AWS Startup ブログ

サポートの手厚さが AWS の大きな魅力。開発・運用の効率向上に大きく寄与 – CUICIN 社の AWS 活用事例

「Making trip better for everyone.」をミッションに掲げ、宿泊業の経営を強くする HotelStyle OS「aiPass」を提供するクイッキン株式会社(以下、CUICIN)。同社はかつて、他のクラウドベンダーを利用してシステム基盤を構築・運用していました。しかし、ある時からテクニカル面やサポート面における課題に直面。それらの課題を解決し、開発生産性や運用効率性を大きく向上させたのがアマゾン ウェブ サービス(以下、AWS)への移行でした。

AWS の利用を決めた理由は何だったのでしょうか。そして、同社が AWS の各サービスを活用して構築したアーキテクチャとは。CUICIN へのサポートを行っているスタートアップソリューションアーキテクトの斎藤 祐一郎とセールスアカウントマネージャーの小野里 聡美が、同社 CEO の辻 慎太郎氏とCTOの為藤 アキラ氏にお話を伺いました。

宿泊業の DX を推進する

小野里:まずは CUICIN の企業・サービス概要について教えてください。

辻:私たちは「Making trip better for everyone.」というミッションを掲げており、すべての人々により良い旅行を提供することを目指している企業です。サービスとしては宿泊業の DX を推進する HotelStyle OS「aiPass」を開発・提供しています。

小野里:HotelStyle OS とはどのような概念ですか?

辻:現在、世の中には宿泊特化型やリゾートタイプ、コンセプト特化型など多種多様な宿泊施設が登場しています。それぞれの施設で求められる運用方法は異なるため、ニーズに合わせて機能をカスタマイズすることで、柔軟なオペレーションシステムを構築できるのが HotelStyle OS です。

小野里:他のシステム提供事業者と比較して、御社ならではの強みは何でしょうか。

辻:私たちは、ただシステムを提供するだけではなく、宿泊業の DX を実現するために、経営の根幹になる戦略のコンサルティングからソリューションまで一気通貫で提供することで、お客さまの事業を支援します。

宿泊業界はレガシーな産業ですから、社内のオペレーションシステムが、オンプレミスで運用されていたり、システムがアップデートされておらず利便性が低かったりと、課題が山積しています。それらの課題に合わせて「aiPass」はチェックインシステムをベースに各種プラグインを追加し、柔軟に機能をカスタマイズできるようになっています。また、Web サービスですから特別なハード端末は不要で、インターネット環境さえあれば利用できるのも特徴です。

 

小野里:導入やカスタマイズの容易さは大きな利点ですね。辻さんはどのような経緯で CUICIN を創業されたのですか。

辻:私は前職ではホテル運営会社で働いており、システム開発とブランディングを担当する部署の責任者を務めていました。部署内で宿泊施設の業務効率化のために開発していたシステムが「aiPass」の原型となったものです。その後、紆余曲折を経て2019年11月に独立・創業する形となりました。

 

システム課題を解消するため、クラウド移行を決意

小野里:CUICIN さまがAWSへの移行を検討開始したのは、かなり前からだときいています。

辻:小野里さんとお会いしたのは2020年1月でしたが、その前である前職の頃から AWS 社員の方々には定期的にご相談をしていました。システム基盤に課題を抱えていたため AWS への移行の是非について何度もディスカッションの場を設けさせていただいたのです。

しかし、2020年に入ってからすぐに事業が軌道に乗り、大型の PoC プロジェクトがいくつも決まりました。AWS に完全移行するよりも前に、お客さまの要望に合わせて機能を開発していく方針になったのです。ただし、将来的な完全移行を前提として、新しく開発する機能についてはなるべく AWS のサービスを利用することにしました。

 

小野里:どんな課題を解決するために、AWSに移行されたのでしょうか?

辻:大きく2つの課題がありました。1つは、かつて用いていたクラウドプラットフォームに技術面やサポート体制の課題があったことです。開発・運用に支障が出ていたため、よりサービスとしての利便性が高く、サポートの充実しているプラットフォームに移行したいと考えていました。

もう1つは、前職の頃からメンテナンスを続けていたプログラムに技術的負債がたまっていたことです。独自フレームワークの使用や処理内容のブラックボックス化などが、開発効率を悪化させる原因になっていました。

しばらくの間はそれらの課題がある状態で開発を続けていたのですが、2020年8月の時点で、これ以上この状態を続けるのは無理だと判断し、システム刷新を決意しました。プラットフォームを AWS に完全移行し、プログラムのソースコードもイチから書き直すことを決めたのです。そして、2020年10月末に移行が完了しました。

移行プロジェクトの間は新機能の開発などが止まってしまうので大きな決断でしたが、移行後は開発・運用の効率が格段に向上したため、取り組んで本当に良かったと思いますね。

 

AWS サポートと AWS SA は良き壁打ち相手であり良き伴走者

斎藤:AWSを選ぶ決め手になったのは何でしたか。

為藤:まずはサポートの充実度です。当社にはインフラエンジニアがいないため、システム基盤で何かのトラブルが起きたときに、解決まで時間がかかる状況が続いていました。以前使用していたクラウドプラットフォームはサポートが薄かったこともあり、自分たちでなんとかするしかなかったのです。

しかし AWS は違いました。過去に AWS 社員の方々とのディスカッションや AWS への問い合わせなどを経験するなかで、サポートの手厚さを実感しました。気軽に相談しやすいですし、急ぎの用件であればすぐに返事をくれます。それに、いつも社員の方々が詳細にリサーチしてくれるので、とにかく素晴らしいの一言でした。

AWS に移行したことで、(サポートが充実しているので)まるで社内にエンジニアが1人増えたかのような感覚になります。何か困ったことがあっても大丈夫だという安心感を持てるため、日々の業務における負担が大きく軽減されました。

 

斎藤:サポート以外に良かった部分はありますか。

為藤:世の中に AWS 関連の情報量が多いことです。公式ドキュメントも充実していますし、たくさんの人々が AWS に関する知見やノウハウを発信しています。何か困ったことがあっても、調べれば必ず情報が出てくるのですぐに解決できますね。

小野里:当社のソリューションアーキテクトが技術的なアドバイスをさせていただいたことで、御社にはどのようなプラスがありましたか。

辻:私はエンジニアリングについて深い知識を持っているわけではないため、エンジニアの技術的な判断が本当に正しいのかを見極めることができません。そんなときに AWS のソリューションアーキテクトが技術の良し悪しを判断して、アドバイスをしてくださるのはすごく安心感があります。

為藤:例えば、移行後のアーキテクチャにおける AWS Amplify の導入が好例です。私は AWS Amplify を利用したいという気持ちがあったものの、この技術を導入して本当に大丈夫なのか不安でもありました。そんなとき、AWS の方々が AWS Amplify をすごくおすすめしてくださったので、導入して問題ないと確信できましたね。

 

斎藤:そう言っていただけてすごく嬉しいです。スタートアップソリューションアーキテクトは、お客さまにとっての良き壁打ち相手であるとともに良き伴走者でありたいと私は思っています。

スタートアップソリューションアーキテクトには、過去にさまざまなスタートアップ企業を渡り歩き、数多くの知見を学んできた者が多いです。そのメンバーがさらに社内で知識を蓄えながら、お客さまにとって適切なアーキテクチャについて検討してアドバイスさせていただいております。また、インフラを提供するだけにとどまらず、お客さまが効果的に事業を成長させていくうえで何が大切なのかを提案させていただくことも多いですね。

シンプルかつ利点の多い CUICIN のシステムアーキテクチャ

斎藤:では、現在のシステムアーキテクチャについてお聞かせください。

 

為藤:まず外部のインターネットと接続されているのが Application Load Balancer です。その後段には Amazon ECS on AWS Fargate があり、アベイラビリティゾーンは2つ。AWS Fargate が接続している RDS は Amazon Aurora で、こちらも Multi-AZ 配置が行われています。フロントエンドのソースコードは Amplify Console でホスティングしていますね。AWS Lambda も活用しており、Amazon S3 へのファイルアップロードの処理などはフロントエンドから Amazon API Gateway を経由して AWS Lambda を呼び出す形です。

斎藤:AWS Fargate にはオートスケーリング設定をされていますか。

為藤:はい、やっています。もともとは Amazon ECS on EC2 の利用を想定していましたが、世の中では AWS Fargate が使われるケースが増えているようなので、当社でもチャレンジしてみたところスムーズに導入できました。

斎藤:最近は AWS Fargate が主流になってきていますね。AWS Fargateの特徴は、コンテナ実行環境(ホストマシン)の管理・運用が不要であること。OS や Docker Engine、ecs-agent などのバージョンアップやセキュリティパッチの適用を AWS 側で行います。こうした作業をお客さまが担う必要がないため、作業漏れなどに起因する脆弱性の発生を抑えられ、かつ運用負荷が大きく減るのが利点です。

小野里:斎藤さんはこのアーキテクチャを見てどんな印象を受けましたか?

斎藤:非常にシンプルかつ利点の多いアーキテクチャだと感じました。企業のなかには多種多様なミドルウェアやツールを導入して複雑なアーキテクチャを構築しようとするところもあります。しかし本来、企業がやるべきは複雑なシステムを構築することではなく、ビジネスにフォーカスすることです。当たり前のことではありますが、シンプルなシステムで顧客に価値提供できるならば、それに越したことはありません。その考え方を体現されている素晴らしいアーキテクチャだと感じます。

小野里:アーキテクチャのなかで、信頼性や可用性を向上させている AWS のサービスはありますか。

斎藤:Amazon ECS on AWS Fargate にオートスケールを適用しているので、仮にアクセス量が増加していっても余程のことがない限り、高負荷によってアプリケーションが利用できなくなる心配はありません。データベースとして Amazon Aurora を利用し Multi-AZ 対応を行っているため、データの信頼性も高くなっています。また、AWS Lambda は実行された分しか課金されないため、適切に活用することでコスト削減にも結びついています。非常に堅牢かつスケーラブルで、アジリティのあるアーキテクチャです。アーリーステージのスタートアップにおけるモデルケースだと感じました。

読者の方々には、ぜひ CUICIN 社のシステム構成を参考にしていただけたらと思います。今回は有益なインタビューをさせていただき、どうもありがとうございました。

一同:ありがとうございました!

 

※ アマゾン ウェブ サービス、AWSは米国その他の諸国における、Amazon.com, Inc.またはその関連会社の商標です。