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Accenture による AWS Transform for mainframe 検証結果と活用方法

本記事は、アクセンチュア株式会社 テクノロジーコンサルティング本部 クラウド 、データ&AI インテグレイティッド コンサルティング グループ アソシエイト・マネージャー 萩野健斗氏とアマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 パートナー技術統括本部 シニアパートナーソリューションアーキテクト 石倉徹による共著です。

はじめに

メインフレームプロジェクトは一般的に長期にわたることが多く、手作業による工数削減、プロジェクトの短縮は重要な課題です。本記事では、アクセンチュア株式会社による、AWS Transform for mainframe を利用した工数削減に繋がる工夫点をご紹介します。

AWS Transform for mainframe の概要

AWS Transform for mainframe は、メインフレームのワークロードを大規模にモダナイズするためのエージェント型 AI サービスです。メインフレームのコードベースの分析、ドキュメントの生成、ビジネスロジックの抽出、モノリシック構造の分解、移行プランの作成、レガシーコードの変換、コードの品質を向上させるための Reforge、コードデプロイといった工程の自動化を行います。利用者は、目標に応じて必要な機能を選択し利用することができます。


図 1. End-to-End のメインフレームモダナイゼーションの流れ

メインフレームの長期運用では、ドキュメントが陳腐化したり専門家が離職したりして、システムの現状把握が困難になることがあります。これらは、メインフレームモダナイゼーションの移行期間を長期化させ、運用難易度を高める主要因となります。AWS Transform for mainframe では、コード分析やドキュメント生成等の機能によって、システムの主要機能、プログラムのロジックと機能、データフローと依存関係、ミドルウェアとの連携情報などを手に入れることができるため、現状把握の加速が可能になります。また、生成 AI エージェントに問い合わせることが可能であり、AI との対話を通じて理解を深めることができます。これらの機能により、新しいチームメンバーのプロジェクトオンボーディング期間の短縮とモダナイゼーションの加速を可能とします。その他の詳細は、こちらの AWS ブログをご覧ください。

検証の目的

本検証は進行中のプロジェクトにて試験的に実施しました。現行メインフレームシステムでは過去数十年に渡る改修を重ねたことにより、設計文書が揃っておらず、改修時も属人的な影響調査を行っていることが課題となっていました。この課題を解消するための第一歩として、AWS Transform for mainframe を利用して数千ファイル、数百万行の COBOL / JCL ソースコードのプログラム説明書を復元することを目標としました。

検証方法

対象のソースコードを Amazon S3 へ配置し、AWS Transform for mainframe のコード分析とドキュメント生成 (Generate Technical Documentation 及び Extract Business Logic) を検証します。なお、2025 年 10 月時点では AWS Transform for mainframe は東京リージョンが利用できない為、バージニア北部リージョンを利用しています。


図 2.AWS Transform for mainframe 検証アーキテクチャ

また、生成されたドキュメントの品質をサンプリングで確認し、予めプロジェクトで定義したプログラム説明書の記載要件を満たしているか検証を行いました。


図 3.プログラム説明書の記載要件

(1) Analyze code – コード分析

ソースコードファイルを Amazon S3 にアップロードし、コード分析を開始します。今回の検証対象となったソースコードは数百万行を超える規模であり、コード分析にはおおよそ 40 分を要しました。分析が完了すると Dashboard タブにコード行数、ファイル数などの分析内容が表示されます。


図 4. AWS Transform for mainframe の Dashboard 画面

従来では人手を介してソースコードに含まれるプログラム名やファイルタイプ、コード行数といった構成要素を分析・管理する必要がありましたが、AWS Transform for mainframe では専門知識や労力をかけずコード分析が可能であり、後述するドキュメント生成の作業を含め AWS のマネジメントコンソール上で効率的に管理することができます。

(2) Generate Technical Documentation – 技術文書生成

ドキュメント生成は 1 プログラム平均 1-2 分程で処理され、選択したファイル数に応じて処理時間が長くなりました。数千ファイルのプログラムを対象に実行したところ、概ね 3 日間で全てのドキュメント生成を完了させることができました。生成されたドキュメントは AWS Transform for mainframe の画面上で表示するか、PDF / XML 形式でダウンロードすることができます。


図 5. Technical Documentation (プログラムの概要)

生成されたドキュメントからはプログラムの業務上の目的や役割を把握するために必要な情報を読み取ることが出来ます。また、入出力データの業務要件、他プログラムとの依存関係、エラーハンドリングといった情報が整理され、影響調査や業務観点でテストケースを洗い出すようなユースケースにおいて活用できます。

(3) Extract Business Logic – ビジネスロジック抽出

Technical Documentation と同様、1 つのプログラムに対して平均 1-2 分程で処理され、選択したファイル数に応じて処理時間が長くなりました。数千ファイルのプログラムに対して処理を実行したところ、概ね 4 日間で全てのドキュメント生成を完了させることができました。生成されたドキュメントは AWS Transform for mainframe の画面上で表示するか、HTML および JSON 形式でダウンロードすることができます。


図 6. Extract Business Logic で生成されたドキュメント

生成されたドキュメントからはプログラムの構文やビジネスルールに関するメトリクス、及びプログラムの詳細なロジックがフローダイヤグラム付きで読み取ることができました。またソースコード本文も画面上で確認できるため、ドキュメントとソースコードの整合性の確認も行うことが出来ます。


図 7. Extract Business Logic で生成されたドキュメント (フローダイヤグラム)


図 8. Extract Business Logic で生成されたドキュメント (処理の詳細)

プログラム説明書作成のためのドキュメント統合アプローチ

Technical Documentation は全体の業務要件理解に役立ち、Business Logic はプログラム内のビジネスルールや詳細ロジックの抽出に特化しています。プログラム説明書では、全体の要件の記載、詳細な分岐条件やロジックの記載が求められていた為、AWS Transform for mainframe から出力される Technical Documentation と Business Logic の内容を組み合わせるアプローチを採用しました。両方の要素を、Amazon Bedrock (モデル: Anthropic Claude 3.7 Sonnet) を活用し、必要な情報を抽出して再構成しました。また、2025 年 10 月時点での AWS Transform for mainframe の言語対応状況を踏まえ、日本語への翻訳も実施しています。


図 9. Amazon Bedrock を活用したプログラム説明書生成


図 10. 生成されたプログラム説明書例

生成されたプログラム説明書を確認した結果、期待通りの内容が含まれていました。Technical Documentation と Business Logic を組み合わせることで、プログラム全体を把握しやすい成果物を出力することができました。エンジニアの理解度向上に貢献する生成物となっており、本プロジェクトにおいて、有効なアプローチとなりました。

さらに、本プロジェクトでは生成 AI により統合されたプログラム説明書をベクトル変換しデータベース化する取り組みも進めています。これにより、業務内容の問い合わせやテストケースのカバレッジ評価のような幅広い用途への応用を想定しています。プログラム説明書へドキュメントを統合する取り組みの効果として、日本語化することで検索ワードと説明書の言語が統一されたことでプログラムの検索精度が 10% 向上しました。また、テキスト形式で出力することで約 61% のトークン数の削減にも繋げることが出来ました。


図 11. プログラム説明書を活用した業務・プログラムの対話型エージェント

検証結果

今回の検証では、数千ファイル、数百万行の COBOL / JCL ソースコードを対象にプログラム説明書の復元を行いました。手作業でプログラム説明書を作成する場合、プログラム 1 本 1 人日要すると仮定すると 200 人月かかる計算となります。AWS Transform for mainframe のドキュメント生成を活用した結果、約 8 日間でドキュメント生成を完了させることができました。また、リバースエンジニアリングのための RAG 等の分析環境の準備が不要で、すぐに取り掛かることが可能でした。

さらに、AWS Transform for mainframe のアウトプットを Amazon Bedrock (Claude 3.7 Sonnet) で再構成・日本語翻訳することで、エンジニアの理解度向上に貢献するプログラム説明書を生成できました。今回の検証を通じて、AWS Transform for mainframe の活用により、工数削減とエンジニアの理解促進を実現できることが確認できました。

※本記事で紹介している検証結果はアクセンチュアによる独自の検証に基づくものであり、すべての環境や条件下での同様の結果を保証するものではありません。実際の結果はご利用の環境やワークロード、設定などにより異なる場合があります。

まとめ

この記事ではアクセンチュアでの AWS Transform for mainframe の活用方法について紹介しました。アクセンチュアは AWS Mainframe Modernization コンピテンシーを取得しており、多数のメインフレーム案件を推進しています。今回の検証結果を活用し、資産分析から移行検討、設計・デリバリーまで、幅広いフェーズでメインフレーム移行を強力にご支援します。詳しくはこちらまでお問い合わせください。


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