年間 10 万台以上増えていく接続台数に対応するプラットフォームを AWS によって実現することができました。接続率 100% と、顧客接点のさらなる強化に向けた新たな機能やサービスを提供するうえで AWS は欠かすことができません"
西村 憲吾 氏
パナソニック株式会社 空質空調社
ソリューション事業開発センター サービス開発・運用部 部長
付加価値の高い『エオリア アプリ』を 2017 年 10 月に提供開始
接続台数の増加に応じてAWS 基盤をモダナイズ
サービス開始時は、Amazon EC2 と Amazon Relational Database Service (Amazon RDS) で Web3 層構造を構築していました。2021 年 3 月にエアコンの接続数が 30 万台を超えると、今後 I/O 性能に限界を迎える可能性があると判断。そこで開発・運用チームは DB の移行とサーバー構成の見直しに着手し、NoSQL の Amazon DynamoDB と、MySQL 互換の Amazon Aurora に移行しました。サービス開発・運用部 コンシューマーサービス開発課の岡田征和氏は次のように語ります。
「2 つのデータベースの特性を生かして、データ量が大きく更新頻度が低いデータは Amazon DynamoDB、それ以外のデータは Amazon Aurora と目的別に分離しました。DB を変更し、サーバー構成を見直した結果 Amazon EC2 の台数削減が進み、2021 年度で年間 456 万円の運用コスト削減が可能になりました。性能面においても Amazon DynamoDB への移行によってシステム全体の負荷が軽減されたことにより、夜間に実施する期限切れログの削除処理の時間を従来の 2 時間 6 分から 23 分へと大幅に短縮することができました」
DB 移行後、エアコンの接続数が 40 万台に近づくにつれて、新たに見えてきた課題がフロント部分の Amazon EC2 の運用コストです。負荷増にあわせて Amazon EC2 を新たに追加するには構築作業の手間が大きくなっていました。そこで、より拡張性の高いコンテナ環境に移行し、実行基盤にフルマネージドサービスの AWS Fargate を採用しました。
「結果として 10 台の Amazon EC2 が 4 台の AWS Fargate に集約され、月額約 33 万円の運用コスト削減が可能になりました。今後のオートスケールへの布石にもなり、大きな効果を実感しています」(岡田氏)
データベースの移行と AWS Fargate への移行、2 つのプロジェクトでは AWS プロフェッショナルサービスを採用し、専門的な技術支援を受けながら進めました。
「データベースの移行では、MySQL の実行時間がかかっていることを指摘していただき、関係する処理テーブルに依存関係を示すインデックスを付与する形で性能改善を図るとともに、移行方法についてもAuroraリードレプリカを使用したリスクの少ない方法を提案いただきました。AWS Fargate への移行時には、性能評価の際に想定負荷を考慮したタスク数の決定で助言を受け、コストパフォーマンスの高い構成を組むことができました」(岡田氏)
アジャイル開発に移行し、2 週間単位でサービスを改善
2 度にわたる AWS アーキテクチャの改善により、年間 10 万台以上のペースで増加し、2024 年度で 60 万台、2026 年度中には 100 万台の接続が見込まれるエオリア アプリを、安定かつ低コストで運用する環境を整備することができました。サービス開発・運用部 部長の西村憲吾氏は「年間 10 万台以上増えていく接続台数に対応するプラットフォームを AWS によって実現することができました。接続率 100% と、顧客接点のさらなる強化に向けた新たな機能やサービスを提供するうえで AWS は欠かすことができません」と語ります。
2022 年度のプロジェクトでは、アーキテクチャの改善と並行して、インフラのデリバリー環境を CI/CD 化。開発・運用チームには DevSecOps を導入し、一部でアジャイル開発を進めています。今後は 2 週間単位のスプリント開発で改善を繰り返しながら、随時新機能をリリースしていく予定です。
「季節商品のエアコンは年に 1 回のサイクルでの機能強化が一般的で、アプリのリリース頻度も多くありませんでしたが、お客様に長く使い続けていただくためには常に魅力あるサービスを提供していく必要があります。そこで 2023 年度はアジャイルで開発し、お客様に試してもらいながら進化させていきます」(西村氏)
その一環として現在、データ分析をもとに顧客エンゲージメントを高める機能を 2023 年度のリリースに向けて開発中です。
「エオリア アプリをお使いのお客様が、自分の使用頻度が高い機能をより簡単に選択できるように、ログの分析をもとにしたパーソナライズ機能の開発にチャレンジしていきます」(中村氏)
エオリア アプリのサービス進化や、ソリューション事業開発センターが進める IoT サービスの開発において、AWS に対する期待はますます大きくなっています。