AWS の豊富なサービスを活用し、新しい価値創出にフォーカスすることで開発した『SUBAROAD』は、顧客のロイヤリティ向上に不可欠のサービスとなっています。利用者の LTV(顧客生涯価値)の向上にも寄与しています "
小川 秀樹 氏
株式会社SUBARU
IT戦略本部 デジタルイノベーション推進部
SUBARU 車で走るからこそ、楽しくなるような道を案内したい
複数回の実証実験を実施しながら短サイクルのアジャイルで開発
同社が『SUBAROAD』の構想を開始したのは 2018 年のことです。その後、2020 年 6 月より本格的にプロジェクトを立ち上げ、開発に着手しました。アプリのプラットフォームには AWS を採用し、アジャイル開発で試行錯誤を繰り返しながら具体化していきました。AWS を採用した理由は、実績が豊富で安定性が高いこと、スピードが速く自由度が高いこと、シンプルな構成でアーキテクチャが構築できることなどにありました。
「『SUBAROAD』は、実験的な要素も強いチャレンジングなサービスで、やるべきことを先の先まで読むことができません。アジャイル開発でアイデアを短期間に具現化していくことを考えた時、スケールが容易で変化にも臨機応変に対応できるクラウドが必須でした。その中で AWS はサービスが充実し、コンポーネントを組み合わせるだけで設計・実装ができる開発効率の高さに魅力を感じました」(小川氏)
プロジェクトの特徴としては、正式版としてリリースする前に、複数回の実証実験を実施し、ユーザーに利用してもらいながら、サービスの方向性を固めていったことが挙げられます。「当初は家族向けのドライブプランや、通常のナビのように現在地からのルートを案内することを検討しましたが、実証実験のたびに“走ることを楽しめる”という原点に立ち戻り、改善していきました。開発チームとは密に連携し、短サイクルで設計・実装・レビューを進めながら実現力を高めていきました。自動車メーカーとしての品質確保も重視し、ドライブの安全性とサービスの信頼性を追求することも妥協しませんでした」(小川氏)
ドライブをサポートするアプリであるため、日中にトラフィックが集中するサービスの特徴に対して、Amazon CloudFront、Elastic Load Balancing、Amazon EC2 Auto Scalingを利用することで、スケーラビリティを確保しながら、 Amazon Relational Database Service (Amazon RDS ) と Amazon ElastiCache、Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) を組み合わせることで高負荷時でも安定して高速なレスポンスを維持する性能を備えています。
また、Amazon CloudWatch、AWS CloudTrail、Amazon Simple Notification Service (Amazon SNS) などを用いて運用の自動化にも取り組むことで運用の人的な負荷を低減し、AWS WAF によってモバイルアプリのシステムとして必要なセキュリティレベルを実現しています。
SUBARU オーナーからの反響が続々。ロイヤリティ向上に欠かせないサービスに
2021年12月に『SUBAROAD』を正式リリースして以降、アプリは順調にダウンロードされ、SUBARU オーナーからは好反響が届いています。「“今までにないサービスを体感してみて、改めてSUBARUが好きになった”という声が象徴的で、SUBARU車に乗る意義を確認できる手段を私たちが提案し、それに対してシンパシーを覚えていただけたことをうれしく思います。同じコースを何度も走ったり、全コースを走破したりするヘビーユーザーもおり、反響の大きさに驚いています」(小川氏)
同社にとって『SUBAROAD』は、顧客のロイヤリティを高めるのに欠かせないサービスとなっています。LTV(Lifetime Value:顧客生涯価値)を計測すると、『SUBAROAD』利用者は非利用者よりも高い傾向にあることが分かるなど、顧客の行動データを取得できるようになったことで、販売データとの紐付けも可能になり、マーケティングでの新たな情報源にもなっています。現在、車載 OS の Android Auto や CarPlay への対応に向けて開発が進行中で、今後は SUBARU 車への直接搭載が可能になる予定です。将来的には、コースやサービスの開発に SUBARU オーナーも参加していただきながら進化させていく構想もあり、『SUBAROAD』の発展に期待が高まります。