業務用冷凍冷蔵庫などの故障予測、異常検知を見据えて業務システムと SAP S/4HANA を AWS 上に構築
BCP 対策の実現と運用コストを従来の 3 分の 1 まで削減

2022

業務用冷凍冷蔵庫や店舗向け冷凍冷蔵ショーケースなどの製造・販売・メンテナンスを手がけるフクシマガリレイ株式会社。同社は 2019 年から社内システムの統合プロジェクトをスタートし、販売管理システム(G-NET)やメンテナンスの保守点検・修理サービス管理システムをアマゾン ウェブ サービス(AWS)上に移行しました。2021 年にはデジタル変革の実現に向けて、基幹システムを再構築。ERP パッケージの SAP S/4HANA を採用し、2022 年 10 月の本稼働に向けて、AWS 上への導入を進めています。

AWS 導入事例  | フクシマガリレイ株式会社
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AWS への移行により、巨額なコストをかけることなく BCP 対策を実現し、地震や台風などの災害で大阪エリアに停電が発生した際にも、システムを止めることなく安定して稼働し続けることが可能になりました

河田 淳一 氏
フクシマガリレイ株式会社
情報戦略部 部長代行

システム基盤の統合プロジェクトを開始

G-NET を AWS 上に構築

1951 年に業務用冷蔵庫メーカーとして、大阪市旭区で設立したフクシマガリレイ。その後、店舗向け冷凍冷蔵ショーケースや製氷機、大型低温倉庫、さらには病院や研究室で使用されるインキュベーターや血液保冷庫などを開発し、業務領域を拡大してきました。2012 年頃からは連結グループ会社が大幅に増え、2019 年 12 月には社名を創業時の「福島工業」から「フクシマガリレイ」に変更しました。

2019 年には、本社で管理しているシステム基盤の統合プロジェクトに着手し、2026 年の終了を目標に再構築を進めています。
「当社にはシステムを自社でスクラッチ開発する文化があり、オンプレミス環境にさまざまなシステムが稼働しています。これらの開発言語も DB も異なるシステムをシステム統合によって一気通貫で管理し、データの流れをシンプルにすることが目的です」と語るのは、情報戦略部 部長代行の河田淳一氏です。
インフラ基盤については、最新技術への適用を見据えてクラウドの利用を前提とし、最初は新規開発の G-NET から、AWS 上への導入を開始しました。情報戦略部 システム一課 課長の野口敬太氏は「BCP 対策の実現と、開発環境や検証環境用のリソース調達、拡張性の観点からクラウドの採用を方針とし、検討した 2018 年当時、安定稼働の実績が最も豊富で、開発のための技術情報が充実している AWS を選定しました」と語ります。

新規開発の G-NET は、2019 年 5 月に本稼働を開始し、現在も安定稼働を続けています。DB には Amazon Aurora、ファイルシステムには Amazon Elastic File System (Amazon EFS) とマネージドサービスを活用して運用負荷を軽減しています。
「AWS はシステムのデザインパターンが豊富にあり、サンプルを参照してアーキテクチャを設計することができました。AWS 上に構築することで、オンプレミスと比べて 3 か月程度短縮することができました。コスト面でも高価なロードバランサーを従量課金で利用できるメリットは大きく、インフラ全体の運用コストは 3 年間で従来の 3 分の 1 まで削減できました」(野口氏)

本社の社屋移転に合わせて保守点検・修理サービス管理システムを AWS 上に移行

その後、本社の社屋移転に合わせて、旧社屋のデータセンターで運用していた既存システムを AWS 上へ移行することにしました。最初のターゲットは、顧客からの修理依頼を受け付ける保守点検・修理サービス管理システムです。情報戦略部 システム二課 課長の宮﨑義隆氏は「保守点検・修理サービス管理システムは、24 時間 365 日の稼働が必須です。しかし、オンプレミスのままでは社屋の移転時に 3 日間の停止を余儀なくされることがわかりました。そこで、移転までに AWS 上に移行し、システム停止を回避することにしました」と説明します。

保守点検・修理サービス管理システムは目標通り 2019 年 11 月までに AWS 上への移行を終え、現在も安定稼働を続けています。

デジタル変革の推進に向けて SAP S/4HANA の新規導入に着手

保守点検・修理サービス管理システムの移行後、次に着手したのは同社が本丸と位置付ける基幹システムです。グループ会社との連結強化と業務効率の向上のため、デジタル変革の中核となる SAP S/4HANA の導入を決断しました。
「従来の基幹システムは、オフコン上に RPG 言語で開発したスクラッチシステムで、30 年以上にわたって改善を積み重ねてきたものです。システムのブラックボックス化などで、このままではビジネス領域の拡大スピードに追いつけなくなると判断し、グローバルスタンダードである SAP S/4HANA を採用しました」(河田氏)

インフラについては、先に移行した 2 つシステムの稼働実績と、コストメリットを考慮して AWS を採用しました。「G-NET と保守点検・修理サービス管理システムは、顧客との関係を築くための重要システムで、基幹システムとのデータ連携も不可欠です。そのためにも、AWS の採用は必然の選択でした」と河田氏は語ります。

現在、2022 年 10 月からの稼働開始を目指して、SAP S/4HANA の会計機能の導入を進めています。会計を先行したのは、グループ会社間で異なる勘定科目やコード体系を整理し、連結決済のスピード向上を図ることが目的です。その後、販売・購買・生産管理を含めた基幹システム全体を SAP S/4HANA に移行し、将来的には ASEAN 地域の海外拠点にも展開していく予定です。

基幹システムと並行して既存の保守点検・修理サービス管理システムに代わる新システムを、AWS 上にスクラッチで新規構築するプロジェクトを立ち上げ、SAP S/4HANA と同じ 2022 年 10 月の本稼働に向けて開発を進めています。
「新しいシステムは、従来の顧客管理機能に IoT で機器を 24 時間監視する機能を追加し、機器の最適な運転や電力消費の経年管理、予知警報によるトラブル防止など、新しい保守サービスの提供を目指すものです。故障内容に応じて適切なサービススタッフをアサインし、スピーディに問題解決を図るためにも SAP S/4HANA との連携が欠かせません」(宮﨑氏)

機器の故障予測、異常検知に向けて AI エンジンの構築を検討

今後は、社屋のデータセンターで稼働しているシステムを、必要に応じて AWS 上に移行していく計画です。同時に、経費精算やワークフローなどの社内業務系のシステムは、SaaS の活用を検討しています。
「原則として自社のデータセンターで管理するオンプレミスのサーバーは極力減らし、数年以内にゼロに近づけていく予定です。AWS への移行により、巨額なコストをかけることなく BCP 対策が実現し、地震や台風などの災害で大阪エリアに停電が発生した際にも、システムを止めることなく安定して稼働し続けることが可能になりました」(河田氏)

DX の実現に向けては、AWS のサービスを積極的に活用し、顧客に対して新たな価値を提供していきます。
「特にスピードが求められる DX の分野では、AWS が提供するコンポーネントを積極的に活用して、開発スピードを高めていきます。その 1 つの例が AI の領域です。故障予測、異常検知に向けた AI エンジンの構築において、Amazon SageMaker が活用できると考えています」(宮﨑氏)

また、エンジニアの教育にも注力しており、トレーニングを進めながらさらに技術力を高めていく考えです。
「現在、情報戦略部の 3 分の 1 のメンバーが AWS 認証資格を取得しており、クラウドの知識を身に付けています。ハンズオンなどの教育体制がしっかりしている AWS は、社員の能力開発にも効果的です。そのためにも、引き続き新たなサービスの情報や教育プログラムの提供を期待しています」(野口氏)

河田 淳一 氏

野口 敬太 氏

宮﨑 義隆 氏


カスタマープロフィール:フクシマガリレイ株式会社

  • 設立: 1951 年 12 月 8 日
  • 資本金: 27 億 6,000 万円
  • 従業員数:連結: 2,205 名 単体:1,725 名(2021 年 3 月期)
  • 事業内容:業務用冷凍冷蔵庫、冷凍冷蔵ショーケース、その他冷凍機応用機器の製造・販売・メンテナンス、店舗システム・厨房総合システムの設計・施工

AWS 導入後の効果と今後の展開

  • サーバー調達期間を従来から 3 か月程度短縮
  • インフラ全体の運用コストを 3 年間で従来の 3 分の 1 まで削減
  • システムトラブルの早期解決
  • IoT による故障検知など、デジタルトランスフォーメーション(DX)の実現
  • 巨額なコストをかけることなく BCP 対策が実現

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