導入事例 / 情報通信

2025
KDDI 株式会社

KDDI、基幹システムを疎結合化するモダンアーキテクチャに刷新。Oracle Database の Amazon Aurora 移行で運用コストを半減し、共創ビジネス創出を加速

2 倍

データベースの最大処理能力(4,000tps → 8,000tps)

20 分

一部のバッチ処理時間を 1 時間から 20 分に短縮

約 50%

データベース費用の削減

概要

5G 通信を軸とした事業戦略で業界特化の新サービス創出を目指し、データ基盤の刷新を進める KDDI 株式会社。密結合のフロントシステムと基幹システムを刷新し、アマゾン ウェブ サービス(AWS)に横断的なデータ照会基盤としてデカップリング層『JOINT』を構築することで柔軟性とスケーラビリティを向上しました。さらにOracle Database の Amazon Aurora 移行で運用コストを半減し、マルチリージョン化で「止まらない API」の実現を目指しています。

KDDI 株式会社

ビジネスの課題 | 業界特化サービス拡大に向けた高品質データ連携基盤の整備

KDDI は、中期経営計画『サテライトグロース戦略』のもと、5G 通信を軸に AI やデータ活用を通じて DX、金融、エネルギー事業の成長を目指しています。また、LX(Life Transformation)としてモビリティ、メタバース、宇宙分野などの事業拡大に向け展開するビジネスプラットフォーム『WAKONX(ワコンクロス)』は同社の顧客基盤や AI、クラウド、大規模計算基盤、ネットワークなどを活用し、モビリティや物流、倉庫といった業界特化型ソリューションをパートナー企業と共創して、新たな価値を提供します。

従来、同社のフロントシステムと基幹システムは密結合で、データ照会の柔軟性に課題がありました。そこで他社との協業や新サービス展開を促進するため両システム間に「デカップリング層」を設け、リアルタイム性や高頻度アクセスが必要なデータの横断的/効率的な活用に乗り出しました。AWS 環境に構築したデカップリング層では、携帯や固定回線契約、金融サービスなど異なる性質のサービスを統合するデータ照会基盤『JOINT』が重要な役割を果たしています。

「KDDI が業界で初めて導入した、モバイルの契約と固定回線の契約を組み合わせた割引プラン『スマートバリュー』を実現したのが JOINT の原型です。現在は、JOINT のデータを活用して金融サービスを組み込んだ『マネ活プラン』や、英会話教室など異業種のサービスと連携した割引プランが生まれています。JOINT では AWS 環境で Oracle Database を運用していましたが、今後の事業成長を考え、Amazon Aurora PostgreSQL に移行して運用コスト最適化とサービス品質向上を図ることにしました」と、KDDI 先端技術統括本部 先端プラットフォーム開発本部 コミュニケーションプラットフォーム部 部長の鎌田宣昭氏は語ります。

JOINT は Amazon Elastic Compute Cloud(Amazon EC2)上に展開した Oracle Database を冗長構成で運用していましたが、コスト削減と今後の WAKONX の拡大や災害復旧対応に向けてマネージドサービスへの移行を検討しました。

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大規模なデータベースの AWS マネージドサービスへの移行は、初めての挑戦でした。プロジェクトを通じて、クラウドネイティブの本質的な価値を深く理解できました"

鎌田 宣昭 氏
KDDI 株式会社 先端技術統括本部 先端プラットフォーム開発本部 コミュニケーションプラットフォーム部 部長

ソリューション | 大規模データベースを AWS マネージドサービスへ移行

KDDI はデータベース再構築を 2024 年春頃から本格化。まずはデータを移行した上で、基幹システムからのレプリケーションを Oracle Database on Amazon EC2 と Amazon Aurora に同時に行う並行運用を開始。次にバッチ系処理の並行運転を開始し、両方のデータベースに書き込む形を取ることで Amazon Aurora のデータが常に最新化されるようにしました。最終段階では AWS Fargate の照会 API をカナリアリリースで段階的にAmazon Aurora に切り替え、安全にデプロイメントを完了。

「従来のデータ連携では、朝のバッチ処理と日中の同期処理に大きな負担があったため、新たなデータ連携の仕組みや Amazon Simple Storage Service(Amazon S3)を活用したロード処理によって処理効率を改善しました。アプリケーション側は、従来から Amazon Elastic Container Service(Amazon ECS)と AWS Fargate を活用して柔軟性とスケーラビリティを確保しています。Amazon Aurora の性能課題が出た際は、AWS Graviton ベースのインスタンスに切り替えることで対処し、コストを抑えながら処理を安定化できました」と、コミュニケーションプラットフォーム部 開発 1G の豊田丈晃氏は語ります。

今回の移行では、Oracle Database の PostgreSQL への切り替えが山場となりました。155 のテーブルを 2 週間かけて修正しながら新しい環境に移行し、130 の API と 114 のバッチも修正要否を精査。コミュニケーションプラットフォーム部 開発 1G の小林峻氏は「現行の環境と業務要件が変わらないことを機能面で担保するため、各種試験やデータの突合に注力し、移行後も業務に支障が出ないよう徹底的な検証を実施しました。本番環境のログからトラフィックを抽出し、そのデータをもとに稼働中の Oracle Database と Amazon Aurora に対して同時に API を実行する仕組みを用意して検証しました」と語ります。性能に差異が見られた API には、アプリケーションおよび SQL の最適化を実施。特にアプリケーションとデータベース間の通信回数を減らすため、SQL を統合するなど効率化に注力しました。

PostgreSQL への移行を機に、単に SQL を修正するだけでなく、パフォーマンスを最適化するとともにレスポンスが変わらないことを試験工程の中で一つひとつ確認し、必要な修正を加えることで運用上の課題を解決。コミュニケーションプラットフォーム部 開発 1G の木村優香氏は「移行時には、初期設定や構文の違いを見落とすと従来の動作に支障が出る可能性があったため、広範囲にわたる確認を徹底しました。以前の環境で見過ごしていた問題も改善し、性能をさらに向上できました」と振り返ります。

このような大規模なデータベースの AWS マネージドサービスへの移行は、開発パートナーにとっても初めての挑戦でした。技術的なスキル習得にもなるため、関係者全員が高いモチベーションで取り組めたといいます。

アーキテクチャ

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導入効果 | 運用コスト 50% 減で性能向上、今後は『止まらない API』の実現を目指す

Amazon Aurora への移行後、性能面では毎秒トランザクションが最大 4,000tps だった処理能力が 8,000tps に向上し、オンライン性能も 10% 以上向上。以前は 1 時間かかっていたバッチ処理が 20 分に短縮されるなど、処理速度も大幅に改善。従来の Oracle Database でバッチ更新時間帯に発生していた読み取り性能の劣化も解消されました。

検証が終わった 2024 年 12 月からは一部のコンテナからカナリアリリースを進め、2025 年 1 月に JOINT のすべての API 切り替えが完了。完全移行によってデータベース運用にかかる費用が半減し、新たな機能拡張やサービス向上への投資機会が生まれています。

さらに、東京/大阪のマルチリージョンの Active/Active 構成を採用することで、無停止メンテナンスを実現する環境構築を検討しています。「今回のコスト最適化により、マルチリージョン構成への投資機会を作ることができました。外部 API 提供ではダウンタイムが許容されないため、マルチリージョン化で『止まらない API』の実現を目指します。今回の経験を通じて、クラウドネイティブの本質的な価値を深く理解できました。AWS とともに、クラウドネイティブの真の価値を社内外に共有していければと考えています」(鎌田氏)

カスタマープロフィール:KDDI 株式会社

日本を代表する電気通信事業者として、モバイル通信「au」をはじめ、固定通信、インターネット接続、IoT、データセンターなど幅広い事業を展開。法人向けには DX 支援、個人向けには金融・決済サービス「au PAY」などを提供。KDDI VISION2030「誰もが思いを実現できる社会をつくる。」の実現を目指し、通信インフラ整備やデジタル基盤の開発、データ・AI 活用を推進している。

KDDI 株式会社
鎌田 宣昭 氏

鎌田 宣昭 氏

豊田 丈晃 氏

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小林 峻 氏

小林 峻 氏

木村 優香 氏

木村 優香 氏

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