販売管理システムを AWS 上で奉行シリーズへ移行
属人的なシステム管理を刷新することで事業リスクを低減
運用負荷を 80% 削減し、請求書処理などの業務効率も向上

2021

卸売商社の大同精機株式会社は、自社サーバー上で作りこんだ販売管理システムを利用し、IT 専任担当者がいない中、属人性の高い運用を行っていました。『奉行シリーズ』を使いアマゾン ウェブ サービス(AWS)に移行することにより、頻発していた障害対応の解消と安定稼働を実現しました。運用開始して 18 ヶ月たちますが、インフラ起因の業務停止は起きていません。システムベンダーに運用を任せることでインフラ整備にかかわる工数を約 80% 削減しています。

AWS導入事例:大同精機株式会社
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AWS への移行後、インフラに関するトラブルは一度も発生していません。私自身もこれまで通常業務を行いながら、毎月システムの管理に時間を取られ、しかも障害が起きると復旧までほかの業務ができない状況でしたから、非常に助かっています

吉田 長雄氏
大同精機株式会社 ひたちなか営業所 所長

ビジネス継続リスクの解消に向け専任の情シス不在の中、販売管理システムの刷新へ

1949 年の設立以来、空・油圧機器、軸受、精密機械、各種産業機械や部品などを供給する専門商社として着実に歩んできた大同精機株式会社。東京に本社を構え、土浦、日立、ひたちなかの拠点から、さまざまな装置や部品を供給しています。昨今、生産ラインは人手不足による省力化や効率化を求め、産業用ロボットを導入するなど、より高度化した装置や部品の要求が高まっているといいます。

同社では、受注発注に関わる売上計上や請求処理など、物品を仕入れて販売する一連のデータを処理する販売管理システムを業務に合わせて作りこんだ形で構築していました。外部のエンジニアに開発を依頼し、ひたちなか営業所内のサーバーに構築されたものを、他の営業所も含めた 4 拠点からおよそ 30 名が利用していました。しかしビジネスの成長に伴い、システムの信頼性やセキュリティに課題が生じはじめたと、大同精機株式会社 ひたちなか営業所 所長の吉田長雄氏は語ります。
「一番の問題は社内で長年利用してきたサーバーを運用管理していることでした。ハードウェアの老朽化や、たびたび起きる障害への対応、アップデート対応に加え、データベースの肥大化、レスポンス低下など問題が山積していました」

同社内には IT 専任の担当者がいないため、同氏が通常業務のかたわら保守やメンテナンスを行っていました。しかし、技術的に手に余るトラブルが発生した場合は、来訪に 4 時間かかる遠方のソフトウェア会社に連絡して対応を依頼するため、短時間で復旧することが難しかったといいます。業務上システムを止めることはできませんが、すぐに復旧できないときには、半日など業務が止まることも多くなっていました。連休前に障害が発生し、休日返上で対応したこともあるといいます。
「当時のシステムは単に運用負荷が高いというだけではなく、ビジネス上の大きなリスクを抱えていました。私が担当していたシステム運用を他の人に引き継ごうにも、社内での IT 人材養成は難しく、万が一私が入院でもしてしまったら誰もシステムを保守・運用できない状態でした。システムの属人化に加え、信頼性の低さ、セキュリティ対策の弱さ、障害発生時の復旧時間の不透明さなど、ビジネス継続性の高いリスクを抱えていることを経営陣に訴え、システムの移行を検討することになりました」(吉田氏)

信頼感と実績から AWS の採用を決定

大同精機が販売システムの刷新について検討を開始したのは、2018 年の 4 月です。外部のコンサルタントを交え、オンプレミス環境とクラウド環境のそれぞれのメリットを比較 / 模索していきました。そのなかでインフラの保守を社内で行うのではなく、専門家に任せることが、運用 / メンテナンスの課題解決、業務効率化とリスク低減につながると判断し、クラウドの利用を決定しました。
「システム自体は『奉行シリーズ』を使うことを決めていました。クラウドについては AWS 以外のサービスも提案してもらいましたが、AWS の信頼性、実績、ネームバリューから採用を決めました。当初は長年使ってきたシステムをパッケージシステムに切り替えることで業務効率が落ちてしまうことを心配していましたが、カスタマイズできるとわかったことも依頼の決め手となりました。従来システムの弱点であった検索機能の強化や、従業員が手作業を減らす伝票処理の自動化についても実現できました」(吉田氏)

そして経営陣には、クラウドのインフラとパッケージソフトを活用し、保守を専門家に任せることが、工数を削減し、事業リスクからも脱却できる方法だと説明して承認を得たといいます。

わずか半年で移行を完了し工数削減と安定稼働を実現

大同精機におけるシステムの移行は、2018 年 10 月から始まり、2019 年 3 月に完了しました。Amazon EC2 に『商蔵奉行 V ERP10 Advanced Ed. 仕入れ管理』を展開し、各拠点からは『RemoteApp』というリモートアクセスのツールを使って利用することで、クライアント環境に依存しないレスポンスを提供。IP アドレスによる接続制限をしてセキュリティを担保し、ディスクイメージが日々バックアップされるなど、事業継続リスクを低減したシステムとなりました。
「従来のシステムは完成までに 4 年かかったので、今回の奉行を使ったクラウド化も 1 年くらいはかかると思っていました。データ移行に少し苦労はありましたが、半年で移行できたことは嬉しい驚きであり、満足しました」(吉田氏)

社員への操作方法の周知は段階を踏んで行われました。各営業所で IT 担当のキーマンを決めて利用方法を指導した後、ベンダー担当者が営業所を訪問し、端末を操作して説明するという手順です。システムの保守もベンダーに委託し、システムに関する問題が生じた場合は、各拠点の IT 担当とやりとりする体制が構築されました。
「移行後、インフラのトラブルはまったく発生しておらず、安心して業務を遂行できています。インフラ整備にかかる工数は 80% 程度削減でき、経理や業務担当の手作業も省力化され、請求書の処理などの工数が 20 ~ 30 % 程度削減されています。私自身もこれまで通常業務を行いながら、毎月システムの管理に時間を取られ、しかも障害が起きると復旧までほかの業務ができない状況でしたから、非常に助かっています」(吉田氏)

リソースの足りない企業こそ専門家へ相談して解決を

吉田氏は、従来のシステムよりコストをかけることになったが、これまで現場でカバーしていた業務やリスク負担が見えていなかった分、運用や障害対応の負荷の大幅低減、リスクの低減により信頼性に見合った価格で納得感が得られていると評価しています。事業リスクの低減と、業務効率の向上を果たした現在は、ほかのシステムの移行など、さらなる AWS 活用について検討中です。また、今後は海外との取引業務を支援できるよう、翻訳 AI である Amazon Translate などを活用するアイデアもあるといいます。

今回の移行を経験し、元来持っていた AWS に対するイメージが変わったという吉田氏。同じように悩む企業のシステム担当者に対して、次のようにコメントしました。
「AWS の存在を知ってはいたものの、当社にはハードルが高く、大企業向けのものと思っていました。しかし実際使ってみると、利用価値の高さを実感できました。私たちのように、オンプレミス環境にあるシステムの自社運用で苦労されている方々はたくさんいらっしゃると思います。大企業にはシステム専任の担当がいますが、限られた人数の中小企業はそうはいきません。社内に専任のシステム担当者がいなくても、専門知識を持つベンダーと連携することでAWS のメリットを享受できます。中小企業の方にこそ、AWS を使っていただき、運用負荷や事業リスクの低減といった良さを実感してもらいたいですね」

吉田 長雄


カスタマープロフィール:大同精機株式会社

  • 設立年月日:1949 年 8 月 1 日
  • 従業員数:35 名
  • 事業内容:油・空圧機器、電子・御機器、伝動機器、計測機器、産業機器の販売と、これらに付随する加工・設計・製作業務を展開する専門商社

AWS 導入後の効果と今後の展開

  • システムの安定稼働と、インフラ管理工数の 80% 削減
  • 物理サーバーでのシステムトラブルによる業務停止リスクの大幅軽減
  • 属人的な保守メンテナンスの排除による事業継続性の向上
  • 保守業務を IT の専門家である APN パートナーに委託し、本来の業務に注力

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