導入事例 / 金融サービス

2024
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ソニーペイメントサービス、多彩な決済手段を提供する e-SCOTT Smart のフロントシステムを AWS に移行し、処理量の向上に加え PCI DSS 対応の負荷も大きく軽減

重要な決済システムやデータベースの円滑なクラウド移行

インフラコストを最適化し、障害の影響も最小化

PCI DSS への対応負荷を大幅に削減

概要

あらゆる商取引にクレジットカードやオンライン ID 決済、コンビニ決済など多彩な決済手段を提供するソニーペイメントサービス株式会社。近年の決済ニーズの多様化と急増によってシステム負荷の増大に直面していた同社は、アマゾン ウェブ サービス(AWS)を活用して、加盟店との接続を担う e-SCOTT Smart のフロントシステムをクラウドに移行。負荷の高い業務の簡素化に加え、柔軟性・拡張性の向上と大きなコスト削減を実現しています。

ビジネスの課題 | 進む決済手段の多様化と決済サービスの負荷増大

ソニーペイメントサービスは、EC サイトやオンラインショッピングなどの決済手段を必要とする事業者向けに、多様な決済手段を提供する決済代行サービスを展開しています。1998 年に開始されたクレジットカード決済サービス『e-SCOTT』は、クレジットカード各社とダイレクトに接続する回線を整備し、高速で障害のリスクも小さく安定した決済処理を実現。当初は決済機能のみでしたが、管理画面や売上データの作成などの機能を取り込んだ『e-SCOTT Smart』にグレードアップされました。その後、順次決済サービスが拡充されています。

「当社の決済代行システムは、カード会社と直接接続している独自性が特長です。スピードや安定性はもちろん、不正対策のサービスも提供しています。また、不正対策ソリューション『認証アシストサービス』は、各カード会社と連係して決済処理の属性情報を顧客データベースとマッチングすることで実現している、当社独自の強力なサービスです」と、執行役員 IT 部門長の井口功一氏は語ります。

昨今は EC 決済の拡大により、決済代行サービスへのリクエストが増大。また店舗などの“リアル”な決済場面でも、EC サイトのようなスマートな決済が求められるようになっています。例えばタクシーをスマートフォンで予約し、事前に決済手段を登録しておくと、目的地で降車するときには支払いが済んでいます。ソニーペイメントサービスでは、そうしたモダンな対面決済にも注力し、サービス強化に努めています。

決済手法の多様化が進むなかで、決済代行サービスには安定性や可用性がいっそう求められています。決済処理件数が右肩上がりで急増する中、同社でも、従来のオンプレミスシステムにかかる負荷の増大が課題となっていました。

「例えば、人気アーティストのコンサートチケットの発売時には、急激に処理が増大し、申し込みはできても決済の段階で滞ってしまうこともありました。お客様に迷惑がかからないよう全力で対応しますが、大きな負担となっていました。お客様の EC サイトなどもクラウドを採用して高速化しており、ピーク上限の予測は非常に難しくなっています。そこで処理能力の増強そして可用性・柔軟性を高めるため、クラウド活用を前提に次期システムの検討を進めました」と、IT 部門 システム開発部 システム企画課 統括課長 兼 IT 部門付 担当部長の亀井崇充氏は振り返ります。

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「AWS によって、ミッションクリティカルな決済サービスのフロントシステムをクラウド化できました。柔軟性・拡張性に優れ、PCI DSS への対応も容易となりました。オンプレミスと比較して何倍ものコスト削減効果を実感しています」

井口 功一 氏
ソニーペイメントサービス株式会社 執行役員 IT 部門長

ソリューション | AWS の強力なサポートでスムーズなクラウド移行

ソニーペイメントサービスは、決済サービスを担う最も重要なシステムのクラウド化に、ソニーグループで活用が進んでいた AWS を選定。2018 年頃からその他の社内サービスを AWS で構築してノウハウを蓄積し、本番ともいえる e-SCOTT Smart において決済電文の授受など顧客からのリクエストを直接受け付けるフロントのシステム(以下、フロントシステム)は 2022 年のローンチを目指してプロジェクトを推進しました。

「フロントシステムは、クレジットカード各社やコンビニ決済、オンライン ID 決済、コード決済、キャリア決済、電子マネー決済など多様な決済手段を提供します。従来のオンプレミス環境はモノリシックで、トラブルが起きるとすべての決済に影響してしまう状況でした。AWS やコンテナ技術を活用したモダンな構成であれば、各決済を分離して可用性を高められますし、リソースの配分を決済頻度に応じてコントロールすることでコストとパフォーマンスのバランスを取ることが可能です」と、IT 部門 システム開発部長の前山祐士氏は語ります。

3 万の加盟店、一日 300 万件のトランザクションを扱うビジネスの中核を担うフロントシステムのマイグレーションは大きなチャレンジでした。プロジェクトを支えた AWS のサポートについて、IT 部門 システム管理部長の小池信夫氏は次のように評価します。「AWS のアカウントチームからは、次期システムの移行計画の提案やコストを最適化する手法など、PoC から導入、運用、将来の計画まで幅広いアドバイスを受けました。エンタープライズサポートも活用しています。AWS サポートのテクニカルアカウントマネージャー(TAM)を含めた担当者が、時に米国の AWS のスタッフとも連携してきめ細かいサポートを提供してくれました。深く関わる前はクールな企業イメージでしたが、温かい人ばかりという印象で、安心してプロジェクトを推進できました」

アーキテクチャ

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導入効果 | PCI DSS への対応も安心。内製化でさらなる AWS 活用へ

ソニーペイメントサービスは、特に重要なデータベースの移行に AWS Database Migration Service(AWS DMS)を活用しました。「前回行ったオンプレミスのデータベース移行は、環境に依存するため非常に高度なスキルと専門家が必要で、高コストになってしまいました。しかし Amazon Aurora への移行はブラウザベースで作業がしやすく、権限の調整が容易で、移行ツールに特化した専門知識も不要でした」(前山氏)

また運用をリードする小池氏は、オンプレミスでは不可能だったクラウド環境のリソースの増減は、「コストを数分の一にする効果に値する」と評します。また、環境を横展開/拡張することも容易で、特別な処理を必要とする顧客向けには独立したシステムを構築できる点もメリットです。

「AWS は PCI DSS(クレジットカード業界の国際セキュリティ基準)にも準拠しています。厳格に定められているシステム構成や運用も AWS 上で適切に対応されるため、大幅に負荷を軽減できます。AWS 上で多くのコンテナが稼働していますが、これをオンプレミスで実現すると、OS やミドルウェアの脆弱性管理やパッチ管理が大きな負担になります。PCI DSS 準拠のサービスを活用することで、大きなコスト削減効果を得られています」(亀井氏)

ソニーペイメントサービスでは今後、AWS 上での開発のスピードや柔軟性を高めるため、組織体制の強化や人材の育成に注力し、内製化を進めていく意向です。先行的な取り組みとして「決済サービスを、もっと手軽に」をコンセプトとした新たな簡易決済サービス『RaPP』を AWS 上で内製開発し、2023 年度にリリースしました。さらなるクラウド活用、モダナイゼーションに意欲的で、既存のオンプレミスシステムの AWS 化も推進しています。

「決済代行サービスはすでに社会インフラの 1 つですから、当社も全力で安定性や安全性強化に努めています。AWS の各種サービスは安定的で安心して利用できますし、DDoS 対策など強力なセキュリティサービスが、決済代行サービスの高度化につながることもわかりました。さらに AWS をすでに利用している加盟店がデータをインターネットに公開することなく接続を確立できる AWS PrivateLink の採用や開発効率の高い API の提供など、AWS の活用によるサービス性強化策が進行中です。AWS には、今後もさまざまな形で当社のビジネスをサポートし、よりよいサービス作りに貢献していただきたいと思います」(井口氏)

企業概要 ソニーペイメントサービス株式会社

ソニーファイナンスインターナショナルから決済代行事業を引き継ぐ形で 2006 年に設立。インターネット上のクレジットカード決済代行システムとしては 1988 年から提供を続けており、2023 年にはクレジットカードの簡易決済ソリューション「RaPP」をローンチした。非対面業界唯一のカード会社 16 社とのダイレクト接続によるスピーディな決済と独自の不正対策「認証アシストサービス」を強みとする。

井口 功一 氏

小池 信夫 氏

前山 祐士 氏

亀井 崇充 氏

ご利用中の主なサービス

Amazon ECS

Amazon Elastic Container Service (Amazon ECS) は、完全マネージド型のコンテナオーケストレーションサービスです。Duolingo、Samsung、GE、Cook Pad などのお客様が ECS を使用して、セキュリティ、信頼性、スケーラビリティを獲得するために最も機密性が高くミッションクリティカルなアプリケーションを実行しています。

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Amazon Aurora

Amazon Aurora は、MySQL および PostgreSQL と互換性のあるクラウド向けのリレーショナルデータベースであり、従来のエンタープライズデータベースのパフォーマンスと可用性に加え、オープンソースデータベースのシンプルさとコスト効率性も兼ね備えています。

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AWS Shield Advanced

AWS Shield はマネージド型の DDoS 保護サービスで、AWS で実行しているアプリケーションを保護します。

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AWS DMS

AWS Database Migration Service を使用すると、データベースを短期間で安全に AWS に移行できます。移行中でもソースデータベースは完全に利用可能な状態に保たれ、データベースを利用するアプリケーションのダウンタイムを最小限に抑えられます。

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