顧客体験を起点とするインシュアテック保険会社への変革の基盤に AWS を選択
高いスケーラビリティを実現し新サービスを迅速に提供
2022
イーデザイン損害保険株式会社(以下、イーデザイン損保)はワンクリック見積もり、AI を活用した不正請求検知、保険請求案内のためのパーソナライズ動画など、デジタルを活用した自動車保険のサービス開発に取り組んでいます。その背景には、CX(顧客体験)を起点としたインシュアテック保険会社への変革という挑戦がありました。IT 基盤にアマゾン ウェブ サービス(AWS)を採用した同社は、新しいビジネスを迅速に展開できる柔軟で拡張性の高い基盤の構築を行うとともに、顧客目線から発想した新しいビジネスモデルの創出に向けてさまざまな取り組みを進めています。
インシュアテック保険会社への変革の中、ビジネス面とインフラ面の 2 軸で AWS と共創しました。顧客体験を中心に課題解決を図る AWS のワークショップを通じて業界初の新しいサービスを生み出すとともに、新自動車保険サービス『&e(アンディー)』のプラットフォームに AWS を活用して柔軟性の高いシステムを早期に構築しています
酒井 宣幸氏
イーデザイン損害保険株式会社
取締役 IT企画部長 兼 ビジネスアナリティクス部長
顧客体験向上と事業変革に向けてビジネスとシステム全体を見直し
“事故時の安心だけでなく、事故のない世界そのものを、お客さまと共創する”というミッションのもと、顧客に提供する画面のプロトタイプや市場調査を行いながら、顧客の安全運転を徹底的に支援する体験への見直しが行われました。同時に、DX を加速させる際に足枷となりうるレガシーシステムからの脱却も進めることにしました。
その実現のため、同社は AWS と 2 つの柱で共創を進めました。1 つは「顧客起点」で新ビジネスを創出する「デジタルイノベーションプログラム(DIP)活用」で、もう 1 つは AWS のクラウドテクノロジーを活用した柔軟で迅速に展開できるシステム基盤の実現です。
AWS の開発ワークショップを活用して顧客起点のサービスをリリース
1つ目の柱であるAWS のデジタルイノベーションプログラム(DIP)は、「お客さまは誰か」「課題は何か」「どんなベネフィット/顧客体験をお届けできるか」といった、顧客体験を中心に課題解決を図るためのワークショップを実施し、そこで出たアイデアを新事業の開発につなげていくもので、Amazon が新しいサービスを生み出す際にも使われているフレームワークです。
イーデザイン損保は、社員研修の一環で DIP を活用していますが、2020 年度の DIP では、自動車事故の際に顧客と事故担当者を AI でマッチングする業界初のサービス『私のタントウシャ』のアイデアが生まれました。これは、事故発生後に初めて応対するお客さまと担当者、双方の心理的負担を軽減する目的で考案されたものです。「私のタントウシャは、試行期間の事故対応アンケートで 9 割以上のお客さまから最大評価の『満足』をいただくことができ、その後、ビジネスモデル特許を出願したうえで、本格サービスを開始しています。今後も DIP を活用しながら、ボトムアップでお客さま体験の向上に資するサービスを創出していきたいと考えています」と、取締役 IT 企画部長 兼 ビジネスアナリティクス部長の酒井宣幸氏は語ります。
柔軟かつ保守性の高いシステムを AWS で実現
イーデザイン損保は 2 つ目の柱として、インシュアテック保険会社への変革に必要な IT 基盤に AWS を全面採用しました。「IT インフラにはさまざまな要件が求められていました。高い可用性や耐障害性だけでなく、多様なビジネスニーズに応えることができる柔軟性やスケーラビリティなどです。加えて、短期間で構築することも至上命題でした」(酒井氏)
「さらに、自社専用のシステムと外部サービスを機動的に組み合わせることができる、柔軟性の高いマイクロサービスアーキテクチャを志向しましたが、AWS なら将来も見据えた保守性の高い基盤を早期にできると考えました」と、IT 企画部 次長の原和彦氏は語ります。
画期的な自動車保険サービスをわずか 1 年余りで開発
イーデザイン損保は AWS をベースに、最新テクノロジーを活用して、これまでにない CX を提供する、業界初の自動車保険『&e(アンディー)』をリリースしました。
&e はスマートフォンだけで多くの手続きが完結します。最短 60 秒で保険料試算ができたり、保険証券をスマートフォンで撮影しアップロードすると AI 画像認識により見積もり・申し込みに必要な項目の入力が大幅に削減されたりと、徹底的に手間を省いた操作性を実現。さらに無償の IoT センサーを車に装備しスマートフォンと連動させることで、万一の事故発生時には IoT センサーが自動で衝撃を検知し、スマートフォンから 1 タップで事故を連絡できます。それだけでなく、頻出事故パターンから作成した安全運転のためのヒントが詰まった「運転テーマ」が定期的にアプリに配信。急ブレーキや急ハンドルなどの情報を基に算出した運転スコアを振り返ることで運転傾向もわかります。さらに、安全運転でハート(ポイント)がたまり、コーヒーなどの商品に交換もできます。&e では、一人でも事故にあうお客さまを減らすために、事故の時だけでなく、日常でもお役に立つ安全運転支援サービスを提供しています。
「&e は 基本構想から約 1 年半でリリースできました。2021 年 5 月に社内モニターでの利用を開始、11 月に一般のお客さま向けにサービスを開始できました」(酒井氏)
この &e の基盤が短期間でリリースできた背景には、AWS パートナーである株式会社エヌ・ティ・ティ・データ(以下、NTT データ)の存在がありました。
NTT データの金融機関向けのクラウド環境『A-gate』は、堅牢なセキュリティのもと AWS 環境の運用監視を最適化できるマネージドサービスです。脆弱性につながるような設定変更を検知し、自動修復する仕組みを備えるなど、常にセキュアな状態を維持する環境を提供します。当時 A-gate はすでに 20 社に導入されており、さまざまな知見が蓄積されていたことから、イーデザイン損保は早期かつ低コストでの導入ができると考えて採用しました。
&e では顧客体験を向上するユーザーインターフェイスや保険の基幹となる契約・事故・収納システム、カスタマーセンターの電話機能、データ分析、それらを疎結合かつ柔軟に接続する API 連携、運用監視などすべての基盤を AWS 上にフルクラウドで構築しました。NTT データは AWS 部分のインフラ構築を 2 か月程度で実施しましたが「オンプレミス環境なら、サービス開始はさらに 1 年後になっていたでしょう」と、原氏は評価しています。
顧客ニーズを捉えるデータ分析基盤について「経営陣から各部門まで同じデータを見て、全社最適のアクションにつなげるための羅針盤に育てていきたいと思っています」と酒井氏は語ります。
インシュアテック保険会社への進化に向け、クラウドの柔軟性を活かして新サービスを導入したイーデザイン損保。今後の展望を酒井氏は次のように語ります。「お客さまの購買行動において、企業の姿勢への共感がますます重要になっていくと考えています。そのためには、DX だけでなく、ユーザー体験(UX)、お客さま体験(CX)、人事やマネジメントの変革(MX)、そして体験を主軸にして企業の存在価値を再定義する BX(Business of experience)の 5 つの X を、サスティナブルに高めていきながら変革を進めていきたいと思います」
酒井 宣幸 氏
原 和彦 氏
「私のタントウシャ」プロジェクトメンバー
カスタマープロフィール:イーデザイン損害保険株式会社
- 設立:2009 年
- 従業員数:298 名(2021 年 3 月 31 日)
- 事業内容:損害保険業
AWS 導入後の効果と今後の展開
- 高いスケーラビリティの獲得
- 分析基盤の活用による全社的なデータの可視化
- 業務のシンプル化、自動化による効率向上
- 画期的な新サービスの迅速な開発
AWS プレミアコンサルティングパートナー
株式会社 NTT データ
大規模 SIer として保持する実績を活かし、コンサル・構築・移行・運用まで一気通貫での支援をご提案。これまで多数のお客様の AWS 導入に貢献した実績あり。2016 年に AWS プレミアコンサルティングパートナー認定を受け、顧客に優れた AWS ソリューションを提供する能力を有する事を証明する「AWS マネージドサービスプロバイダプログラム(MSP)」認定も取得。
ご利用中の主なサービス
Amazon EC2
Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) は、安全でサイズ変更可能なコンピューティング性能をクラウド内で提供するウェブサービスです。ウェブスケールのクラウドコンピューティングを開発者が簡単に利用できるよう設計されています。
Amazon S3
Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) は、業界をリードするスケーラビリティ、データ可用性、セキュリティ、およびパフォーマンスを提供するオブジェクトストレージサービスです。
Amazon Connect
Amazon Connect は使いやすいオムニチャネルのクラウドコンタクトセンターであり、企業が優れた顧客サービスを低コストで提供するのに役立ちます。