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2020 株式会社セブン&アイ・ホールディングス

グループ横断のデジタル戦略として、CRM を実現するロイヤリティプログラム・分析基盤を AWS 上に構築。「デジタル」の力で顧客エンゲージメントを強化

概要

セブン‐イレブン、イトーヨーカドー、そごう・西武、デニーズ、ヨークベニマル、ロフト、赤ちゃん本舗、金融サービス等、顧客のライフステージに合わせた店舗を展開するセブン&アイグループ。持株会社として機能する株式会社セブン&アイ・ホールディングス(以下、セブン&アイ HLDGS.)は、デジタル戦略の中核であるグループ横断のロイヤリティプログラムの管理基盤をアマゾン ウェブ サービス(AWS)で構築しました。合わせて、グループの事業者の持つ購買データやアプリ行動データを蓄積するデータレイクを構築し、店舗と EC を連動した顧客分析やマーケティングなどに活用しています。
Modern office building with the 7&i Holdings logo, photographed for an AWS case study under a clear blue sky.

顧客エンゲージメントの強化に向けグループ横断の CRM 基盤を構築

あらゆるステークホルダーから信頼される誠実な企業を目指し、さまざまなライフステージに対応する多業態グループ経営を推進するセブン&アイグループ。店舗数は日本国内で約 22,500 に達し、1 日の利用者数は 2,500 万人を超えています。

デジタル活用を重要戦略に掲げる同グループは、POS データ、電子マネー(nanaco)、EC サイト(オムニ 7)、各種カードの会員情報などを通して、顧客情報の集積に取り組んできました。しかし、これらの情報は連携されておらず、データ活用や個々の顧客に向けた生活スタイルの提案などが課題になっていました。そこで、グループシナジーの創出に向け、顧客との関係性を高める CRM 戦略を推進する方針を決定しました。

「具体的には、グループ共通 ID として 7iD(セブンアイディ)を新たに導入し、散在していた顧客情報を統合把握することです。さらに、7iD に紐付くグループ横断のロイヤリティプログラムによって、顧客エンゲージメントを強化します。お客さまに楽しんで買い物をしていただくとともに、購買行動などを分析することで潜在的な要望を先回りして提供し、グループ内での買い回りの機会を増やすことによって、Life Time Value (顧客生涯価値)を最大化することが目的です」と語るのは、DX 統括部 シニアオフィサーの伏見一茂氏です。

予測が難しい会員数の増加にも対応できるスケーラビリティの高さを評価

2016 年 8 月頃から、CRM 基盤の検討に着手したセブン&アイ HLDGS. は、AWS の採用を決定しました。AWS を選択した理由を、DX 統括部 CRM 推進 オフィサーの野口大輔氏は次のように語ります。

「予測が難しい会員数の増加にも柔軟に対応できる、スケーラビリティの高さを評価しました。また、将来にわたって進化をさせていくことを見据えた時、新たな機能が次々にリリースされる AWS は非常に魅力的でした。加えて、米国のセブン - イレブンの CRM 基盤で先行導入されていた実績も安心感につながりました」

プロジェクトは 2016 年末よりスタート。2018 年 6 月に CRM 基盤の構築を終了し、7iD を利用したグループ横断型のロイヤリティプログラム『セブンマイルプログラム』を開始しました。新たな CRM 基盤は、大きく 3 つの領域に分かれています。1つは、事業会社の購買データやアプリ行動データを蓄積するデータ蓄積基盤(データレイク)で、Amazon S3 で構築しました。2 つめは、データレイク上のデータを抽出して分析する基盤で、大規模データの分析に対応する Amazon EMR と Amazon Redshift を採用しています。3 つめはロイヤリティプログラムの管理基盤として、Amazon EC2 上に構築しました。

システム間連携はオープン API を採用し、Amazon API Gateway と AWS Lambda によるサーバレスアーキテクチャで構築。API を経由した同時データアクセスのパフォーマンスを改善するため、Amazon DynamoDB を活用しています。
各事業会社の店舗と EC のデータをデータレイクに集約するにあたり、「事業会社との調整には時間をかけて実施しました」と伏見氏は振り返ります。

「当初は個社の情報を、グループ全体に公開することに不安があったようです。そこでデータの活用や加工に関するルールや制限事項を明確化し、各社の合意・納得のもとで集約を進めてきました」

グループ横断の顧客動向の把握により離脱防止やグループ内相互送客が実現

グループ店舗やオムニ 7 での買い物でポイントが貯まり、電子マネーなどに交換できるセブンマイルプログラムは人気プログラムに成長しています。プログラムを活用して顧客分析を実施し、属性に応じたクーポン配信やプロモーションを展開した結果、月平均の購買金額は従来の電子マネー会員より 1,535 円上昇し、購入回数でも 3.2 回上回るという成果も出ました。

データレイクに蓄積したデータの分析は、業務知識を有した約 10 名の分析チームが担当しています。さまざまな切り口で分析しながら、そこで得られた結果を施策に反映し、グループ内の相互送客を促したり、店舗から EC に誘導したりしています。

「例えば、イトーヨーカドーとネットスーパーの併用者や、セブン‐イレブンとそごう・西武の両方で買い物をしている人といった優良顧客が見えるようになり、離脱防止 / 定着につながる施策が打てるようになりました。セブン‐イレブンと赤ちゃん本舗の両方を利用している顧客の買い物動向といった、異なる業態の組み合わせから得られる示唆もあり、ライフステージに寄り添った提案が実現しています。セブン‐イレブンの購入店舗の変化から顧客の転居を察知し、最寄りの百貨店やスーパーを案内することも可能になりました」(伏見氏)
最近は事業会社でもデータ活用を開始し、事業の視点からクーポン発行などの施策を実施するケースも増えています。「結果として事業会社の意識も変化し、商品視点から顧客視点で考えられるようになってきました」と伏見氏は語ります。

一方、CRM 基盤のデータレイクは、日々増え続けていくデータに合わせて進化を続けています。

「トランザクションを常時監視し、継続的に環境を最適化しています。分析者の要望に応じて新たなデータを追加したり、データを一次加工したりしながらより使いやすい分析基盤へと進化を図っています。稼働から 2 年以上が経っていますが AWS に起因する障害は一度も発生しておらず、安定稼働を続けています」(野口氏)

外部データと連携。新たなマーケティングや商品開発に活用

今後の CRM 戦略としては 7iD の連携を未対応の企業にも拡大し、グループ間の相互送客を拡大していく方針です。また、外部企業とのデータ連携も視野に入れ、各種マーケティング、商品開発、データビジネスの創出等を進めていくといいます。

AWS の活用については、2020 年 9 月にオンプレミス環境で運用していたセブン - イレブンアプリの基盤を AWS へと移行しました。今後、他の事業会社のアプリやネットコンビニも順次 AWS に移行し、スケーラブルな特性を活かして顧客に対する一斉プッシュ配信を実施したり、UX の強化を図ったりしていくといいます。

「次々と新しいサービスがリリースされる AWS の情報にキャッチアップし続けるのは大変ですが、パートナーを介して AWS とのコミュニケーションを深め、CRM やデータ活用に関する課題を解決するソリューションを導入していきますので、引き続き支援を期待しています」(伏見氏)

Logo of Seven & i Holdings featuring Japanese characters and stylized design elements in orange, green, and red.
グループ横断のロイヤリティプログラムと、グループ共通 ID に紐付くデータを管理・ 分析する基盤を、AWS を採用することによって短期間で構築することができました。今後、顧客とのエンゲージメントをさらに強化することで Life Time Value(顧客生涯価値)を最大化していきます

伏見 一茂 氏

株式会社セブン&アイ・ホールディングス DX 統括部 シニアオフィサー

アーキテクチャ図

Architecture diagram of the 7&I AWS data platform showing integration of business systems, data storage using Amazon S3, Amazon EMR, Amazon Redshift, and private cloud security. Includes data flow between affiliate companies and customer management system omni7, labeled in Japanese.

株式会社セブン&アイ・ホールディングス

  • 設立: 2005 年 9 月 1 日

  • 資本金: 500 億円

  • グループ売上: 11 兆 9,976 億 4,300万円(2020 年 2 月期)

  • 連結従業員数: 138,808 人(2020 年 2 月末現在)

  • 事業内容:コンビニエンスストア、総合スーパー、食品スーパー、百貨店、専門店、フードサービス、金融サービス、IT /サービスなど、各事業を中心とした企業グループの企画・管理・運営

AWS 導入後の効果と今後の展開

  • デジタルの力でエンゲージメントを強化する CRM 基盤の実現

  • 顧客属性に応じたクーポン配信やプロモーション施策の実現

  • 従来の電子マネー会員と比べて月平均の購買金額が 1,535 円、購入回数が 3.2 回増加

  • データ分析に基づくグループ内相互送客の実現

本事例のご担当者

伏見 一茂 氏

A portrait of a businessman wearing a pinstripe suit and white shirt, featuring an SDGs (Sustainable Development Goals) pin on his lapel.

野口 大輔 氏

A businessman wearing a dark suit and a striped tie, featuring a Sustainable Development Goals (SDGs) pin on his lapel, shown from the chest up.