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2021

人気アイドル育成ゲームをオンプレミスから AWS に移行するとともに、新作をほぼ同時にリリース。秒間 1 万リクエストのアクセスをさばく基盤を構築

Happy Elements 株式会社

概要

モバイルゲームの開発・運営を行う Happy Elements 株式会社。従来、オンプレミス環境で提供されていましたが、イベント等によるアクセスの集中に合わせたリソースの確保や、運用手法の属人化などの課題がありました。そこで、同社の代表作であるアイドル育成ゲーム『あんさんぶるスターズ!』の新作リリースに向けて 2019 年 1 月にインフラグループを新設し、クラウド移行が計画されました。入念な準備を行ったことにより、サービス開始日当日のダウンロード数 140 万件と大量のユーザーを迎えながら無事に稼働。AWS 利用によって柔軟にスケールできる環境を得、コストの最適化、新機能の追加などサービスの価値を高めています。
Illustration featuring colorful anime-style characters from Ensemble Stars!! Basic Music, a rhythm game by Happy Elements, with energetic stage performance and game logo in Japanese and English. Used in an AWS case study.

人気ゲームのリニューアルと新作の同時リリースを機に AWS を選択

Happy Elements 株式会社は、日本市場に向けたオリジナルのスマートフォンゲームの開発と運営を行っています。代表作の 1 つが、 2015 年にリリースした、男性アイドル育成ゲーム『あんさんぶるスターズ!』です。そのリニューアルと新タイトルの開発をきっかけに、それまでオンプレミスで構築してきた環境をクラウドへ移行することが検討され、2019 年 1 月に新たにインフラグループを新設しました。

「従来はタイトルごとにインフラの管理を行なっていたため、社内でノウハウを共有できないという課題がありました。また、モバイルゲームでは、定期的にイベントを実施します。イベント開始直後と終了直前アクセスが集中し、インフラもそれに対応するように用意していましたが、イベントがないときはそこまでのリソースは不要でした」と語るのは、インフラグループ グループリーダーでインフラエンジニアでもある鷲見啓志氏です。

従来タイトル「あんさんぶるスターズ!」は、『あんさんぶるスターズ!! Basic 』(以下、 Basic )として、新作タイトルのリズムゲームは『あんさんぶるスターズ! !Music 』(以下 Music )として、同時リリースすることが決定し、クラウド活用が検討されました。
「インフラグループ発足から 2 ヶ月の間、クラウド事業者の選定を行いました。当時活用していた開発言語 Ruby on Rails が利用できることと、ゲーム業界で多くの実績があったことから AWS の採用を決めました」(鷲見氏)

2 タイトルのインフラ構築のアプローチはそれぞれ異なります。Basic は、基本構成は従来通りのため、既存のアプリケーションを踏襲し、Amazon EC2 上に展開。これまでインフラ側のソフトウェアやミドルウェアのアップデートが滞るなど、技術的な負債の蓄積も課題となっていたため、データベースやソフトウェア基盤のアップデートによるパフォーマンス向上も目指しました。

一方、新作の Music は、従来タイトルとのデータ共有はなく、開発メンバーも異なるため、先進的なアーキテクチャとしてコンテナを利用すべく、マネージド型の Amazon Elastic Container Service (Amazon ECS) を採用しました。
「ゲーム業界でもコンテナ利用事例が増え、一過性のものではなく今後も長く使えるアーキテクチャだと判断しました。また、インフラグループは発足当時 3 名だったため、インフラ移行を確実にするためにも、専門的な技術サポートを受けられる、AWS インフラストラクチャイベント管理を活用しました」(鷲見氏)

入念な試験とチューニングによりクラウド移行を実現

Basic のオンプレミスからの移行は、既存アプリをそのまま AWS に移設し、必要なリソースの調査をした後に、アプリをリニューアルするという計画でした。しかし、アプリケーションが AWS 上で動作することは確認できたものの、膨大なユーザーデータの移行が難航しました。そこで、リニューアルと同時に AWS 上に構築する方法に変更しました。

そのため、AWS 上で実運用をしながら必要な EC2 インスタンスのスペックを探ることはできません。そこで、負荷試験やチューニングを入念に行い、移設の準備を進めていきました。「これまでに経験した人気イベント時のリクエスト数を参考に、リリース時の想定リクエスト数を 1 秒あたり 1 万件と仮定しました。この倍の 2 万件を処理できれば、余裕をもってリリースを迎えられると考え、地道に単体負荷、シナリオ試験、長時間負荷、障害試験など、複数の試験を繰り返しました。サーバーの構成や数を変えて試験できるのは、オンプレミスにない利点です」(鷲見氏)

秒間 1 万リクエストを処理。初日に 140 万ユーザーを迎える

そして、2020 年 3 月 15 日、2 タイトルのリリース日が訪れます。新作の Music は 15 時に先行してリリースし、20 時に告知することにしましたが、待ち構えたユーザーが告知前に大挙してアクセスしたため、17 時頃にピークを迎えました。
「ピーク時のリクエスト数は、予想したとおり秒間 1 万を超えました。十分なリソースを用意していましたので、サービス提供には影響なく、結果的に Music の初日ダウンロード数は 140 万に達しました。 Basic は 20 時にリリースしましたが、こちらも問題なく対処できました」(鷲見氏)

新たに構築された AWS 環境では、障害発生時に冗長なシステムへ切り替えられるようになっています。Music の環境構築と、AWS 環境の運用監視を担当するインフラエンジニアの坂田徳彦氏は「AWS に移行してから夜間に障害対応するようなことはなくなりました。システム監視により、レスポンスが悪くなったときに、対応する程度で済んでいます。マネージド環境のメリットを実感しています」と語ります。

コスト削減と知見の共有を実現。さらなる AWS 活用を推進

3 月のリリースからしばらくは、インフラに手を加えることなく、イベント時のアクセス傾向などをモニタリングしていきました。そこで、常時必要なサーバー数を把握して、リザーブドインスタンスとして契約。イベント開催時にはスポットインスタンスを利用することで、リリース直後と比較してインフラコストを 7 割削減しました。

さらに同社では、AWS 環境において、2020年 8 月に新作 RPG の『エリオスライジングヒーローズ』をリリース。11 月には Music にリアルタイム通信・マルチプレイの「みんなでライブ機能」を加えました。

新サービス追加について鷲見氏は「エリオスライジングヒーローズは、Music と同じ構成で構築できたので、準備にかかる工数と時間を削減できました。インフラグループ設立時の課題であった知見の共有ができました。リアルタイム通信機能については、当初から AWS の担当者から提案を受けて実現しました。定例の打ち合わせだけでなくチャットでも質問して相談し、すぐにご提案いただけるので助かっています」と語ります。各ゲームタイトルのチームからインフラ業務を切り離し、開発に専念できる体制となったことは、社内からもよい評価を得ているといいます。

今後は、よりリアルタイム性を重視したサービスに注目しているといいます。新技術について坂田氏は、「リアルタイム通信の仕組みもいくつかありますので、 AWS サービスを活用しながらさまざまな知見を蓄積していきます」と話します。鷲見氏は「AWS には、ゲーム向け技術領域の充実を期待しています。また、機械学習による不正利用対策や、自動テストへの活用も考えていきたい。これからも、ゲームクリエーターのやりたいことを実現できる環境を用意していきたいです」と語ります。
Logo of Happy Elements, featuring a colorful pinwheel design and the tagline 'Make The World Happy!'.
AWS への移行に際し、これまでに経験したリクエスト数の 2 倍の処理に耐えられるよう、地道に試験やチューニングを繰り返し、準備をしました。サーバーの構成や数を変えて試験できるのは、オンプレミスにないメリットです

鷲見 啓志 氏

Happy Elements 株式会社 インフラグループ グループリーダー / インフラエンジニア

アーキテクチャ

Architecture diagram showing the AWS cloud infrastructure used by Happy Elements, featuring services such as Amazon CloudFront, WAF, Application Load Balancer, ECS (EC2 launch type), Aurora (sharding and master), ElastiCache (Redis and Memcached), S3, Kinesis Data Firehose, and CloudWatch Logs for a mobile client application.

Happy Elements 株式会社

  • 設立年月: 2010 年 4 月

  • 従業員数: 231 名(2021 年 1 月現在)

  • 事業内容:モバイル向けゲームアプリの開発・運営

AWS 導入後の効果と今後の展開

  • 従来タイトルと新規タイトルの同日リリース

  • インフラ構築・運用ノウハウの共有

  • システムの安定稼働・運用

  • インフラコストの無駄を省いた最適化

  • 新技術の導入によるサービス価値向上

本事例のご担当者

鷲見 啓志 氏

Portrait of a man with short dark hair, wearing a dark sweater over a checker-patterned shirt, used for a case study in Japan.

坂田 徳彦 氏

A smiling man is pictured outdoors in a casual setting, suitable for use in a case study or testimonial context.