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2024 KINTOテクノロジーズ株式会社

KINTOテクノロジーズ、Amazon Bedrock の活用で開発アジリティを向上。品質を向上するとともに、データ分析工数の 50% 削減を実現

オートモーティブ

概要

トヨタグループの金融サービス企業として、クルマのサブスク『KINTO』のサービス開発を手がけるKINTOテクノロジーズ株式会社。開発アジリティの向上に向けて、生成 AI のユースケース拡大に取り組む同社は、Amazon Bedrock を活用してプログラムコードの一次レビューツールや、ミニマル生成AI活用基盤などを内製開発しました。これらの事例が社内に浸透し、エンジニアリングチーム全体の技術レベル向上が実現しています。
Modern industrial-style workspace with a bar counter labeled "Tokyo JCT," a large TV, shelves displaying tools and decor, and exposed ductwork on the ceiling.

課題・ソリューション・導入効果

課題

グループいちの生成 AI 活用チームを目指して全社でユースケースを創出

トヨタグループが展開するモビリティサービスをテクノロジーで支援する KINTOテクノロジーズ(以下、KTC)。2021 年の設立当初から内製開発を方針に掲げ、技術力の高いエンジニアを積極的に育成してきました。「どこよりも最新テクノロジーを使いこなしている会社になるべく、常に情報をキャッチアップしながらプロダクト開発に取り入れています。人材の育成に向けて、勉強会の全面的な支援、各種トレーニングの実施、社外コミュニティへの参加、テックブログの推進など、現場がチャレンジしやすい環境づくりを心がけています」と語るのは、CIO で取締役副社長の景山均氏です。

こうした背景から生成 AI についても早くから着目。社内横断プロジェクトを立ち上げ、全社員にユースケースの創出を呼びかけてきました。

「トヨタグループで生成 AI の NO.1 になるという思いから、失敗を恐れることなく積極的にやってみようと発信しています。自然発生的に生まれたアイデアが形になってきたら、会社が全面的にサポートし、成功事例として全社に展開しています」(景山氏)

こうして生まれたユースケースの代表例が、Amazon Bedrock を活用したプログラムコードの一次レビューとミニマル生成AI活用基盤の2つです。

ソリューション

コア技術として採用している AWS との親和性から Amazon Bedrock を採用

プログラムコードの一次レビューは、OSS の AI ツールである『PR-Agent』を活用しています。KTC 全体の横断組織としてデータベースに関する課題解決を支援する DBRE グループは、プルリクエスト(PR)の一次レビューを自動化し、開発者がコードレビューに費やす時間を削減する目的で PR-Agent を採用しました。

DBREグループ DBRE Engineer の星野元章氏は「OSS であること、複数の言語モデルに対応していること、導入の容易さなどを評価して PR-Agent を採用しました。大規模言語モデル(LLM)は、KTC で採用しているAWS サービスとのインテグレーションと、スピード感を持って導入できることを評価して Amazon Bedrock で利用可能な Claude3.5 Sonnet を採用しました」と語ります。

PR-Agent の導入時は、インプットに対して意図したアウトプットが得られるようにプロンプトチューニングを重ねました。プロンプトを GitHub Wiki で管理することで、プロンプトの変更をチームメンバーが容易に行えるようにしています。

「Amazon Bedrock のマネージドサービスによって、モデルのつなぎ込みなどの作業負荷がかからず、プロンプトの開発に集中できました」(星野氏)

PR-Agent の導入により、PR 作成の負荷軽減やレビュー精度の向上などが実現しました。

「これまで 10 分ほど要していた PR のタイトルと説明文の作成時間が瞬時に完了するようになりました。レビューでは見落としがちな部分が指摘されるため、コードレビューの精度が向上しています」(星野氏)

コードレビューに特化した PR-Agent は、同社ではテックブログにも活用されています。DBREグループ Principal DBRE Engineer の廣瀬真輝氏は「テックブログに導入することで、レビューの負荷が軽減されました。誤字脱字や文法のチェックに加えて、文章の魅力を高めるためにはどういった内容を盛りこむべきか、わかりやすい記事にするにはどうするべきか、といったところまでレビューできるのが従来の静的解析レビューツールと異なるところで、利用者からも LLM のフィードバックが参考になったといった声が届いています」と語ります。

現在は、PR-Agent で培った技術をもとに生成 AI を活用したフルスクラッチのスキーマレビューを開発中で、今後は複数のプロジェクトに適用することで、より良い開発者体験を提供していく考えです。

もう 1 つのユースケースである簡易データ分析は、小規模なケースに適したサービスがなかったことが開発のきっかけです。汎用的な AI の Web アプリでは機能が不足し、検索拡張生成(RAG)が組み込まれた特化型の AI アプリでは高機能かつ高価です。そこでサーバーレスかつ簡易な仕組みで、RAG が不要な分析基盤を構築することにしました。全社のデータ分析を横断的に支援するデータ分析グループの上平拓弥氏は「最初は、生成 AI で SQL が作成できるのではないかと考えたことでした。その他にも現場からアンケート結果などを要約したいといったニーズがあったことから、ミニマル生成AI活用基盤構築に着手しました。ここでの「ミニマル」とは、無駄を省いた必要最低限のアーキテクチャを意味します。ミニマルであっても、14万字程度の一括入力にも対応できる性能を持たせています」と語ります。

開発に際しては、Amazon Bedrock と AWS Lambda を採用してサーバーレス構成とし、維持費と維持工数の削減を図りました。プロンプトの生成処理はアドインとし、プログラミングに精通していないユーザーでも容易に利用できるようにしました。

「AI アプリの構築に必要な機能がすべてサーバーレスであることが AWS 採用の決め手です。プロトタイプの開発は 2 週間ほどで完了しました。ユーザーが任意で AI のモードを変更できるのが特徴で、プロンプトを作成してAmazon Simple Storage Service(Amazon S3)に配置しておくだけでモードが増えていくので、常に新しい機能を利用することができます」(上平氏)

ミニマル生成AI活用基盤は現在、100 以上のデータ分析用ダッシュボードからユーザーの目的に合ったものを見つけるための検索や、各サービスや製品のXアカウントをフォローしているユーザーのプロフィール分析などで活用されています。

「X のフォロワー分析の案件では、50% 程度の工数を削減できました。事前に参照データとシステムプロンプトを与えておけるため、プロンプトの壁打ちが容易になったといった声も届いています」(上平氏)

今後は用途を拡大し、日本語による SQL の自動生成やデータの自動抽出などにも適用していく考えです。Principal Data ScientistでAssistant Manager の朝長英樹氏は「利用ユーザーを全社員に拡大していく予定です。そのためも認知度を高めることが必要で、テックブログなどを通して情報を発信していきます」と語ります。

導入効果

生成 AI の業務適用によりさまざまなメリットを獲得

KTC では業務に適用される生成 AI のユースケースが増加しています。こうした状況に手応えを感じている景山氏は、今後も会社としてバックアップしていく仕組みを整備していく考えを示しています。

「生成 AI などの新しい技術は続々と登場しており、個人のレベルでキャッチアップするのも難しくなりつつあります。次のフェーズでは会社として組織的にマネジメントしながら、技術レベルの底上げを図っていきます。AWS には最新の技術情報をいち早く提供していただきながら、日本企業の最先端のユースケースを一緒に作っていきたいと思います」(景山氏)

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AWS には生成 AI に関する最新の技術情報をいち早く提供していただきながら、最先端のユースケースを一緒に作っていきたいと思います

景山 均 氏

KINTOテクノロジーズ株式会社 取締役副社長

アーキテクチャ図

プログラムコードの一次レビュー

Japanese-language architecture diagram showing the workflow integration between GitHub Actions, PR-Agent, and Amazon Bedrock (Anthropic Claude) for code or blog PR creation, including developer, GitHub Wiki, PR flows, LLM requests, and AWS cloud components.

ミニマル生成AI活用基盤

Architecture diagram illustrating the Kinto AR system on AWS, including Amazon S3, API Gateway, Lambda, Cognito, Step Functions, and Bedrock, with components and flow annotated in Japanese.

企業概要

「モビリティプラットフォーマーのトップランナーとして一人ひとりの『移動』に『感動』を」をビジョンにデジタル分野における情報システムの設計、開発、運用管理などを展開。トヨタグループのモビリティサービスを支えるプロダクトとして、サブスクリプションサービスの『KINTO ONE』、カスタマイズサービスの『KINTO FACTORY』、AI がお出かけ先を提案するインスプレーションアプリ『PRISM』などを開発している。
A group photo of the KINTO team standing in front of a brick wall with the KINTO logo, featuring five people in casual business attire.

取組みの成果

  • 50%Xのフォロワー分析の工数削減
  • コードレビューの精度向上
  • プルリクエスト作成の負荷軽減
  • テックブログレビューの負荷軽減
  • テックブログの内容充実と表現力の向上

本事例のご担当者

景山 均 氏

A man wearing a black jacket and dark shirt, seated in an interview or discussion setting with a neutral background.

廣瀬 真輝 氏

A smiling person with short dark hair and glasses, wearing a black sweater, sitting in an interview setting with a neutral background.

星野 元章 氏

Man in grey sweatshirt talking and gesturing with hands

朝長 英樹 氏

Portrait interview photo of a man in a blue jacket and white shirt, smiling and gesturing with his hands, seated against a neutral background.

上平 拓弥 氏

A man wearing a grey button-up shirt sits for an interview portrait against a plain background.