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【開催報告&資料公開】テレコム業界向け AWS re:Invent Recap – インダストリー編

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 ソリューションアーキテクトの新谷です。
通信業界に携わるお客様やパートナー様、5G やエッジ等の最新技術の動向にご興味のある方々を主な対象として、2023 年 1 月 25 日に「AWS re:Invent Recap インダストリー編 – テレコム業界向け」をウェビナーで開催しました。

本記事では、当日の内容・動画を皆様にご紹介します。

ウェビナー開催の背景

世界中の AWS ユーザーが集まり、ベストプラクティスや最新情報を学ぶための年次カンファレンス『AWS re:Invent』。今回で 11 回目を迎え 2022 年 11 月 28 日から 12 月 2 日の 5 日間ラスベガスで開催されました。新たなサービスの発表はもちろんのこと、お客様が AWS を活用して実現した数々のイノベーションが発表されました。

今回のウェビナーでは、キーノート及びブレイクアウトセッションから通信業界にフォーカスし、グローバルの最新動向や、デジタルトランスフォーメーション、ネットワークのクラウド化などのトピックで様々なお客様事例をご紹介しました。

1. テレコム業界の AWS re:Invent ハイライト

技術統括本部 エンタープライズ技術本部 通信ソリューション第二部
ソリューションアーキテクト 新谷 歩生

資料はこちらからダウンロード頂けます。

まず、新谷よりテレコム業界のハイライトとして、通信業界のクラウドジャーニーと 、CSP (Communication Service Provider) のパートナー様と実現するコネクティビティの最発明という 2 つのテーマをお届けしました。AWS ではお客様のビジネス価値を加速するために、ネットワークのクラウド化、オペレーションの簡略化、成長機会の解放、顧客体験の再考という、4つの領域にフォーカスして通信業界の変革を支えています。そのような戦略領域を通じて、2022 年には通信に関わるお客様と数々のイノベーションを実現することができました。

多くのお客様をご支援する中で、通信とクラウドに見られたトレンドとして以下 6 点をご紹介しました。

  1. Telco から “Tech” 企業へ
  2. エッジサービスを活用したデプロイモデル
  3. “ 1 回限り”から“ as-a-service” へ
  4. 通信特有ワークロードの展開
  5. 新しい市場戦略と収益化のためのソリューション
  6. サステナブルな世界の実現

例えば、 2. エッジサービスを活用したデプロイモデル では、Liberty Latin America が通信のワークロードをクラウドファーストのアーキテクチャで近代化し、低レイテンシが求められるアプリケーションには AWS Outposts を採用しています。

後半は、CSP パートナー様との協業により新たなビジネス機会を創出するコネクテビティサービスとして、AWS Private 5G と AWS Cloud WAN をご紹介しました。AWS Private 5G によってエンタープライズ向けプライベート 5G ソリューションの市場投入の短縮化が見込まれます。また、AWS Cloud WAN は、Direct Connect や通信事業者が提供する SD-WAN、MPLS 等で構成されるマルチテナントの WAN の構築・管理を簡素化・統合し、ネットワークサービスの多様性や新たな付加価値の提供に繋げることができます。

2. テレコム業界における Digital Transformation

技術統括本部 エンタープライズ技術本部 通信ソリューション第二部
ソリューションアーキテクト 神谷 拳四郎

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神谷からは、テレコム業界で進む Digital Transformation の事例をご紹介しました。Verizon Connect は技術的負債を解消し、市場投入までのスピードを高めて競争力を強化するために、マイクロサービス化やイベント駆動のアーキテクチャへの取り組みを開始しました。しかし、ピークワークロードに合わせた事前のハードウェア調達やスケーリングが課題となったことから、自身の手によるインフラ構築を止め、顧客の課題解決にフォーカスするためにクラウドジャーニーを推進しています。

Ingress ゲートウェイの AWS 上への構築を経て、クラウドを扱うスキルアップを重要と捉えた Verizon Connect では、構築パターンとプラクティスの標準化に取り組んだ上で、AWS 活用の効果を最大限に引き出すために企業文化や当事者意識の変革も行なっています。CI/CD パイプラインも整備したことで、コミットからエンジニアへのフィードバックの時間を 30 分から 1 分に短縮し、クラウドネイティブ化の経験も重ねました。このようなクラウドジャーニーを経て、2015 年時点では 4 半期に 94 回だった製品のデプロイ回数も、2022 年には 3,000 回以上に及んでいます。

また、Vodafone の事例では、Telco as a Service (TaaS) によるグローバルチームの進化についてご紹介しました。Vodafone では、 グローバルに再利用かつ自動化された機能を生み出す目的を持った 30 以上のチームを統合する、TaaS という戦略に取り組んでおり、One プラットフォームへの統合や 150 以上のうち重複する 80% 機能の削減を目指しています。変革の中心は従業員と捉え、AWS と協力しながら戦略的な学習プランを設計し、独立したチーム運用からグローバルなコミュニティ形成へ変革を進めています。

3. ネットワークのクラウド化

技術統括本部 エンタープライズ技術本部 通信ソリューション第一部
ソリューションアーキテクト 黒田 由民

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黒田からは、ネットワークのクラウド化について、通信事業者とエンタープライズ企業、両者の視点からそれぞれのチャレンジをご紹介しました。5G ネットワークでは、5G Core 制御プレーン、ユーザープレーン、RAN Distributed Unit 等のネットワークコンポーネントを要件に応じて適材適所に配置していく必要があります。AWS では、ネットワークのクラウド化にあたって、このような適材適所の要件に必要なインフラストラクチャを、AWS リージョンだけでなく、AWS Outposts・AWS Local Zones・AWS Snow Family 等を活用したエッジまで、一貫性のある連続体で提供しています。

実際にネットワークのクラウド化を進める通信事業者のお客様として Swisscom の事例をご紹介しました。Telco から Tech 企業への トランスフォーメーションを進める Swisscom は、5G Core の AWS 上への構築に取り組んでいます。「シンプル化」によって周波数や電力など希少なリソースを最適に使用し、「クラウドネイティブ」によって運用上のメリットをもたらし、「自動化」によって Core 装置を高い頻度でリリースすることを目指しています。

また、エンタープライズ企業が 5G でビジネスにイノベーションを起こしていくためには、クローズドで秘匿性が高く高品質な占有プライベートモバイルネットワークの活用がポイントとなります。AWS では、マネージドサービスである AWS Private 5G と、複数の AWS サービスを活用して ISV パートナーの コンポーネントを統合する Do it Yourself (DIY) 方式の 2 つの方法があります。AWS Private 5G はハードウェアとソフトウェアが予め統合されており、マネジメントコンソールや API でオーダーするとお客様に配送され、すぐに使い始めることができます。DIY 方式では、堅牢なエッジデバイスである AWS Snowball Edge 上に、 Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) や Amazon EKS Anywhere 等を組み合わせてプライベート 5G ソリューションを構築する方法があります。

4. グローバル最新事例のご紹介

技術統括本部 エンタープライズ技術本部 通信ソリューション第一部
ソリューションアーキテクト 川崎 一青

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川崎からは、これまでのセッションでお伝えしてきれていない様々なグローバル最新事例をご紹介しました。End-to-End の 5G ネットワークを展開する将来ビジョンを持つニュージーランドの Saprk は、AWS リージョンと AWS Local Zones によりクラウドの弾力性を活かした 5G Core の構築、ネットワーク自動化や AI 活用によるサービスアシュアランスの実現を目指しています。実現に向けて、AWS Outposts rack に 5G スタンドアローンネットワークを展開するトライアルや、AWS Snowball Edge 上の Amazon EKS Anywhere に展開した Mavenir 5G Core とビデオ分析 AI による廃棄物管理場でのプライベート 5G パイロットに取り組んでいます。

プライベート5G では、AWS Snowball Edge 上に 5G RAN / Core、MEC アプリケーションを統合した 5G Network in a box のソリューションを展開する JMA Wireless や、車載の AWS Snowball Edge にドローンの映像をストリームして AI / ML モデルで解析し、ノルウェー軍のタイムリーな災害救助に活用する Telenor の事例もご紹介しています。また、まさに今回ラスベガスで開催されて 5 万人以上が参加した AWS re:Invent 2022 会場では、AWS Private 5G を活用してプライベートネットワークを簡単に構築し、競合しない安定したパフォーマンスを提供していました。

MEC 関連では、 Verizon が提供する MEC を活用した事例についてご紹介しました。 Verizon は、Public MEC では AWS Wavelength、Private MEC では AWS Outposts をそれぞれ活用したソリューションを提供されています。Verizon 自身はより良いゴルフ体験を提供するサービスに AWS Wavelength を活用し、レスポンスの高速化や機械学習によるレコメンド機能を実現しています。また、AiFi が提供する次世代小売店舗ソリューションでは、 5G と MEC によりレジ無しの顧客導線を実現し、売上を向上させています。

スマートホームの再発明を掲げる TELUS からは、コネクテッドデバイスの連動によって家庭内にシームレスな日常体験を実現する、Home IoT 事例がありました。AWS IoT Core や AWS IoT Greengrass をハブとして、テレメトリの収集からの連動やエッジで機械学習推論を行うアーキテクチャをご紹介しました。

まとめ

2023 年 1 月 25 日に開催した「AWS re:Invent Recap インダストリー編 – テレコム業界向け」の振り返りとして、開催概要や発表の見どころ紹介、お客様事例をご紹介いたしました。セミナーにご参加いただいた方、誠にありがとうございました。参加頂けなかった方も、このブログから動画や資料を参照いただき、今後の AWS 活用の参考になりましたら幸いです。ご質問やご要望がございましたら、お問い合わせページ、もしくは担当営業までご連絡をお願いします。

このブログの著者

新谷 歩生 (Ayumu Shintani)
技術統括本部 エンタープライズ技術本部 通信ソリューション第二部 ソリューションアーキテクト