AWS を使った働き方改革 : 第 2 回 - Amazon Connect で実現する在宅勤務

2020-04-28
ビジネスxクラウド

Author : 木村 雅史

builders.flash 読者の皆さん こんにちは!「ビジネス×クラウド」カテゴリを担当する、ソリューションアーキテクトの木村です。

Amazon Connectは、100 % クラウドベースで、コンタクトセンターを即座に立ち上げ、すぐに利用する事ができるコンタクトセンターソリューションです。もちろん、在宅型のコンタクトセンターとして利用する事も簡単です。今回は "Amazon Connectで実現するリモートワーク(在宅勤務)" について詳しくお話したいと思います。

コンタクトセンターの在宅勤務

これまでコンタクトセンターの在宅勤務は「慢性的な人材不足」や「繁忙期・閑散期の一次的な対応者の確保」といったコンタクトセンター側の事情と、働き方の多様化やワークライフバランスの充実といった、コンタクトセンターで働くスタッフの方々の要望に応える形で進んできています。ちなみに、Amazon のカスタマーサービスは本格的に在宅勤務での対応を行っています。(Amazon 在宅物語)

また、近頃は、台風などの災害や緊急事態に備える事業継続プラン (BCP) の視点でも、在宅型コンタクトセンターは有効な手段になります。

在宅型コンタクトセンターのハードルとクラウドサービス

コンタクトセンターの在宅勤務の環境を、従来のオンプレシステムの拡張で対応するのは、なかなか大変です。例えば、

  • 在宅用の専用電話機、VPN 機器、コンタクトセンターライセンスを購入、セットアップするために何ヶ月も必要
  • 専用電話機や VPN 機器などを、各エージェント宅に送付して、設置、セットアップしなければならない
  • 場合によっては、機器のインストールをエージェントにやってもらう必要がある
  • これらの追加機器・ライセンス・展開費用のコスト増が大きな負担になる
    などなど、気が重くなる課題がたくさんありました。

クラウドコンタクトセンターサービスの Amazon Connect を利用すれば、このような課題をクリアして、災害対応やオペレーターの働き方改革のための在宅にも簡単に対応できるコンタクトセンターシステムを素早く低コストで利用する事ができます。

Amazon Connect とは

Amazon Connect は元々、Amazon.com の大規模コンタクトセンター向けに開発された技術がベースになっている、100 % クラウドのコンタクトセンターサービスです。設定も GUI でわかりやすいので、お客様自身がセルフサービスで環境を作ったり、設定変更したりすることが可能です。

料金はオペレーター席数や同時通話数には一切関係なく、使った時間つまりお客様と通話した時間に比例する完全な従量課金となっており、特別な初期費用や長期契約は不要です。そして、Amazon Connect はこの図にあるように、IVR や ACD、CTI 連携と言ったコンタクトセンターで必要とされる機能に加え、電話回線・電話番号までをも一元的に提供するクラウドサービスとなっています。

クリックすると拡大します

また、クラウドサービスの特徴として、インターネット回線さえあれば、全国どこからでも Amazon Connect のコンタクトセンターにアクセスできます。この特徴によって、複数のオフィスやコンタクトセンター拠点や在宅のエージェントを含めて、場所に依存しない運用が簡単に実現できます。これは、1 つのルーティングエンジンにより全国で業務を共通化して、適切なエージェントに着信させることで、全体として、業務効率化を図ることが可能になります。

もちろん、Amazon Connect は、AWS によるマネージドサービスとして、マルチ AZ での冗長構成でサービス提供しています。

クリックすると拡大します

Amazon Connectで在宅コンタクトセンターを構築するポイント

さて、ここからは Amazon Connect で在宅コンタクトセンター環境を構築する際大事なポイントをご紹介していきたいと思います。この図に沿って流れを説明していきます。

1. Amazon Connect の設定 (はじめの一歩)

まず、AWS にログインして、Amazon Connect インスタンスを作成し、次に受電用の電話番号を取得します。そして、問い合わせフローを作成していきます。この詳しい手順はハンズオンコンテンツを用意しています。ステップバイステップで設定内容を確認していただく事ができますので、是非ご覧ください (所要時間は 30 分ほどです)。

2. エージェント環境の準備

次はエージェント環境の準備です。エージェントは CCP というブラウザベースのソフトフォンを使って通話を行います。インターネット回線、Chrome か Firefox がインストールされている PC、ヘッドセットさえあればすぐに業務を開始することができます。ヘッドセットは USB タイプがお勧めです。アナログや Bluetooth タイプに比べて、セットアップが簡単な高音質モデルがそろっています。

3. お問い合わせ電話番号の決定

さあ、これで Amazon Connect でお客様からの電話を受け付ける事ができるようになりました ! 新規のお問い合わせ窓口であれば、Amazon Connect で新規に取得した番号をそのまま利用する事ができますが、既設の窓口の場合は、お客様にご案内している現在の電話番号をそのまま継続利用したいケースが多いと思います。この実現方法として一番シンプルな方法は、電話キャリアの着信転送サービスを利用して転送する方法です。

クリックすると拡大します

よくあるケースとして、0120 / 0800 のトールフリーサービス (着信課金サービス) の場合を、詳しく説明します。この場合、0120 / 0800 番号の着信先電話番号として、0ABJ 番号 (加入固定電話番号) が設定されているはずです (この電話番号を "裏番号" と呼ぶこともあります)。

電話キャリアによって呼び名は変わりますが、0ABJ 番号には、オプションサービスとして "着信転送サービス" が提供されています (例えば、NTT 東日本 / NTT 西日本では "ボイスワープ" というサービス名です)。

この転送機能を利用して、Amazon Connect に設定した電話番号に転送設定することで、0120 / 0800 番号 → 0ABJ 番号 → (着信転送サービス) → Amazon Connect というフローで着信できます。

ほとんどの着信転送サービスは、0120 / 0800 番号への転送をサポートしていないので、Amazon Connect 側の電話番号は DID 番号 (050 または 03 番号) を利用してください。

この方式だと、電話してきたお客様の発信者番号 (ANI) がそのまま、Amazon Connect 側の着信番号となるので、この値をつかって CRM と連携してお客様を判別したり、エージェントデスクトップにお客様情報をポップアップしたりすることが可能です。主な注意点は、次の 2 つです。

  1. この方式の場合、0ABJ 番号から Amazon Connect の DID 番号への転送料金がかかる。
  2. Amazon Connect から発信する時には、転送元の 0120 / 0800 番号を発信者番号として、電話先に通知する事ができない。

これ以外の既存番号の継続利用方法を検討したいという場合は、AWS の担当者までご相談をお願いします。

Amazon Connect 利用におけるセキュリティ強化のポイント

エージェントは、インターネット回線を利用して Amazon Connect にログインし、ソフトフォン (CCP) を利用して電話対応を行いますが、この全ての通信は暗号化されています (シグナリングは TLS で暗号化され、音声メディアは SRTP で暗号化されます)。

Amazon Connect を利用した在宅型コンタクトセンターにおいて、セキュリティ強化のポイントを 2 点ご紹介します。

1. エージェントログイン時に多要素認証 (MFA) または IP アドレス制限を行う

Amazon Connect の標準構成の認証は、Amazon Connect 内で管理するユーザ ID / パスワード情報での認証のみとなります (このパスワードは 8 文字以上で、大文字、小文字、数字が含まれている必要があります)。

よりセキュリティを向上させるための施策として、外部 ID プロバイダ (外部 IdP) の認証機能を利用して、ログイン時に MFA トークンデバイスを利用した多要素認証を実現する事や、エージェントの送信元 IP アドレスを制限する事ができます (*)。

Amazon Connect の Security Assertion Markup Language (SAML) 2.0 に対応した ID フェデレーションの設定については、詳しくはこちらをご覧ください。 

アイデンティティ管理ソリューションのOktaを利用した場合の設定例はこちらです。

(*) Amazon Connect のインスタンスを作成した後には、認証方式を変更できませんので、一番最初に選択してください。

2. 仮想デスクトップ (VDI) を組み合わせて利用する

個人情報を扱う場合など、よりセキュアな PC 環境が必要な場合は VDI サービスの Amazon WorkSpaces と組み合わせて利用することができます。各エージェント専用の仮想デスクトップにインターネット経由で接続し、社内ネットワークに接続された業務システムと共に、お客様サポートを行う事もできます。代表的なパターンとして、ソフトフォンの音声を仮想デスクトップで受信する方式 (1. Voice over VDI 方式)と、クライアントローカル PC で音声を受信する方式 (2. VoIP 直方式)の 2 パターンがあります。]

Amazon WorkSpaces 導入について解説した記事はこちら »

クリックすると拡大します

本番稼働前にサービスクォータの確認を

Amazon Connect を本番導入する前に、サービスの制限値 (サービスクォータ) を確認してください。例えば、デフォルトの同時通話数は低めの値になっています。

これらの制限値の多くは、AWS サポートセンターにリクエストしてもらえれば、増加することが可能ですので申請をお願いいたします

在宅でのチーム間のコミュニケーション

在宅型コンタクトセンターでは、スーパーバイザーの目の届くところにエージェントがいるわけではありません。在宅でのチーム内コミュニケーションはどうすべきでしょうか ? 

そのための解決策として、社内のコラボレーションツールを利用する方法があります。AWS では、組織の内外でビデオ会議、テキストチャットを簡単に可能にする Amazon Chime というサービスを用意しています。このサービスについては、次回詳しくご紹介します。

この連載記事のその他の記事はこちら


builders.flash メールメンバーへ登録することで
AWS のベストプラクティスを毎月無料でお試しいただけます

筆者プロフィール

木村 雅史 (きむら まさふみ)
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
ソリューションアーキテクト

金融機関のお客様の Cloud Journey のご支援と、Amazon Connect を中心として、コンタクトセンター次世代化のお手伝いをしています。
好きな AWS サービスはもちろん ”Amazon Connect”。好きなTV番組は ”水曜どうでしょう” です。

AWS を無料でお試しいただけます

AWS 無料利用枠の詳細はこちら ≫
5 ステップでアカウント作成できます
無料サインアップ ≫
ご不明な点がおありですか?
日本担当チームへ相談する