランナーが最適な機械学習モデルを選択する際に支援を行い、外部要因と製品の切り替えを考慮に入れて初期精度を最大化します。例えば、DeepAR+ のようなアルゴリズムは、数百項目におよぶ時系列の特徴量データを含む大規模なデータセットで動作し、将来の関連する時系列のデータ項目とメタデータの項目を元に予測出力を生成します。
Step 2: ステークホルダーとの協働を推進し、合意に基づく需要計画を構築する
2 番目の重要なステップは、協調的な改善プロセスです。プランナーは AWS Supply Chain の直感的なユーザーエクスペリエンスを活用して、ベースラインとなる予測をステークホルダーと共有し、洞察を収集し、重要な業務上の前提条件を把握します。このプロセスにより、ベースラインに対する必要な上書きや調整が可能となり、最終的な計画が業務の全体感や整合性を保ったものになることが担保できるようになります。
従来、需要計画プロセスがビジネス価値を生み出しているかの評価は、平均絶対誤差率(MAPE)や加重平均絶対誤差率(WAPE)などの精度指標に頼ってきました。これらの指標は全体的なパフォーマンスを評価する上で依然として重要ですが、2 段階プロセスの各ステップで付加される価値を測定する上では不十分です。これらは実績値からの予測の乖離のみに注目するため、協業の過程で与えられる重要な情報や、行われ調整を見落としてしまいます。
ここで、予測価値付加(FVA) の概念が重要となります。FVA は機械予測と人的介入の有効性を予測プロセスにおいて個別に測定し、組織がどの活動が本当に価値を生み出し、どの活動がノイズやバイアスを生む可能性があるかを特定するのに役立ちます。FVA を分析することで、企業は最も重要な部分に努力を集中させ、需要計画プロセスを最適化できます。例えば、世界的な寝具メーカーのテンパー・シーリー・インターナショナルや RS コンポーネンツ は、FVA を成功裏に導入し、どの入力が本当に予測を改善し、どれがノイズを生んでいるかを理解することで恩恵を受けています。
AWS Supply Chain の統合ソリューションは、この 2 段階プロセスを促進し、実績値をナイーブ予測や合意予測と比較し、2 段階プロセスの各ステップでの価値付加を評価するための FVA を計算するためのレポーティングおよび分析ツールを提供します。これにより、組織は単なる精度指標を超えてビジネス価値を最大化する需要計画を作成することが可能になります。
ただ予測するのではなく、自分の未来を切り開け
需要計画は精度だけの問題ではありません。それは実際のビジネス価値を生み出すことです。AWS Supply Chain の 2 段階アプローチは、最先端の ML 予測と強力なコラボレーションツールを組み合わせることで、このプロセスを支援します。データに基づく分析と人間の専門知識の両方を活用することで、組織は未来を予測するだけでなく、それを形作る需要計画を作成できます。今日の変動の激しい市場では、これは単なる優位性ではなく、必要不可欠なものです。AWS Supply Chain で、需要計画をビジネスを前進させる戦略的優位性に変えましょう。以下のステップから始めてください:
- 現在のプロセスを評価する:予測精度と協調的なインプットのバランスを組織がどのように取っているか評価します。両者の価値を本当に最大限に活用できていますか?
- AWS Supply Chain を検証する:アカウント管理者にデモをリクエストし、統合された ML 予測とコラボレーションツールがどのように需要計画を変革できるかをご覧ください。
- 技術概要を把握する:AWS Workshop Studio で自己ペースの技術的なウォークスルーを体験してください。インスタンスの作成、データの取り込み、ユーザーインターフェースのナビゲート、インサイトの作成、需要計画の生成方法を学べます。
本ブログはソリューションアーキテクトの水野 貴博が翻訳しました。原文はこちら。