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AI 時代にエモーショナルインテリジェンスの力を活用する

エモーショナルインテリジェンスで導く

ますます多くのお客様が、競争力を獲得するために人工知能 (AI) と機械学習 (ML) のテクノロジーの導入を推進するにつれ、エモーショナルインテリジェンスのようなヒューマンスキルへのニーズが高まってきています。これらの高度なテクノロジーはプロセスを合理化し、貴重な洞察をもたらすことができますが、それらを統合するには、技術的な専門知識と対人能力がバランスよく組み合わされたスキルセットを備えたワークフォースが不可欠です。AWS の委託により Access Partnerships が実施した調査である「Accelerating AI Skills」(2023 年 11 月) によると、イノベーションを促進し、創造性を高め、反復的なタスクを自動化するために今後 5 年間で生成 AI を使用すると見込んでいる雇用者の割合は、驚くべきことに 93% にも上ります。また、World Economic Forum の「The Future of Jobs Report 2023」によると、今後 4 年間で労働者のコアスキルのほぼ半数にディスラプションが起こるとされています。

 

エモーショナルインテリジェンスで導く

AI/ML を使用した進化

「より高度な機械学習の手法の導入に向けた世界的な革命のさなかにあって、イノベーションの人間的側面が置き去りにされないことが非常に重要です」

イノベーションの人間的側面

イノベーションが純粋な知性よりも、むしろ決意、気概、心理的安全性に関係していることが研究によって示されています。「Business EQ Research Monthly」によると、現在の AI 時代において、共感、適応性、対人スキルなどの人間特有の資質がこれまで以上に重要になるとされています。適応力、回復力、信頼、何物も恐れない心といったヒューマンスキルは、技術的な熟達と同じくらい AI の導入の成功に不可欠です。リーダーがトランスフォーメーションの社会感情的側面に対処しなければ、AI と機械学習のベネフィットを十分に実現するのに苦労するでしょう。思慮深い人材イノベーション戦略は、これらの技術の将来性を活かす鍵となる可能性があります。

私は、AWS における EPIC プログラムの Global Program Manager として、何百ものお客様と協力して、お客様がイノベーションの人間的な側面に対応するのをサポートする機会に恵まれました。当社のエンゲージメントの中心にあるのは、EPIC チームが共有する、AI 駆動の未来で成功するために必要となるマインドセットとエモーショナルインテリジェンススキルに関するインサイトです。組織がこれらの能力を育成することにより、ワークフォースはプロセスとテクノロジーを有効活用してイノベーションを推進できるようになります。私は 20 年を超える期間にわたってテクノロジープロジェクトに携わってきましたが、テクノロジーが機能しなかったためにプロジェクトが失敗したという事例をほとんど見たことがありません。デジタルトランスフォーメーションプロジェクトを人、プロセス、テクノロジーで構成される三脚椅子と考えるなら、AWS の EPIC リーダーシッププログラムは、椅子の「人」に相当する脚に真っ向から着目しています。人的要因を無視すると、椅子はひっくり返るでしょう。

自動化と機械学習は、人間が仕事や生活における退屈な作業を自動化するのに役立ちます。これにより、人間は単調な作業から解放されて、より複雑で人間特有の問題に取り組む時間をより多く確保できるようになります。より高度な機械学習の手法の導入に向けた世界的な革命のさなかにあって、イノベーションの人間的側面が置き去りにされないことが非常に重要です。私たち人間による創造と自動化の一助とするために利用できる新しい AI ツールが急増している中で、人間の仕事を有意義で興味深いものにするものは、人間固有の考えと人間としての強みを取り入れることであることを忘れないことが重要です。ソリューション全体を AI に任せると、これらの才能が喪失する可能性があります。AI が仕事と私生活のいたるところにますます浸透するにつれて、私たち誰もがこの選択をより意識的に行うことになるでしょう。

導入事例:Equals Group

英国の上場フィンテック企業である Equals Group は、EQ スキルがイノベーションにどのように影響し始めるかを例示しています。Equals Group の最高技術責任者である Andrew “Rew” Phillips 氏は、同社が従業員数に関してわずか 6 人から 450 人以上に急成長するのを見てきました。同氏は、この成功の大部分が、思いやる、勝利する、従業員がイノベーションを行えるようにするという同社の強固な文化によるものだと考えています。しかし、Rew 氏は、企業の規模が拡大するにつれて、さらなる優位性が必要であることを認識しました。この優位性は、EQ と共感的なリーダーシップの重視という形で生まれました。

Rew 氏は当初、自分の EQ スキルは高いと思っていました。しかし、同氏と同氏のチームが受けた AWS EPIC リーダーシップトレーニングで、改善すべき重要な領域がいくつかあることが明らかになりました。例えば、同僚の話を聞くときにもっと冷静で注意深い態度を取る、他の人のアイデアを引き出すのではなく、すぐに解決策を見つけようとする傾を避けことなどが指摘されました。Rew 氏は、会議中に携帯電話を片づける、自由回答形式の質問を増やすといった、些細であるが影響力の大きい変化を起こすことで、内向的なチームメンバーが各自の革新的な考えを共有してもよいと感じる環境を構築することができました。科学に裏付けられた手法とピアツーピアフィードバックの融合を特徴とする EPIC トレーニングは、Rew 氏と同氏のリーダーたちに、心理的に安全な、創造性とコラボレーションの文化を醸成することによって Equals におけるさらなる成長を促進するためのツールを提供しました。Rew 氏が内省したように、「それは、これらの人々が本音を言うことができるようにし、私が耳を傾けようと思っていることを知ってもらえるようにするとに関するものです。」 Rew 氏の EPIC ジャーニーの詳細については、こちらをご覧ください。

心理的安全性の重要性

最も革新的なチームは、心理的安全性という特徴を備えています。これは、負の結果を恐れることなく、リスクを負い、アイデアを表明し、間違いを認めることが安全であるという共有された信念です。Harvard Business School の教授、Amy Edmondson 氏の研究により、心理的安全性が業績の良い革新的なチームの最大の特徴であることが示されています。Edmonson 氏の研究は、心理的安全性の欠如のマイナス面も明らかにしました。そのようなマイナス面には、組織の全体的な業績への悪影響はもとより、従業員のウェルビーイングへの悪影響 (ストレス、燃え尽き症候群、離職など) も含まれます。特に、同氏の最新の研究により、心理的安全性はイノベーションを促進するために必要ではあるが、十分ではないことが示されています。リーダーは、高い心理的安全性と高い期待を組み合わせて、チームを高パフォーマンスゾーンに導く必要があります。(出典)

要するに、AI 時代に成功する組織とは、人的資本に多額の投資をする組織であるということです。リーダーは、エモーショナルインテリジェンスを育み、心理的安全性を高め、信頼を得ることにより、これらの変革的なテクノロジーの可能性をワークフォースが最大限に活かせるようにすることができます。AWS における EPIC チームは、お客様のエグゼクティブやリーダーと連携して、脳の過小評価されがちなこの側面を活かし、集中力、創造性、イノベーションを強化するのをサポートします。私たちはこれまで何万人ものお客様のリーダーにこれらの重要なスキルを提供してきましたし、今後もさらに多くのリーダーに提供していきたいと考えています。

著者について

AWS、EPIC Leadership Program、Senior Innovation Specialist、Charis Loveland

Charis Loveland 氏は Amazon で EPIC Emotional Intelligence イニシアティブを管理しており、このイニシアティブにおいて、過去には AWS Cloud Intelligence のための人工知能および機械学習 (ML) チームを率いていました。製品管理、AI、データ分析、新製品紹介、ファイルおよびハードウェアストレージ、ソフトウェア開発の分野において 20 年以上の経験があります。Charis 氏は、コーディングインストラクター、メンター、初期の STEM 教育の提唱者であるとともに、テクノロジー業界におけるダイバーシティ拡大の促進を支援する複数の非営利組織のボランティアも務めています。

Charis Loveland 氏、シニアイノベーションスペシャリスト、EPIC Emotional Intelligence、AWS

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