導入事例 / 運輸

2024

南海電気鉄道、基幹業務系システムを総クラウド化

25% のコスト削減と 30% の生産性向上へ

開発から運用まで完全内製を実現

100%

内製化

25%

6 年間のコスト削減見込み

30%

6 年間の生産性向上見込み

概要

日本最古の純民間資本私鉄、南海電気鉄道株式会社はプライベートクラウド基盤の更改に合わせて、全面的なクラウド化を敢行しました。組織的なスキル強化にも注力し、 アマゾン ウェブ サービス(AWS)のサポートを受けてスタッフを育成し、「100% の内製化」で移行を実現。6 年で 25% のコスト削減と 30% の生産性向上が見込まれています。

背景 | 基幹系を全面クラウド化、DX を推進する基盤へ

南海電気鉄道は、1884 年に母体である大阪堺間鉄道が日本最古の純民間資本私鉄として誕生し、1885 年に難波~堺間をつなぐ鉄道を開通したのが始まりです。南海グループは鉄道やバスなど運輸業のほか、まちづくり事業として不動産業やレジャー・サービス、建設・流通にも注力しており、沿線の商業ビルやオフィスビルの建設・運営など、街に関わる幅広い事業を手がけています。

「大阪・難波は古くから商業の街として知られ、平日は仕事に、休日は買い物や食事などを楽しむために多くのお客さまが訪れてくれます。このコロナ禍では、大阪の街の多くの事業者が辛い思いをされました。当社は、大阪の街をもっと元気にするためにも、新しい事業を創らなければならないと強く感じており、DX 推進部を新設するなど取り組みを強化しています。例えば、e スポーツイベント『e スポーツキャンプ 2023 Summer』の開催など、これまでにない取り組みにチャレンジしています」と、南海電気鉄道常務執行役員 総務人事グループ長(CAO)の西川孝彦氏は話します。

西川氏によれば、鉄道業は商業や行政とも密接な関係を築いているため、e スポーツのような新しい取り組みを街づくりの一環として広げていくことのできる立場にあるといいます。新しいパートナーシップも積極的に形成し、これまで以上に大阪を盛りげていきたい意向です。

南海電気鉄道 総務人事グループ DX 推進部長と、同社の IT と DX を支援する南海システムソリューションズの代表取締役社長を兼任する中尾敏康氏はデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みを次のように話します。「当社では、鉄道やショッピングセンターのデータ分析や事業横断のデータ活用などさまざまな DX を推進しています。そこでのポイントは、デジタル技術を共通の知識として現場社員から経営層まで全員が理解し活用できる状態を実現することです。そのために素養のある社員や興味のある社員が、データ解析や高度なイノベーションに取り組める仕組み作りに注力しています」

そして重要な点が、DX の基礎となるシステム基盤として従来のオンプレミス型基幹業務システムを全面的にクラウド化したことです。プライベートクラウド基盤のサポート終了が迫り、ビジネス環境の変化に耐えうる柔軟性・拡張性の高い IT インフラとして、クラウドの活用が検討されました。

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「AWS の親身なサポートによって、システムのクラウド化とともに、人材育成と完全内製化を果たすことができました。今やすべてのスタッフが、自信を持って AWS に取り組めています」

西川 孝彦 氏
南海電気鉄道株式会社 常務執行役員 総務人事グループ長(CAO)

ソリューション | システムのクラウド化とともに AWS 人材の育成にも注力

南海システムソリューションズでは、ベンダー依存体質からの脱却と内製運営を目標に、自ら知識を得るところから始めました。AWS に支援を依頼して管理職を含め IT部門のほぼすべてのスタッフが参加する勉強会を実施しました。

「AWS の勉強会は単なる知識の詰め込みではなく、当社のシステムをクラウド化したらどうなるかなど、自分事として捉えやすいケーススタディが印象的でした。本格的に移行を検討する際にも、無償の AWS IT トランスフォーメーションパッケージを活用することで、オンプレミスと AWS 利用時のインフラコスト分析やクラウド移行に必要な現状分析と推奨アクションのアドバイスなど、幅広く具体的なアセスメントを実施していただきました。私の持っていたイメージ以上の親身なサポートを提供してくれたことが、AWS 採用の決め手になりました」と、南海電気鉄道 総務人事グループ DX 推進部 課長 兼 南海システムソリューションズ 情報サービス部長の佐藤貴俊氏は振り返ります。

南海電気鉄道では、従前のプライベートクラウド基盤を Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2)を中心にクラウドリフトを果たし、また新しいサービスについてはマネージドサービスを活用して、クラウドネイティブな環境として構築しています。

「セキュリティサービスを積極的に活用し、構成や設計も工夫しています。例えば、目的別にアカウントを使い分けている点が挙げられます。従前のプライベートクラウドは開発系も本番系も同じネットワークセグメントにサーバーが混在しており、各サーバー間の通信制御も行っていなかったため、保守の際や侵入された際にリスクが非常に高い状態でした。現在は、開発用や本番用、検証用、ログ保管用などアカウントを分けたうえで AWS Transit Gateway で接続し、AWS Network Firewall で業務上必要な通信のみを許可することで、保守時の分かりやすさと侵入への耐性を備えた安全性の高い設計とし、レベルアップさせることができました」と、南海システムソリューションズ 情報サービス部 課長の前田智史氏は説明します。

アーキテクチャ

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導入効果 | 内製 100% を実現し、コスト 25% 減、生産性 30% 増へ

南海電気鉄道の基幹業務システムのクラウド化は完了したばかりで、現時点では、正確なコスト削減効果は確認できていません。ただし、AWS IT トランスフォーメーションパッケージによれば、6 年でマイナス 25% のコスト削減とプラス 30% の生産性向上効果を得られると試算されています。佐藤氏によれば、根拠となる資料が明確なため、信頼できる数字として大いに期待しているといいます。

また前田氏は、「調達リードタイムの短縮化が大きな効果」と評します。プライベートクラウド基盤もベンダー依存が大きく、仮想マシンを 1 台立ち上げるにも当初は 1 か月必要でした。それが現在では、急ぎであれば 1 日で用意することができます。

この背景には、徹底的な内製化があります。ベンダー依存を大きな課題としていた南海システムソリューションズでは、AWS プロフェッショナルサービスを活用し、スタッフの育成に注力し、100% の内製化を果たしました。

「今回の取り組みを通じ、私たちの役割は調整者から技術者へと完全にシフトしました。自分たちで手を動かすようになりましたから、もちろん苦しい場面もあるでしょう。しかし、リターンも大きいと考えています。当初は何を質問したらよいかもわからない状況でしたが、AWS アカウントチーム は聞きやすい環境を用意してくれて、一からしっかり学ぶことができました。スタッフは非常に高い成長度を示しており、私も感心しています」(佐藤氏)

南海電気鉄道では、基幹業務システムのクラウドリフトが完了し、徐々にマネージドサービスの活用も推進。今後は一層、活用していきたいと意欲を示しています。

「まずは現在の環境のモダナイズを進めて、インフラの最適化を図ります。並行して、顧客向けのサービスはアジャイルにトライ&エラーを繰り返して最先端の技術も活用していきます。コールセンターやデータ分析基盤としての AWS を活用中で、さらにはグループ企業のクラウド活用も進めたいところです。 AWS とその価値を余すところなく使いたいと思っています」(中尾氏)

西川氏は南海電気鉄道の DX について、「イノベーションという言葉は、自分事のように感じられません。私たちは、いわゆる“イノベーションスキル”をこれからの将来で身に付けたほうがよいスキル、一般的な知見として捉え、特別なモノではない・自分の仕事に関わるあたりまえのモノという意識を持つようにしています。南海電気鉄道と南海システムソリューションズとの両方で、IT と DX において AWS に取り組むエンジニアの育成と獲得にも注力していきたいと考えています」と語ります。

カスタマープロフィール:南海電気鉄道株式会社

日本最古の純民間資本私鉄として 1884 年に誕生。大阪・難波を中心に、関西国際空港や和歌山市、高野山を結ぶ路線を運営する。不動産やレジャー・サービス、建設、流通など幅広い事業を展開し、沿線の商業を支える存在として市民に親しまれている。コロナ禍を経てクラウド活用を推進し、基幹業務系システムの全面的なクラウド化を決断。 AWS 人材の育成にも注力して、 DX の取り組みを加速している。

西川 孝彦 氏

中尾 敏康 氏

佐藤 貴俊 氏

前田 智史 氏

ご利用中の主なサービス

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