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AWS上のSAP NetWeaverとSAP HANAに対するRed Hat Enterprise Linux (RHEL)の高可用性

SAPワークロードをAWS上に展開するときにお客様が検討する重要なものの1つは、ビジネス/ミッションクリティカルなSAPアプリケーション用の高可用性 (HA)構成です。このブログ投稿では、Red Hat Enterprise Linux (RHEL)でSAPワークロードを稼働しているお客様のHAオプションについて説明します。Red Hatは、様々なSAPコンポーネントに対してSAP認定の高可用性ソリューションを提供しています。Red Hatは、pacemaker、STONITH、corosync、リソースエージェントなどのHA Add-Onのコンポーネントを拡張しています。お客様は、SAP HANAとSAP NetWeaverベースのアプリケーション用に、AWSリージョン内のアベイラビリティゾーンをまたがったHAクラスターを構築できます。

AWSは、SAP HANAとSAP NetWeaverベースのアプリケーション向けに、SAPによって認定された様々なAmazon EC2インスタンスを提供しています。SAP HANA用には、メモリが244GiBから24TiBの範囲のSAP認定Amazon EC2インスタンスがあります。SAP NetWeaverベースのアプリケーション用には、50を超えるSAPがサポートするAmazon EC2インスタンスタイプから選択できます。詳細については、Certified and Supported SAP HANA Hardware Directory、およびSAPノート 1656099 (ログインが必要)を参照してください。SAP認定済みでサポートされるAmazon EC2インスタンス上で、SAP HANAデータベースとSAP Central Services (ASCS / SCS)向けにRed Hatから提供されるこのHA Add-Onを構成できます。

An image of an architecture diagram for SAP ASCS and HANA set up as HA using RHEL cluster

図1: RHELクラスターを使用したHA構成のSAP ASCSとHANA

上の図は、SAP ABAP System Central Services (ASCS)とSAP HANAのHA構成のアーキテクチャーを描写しています。ASCS、プライマリのHANAノード、そしてプライマリアプリケーションサーバー (PAS)は、アベイラビリティゾーンA (us-east-1a)に展開されます。Enqueue Replication Server (ERS)、スタンバイのHANAデータベース、そしてアディショナルアプリケーションサーバー (AAS)は、アベイラビリティゾーンB (us-east-1b)に展開されます。RHELクラスターには2つのセットがあります。1つ目はSAPアプリケーション用で、これはASCSインスタンスとERSインスタンス間の構成です。2つ目は、SAP HANA用でプライマリとスタンバイのHANAデータベース (DB)間の構成です。ここに記載のRoute 53サービスはDNSサービスとして使用されます。これにより、会社のドメイン名とNLBのDNS名を使用して、FQDNのCNAMEを作成できます。また、オンプレミスのDNSサービスを活用することもできます。

クラスターの構成方法の詳細は、この後のセクションで説明します。HA構成に必要なエージェントを提供する適切なサブスクリプションを取得することから始まります。

適切なRHELサブスクリプションの取得

RHEL HA Add-Onは、Red Hat Enterprise Linux for SAP Solutionsの一部としてのみ利用可能です。お客様には2つのサブスクリプションの選択肢があります。

  •  AWS Marketplace – お客様は、AWS MarketplaceからRHEL for SAP with HA and USのサブスクリプションを購入することを選択できます。これは、オンデマンドまたは年間サブスクリプションモデルのどちらでも利用できます。すべてのAWS商用リージョンとAWS GovCloud (米国)リージョンで利用可能です。さらに、AWS MarketplaceのAmazon Machine Image (AMI)はAWSプレミアムサポートによってサポートされます。
  • Bring your own subscription (BYOS) – Red Hatは、Red Hat Cloud Access Programを通じて、既存または新規に購入したサブスクリプションをAWSに持ち込むための追加の選択肢を提供しています。これは、すでにRed Hatからサブスクリプションを購入し、既存のSAPワークロードをAWSに移行しようとしているお客様にとって魅力的な選択肢です。

お客様の組織にとって最適な選択肢の詳細と理解を深めるには、Red Hat Enterprise Linux for SAP offerings on Amazon Web Services FAQを参照してください。

手動構築

AWSとRed Hatは、AWS向けにHAソリューションを拡張し、展開を支援するための構成ガイドを文書化しました。詳細については、Red Hatが公開するRHEL HA for SAP HANARHEL HA for SAP NetWeaverを参照してください。

This image shows the steps for deployment of HA setup of SAP ASCS and HANA using RHEL cluster. 1 - Review Guides, 2 - Subscribe from AWS Marketplace, 3 - Launch EC2 Instances, 4 - Provision and configure storage, 5 - Complete SAP HANA/NW Specific OS configurations, 6 - Install and Configure on both primary and secondary nodes, 7 - Setup the Cluster for ASCS/HANA, 8 - Automate and operate

図2: RHELクラスターを使用したSAP ASCSとSAP HANAのHA構成の手動構築プロセス

上の図は、RHELクラスターを使用したSAP ASCSおよびSAP HANAのHA構成の手動構築プロセスの流れです。SAPとRHELのガイドを確認することから始め、AWS MarketplaceまたはBYOSのどちらかでRHELサブスクリプションを取得します。この後、選択したAZでEC2インスタンスを起動し、必要なストレージを構成します。これに続いて、OS固有の構成を完了し、最後にSAP HANAとSAP NetWeaverのインストールを完了します。この記事のSAP NetWeaverSAP HANAのガイドを参照してHAクラスターを構成できます。

AWS Quick Start for SAP HANA

SAP HANAのHA展開を迅速に開始し、支援できるよう、SAP HANA on AWS Quick Startを機能強化しました。つまり、AWS Marketplaceで提供されるRHEL for SAP with HA and US製品を使用したマルチAZのシングルノード展開をサポートします。クイックスタートは、SAP HANAのパフォーマンス最適化の構成をサポートします。プライマリとスタンバイの両方のHANAサーバーを展開し、これらのサーバーは同じインスタンスサイズと他のインフラストラクチャ特性を備えています。これらは2つの異なるアベイラビリティゾーンの個別のプライベートサブネットに展開され、同期モードのHANAシステムレプリケーション (HSR)とHAを構成します。展開用に新しいAmazon Virtual Private Cloud (VPC)を作成するか、既存のVPCインフラストラクチャにSAP HANAサーバーを展開することを選択できます。展開にかかる時間は2時間未満です。詳細については、デプロイメントガイドをご覧ください。

結論

AWS上で高可用なSAPワークロードを展開するためのオペレーティングシステムにRHELを利用することについて、この情報が役立つことを願っています。SAP HANA on AWS Quick Startを使用して自動化された方法でHAクラスターを構成することができますが、構成ガイドは構成に関するより深い洞察を提供します。AWS上のSAPワークロードに対するRed Hatの高可用性ソリューションの使用の詳細については、AWSとRed Hatによる録画されたウェビナー「Build a solid landscape for SAP HANA and S/4HANA on AWS (英語)」をご覧ください。

何かコメントや質問があればお気軽にお問い合わせください。私たちはお客様のフィードバックを大切にしています。

翻訳はPartner SA 河原が担当しました。原文はこちらです。