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2024 株式会社アクト・ノード

アクト・ノード、農業 / 畜産 / 養殖の生産性向上のアプリを AWS 上に開発。IoT や AI で記録を自動化。『鶏の体重推定 AI』では計測誤差 3% を実現

アグリテック

概要

農業、畜産、水産養殖など生き物を育てる一次産業の生産者や流通事業者向けに、IoT や AI などの技術を使ったサービスを提供する 株式会社アクト・ノード。同社は農業・畜産・水産養殖向け記録アプリ『アクト・アップ』をアマゾン ウェブ サービス(AWS)上で開発し、2020 年 10 月より提供しています。2023 年 4 月には『ブロイラー体重推定 AI』機能を追加した新バージョンをリリース。計測誤差 3 % 以下を実現し、養鶏業者の生産性向上に貢献しています。
A person kneels among many chicks in a large, modern chicken farm in Japan. The inset shows IoT cameras mounted on the ceiling, used for monitoring poultry conditions.

課題・ソリューション・導入効果

ビジネスの課題

生産データの一元管理による現場の作業負荷軽減

アクト・ノードは、大手 IT ベンダー系列のソリューションカンパニーで農業 IoT サービスの開発を手がけてきた CEO の百津正樹氏が、2020 年 1 月に設立したアグリテックスタートアップです。“一次産業をテクノロジーでつなぐ”をスローガンに、農業/畜産/養殖向け IT/IoT サービスを提供しています。現在、同社の主力サービスとなっているのがクラウドアプリの『アクト・アップ』です。アクト・アップは、一次産業の生産管理に必要な「作業」「資材」「環境」「生育状態」などすべての生産情報をデジタルデータとして統合的に記録・管理できるのが特徴です。

「一次産業で必要なデータは主に、作業情報、生育情報、環境情報の 3 つです。そのうち、取得が容易な環境情報に特化した IoT サービスはありますが、環境情報だけでは生育結果との関係性を分析することができません。アクト・アップでは、取得が難しい作業情報と生育情報までカバーし、それぞれの因果関係を含めて分析できるようにしました」(百津氏)

具体的には、作業情報の記録テンプレートを用意してすぐに記録が始められるようにし、少ない操作で記録ができるように記録ボタンをアイコン化しています。環境情報は、ニーズに合わせて接続可能なセンサーを追加しており、現在 60 種類以上のセンサーを接続してアプリにデータを取り込むことが可能です。生育情報は、AI カメラで農作物や飼育物を撮影して画像分析から成長の様子や異常状態を推定することができます。さらに、カムカード(小さな記録用のカード)をカメラ撮影するだけで記録ができるアプリ「アクト・カム」で、生産者がより手間をかけずに記録する手段を提供しています。記録は自動で集計され、アプリ記録、環境センサー、AI 記録などのデータはグラフで表示して分析することが可能です。

ソリューション

AWS のマネージド型サービスを徹底活用しサーバーレスの IoT システムを構築

アクト・アップは、使いやすさやスピーディーなサービス提供のため、当初からクラウドアプリとして提供する前提で設計され、システム基盤に AWS を採用しています。

「サーバーレスを前提とした際、洗練された技術コンポーネントが揃っており、使いやすいのが AWS でした。少数精鋭の体制を考えると、開発から運用までの自動化が欠かせません。自動化の構成が組みやすいのは、AWS だけでした」(百津氏)

アーキテクチャの設計は、AWS によるクラウドアプリの開発に精通している百津氏が担当し、開発は外部の協力エンジニアが担当しました。アーキテクチャの特徴は、データ管理の領域に Amazon DynamoDB を採用していることです。一次産業のデータは途中で要件が追加されやすい構造を持つため、変化に強い NoSQL の Amazon DynamoDB の採用が必須でした。

モバイルアプリや Web クライアントとつながるユーザーサービスの領域では、GraphQL API の開発を容易にする AWS AppSync を利用しています。一次産業では電波状況が悪いところで作業することが多く、オフラインの機能を備えている AWS AppSync を採用しました。

センサーデータを記録するデータベースには、完全マネージド型のサーバーレス時系列データベースの Amazon Timestream を採用しています。百津氏は「コストとパフォーマンスを両立する Amazon Timestream をアジアパシフィック(東京)リージョンで利用可能になる(2022 年 7 月)以前から着目し、いち早くサービスに採り入れました」と話し、現場から送信されてくる莫大な記録データに対しオートスケールするため、基盤インフラストラクチャの管理が不要となる点を評価しているといいます。

自動化には AWS CloudFormation を活用してインフラ構成のすべてをコード化し、GitHub のブランチにマージをすればすべて自動でデプロイされる仕組みです。

アクト・ノードでは、2023 年 4 月に v1.9.0 版で『養鶏ブロイラーの体重推定AI 機能』を正式リリースしました。体重推定 AI 機能は、鶏舎の天井に設置した Web カメラで撮影した画像からブロイラーの「体重」を推定して記録するものです。この推定体重データに、アプリで記録した「死鳥数」、センサーで取得した「温湿度」と「飲水量」を加えて、グラフやレポートを自動で作成。養鶏業者は、ブロイラーの状態や変化を毎日把握することができます。

「労働力不足が深刻化している養鶏業界において、自動記録されるデータを使った管理により、生育中のブロイラーの早期異常発見や改善を効率的に実施できるだけでなく、生産品質の向上と安定化の実現が可能となります」(百津氏)

ブロイラー体重推定 AI は、ブロイラーの育成期間である約 50 日間、カメラで連続して写真を撮影し、解析と体重の推定を行います。導入したブロイラー生産者が AI によって推定された体重を評価した結果、実際の出荷体重と比較して計測誤差が 3% 以下となっていることを確認しました。

推論モデルの構築には、GPU を搭載した Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) の G4 インスタンスを活用し、短期間での推論を実現しています。

「推論モデルの構築では、自由度と柔軟性が高く、コストメリットが大きい G4 インスタンスを採用しました」(百津氏

導入効果

自動化により、10 秒でセットアップして 15 分で新機能をリリース

アクト・アップのリリース時から AWS を活用しているアクト・ノードにとって、AWS はサービスのスピーディーなリリースに欠かせない存在となっています。

「AWS CloudFormation を利用したデプロイの自動化により、セットアップに人の作業で 2 時間かかるところが、現在は 10 秒で終了し、15 分程度でリリースすることができます。結果的に、2 週間サイクルで新しい機能やサービスのリリースが実現しています。運用中のバグ発見やユーザーからの問題報告を受けた場合でも 2 時間程度で修正できます。デプロイを自動化したことで、結果的に開発コストの削減とサービス品質の向上も実現しています」(百津氏)

アクト・ノードでは、今後は、Web カメラを中心とした画像取得手段や分析方法をさらに改善・工夫し、より多様な条件下で利用可能な体重計測 AI や、その他の生物の状態を数値化できる画像解析 AI の開発を目指す考えです。さらには、生成 AI を活用したさまざまな情報の早期取得にも期待を寄せています。

「例えば、ユーザーがアプリで撮影した画像から、雑草や病害虫を特定し、防除や駆除の手段や有効な農薬のアドバイスを行ったり、ユーザーの困りごとに合わせて適切なマニュアルでアプリの使い方を案内してくれたり、栽培品種や作型からお薦めのセンサーや使用方法をアドバイスしてくれたりと、さまざまな用途が考えられます。AWS には、生成 AI サービスを構築、活用するための情報提供やサービスの提案を期待しています」(百津氏)

Logo of ACT Node Inc. featuring a network node graphic and company name.
少数精鋭での開発ですが、AWS の活用により、一次産業の多様なニーズに対応したクラウドアプリを、短期間かつ低コストで開発し、継続的な改良を続けながら安定的にサービス提供を行うことが出来ています

百津 正樹 氏

株式会社アクト・ノード CEO IT Architect

アーキテクチャ

A Japanese-language AWS architecture diagram showing a use case with components such as AWS AppSync, Amazon S3, Amazon DynamoDB, AWS Lambda, Amazon API Gateway, Amazon Timestream, Amazon EC2, and AWS CloudFormation. The diagram illustrates the flow of data between clients, sensors, storage, and automation, highlighting integration with Git repositories and AI-driven analytics. Suitable for illustrating an AWS solution in a Japanese case study context.

株式会社アクト・ノード

農業・畜産・水産養殖向けクラウドアプリ『アクト・アップ』の企画・開発・運用、一次産業およびバリューチェーンに関するビジネス、IT/IoT コンサルテーション、システムデザイン・開発・運用を手がける。主要サービスの『アクト・アップ』は、規模単位で月額/年額の定額料金プランで提供。さらに情報共有先を拡大できる拡張プランや、センサーサービスを接続してデータを自動で収集するセンサーオプションを用意する。

取組みの成果

  • 2 週間
    アプリの新機能のリリースサイクル
  • 10 秒
    新機能デプロイの準備期間
  • 15 分
    新規サービスのリリース時間
  • 3%
    体重推定 AI 機能による計測誤差
  • 一次産業の生産性向上、品質向上への貢献

本事例のご担当者

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百津 正樹 氏

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