音声操作サーキュレーターの IoT プラットフォームを AWS 上に構築
使い勝手の向上などの修正を迅速に行うことを可能にし操作状況を把握することで新製品開発に活用

2021

生活用品の企画、製造、販売を行うアイリスオーヤマ株式会社は、Amazon Echo 等のスマートスピーカー連携家電を発売しています。その第 3 弾のサーキュレーターにおいて、IoT プラットフォームを AWS 上で再構築し、堅牢性、安定性、柔軟性の高いシステムを実現しました。今回構築した IoT プラットフォームを活用することで、これからもお客様に安心してお使いいただける製品を開発し、改善を進めていく計画です。

AWS 導入事例  | アイリスオーヤマ株式会社
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AWS 上に IoT プラットフォームを構築することで、不具合発生時に迅速な対応を実現するとともに、ログを分析することで製品開発に活用することができるようになりました

香川 修志 氏
アイリスオーヤマ株式会社
家電開発部 ソフト開発チーム マネージャー

手軽でシンプルに扱える家電の IoT プラットフォームを自社で構築

幅広い製品を製造・販売しているアイリスオーヤマは、手軽でシンプルに使っていただける製品づくりに努めています。「日本メーカーの家電は高級志向になりがちですが、私どもは、コストパフォーマンスと使い勝手がよく、気軽に使ってもらえる物を作ることをコンセプトとしています。家電に対しても、そのコンセプトを切り口にラインナップを拡充しています」と営業本部 執行役員 営業統括部長の岩崎亮太氏は説明します。

家電開発部 ソフト開発チーム マネージャーの香川修志氏は、家電開発のこだわりを次のように話します。「当社の会長が常に言っているのは、プロダクトアウトではなくユーザーインであることです。新技術・高付加価値を詰め込んでコストを上積みするのではなく、お客様が求めている機能をお客様が納得していただけるコストで実現することが私たちのこだわりです。常に技術志向に振れ過ぎないように心がけています」

アイリスオーヤマでは、LED 電球 / シーリングライトやエアコンを Amazon Alexa と連携させた IoT 家電(音声操作シリーズ)としてリリースし、第 3 弾としてサーキュレーターを音声操作シリーズに加えようと考えていました。「これまでのシーリングライトやエアコンは、既成の IoT プラットフォームを使っていましたが、一番の課題は、その IoT プラットフォームがブラックボックス化されていることでした。例えば、IoT プラットフォーム自体が落ちてしまった場合、お客様から問い合わせが来てから気づくので復旧が遅れてしまいます。スマートフォンの OS のバージョンアップで一部の機能が使えなくなっても改修に時間がかかるという課題もあり、自前でシステムを構築すれば OS のバージョンアップも事前に検証でき、障害やトラブルにも迅速に対応できると考えました」と香川氏は説明します。

非常にシンプルでかつ必要十分な AWS の提案を採用

IoT プラットフォームを AWS 上に再構築することに決めた香川氏は、次のように振り返ります。「いくつかの選択肢の中でAWS は品質・性能はもちろんのこと、サービスエンジニアの方々が私どもの話をよく聞いてくれるという安心感がありました。サーバーレスの仕組みとマネージドサービスの説明を聞いて、課題だった運用面でも AWS であれば解決できると考えました。非常にシンプルでかつ必要十分という基本構成を提案いただけたことが決め手となりました」

開発前に懸念、重要視していたのは、ユーザー認証、接続の管理、安定した運用の 3 点でした。ユーザー認証を安易に作るとセキュリティリスクが高くなります。社内に専門がいないため、大きな懸念でしたが、Amazon Cognito により、堅牢性と使いやすさを両立することができました。接続管理については、数千、数万に増加する接続をどう管理するか、クラウド側と製品側の状態の同期が課題と考えていましたが、AWS IoT Core とシャドウ (状態情報を保存および取得するために使用される JSON ドキュメント)を活用することで、課題を解決。製品の設計に集中することができました。
「特に運用保守が悩みでしたが、AWS Lambda が十分な柔軟性と敏捷性を持っているわかり、全体をサーバーレスで構築することができました。開発中に Amazon Cognito の一部が日本語対応していないことが判明しましたが、AWS に相談したところ、製品の発売スケジュールに間に合うように迅速に対応していただけたのはありがたかったです」(香川氏)

不具合発生時に迅速な対応を実現

ログを分析して製品開発にも活用

2020 年 7 月に音声操作できるサーキュレーターをリリースしたアイリスオーヤマは、システムを再構築したことで迅速な対応が可能となったといいます。「最も大きいのは、エラー発生の際にログをリアルタイムに受け取ることができるため、すぐに調査・修正に取りかかれることです。発売後の数週間でいくつか修正し、早期にお客様にご迷惑がかからない状態とすることができました。サービス開始から現在まで、大きな停止をしていないことも高く評価しています」と香川氏は話します。

また、エラー以外のログも、今後の製品づくりに役立てることにも期待していると香川氏は続けます。「音声コマンドで良く使われるのは何か? 何時頃に使われるか? 等、今までは想像するしかありませんでした。今は Amazon Alexa の呼び出しで把握できるようになりました。例えば、使用される時間帯は日中をメインに想定していましたが、夜から就寝にかけて多く使われていることがわかりました。日中を基本に、LED の輝度や、風速を調整していましたが、夜に使われるのであれば輝度や風速を抑えた方が快適だろうと予想が立ちます」

ログは、年齢や性別等の個人情報、位置情報等は一切取得していません。「個人情報保護の観点から、情報の取り扱いを明言できることも再構築のメリットの 1 つになります」と香川氏は説明します。

音声操作ができる製品の拡充や海外展開も視野に

「今回は、機能はシンプルにして品質重視で開発を行いましたが、当初の目論見以上に順調に立ち上げることができました。1 つひとつの技術には特筆はありませんが、弊社の懸念に対応するサービスが AWS にすでに存在したこと、それらをうまく連携すれば品質を保って短期間で商用サービスの立ち上げができたこと、さまざまなメリットを実感できたことが大きな成果と考えています。引き続き AWS の理解を深めながら、他の家電製品に展開していきたいと思います。また、安定性や運用のしやすさを実感できたので、家庭向けに加え、法人向けにも活用したいと考えています。これからもさまざまなお客様に簡単・便利に楽しいサービスを提供できるように考えていきます」と香川氏は語ります。

また、岩崎氏は将来展望を次のように話します。「音声操作機能をさまざまな家電に搭載することを検討しており、今回構築した AWS のプラットフォームに追加することを考えています。海外での家電販売にも力を入れており、安心できる日本製の家電でありながら、値ごろで使い勝手のよい当社製品を広めていきたいですね。グローバルに展開している AWS の他のリージョンで今回の仕組みを展開することも容易だと聞いているため、今後も AWS には手厚いサポートをお願いしたいと思います」

岩崎 亮太 氏

香川 修志 氏


カスタマープロフィール:アイリスオーヤマ株式会社

  • 資本金: 1 億円
  • 設立年月日: 1971 年 4 月
  • 売上高: 2,185 億円(2020 年実績)
  • グループ売上高: 6,900 億円(2020 年実績)
  • 従業員数: 4,434 名(2021 年 1 月現在)
  • 事業内容:生活用品の企画、製造、販売

AWS 導入後の効果と今後の展開

  • 不具合などのアラートに迅速に対応
  • 開発や製品づくりへのデータの活用
  • 音声操作ができる家電ラインナップの拡充
  • 海外での販売展開

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