杉山「AWS へのマイグレーションを成功させるには、どういったスキルが必要ですか?」
松尾「まず、オンプレミスの技術と AWS の技術を変換するスキルが必要です。AWS のスキルは必ず必要ですし、移行元となるシステムへの理解も重要です。オンプレミスの技術を知らないとお客様と会話ができないんですよね。」
杉山「翻訳をするときも日本語と英語の両方を知っていないとできないですもんね。」
松尾「まさに翻訳ですね ! オンプレミスのこの機能を AWS で実現しようとすると、こういう方法がありますっていう説明をするスキルが必要になります。アーキテクチャだけでなく、マイグレーションした後の運用についても考える必要があります。物理的な管理がなくなって楽になる面もありますが、変わる部分もあるのでオンプレミスと AWS の両方の知識が必要ですね。インフラ、アプリケーション、データベースも含めた幅広い範囲の知識が必要になるので、私も苦労しています。」
杉山「オンプレミスの技術と AWS の技術の変換がポイントなんですね。」
松尾「もう 1 つ重要なスキルが、プロジェクト管理のスキルです。テクニカルな話ももちろん大事ですが、実は一番マイグレーションで苦労するのが、ノンテックな部分なんです。とりあえずマイグレーションしたいんだ ! みたいな最初のふわっとした状況から、目的や要件を整理して、プロジェクトの立案、マイグレーション計画の作成、プロジェクト管理をしていくスキルが重要です。」
杉山「ノンテックな部分って正解がなかなかわからないですよね。テクニカルな部分って、検索したりドキュメントや書籍でも必要な情報を見つけられますが、ノンテックな部分って会社ごとに事情も違うので、どの会社もこの計画で進めれば OK ! といった万能なマイグレーション計画ってないですもんね。」
松尾「そうなんですよね。特にマイグレーションって、開発と違って拠り所になるフレームワークも少ないので、みなさん苦労されています。プロジェクトをきっちり計画して進めていくことが、一番の近道になります。」
杉山「マイグレーションを成功させるには技術に関する知識以外も重要ということですね !ではこれらを踏まえて、マイグレーション関連のスキルを学習できる勉強方法についてお話をさせてください。座学とハンズオンについてお話を伺いたいのですが、まず座学での勉強について、おすすめの資料や教材はありますか ?」
松尾「まず、AWS のスキルについては、AWS サービス別資料の「移行と転送」シリーズ を見ていただくと良いと思います。私たちも AWS Black Belt Online Seminar (以後、Black Belt) の資料は力を入れて、わかりやすいように作成しているので、ぜひチェックして頂きたいです。」
杉山「どの資料も図がついていて視覚的にわかりやすかったり、かみ砕いた説明をしてくれているので、初学者の方でもとっつきやすいですよね。AWS Application Migration Service (AWS MGN) 概要 みたいにサービスに特化した内容だけでなく、 クラウド移行で実現できるビジネス価値と経済性評価の考え方 みたいな考え方についての内容もあるので、多くの方に参考になると思います。」
松尾「あとは AWS Summit の資料もおすすめです。マイグレーションに特化したセッションやお客様事例も参考になるかと思います。」
杉山「AWS Summit のセッションもかなりわかりやすいですよね。ちょっと私からもおすすめのセッションを紹介させて頂きたいのですが、これから大規模なマイグレーションを控えていえるという方には リホストから始める AWS への サーバー移行 を一度見て頂きたいですね。あとは、普段からマイグレーションの支援をされているよという方には マイグレーション&モダナイゼーション関連サービス概要とアップデート みたいなアップデートのキャッチアップができるセッションもおすすめです。」
松尾「ありがとうございます。Black Beltや AWS Summit の資料を入口として使って頂いて、詳細な仕様を確認したい時などにAWSのドキュメントをご確認頂くと良いのかなと思います。」
杉山「オンプレミスの技術を知るにはどうしたら良いでしょうか ?」
松尾「オンプレミスの技術については、少し古い技術を知っておくことがポイントです。マイグレーション対象のシステムって 10 年 20 年前に構築されていることが多いんですよね。なので、年代を絞ってネットで検索をしたり、IT 雑誌のバックナンバーを見るたりします。」
杉山「なるほど。おすすめの雑誌はありますか ?」
松尾「今は廃刊になっちゃったんですけど WEB+DB PRESS総集編[Vol.1~120] と Software Design の総集編 (【2001~2012】/ 【2013~2017】) がおすすめです。」
杉山「総集編なんてあるんですね!」
松尾「そうなんですよ ! 紙媒体だと場所もとるんですけど、ディスクやデータだと持っておくのも楽で良いんですよね。全部頭から見る必要はないんですが、マイグレーション案件があったときに、さかのぼって検索するインデックスとして使って頂くと良いと思います。」
杉山「マイグレーション対象のシステムが作られた当時の技術を知っておくことがポイントなんですね。ほかにおすすめはありますか?」
松尾「あとは Amazon Web Services 基礎からのネットワーク&サーバー構築 もおすすめです」
杉山「これは私も読みました !」
松尾「この本って、実は AWS だけを学ぶ本じゃなくて、AWS 上で様々な技術を学ぶ本なんですよね。様々な技術の中に、DNS とか HTTP とかマイグレーション案件で関わる技術も含まれています。」
杉山「AWS の技術とオンプレミスで使われている技術の両方が学べるのは一石二鳥ですね ! プロジェクト管理について学べるものはありますか ?」
松尾「プロジェクト管理でいうと、PMBOK が参考になりますね。IT に限らず、プロジェクトマネジメントに関する知識を学ぶことができます。資格でいうと PMP とか IPA のプロジェクトマネージャー試験 が勉強になります。合格するかは別として、受験勉強するだけでも体系的な知識が得られるので良いと思います。IPA のプロジェクトマネージャー試験の学習をしていると参考になる IPA の資料が出てくるので、私もそれを現場で輸入して活かしています。」
杉山「ありがとうございます ! ここまでは座学の勉強方法に関してお伺いしてきましたが、手を動かして学べるようにハンズオンでおすすめのコンテンツはありますか ?」
松尾「AWS Skill Builder がおすすめです。」
杉山「AWS が提供するE-Learningのオンライン学習センターですよね ! 日本語化されたコンテンツもかなり増えてきてるので、学習しやすいですよね。」
松尾「私も普段から Skill Builder をチェックしていて、新しい日本語のコンテンツが出てくると学習したりしています。」
杉山「Skill Builder は、有償のサブスクリプション契約を結んで頂くと、手順書付きのハンズオンが使えるんですよね。無料でも AWS Application Migration Service (MGN) や AWS CAF などのマイグレーションに役立つ多くのコンテンツを見ることができるのでとりあえず登録しておいて損はないですね。」
松尾「あと最後に、座学とハンズオンの勉強の両方でおすすめできるのが、AWS のクラスルームトレーニング です。特にマイグレーションについて学びたいということであれば、Migrating to AWS がおすすめです。」
杉山「ありがとうございます ! ちょうど私から紹介しようと思っていたところでした!Migrating to AWS は、マイグレーションの企画段階から、計画の作成、実際のマイグレーション方法、切り替え、マイグレーション後の最適化まで、マイグレーションに関わる全てのフェーズを学べるコースです。マイグレーションプロジェクトのコアメンバーを担う方はもちろん、ベンダーさんにマイグレーションを支援してもらうという場合のベンダーさんとの窓口になって中心的に話をする方にもおすすめのコースです。」
松尾「私はクラスルームトレーニングが守破離でいうところの守。BlackBelt、AWS のドキュメント、SkillBuilder などのコンテンツで学習して補完して頂くのが破。実案件や PoC で検証して頂くのが離だと思っています。まずは Migrating to AWS で体系的に学んで頂くと良いかなと思います。」
杉山「本日はどうもありがとうございました ! 勉強方法だけでなく、貴重な 2011 年ごろのクラウド業界のお話まで聞けて非常に面白かったです。」
松尾「ありがとうございました !」