「ビジネスに寄り添う IT」の指針の下、財務会計システムを AWS 環境に移行
安定運用と BCP 対応を従来の半分のコストで実現

2021

建設機械レンタル事業で国内トップシェアを持つアクティオグループ。同グループでは、2012 年ごろからアマゾン ウェブ サービス(AWS)を活用し、200 以上のサーバーを AWS に移行するなど、サービスレベルの向上を図ってきました。さらに、自社運用のデータセンターに設置していた財務会計システムの移行を決断。2020 年に移行を完了し、運用レベルを向上しながらランニングコストを削減するとともに、本来 2 倍の費用が掛かる BCP 対応も追加費用なく実現しています。

AWS 導入事例  | 株式会社アクティオホールディングス
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Amazon EBS のスナップショット機能を使えば、システムが被災しても別のリージョンに復元できるという BCP 対応が可能である点は非常にメリットがあります。二重に設備やソフトウェアライセンスを用意するというコストもかかりません。今では、他のシステムの BCP 対応にも応用しています

井原 宏尚 氏
株式会社アクティオホールディングス
取締役 CIO IT グループ長

ビジネスニーズに素早く対応するためクラウドシフトを推進

建設機械レンタル事業の株式会社アクティオを中核に、建設事業、運送事業、人材派遣業など、幅広い事業を手がけるアクティオグループ。建設現場だけでなく、道路や工場などのメンテナンスや災害復興等、多様な場面で建設機械を供給しています。約 40 社で構成される同グループ全体の IT戦略・企画からサービスデリバリーまでを担うのが、株式会社アクティオホールディングスの IT グループです。

「IT グループは、ビジネスに価値を提供するために存在しています。業況の変化や事業規模の拡大に対応したクイックなサービスの提供や、災害発生時にもビジネスを止めない高い運用レベルを提供するには、オンプレミス環境よりもクラウドが良いと考えています」と語るのは、株式会社アクティオホールディングス 取締役 CIO で IT グループ長の井原宏尚氏です。

こうした方針のもと、アクティオグループでは 2010 年頃からオンプレミスで運用していたシステムの更改時や、新システムの構築時に AWS を採用してきました。現在、210 以上のインスタンスにデータウェアハウスや管理会計、固定資産管理、人事、IoT プラットフォームなどのシステムが稼働しています。2019 年には財務会計システムである JD Edwards EnterpriseOne で利用するハードウェア Oracle Exadata の更新タイミングで、AWS への移行を決断しました。

「ハードウェアの保守期限のタイミングが当社のビジネス環境の変化のタイミングと合うわけではなく、ハードウェア更新がビジネスの足かせになりかねません。またこれまではシステムを 1 ヶ所のデータセンターに設置しており、被災した場合などの BCP(事業継続計画)に対応するためにも、クラウドへの移行を検討しました」と、井原氏は語ります。クラウドならランニングコスト、BCP 対応費用も抑えられるため、移行費用を回収できると判断しました。

クラウドならではの構成へと見直しコストを最適化

財務会計システムは、主にアクティオグループ各社の経理部門のユーザー約 140 名が利用しています。業務面での変更は必要なかったため、本プロジェクトは、利用ソフトウェアの構成やバージョンは変更しない単純老朽化更新と位置付けて、AWS プレミアコンサルティングパートナーの富士ソフト株式会社の提案を採用し、AWS 環境構築、JDE 構築・移行、性能検証支援を担当。2019 年 5 月の要件定義から、PoC、開発、テストを経て 2020 年 5 月に本番運用を開始しました。

「従来の Oracle Exadata と遜色ない処理能力を保証してほしいという IT グループのサービスデリバリー部隊の要望が強く、高性能なインスタンス、ストレージを使う構成を検討しましたが、それではコストを減らすことはできません。そこで AWS からの提案により、実際の稼働状況から適切なスペックを選択して、大幅なコストダウンにつなげることができました」(井原氏)

現行保証を優先し、オンプレミス環境をそのままクラウドに置き換えようとしがちですが、AWS からの提案によりクラウドが持つ機能をベースに構成を見直すことができたといいます。

従来のやり方を見直し追加コストなく BCP 対応を実現

IT グループは、財務会計システムの AWS 移行が完了し、運用を開始した後も運用コスト最適化を模索していきました。オンプレミス時代に常識として行ってきたことが、クラウドのさまざまな機能で代用できることを知り、試行錯誤していくことで、サービスレベルを落とさず、さらなる運用コストの削減を実現しました。

たとえば従来の環境では、コスト面の制約から何台もサーバーを持つわけにはいかなかったため 1 台のサーバーに本番環境とステージング環境を同居させていましたが、クラウド移行後に、クラウドであればそれぞれ独立した環境に構築しても支障ないことに気づきました。IT グループ IT サービスデリバリー BI&会計システムチームの南波佐間英輝氏は、「当初は、オンプレミスと同じ発想で、同じインスタンス上に本番とステージングを共存させていたため、IOPS(1 秒当たりのディスクが処理できる数)がボトルネックになってパフォーマンスが下がってしまいました。しかし、本番とステージングを別のインスタンスに分けることでこの問題は解消できました。この考え方もクラウドならではで、すぐに対応できたこの柔軟さも大きなメリットでした」と語ります。バックアップの方式についても、従来のバックアップツールの利用を止めてスナップショットを採用してバックアップ時のディスク I/O の集中を解消し、さらに小さいインスタンスへ変更したことが、大きな運用コスト削減につながっています。

今回の AWS 移行でもっとも効果を実感しているのは、当初の課題でもあった BCP 対応です。
「Amazon Elastic Block Store(Amazon EBS)のスナップショット機能を使えば、システムが被災しても別のリージョンに復元できます。Oracle のライセンスも含め、設備を二重に用意する必要がないため、コストをかけず BCP 対応ができたのは非常に大きな効果です。今では他のシステムにも、スナップショットによる災害対策対応を行うようになっています」(井原氏)

一連の試行錯誤のなかから、IT グループにクラウド活用の知見が蓄積されていきました。開発・運用面のメリットについて南波佐間氏は、「社内でのクラウド活用のレベルが上がり、柔軟な仕組みを作りやすくなったと感じています。オンプレミスであれば、機器を調達、設置するまでに 2 ヶ月くらいのリードタイムがかかり、いったん調達してしまうと変更できませんが、クラウドなら短時間で用意でき、インスタンスも変更できます。さまざまな検証が容易にできるようになりました」と語ります。

さらなるクラウド活用でサービスレベルの向上に期待

すでに 7 割近くのサーバーを AWS 上で稼働させているアクティオグループでは、今後も新たに構築するシステムについては、AWS を優先して活用するとしています。

先進的な取り組みとして、AWS の IoT サービスを活用し、2020 年に提供を開始した『アクティオ燃料給油サービス』があります。このサービスは、独自開発の IoT デバイスによって工事現場の発電機の燃料状況を検知し、クラウドでデータを管理します。燃料の残量が足りなくなったら現場監督とアクティオに通知、燃料サプライヤーを通じて給油します。このように人手不足に悩まされている建設業界において、IoT を活用して施工現場の安全性や工事の進捗管理に対する課題に対応することが期待されています。

クラウドに移行する際の考え方について、井原氏は次のように語っています。
「クラウド特有のサービスや機能、効果的な使い方について知識がなく現行保証を要件とし続けると、オンプレミスと同じ手法を踏襲しがちです。今回、AWS からご提案いただけたお陰でクラウドの特徴を活かすように軌道修正できました。ユーザー企業側がクラウドを単にサーバーの置き場所が変わっただけと捉えていると、クラウドを活かすことができないと実感しました」

井原 宏尚 氏

南波佐間 英輝 氏


カスタマープロフィール:株式会社アクティオホールディングス

  • 設立年月:2013 年 4 月
  • 従業員数:8,106 名(グループ連結 2019 年 12 月 31 日現在)
  • 事業内容:建設機械レンタル事業、建設事業、輸送事業、人材派遣事業などを行うアクティオグループ会社の統括や不動産事業・ファイナンス・その他管理業務

AWS 導入後の効果と今後の展開

  • 運用コストの大幅削減
  • 追加のコスト負担なしに BCP 対応を実現
  • 今後、新たに構築するシステムは、AWS を優先して活用

AWS プレミアコンサルティングパートナー

富士ソフト株式会社

自動車や電子機器等の組込系ソフトウェア開発と、金融、製造、流通等における業務系システムの構築の 2 本柱を主力事業に AWS を活用したさまざまなシステムの導入や、運用保守まで含めたワンストップサービスを提供する プレミアコンサルティングパートナー。移行および IoT のコンピテンシーおよび、Amazon EC2 for Windows Server のサービスデリバリープログラムなどを取得している。

Fujisoft

ご利用中の主なサービス

Amazon EC2

Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) は、安全でサイズ変更可能なコンピューティング性能をクラウド内で提供するウェブサービスです。ウェブスケールのクラウドコンピューティングを開発者が簡単に利用できるよう設計されています。

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Amazon Elastic Block Store (EBS) は、Amazon Elastic Compute Cloud (EC2) と共に使用するために設計された、スループットとトランザクションの両方が集中するどんな規模のワークロードにも対応できる、使いやすい高性能なブロックストレージサービスです。

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Elastic Load Balancing は、アプリケーションへのトラフィックを複数のターゲット (Amazon EC2 インスタンス、コンテナ、IP アドレス、Lambda 関数など) に自動的に分散します。

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