SAP ERP 環境 の AWS への移行により、年間の保守費用の総額は約 25% を削減しました。
事業継続(BCP)対策の強化にもつながり、業務停止のリスクを低減できました。
 
佐藤 淳一 氏 日本シグマックス株式会社 経営管理室 スペシャリスト システム担当

SAP ERP のサーバーの保守期限切れに伴い、インフラ基盤のクラウド化を検討。SAP ERP の運用実績と、コスト面を評価して AWS に移行しました。結果として、年間の保守費用の総額の約 25% を削減し、ハードウェアに関する管理工数も大幅に削減されました。


 

1973 年の創業以来、40 年以上にわたり整形医療の分野において、医療用サポーター、ギプスなどの外固定製品の製造、販売を中心に事業を展開する日本シグマックス。医療分野で蓄積した技術をスポーツ分野に応用して 1993 年にはスポーツ向けブランド『ZAMST(ザムスト)』を発表し、事業を拡大しました。その品質は、国内外のトップアスリートからも高い評価を受けています。医療やスポーツで培ったノウハウは日常生活の領域にも活用され、腰やヒザなどをサポートするさまざまな製品を提供しています。近年は事業のグローバル化を見据えて中国とアメリカに販売拠点を構え、海外展開を進めています。経営企画室 広報担当の佐々木聰氏は「世界に先駆けて社会の高齢化が進む日本で実証したビジネスモデルを携え、世界に“元気”を届けてまいります。」と語ります。

同社のビジネスを支える基幹系システムは、2000 年にオンプレミス環境で SAP ERP を導入以来、2005 年、2009 年、2012年に 3 度ハードウェアの更改を重ねてきました。現行システムは、2012 年に更改しており、ハードウェアの保守切れが迫っている中で、オンプレサーバーの保守運用・ハードウェアの保守切れに影響されないクラウドへの移行を前提に検討を開始しました。」と語るのは、経営管理室 スペシャリスト システム担当の佐藤淳一氏です。

将来的には SAP も含めた基幹サーバーのクラウド移行を見据え、2015 年頃より、AWS の利用を開始しました。当初は業務影響の少ない各種管理系サーバーでトライアルを実施し、グループウェア等のアプリケーション、その後 AWS の WorkSpaces、ドメインコントローラ、そして全社員が常時利用しているファイルサーバーの移行を行いました。ここまで、1 年以上を費やし試験検証を重ねパフォーマンス・その他に問題ないことが確認できたため、基幹サーバーのクラウド移行の検討に入りました。基幹サーバーを移行するにあたり、改めて既存のベンダー含め、数社のクラウドベンダーの比較検討を行いました。その結果、やはり SAP の実績・その他オプションサービスに加え、コスト面においても、AWS が最も優れていると判断し採用しました。SAP ERP の AWS 移行にあたっては、複数のベンダーの提案内容を精査した中から AWS の認定パートナーである BeeX を採用しました。BeeX は、SAP システムのクラウド移行に関する深い知見があり、ユーザー側へ、負担にならない移行方式を提案いただけたことが決め手になりました。

SAP ERP はじめ、帳票開発ツール、ワークフローシステム、BI ツールを含む基幹系システムの移行プロジェクトは、2017 年 5 月にキックオフ。環境構築、テスト、リハーサルなどを経て 2017 年 11 月の 3 連休に移行を実施しました。今回は、OS と DB のバージョンアップは行わず既存の環境を移行することでリスクの軽減を図っています。AWS のサイジングでは、現行のスペックを再現することを優先。EC2 インスタンスの選定やリソース設定を実施して、コストの最適化を図りました。移行時は専用のツールを活用し、仮想化環境からマシンイメージをそのまま AWS 上に移行することで確実性を確保しています。「結果的に、ダウンタイムは 2 日間で抑えることができ、速やかに切り替えて業務を開始することができました。移行後も SAP ERP を含む基幹系システムは安定稼働を続けており、エンドユーザーは AWS に移行したことを意識することなく、日々の業務を行っています。」(佐藤氏)

SAP ERP の AWS への移行により、年間の保守費用の総額は約 25%の削減が実現しています。データセンターに設置していたラック数を 3 から 1に減らすことができ、そこでのコストも抑えられました。また、AWS への移行が進んだことで、事業継続対策の強化につながっています。「経営層からはコスト削減に加え、BCP 対策が強化できたことも高く評価されています。」と佐藤氏は語ります。
平常時の運用についても、要員の管理負荷が軽減されました。オンプレミスによる運用時は、障害が発生すると朝、昼、夜を問わず運用ベンダーから連絡が入り、必要な機材や対応 SE の手配に追われていました。AWS への移行後はそれがなくなり、情報システム部の負荷が軽減されました。「工数が軽減された分のリソースは、システム企画や開発に割けるようになり、経営やビジネスに貢献できるようになりました。」(佐藤氏)

SAP ERP の AWS 移行に合わせて、先行して AWS 上で稼働している管理系システムについても、インフラ運用ベンダーを BeeX に切り替えて一元化しました。その結果、基幹システムを含めた全リソースのコストや運用の全体最適化が期待されています。現在も月に 1 回の定例会を通して、既存の AWS 環境のバックアップ、自動復旧の仕組み、監視システムの整備や、パフォーマンスの改善などを進めています。従来は午前 0 時から朝 8 時まで時間を要することがあった夜間バッチは、現在は 2 時間ほどで終了するようになりました。夜間バッチで整合性が取れない場合、日中に半日かけて再更新することもありましたが、それも短時間で終了するといいます。

今後については、今回の AWS 化の際に見送った Windows Server と SQL Server のアップグレードを、サポートが切れる 2019 年までに実施することを検討しています。さらに現行の SAP ERP の保守サポートが切れる 2025 年に向けて、SAP S/4HANA へのアップグレードも含め対応を進めています。

また、将来に向けて、製品の研究、開発など直接ビジネスに貢献していくことを構想しています。佐藤氏は「例えば当社の医療用サポーターやスポーツ用サポーターに IoT デバイスを装着し、センサーから心拍数などの生体情報を取得して必要に応じてアラームを鳴らしたりすることが考えられます。今後も引き続き AWS の最新技術をチェックしながら、ビジネス化のアイディアを膨らませいきたいと思います。」と話します。

佐藤 淳一 氏

佐々木 聰 氏

 

APN コンサルティングパートナー
株式会社BeeX

2016 年の会社設立以来、SAP システムなどを中心とした基幹クラウドインテグレーションを専業として、基幹クラウド基盤構築、クラウドマイグレーション(移行)から運用保守までワンストップでサービスをご提供しています。「クラウド」と「SAP システム」に精通した技術コンサルタントが集結し、特に SAP システムを含めた基幹システムのオンプレミスからクラウドへの移行に関しては、業界でトップクラスの技術力と実績を有しています。 


SAP ワークロードの AWS 移行に関する詳細は、SAP とアマゾン ウェブ サービス ページをご参照ください。