導入事例 / 製造業

2023
オムロン株式会社

オムロン、研究開発用の HPC 基盤を AWS 上に構築、最適なコンピューティングリソースを活用し、革新的技術開発をリード

5 分

HPC 環境の構築時間

半日

最適化処理の解析時

最大 128CPU コア

並列処理のコア数

計算リソースの柔軟利用の実現

概要

コア技術「センシング&コントロール +Think」を軸に、制御機器、ヘルスケア、社会システム、電子部品の 4 事業を展開するオムロン株式会社。同社の研究開発部門は、機械学習や CAE 解析などで利用するハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)環境をアマゾン ウェブ サービス(AWS)上に構築し、研究環境の短期構築や解析時間の短縮などを実現しました。現在、AWS のリソースを柔軟に活用しながら、革新的な技術開発を進めています。

ビジネスの課題 | 計算リソースに限界があり、繁忙期には順番待ちが発生

2030 年度に向けた長期ビジョン「Shaping the Future 2030(SF2030)」で、“人が活きるオートメーションで、ソーシャルニーズを創造し続ける”を掲げるオムロン。

2022 年度から 2024 年度までの中期経営計画「SF 1st Stage」では、事業と組織能力の 2 つのトランスフォーメーションに取り組んでいます。
SF2030 の目標を実現するためには、開発者の要望に添った研究・開発環境の提供が欠かせません。しかし、既存のオンプレミス環境では、計算リソースの調達に限界を感じていました。

「センシング領域やヘルスケア領域では、機械学習による画像認識や、人の動きをシミュレーションする研究が増えています。データ解析や CAE 解析の領域でも複雑なシミュレーションモデルが増えています。これらの研究では大量の計算リソースを必要としますが、サーバー調達や環境構築に時間がかかり、研究・開発部門の要望にタイムリーに応えることができません。繁忙期になると計算リソースが不足し、利用者の順番待ちが発生していました」と語るのは、技術・知財本部 イノベーション・技術業務統括室 業務推進部の津田学氏です。

そこで同社は、研究開発部門として現在のコンピューティング基盤を根本から変革することを決断しました。

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機密情報を扱う研究開発の特性上、高いセキュリティが必須です。金融機関等での実績と、機密情報を守るための機能が充実していることが採用の決め手となりました

津田 学 氏
オムロン株式会社 技術・知財本部 イノベーション・技術業務統括室 業務推進部 経営基幹職

ソリューション | セキュアな環境が構築できるセキュリティ / アカウント管理機能を活用 

新たなコンピューティング基盤に、計算リソースを柔軟に増減できるクラウドサービスの活用を検討した同社は、AWS を採用。選定の理由は、採用実績の豊富さと、セキュアな環境が構築できるセキュリティ / アカウント管理機能にありました。

「機密情報を扱う研究開発の特性上、高いセキュリティが必須です。その中で、セキュリティ要件が厳しい金融機関や政府系機関で採用されていることと、機密情報を守るための機能が充実していることが決め手となりました」(津田氏)

その他、マネージドサービスが豊富なこと、開発自由度が高いことに加え、グループのソフトウェア開発会社であるオムロン ソフトウェア(以下、OSK)が 2019 年より AWS 技術者の育成を開始し、内製開発のノウハウが蓄積されていたこともポイントになりました。

AWS の採用決定後、2022 年 1 月から 3 月にかけて PoC を実施して、構築手順、柔軟性、可用性等を確認。4 月から 7 月にかけて設計方針を確定し、本番環境の構築を経て、2022 年 10 月に第 1 弾として技術・知財本部内の機械学習・画像認識を研究する部門と、CAE 解析・データ解析を研究する部門の 2 部門にリリースしました。

計算リソースは、要件に応じて Amazon EC2 のさまざまなインスタンスタイプを活用。既存の R&D 環境と AWS 上の HPC 環境とは、専用線接続サービスの AWS Direct Connect で接続してセキュリティを確保しています。

社外秘研究、HPC 計算、他社共創など、それぞれの研究テーマに応じてマルチアカウント環境を構成し、全体のアカウント統制には AWS Control Tower を採用しています。OSK コア技術センタ アーキテクチャ開発部 クラウド技術 G の小野秀将氏は「アカウントを個別に管理すると、セキュリティ対策の抜けや漏れが発生してしまいます。マネージドサービスの AWS Control Tower を活用することで、ガバナンスとアジリティを両立することができました」と語ります。

さらに、研究・開発部門の開発者が AWS に精通していなくても計算リソースの払い出しができるよう、Web GUI によるフロント画面を開発しました。

「AWS 標準のマネジメントコンソールは設定項目が多く、その意味を理解するのは研究者にとっては負担になります。そこで、複雑なことを考えることなく誰でも環境構築ができる Web フロントを作成しました」(小野氏)

導入効果 | HPC 環境の構築時間を数か月から約 5 分に短縮 

AWS の活用により、HPC 環境の構築時間は大きく短縮され、研究者の要望に迅速に応えられるようになりました。

「オンプレミスで調達から構築まで数か月かかっていた期間が、5 分に短縮できたことは劇的な効果です。開発者には“ポータル開けたら 5 分で PC”と説明して使ってもらっています」(津田氏)

計算リソースは上限なしで利用できるようになり、研究内容に応じて最適なスペックのインスタンスを選択することが可能になりました。繁忙期の順番待ちやスケジュール調整も解消され、ユーザーのストレスも軽減される見込みです。

先行して AWS 環境の利用を開始した機械学習・画像認識の研究部門では、AWS をオンプレミス環境と適材適所で使い分けて利用。計算リソースの活用と並行して、Amazon SageMaker による機械学習モデルの構築も行っています。技術・知財本部イノベーション・技術業務統括室 業務推進部の田畑尚弘氏は「マネージドサービスの Amazon SageMaker を活用することで、データ収集からモデル構築までの時間を短縮でき、効率的に研究ができるようになります」と語ります。

また、複数のインスタンスを立てて並列処理することにより、処理時間の短縮や運用負荷の軽減が期待されています。

「並列処理のパイプラインを組めば、処理時間の大幅な短縮が実現します。ジョブを投入するだけで自動的に処理が進むため開発者の負荷も軽減され、研究の中身に時間を使うことが可能になります」(田畑氏)

CAE 解析・データ解析の研究部門においても、解析時間の短縮など、さまざまな効果が得られています。技術・知財本部 デジタルデザインセンタの佐藤一樹氏は次のように語ります。

「最適化処理において最大 128CPU コアの計算リソースを活用した結果、数週間かかっていた解析期間を半日程度まで短縮できたケースもありました。計算中の待ち時間が短縮され、研究スピードを加速することが可能になりました。シミュレーションでは、環境が統一できるメリットも大きく、研究部門で開発したモデルを技術部門に引き継ぐ際も AWS AMI のマシンイメージを渡すことで、シミュレーションソフトのバージョン違いを気にする必要もなくなりました」

現在、新たな研究部門として、AI やロボティクスなど最先端技術を用いて "近未来デザイン" を創出する戦略拠点であるオムロン サイニックエックスや、外部の研究機関と共同で取り組んでいるロボティクスの開発でも AWS の利用が始まろうとしています。さらに今後は、技術・知財本部の他の開発部門などに展開していく予定です。

「先行ケースで実績を積み重ね、得られた成果を技術・知財本部全体に展開しながら、利用する部門を増やしていきます。SF2030 の早い時期に順次 AWS の活用領域を拡張し、研究・開発におけるクラウド活用をグループ共通の文化にしていきたいと思います」(津田氏)

カスタマープロフィール:オムロン株式会社

オートメーションのリーディングカンパニーとして、工場の自動化を中心とした「制御機器」、スイッチ、コネクタ、センサーなどの「電子部品」、鉄道の自動改札機や太陽光発電用パワーコンディショナーなどの「社会システム」、血圧計、体組成計などの「ヘルスケア」と、多岐にわたる事業を展開し、約 120 の国と地域で商品・サービスを提供する。

津田 学 氏

田畑 尚弘 氏

佐藤 一樹 氏

小野 秀将 氏

ご利用中の主なサービス

Amazon EC2

Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) は、安全でサイズ変更可能なコンピューティング性能をクラウド内で提供するウェブサービスです。ウェブスケールのクラウドコンピューティングを開発者が簡単に利用できるよう設計されています。

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Amazon SageMaker

Amazon SageMaker は、すべての開発者やデータサイエンティストが機械学習 (ML) モデルを迅速に構築、トレーニング、デプロイできるようにする完全マネージド型サービスです。

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AWS Direct Connect

AWS Direct Connect はオンプレミスから AWS への専用ネットワーク接続の構築をシンプルにするクラウドサービスソリューションです。AWS Direct Connect を使用すると、AWS とデータセンター、オフィス、またはコロケーション環境との間にプライベート接続を確立することができます。

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AWS Control Tower

AWS Control Tower は、ランディングゾーンと呼ばれる安全なマルチアカウント AWS 環境をセットアップおよび管理するための最も簡単な方法を提供します。

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