クラウド型業務ソフト『PCAクラウド』シリーズに加わった “on AWS” バージョンで サービスラインナップを強化し、幅広いニーズに対応
概要
中堅・中小企業向けの業務用パッケージソフトを開発・提供するピー・シー・エー株式会社(以下、PCA)。同社は、18,000 法人が利用するクラウド型業務ソフト『PCAクラウド』において、新たにアマゾン ウェブ サービス(AWS)をサービス提供プラットフォームに採用した『PCAクラウド on AWS』を2021 年 4 月にリリースしました。ユーザーの選択肢を拡大したこのサービスでは AWS のマネージドサービスを積極的に採用し、運用負荷やサービス障害の低減を実現しています。

夜間利用のニーズに応えて『PCAクラウド on AWS』をリリース
PCAは 1980 年の創業以来、会計、人事・給与、販売管理、仕入在庫管理などに関わるパッケージソフトの開発からサポートまでを一貫して手がけています。
製品の提供形態としては、従来からの永続ライセンス(買取型)に加え、サブスクリプション(定額)サービスとしてクラウド型の『PCAクラウド』、顧客先のオンプレミス環境に導入する『PCAサブスク』がありました。2021 年 4 月にクラウド型の『PCAクラウド on AWS』をラインアップに加え、現在は 3 つのサブスクサービスを提供しています。
『PCAクラウド on AWS』は、データセンターを利用する『PCAクラウド』と異なり、プラットフォームに AWS を採用したサービスです。『PCA クラウド』が 5~24 時と利用時間を限定しているのに対して、24 時間利用でき、ライセンスコストも安価に抑えています。「『PCAクラウド on AWS』は、夜間も含めて 24 時間利用したいというお客様の要望に応える形でリリースしたサービスです。標準機能から省いた OTP、SLA、SOC などは、様子を見ながら追加を検討していきます」と語るのは取締役 開発本部長の佐久間哲雄氏です。
PCA のサブスクサービスは、3 か月の無料試用期間でパフォーマンスを確認してから導入することができます。「3 つのサービスいずれも、無料体験が可能です。SaaS ビジネスの拡大を目的に 2021 年 4 月に設立したカスタマーサクセス部が他社 ERP からの移行を全面的にご支援しています」と、事業戦略部 部長の伊藤真一郎氏は語ります。
マネージドサービスとコンテナを活用し運用負荷を軽減
PCA が同社のサービスの新プラットフォームに AWS を採用したきっかけは、2019 年末に AWS から提案を受けて実施したクラウドエコノミクスで、90% のインフラコスト削減という試算が出たことでした。
「試算といっても 90% 削減可能という数値は衝撃的であり、経営層にすぐ諮りました。API エコノミーを拡大する事業戦略を考慮しても、採用実績が豊富な AWS を選択することは自然な流れでした」(佐久間氏)
また、開発の自由度の高さも決め手になりました。開発本部 システム開発部 次長の加藤昌明氏は「外部データセンターの利用では、コンピューティングやストレージのリソース配分が固定化される部分がありましたが、AWS では効率よくリソースを活用できます。無尽蔵ともいえる拡張性や、コマンドラインインターフェイス(CLI)等を活用してあらゆることが自動化できることも魅力でした」と語ります。
『PCAクラウド on AWS』の開発は、2020 年 5 月から約 1 年間で実施。Data API として、マルチ AZ を活用した Elastic Load Balancing、Elastic Container Service、Amazon Aurora の構成とし、Web-API では Amazon ElastiCache をセッション情報のキャッシュ、Amazon Elasticsearch Service をログ保存先として利用しています。開発本部 システム開発部 エンジニアの白石涼氏は「AWS のベストプラクティスに添った構成とすることで、開発はスムーズに進みました。Amazon Aurora の導入により、DB の性能や可用性が向上し、マルチテナント構成の柔軟性が増しています」と語ります。
AWS 上でのサービス構築に際しては、マネージドサービスとコンテナ(Amazon ECS)を利用したモダンな構成とし、運用負荷を軽減するとともに、サービス障害の懸念を解消しました。アーキテクチャの検討、設計、構築時には、AWS を安全かつ効果的に利用する指針がまとまっている AWS Well-Architected フレームワークが役に立ったといいます。開発本部 クラウドビジネスセンター 主任の洞口麻里氏は「このフレームワークと比較することで、アーキテクチャに大きな問題がないことを確認できました。運用フェーズに移行後も、次の強化点の見通しを立てることができるため、定期的にチェックを続けていきます」と語ります。
今後は、現在実装中の SIEM on Amazon Elasticsearch Service によってセキュリティログを可視化し、AWS の各種セキュリティサービスを活用しながら、より安全で安心なサービスを提供していく予定です。
顧客に新たな選択肢を提供し既存 ERP からの乗り換えを加速
「2021 年 4 月~10 月末のクラウド無料体験の申込みは前年比で 134.5% に達し、クラウド契約数も前年比の 155.3% と大幅に伸びています」(伊藤氏)
2021 年 9 月には『PCAクラウド on AWS』の同時利用ライセンス数の上限を、当初の 3CAL から 72CAL に拡充し、多数の業務担当者による運用も可能となりました。事業戦略部 プロダクトマーケティングセンターの宇野照夫氏は「CAL の拡充で、大規模な運用ニーズに応えることができるようになりました。大規模なシステム運用を望むお客様からは、夜間のバッチ処理や大量データの移行に対応できる 24 時間稼働が高く評価されています」と語ります。
『PCAクラウド on AWS』によって、顧客の選択肢がさらに広がり、既存サービスからの移行も進むと予測されています。
AWS の MAP プログラムを活用しサービスの品質向上を促進
今後に向けては、2021 年 7 月に AWS の包括的なクラウド移行プログラム『AWS Migration Acceleration Program(MAP)』を締結しました。MAP を活用して 3 年かけて『PCAクラウド on AWS』のサービス提供を促進するとともに、業務利用の社内サーバー群も AWS に移行し、インフラ全体のコストダウンを図っていく計画です。
アーキテクチャについては、AWS の各種サービスを活用しながら、よりモダンでクラウドに最適化したアーキテクチャを推進していきます。
「AWS がそうであるように、『PCAクラウド on AWS』もシームレスにプロビジョニングを実行し、あらゆる機能を API として利用可能にしながら周辺・拡張サービスや外部サービスとつなげていきます。並行して、エンジニアの教育を進め、AWS の資格取得者を増やしていきます」(加藤氏)
営業面では、AWS と APN パートナー契約を締結し、マーケティング面での連携を予定しています。伊藤氏は「AWS とのパートナーシップで『PCAクラウドon AWS』の認知度向上を図っていきます。AWS には、今後も販売パートナーや士業のお客様向けの営業支援と、AWS の API エコノミーを活かしたお客様との連携に期待しています」と語ります。

AWS の提案を受けて実施したクラウドエコノミクスで、90% のインフラコスト削減という試算が出たことに衝撃を受けました。API エコノミーを拡大する事業戦略を考慮しても、採用実績が豊富な AWS を選択することは自然な流れでした
佐久間 哲雄 氏
ピー・シー・エー株式会社 取締役 開発本部長ピー・シー・エー株式会社
設立:1980 年 8 月 1 日
資本金:8 億 9,040 万円
従業員数:425 名(2021 年 3 月末)
事業内容:業務用パッケージソフト『PCAシリーズ』、『PCAクラウド』、『PCAサブスク』、『PCAクラウド on AWS』などの開発、販売、サポート
AWS 導入後の効果と今後の展開
既存サービスからの移行が加速見込み
マネージドサービスや監視サービスの活用で運用負荷を軽減
包括的なクラウド移行プログラムを活用して『PCAクラウド on AWS』のサービス提供を促進
業務利用の社内サーバー群を AWS に移行し、インフラ全体のコストダウンへ
本事例のご担当者
佐久間 哲雄 氏

伊藤 真一郎 氏

宇野 照夫 氏

加藤 昌明 氏

白石 涼 氏

洞口 麻里 氏
