AWS Startup ブログ

【連載】1〜2年の学びを1週間で。re:Inventで人材採用も決まった、カミナシ流・技術投資の全貌

AWS Startup ブログでは、AWS re:Invent に実際に参加されたスタートアップのリアルな声をお届けするシリーズを掲載しています。今回は、2014年の初参加以来一度も欠かさず通算10回以上re:Inventに参加し続ける”re:Inventの達人”、カミナシCTO 原氏に、AWSスタートアップチームの桑原と小野里がインタビューさせていただきました。

*本記事は、2026年7月に実施したインタビューをもとに構成しています。

 

話し手プロフィール

  • 原 氏:取締役 執行役員 CTO。2022年にカミナシへ入社し、CTOとしてエンジニアリング組織を率いる。2014年の初参加以来、AWS在籍時代も含めて一度も欠かさずre:Inventに参加し続け、通算10回以上を誇る”re:Inventの達人”。

*本記事は、2026年7月15日に実施したインタビューをもとに構成しています。

 

2014年の衝撃 ── ECS、Lambda、Aurora が一夜で発表された伝説の年

桑原: 原さん、本日はよろしくお願いします。まず、re:Inventへの参加歴を教えていただけますか?

原: カミナシで取締役 執行役員 CTOをしています原です。re:Inventには2014年に初めて参加しました。当時は社員数名の小さな会社に在籍していて、その後AWSに4年間勤め、2022年にカミナシに入社しました。2014年から2020年のオンライン開催も含め、一度も欠かさず参加しています。通算で10回以上になりますね。

小野里: すごいですね!2014年はどんな年だったのですか?

原: 未だに僕の中で1位、2位を争うre:Inventです。Amazon ECS、AWS Lambda、Amazon Auroraがキーノートで一気に発表された年なんです。当時、僕はコンテナを使いたくて、でもマネージドサービスが世の中にない中でどうやって動かそうかと悩んでいた最中でした。そのタイミングで、自分が抱えていた課題にダイレクトにアドレスするサービスがバーンと出てきた。あの瞬間は忘れられません。

当時のre:Inventはまだ参加者も少なくて、ベネチアンというホテル1つで全部賄われていたんですよ。今のような大規模な交通整理もなく、みんな適当にうろうろしていて。規模が小さい分、その体験も濃密だった気がします。

カミナシ 原 氏(CTO)
カミナシ 原 氏(CTO)

 

re:Inventで優秀なエンジニアを採用 ── 最高のROI

桑原: re:Inventならではのエピソードで印象的なものはありますか?

原: 実はカミナシ社員のre:Invent参加をきっかけに、優秀なエンジニアを1人採用できたんです。これはめちゃめちゃROI出ました。

現地のGameDayに参加した時に、ランダムに組まれたチームで他社から来ていた方と同じテーブルになって。一緒にやったらすごい優秀な方だとわかるんですよ。で、うちのメンバーが「カミナシにおいでよ」と声をかけた。そしたら本当にカジュアル面談につながって、選考を受けてくださって、今は社内でめちゃめちゃ活躍してくれています。

小野里: それはすごいですね。現地で技術課題をやっているようなものですから、その人の能力がわかりますね。

原: そうなんです。GameDayですごい活躍していることが分かるだけじゃなく、人柄的やカルチャーマッチという観点も分かる。採用コストを考えたらre:Invent参加のROIはすごいことになっています(笑)。

re:Inventに来ている人は、お金と時間をかけてわざわざ来ている人たちなので、学習意欲が高かったり、そもそも優秀な人も多いと思っています。

 

英語は「気合い」で乗り越えた ── 伝えたい気持ちが壁を壊す

桑原: 初めて参加された時、英語への不安はありませんでしたか?

原: もちろんありました。仕事で英語を使ったことがなかったですから。ただ、2014年の初参加時に、AWS BatchのチームとEBC(Executive Briefing Center)をやる機会がありまして。自分たちにとって必要な機能追加をリクエストしたかったので、もう必死になって伝えました。ホワイトボードも紙も、マネジメントコンソールにログインして見せるのも、全部使って。AWSの人たちは多国籍企業で働いているので、相手がコミュニケーションを取ろうとする努力をしているとき、ちゃんと理解しようとしてくれるんですよね。だから頑張れば会話が成立する。

小野里: その経験が英語への心理的ハードルを下げたんですね。

原: そうです。それ以来、僕の中では「こっちが伝えようとしているんだから、相手も理解しようとしてくれるはず」という気持ちで臨んでいます。伝わらなかったら、自分が知っている限りの単語で何回も言い直す。そこで相手を待たせることに苦を感じちゃいけない。

今はもちろん、音声の逐次通訳アプリを手元で見ながら参加するメンバーもいますし、ほとんどのセッションは後から動画で出ます。昔と比べてハードルはかなり下がっていますよ。

 

2〜3年かかる学びを1週間で ── re:Inventの真の価値

桑原: スタートアップの方に「re:Inventに行くべきだ」と勧めるとしたら、どんなメッセージになりますか?

原: カミナシも初めてre:Inventに行ったのは、僕が入社した2022年で、その時まだシリーズAのスタートアップだったんです。だから、フェーズの問題ではないと思っています。

僕がお伝えしたいのは、普通だったら結果として1年や2年かけて到達するような学習の域に、1週間で到達できる場所だということです。

小野里: それは強いメッセージですね。具体的にはどういうことでしょうか?

原: 普段仕事をしながら自身の技術の引き出しを増やすのって大変です。多忙な中では、どうしても技術選定やシステムデザインは手グセの繰り返しになりがちなんです。対して、re:Invent には直接的に仕事で使わなそうなAWSサービスや新しめのAWSサービスを基本から応用までガッツリ学ぶための環境があります。通常業務から離れ、自身の技術の引き出しを強制的に増やす環境としてこれ以上に最適な環境はないと思います。

加えて、新サービスや新機能が「なぜ市場に必要とされたのか?(Why)」を直接聞けるところも重要です。技術を正しく理解して使う上で、Whyのストーリーはものすごく大事で。僕の場合、その大切さに気づかされたのがまさにre:Inventでした。

それ以降、新しい技術をキャッチアップする際に、僕はまず公式ドキュメントやブログでWhyを最初にキャッチアップして、その後に触るようになりました。技術のキャッチアップの仕方自体が変わったんです。

 

「面白そう」で終わらせない ── 現地だからこそやり切れる

桑原: 新しい技術に触れる機会は日本にいても得られると思うのですが、現地に行く意味は何でしょう?

原: 「あ、これ面白そうだな」と思った時に、すぐキャッチアップできるかどうかは、その時の仕事の状況やバイタリティにものすごく依存するじゃないですか。リアルな話、面白そうと思って半年触らないなんてことはみんなめちゃめちゃあると思います。

でもre:Inventに行っていると、キーノートで発表された新サービスに対して、その場でワークショップが提供されている。強制的に学びを加速させることができる特殊な環境にいるので、その場でキャッチアップできるんです。開発した人やプロダクトマネージャーが直接セッションをデリバリーしていることも多く、「このサービスを使ってこういうことをやりたいんだけど、どう思う?」と言えば、その場でディスカッションできる。これが先ほどお話しした「結果として1年やとか2年かけて到達するような学習の域に、1週間で到達」できる背景だと思っています。

小野里: やり切れる環境がそこにあるということですね。

原: そうなんです。さらに言えば、一見して今の仕事と短期で直接的に繋がりがなさそうな技術を一気にキャッチアップできることに大きな意義があります。技術者としての幅を広げるという感じでしょうか。

re:Inventに参加すると、仕事では直接使わないものを学ぶきっかけが強制的に生まれる。技術者としての幅を考えたときに、何もしなければ1年とか2年かかるようなものを、1週間でぐっと広げられる。カンファレンスの1週間を通して、技術者としての引き出しがきっと増えているはずです。

 

セッションの選び方 ── 目的別の実践テクニック

桑原: 原さんはどのようにセッションを選んでいますか?

原: 目的によって使い分けています。

  • 明確に質問したいことがあるトピックのセッションは、ブレイクアウトだろうがチョークトークだろうが質問するために参加します。セッション中に聞きたかったことが解決されることももちろんあります。
  • 解像度を高めたい段階の場合はワークショップを選びます。手を動かすことで、ドキュメントからは捉えにくいサービスの輪郭が見えてきます。ワークショップは講師が複数名参加していることが多いので、質問もしやすい印象です。

あと、キーノートで発表された新サービスのワークショップは当日に枠が公開されるので、少しでも興味を持てたらすぐに予約する。その場で発表されたものを、すぐに開発者のガイド付きで触れる場所があるということを知らない人も多いと思います。

 

カミナシ流・re:Invent参加の仕組みづくり

小野里: 会社としてre:Inventへの参加をどう制度化されていますか?

原: カミナシでは社内ドキュメントにre:Invent参加の要件を明文化しています。参加前に満たすべき要件、参加後に満たすべき要件、何のために会社として投資しているのかを明記して、社内公募で応募してもらい、ジャスティフィケーションドキュメントも書いてもらいます。

桑原: 参加要件で特に重視しているポイントはありますか?

原: 学習意欲があることです。普段から勉強していることが分かるメンバー、積極的にAWSの資格を取っている人や、国内でも勉強会などの機会を活用できている人。学習意欲がそもそもないと、参加後のアウトカムが出てこない可能性が高いので。

一方で、行かせてみた結果どんな化学反応が起きるかは、正直分からないんですよね。化学反応が起きないこともある。だから参加後の要件として、ブログ記事によるアウトプット社内での勉強会デリバリーを設けています。これにより、社内のイネーブルメントや採用への貢献という最低限のアウトカムを担保し、社員のre:Invent参加の継続可能性を確保しています。

小野里: すばらしい仕組みですね。実際にどのような成果が出ていますか?

原: トータルで見ると、やはり化学反応は起きています。re:Invent参加をきっかけに、海外カンファレンスに登壇しに行くメンバーが出てきたり、AWSのコミュニティビルダーに選ばれるほど発信をするメンバーが出てきたり。会社の中でも技術の新陳代謝がしっかり起きているし、エンジニアブログの発信も活発になっています。

 

承認者の方へ ── エンジニアを”成長させたい”なら

桑原: 予算の承認をする立場の方に向けて、メッセージはありますか?

原: 人によって、現地に参加させることでどんな化学反応がその人の中で起きるのかは正直分かりません。でも、成長させたいなら、あるいは成長の可能性を感じているなら、ぜひ送り込んでほしいと思います。

期待される効果としては、自社製品を作る上でAWSの利用方法がより高度になる、コストが下がる、運用に3時間かかっていた作業が15分になる、開発の生産性が上がる、と色々あります。キャリアパスのイメージを新しく持ち、モチベーションが高まる人もいるかもしれない。

自社から参加するメンバーに伝えることは、いつもシンプルです。初めて行く人にとっては、ものすごい刺激を受けられる場所だからこそ、その刺激をもとに何かしら変化を生み出して欲しい。そして複数回目の参加になる人には、去年よりも学習効果を高めて、学んできたものを自身や会社の成長に還元してほしい。そんなことを伝えています。

 

re:Inventへ参加するか迷っている方へ

小野里: 最後に、参加を迷っている方に一言お願いします。

原: 迷っているなら、仕事と家庭の調整を済ませて、行った方が絶対いいと思います。

re:Inventは非日常の異国環境でありながらも、比較的安全な場所です(笑)。多国籍な参加者からなる普段とは異なる文化に触れられる特殊な環境で、数十万円で自身の視野を一気に広げられることにも価値があります。

ただし、自分から動かないのであれば何も得られません。例えば言語の壁がある中でも、積極的に動くことが大事です。そこにしかない出会いや学びが、きっとあなたのキャリアの礎になるはずです。

 

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