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サンフーズジャパン、生成 AI 活用で食品製造業の在庫管理を大幅に効率化。手書きの賞味期限管理から脱却し、年間 2,040 時間の工数を削減
食品製造業
概要
京都府宇治市で外食産業向け OEM 食品を製造する株式会社サンフーズジャパン。同社は原材料の賞味期限管理で生じていた作業負荷の課題を解決するため、株式会社トラストの協力のもとアマゾン ウェブ サービス(AWS)のマネージドサービスを組み合わせた在庫管理システムを導入。生成 AI による賞味期限自動読み取り機能などにより、年間 2,040 時間の工数と約 350 万円のコストを削減し、従業員が本来の製造業務に集中できる環境を構築しています。
課題・ソリューション・導入効果
ビジネスの課題
原材料の期限管理の正確性確保と効率化
外食産業向けの OEM 食品製造を手がけるサンフーズジャパンは、レトルト食品製造から発展し、現在では常温・冷凍・チルドという 3 つの温度帯でカレー、スープ、ソース、ドレッシングなどを幅広く製造しています。「お客様の想いをカタチに」「お客様の味をそのままに」というミッションを掲げ、品質の高い商品づくりへの手間暇を惜しまず「サンフーズジャパンにしか出せない」といわれる商品づくりを目指しています。
一方、製造工程においては原材料の賞味期限管理など、手作業による業務が従業員の負担となっていたため、代表取締役の𠮷田武史氏を中心に、デジタルを活用した改善策を検討していました。「複数の手作業を介していると、意図しないミスも生じます。そのため事業戦略の一環として DX の推進を掲げ、機械やシステムで工程をうまく補完できるような体制をつくりたいと考えていました」(𠮷田氏)
従来、原材料の賞味期限の管理方法は全て手作業で行っていました。「原材料が届くと、担当者が梱包に表記された賞味期限を手書きで帳票に記録し、事務員が帳票を見て PC に入力していました。数十~100 項目を現場で手書きしていましたが、製造者によって表記方法が異なるほか、手書きの文字を読み間違えることもあるので、正確に入力することが課題でした」と、SCM 部 次長の藤村智哉氏は語ります。
賞味期限を超えた原材料を使用することがあってはならず、万が一の事態が起こった場合は回収や廃棄作業が発生し、事業に大きな影響を及ぼしかねません。食の安全を守りながら従業員の負担を軽減するため、同社はシステム導入を慎重に検討しました。「他のシステム導入の際に経験していますが、パッケージソフトを導入する場合は業務をシステムに合わせる必要があります。かえって従業員の負担になってしまうと『今までのやり方のほうが楽』となってしまうため、当社に合った方法を模索しました」(𠮷田氏)
2023 年 10 月頃、𠮷田氏はコンサルタントからの紹介で AWS パートナーのトラストと出会います。トラストでシステム開発部統括部長を務める佐野高信氏は、「当社も中堅・中小企業をご支援する事業を始めたタイミングで、𠮷田社長の熱い思いにお応えし、真の中小企業の課題解消に取り組める機会と感じました」と振り返ります。AWS の各種サービスを組み合わせてサンフーズジャパンの業務フローに合わせたシステムを構築するというトラストの提案を受け、2024 年 1 月よりプロジェクトが動き出しました。
ソリューション
AWS サービスの組み合わせで現場に寄り添うシステムを構築
トラストは、サンフーズジャパンのそれまでの業務フローを詳細に把握するところから着手しました。従来の原材料管理は、原材料到着後、手書きで賞味期限を帳票に記録、帳票を見て PC に手入力、製造時のピッキング、使用量計量という複雑な工程を経ていました。
従来の手作業では避けがたいヒューマンエラーをなくすため、新しいシステムでは業務フローを大幅に効率化し、手書きの作業を可能な限りなくしていきました。スマートフォンのカメラで賞味期限のラベルを読み取り、生成 AI がさまざまな表記形式を統一データとして解釈。リアルタイムで在庫状況が可視化される仕組みを AWS のマネージドサービスを使って実現しました。
ポイントは、Amazon Bedrock を活用した賞味期限ラベルの自動読み取りです。ラベル表記は製造者によって『2025 年 7 月 10 日』や、『7/10/2025』などさまざまなパターンがあり、従来の OCR(光学文字認識)ではデータ整理が困難でしたが、トラストの佐野氏が AWS のセミナーで得た知識が突破口となりました。「生成 AI による文字認識を使うと、一定の文脈のもとで AI が賞味期限を解釈できるとわかり、すぐに試しました」(佐野氏)
システム開発はアジャイル方式で進められ、トラストの開発メンバーもサンフーズジャパンの現場に何度も足を運んで業務理解に努めるかたわら、毎週の定例会議で聞き取った現場の声を開発に反映させていきました。
「当社の従業員はこれまで新たなシステム導入をためらうことが多かったですが、スマートフォンで賞味期限を読み取るアイデアをきっかけに『これなら本当に作業が効率化できる』と可能性を感じ、積極的にミーティングに参加するようになりました。これこそが我々が目指していた DX の姿です」(𠮷田氏)
導入効果
年間 2,040 時間の工数削減で本来業務への集中を実現
2024 年 7 月に稼働した新しいシステムは、期待を上回る効果をもたらしました。入庫処理作業では年間 120 時間、ピッキングリスト作成では年間 640 時間を削減し、毎日さまざまな部門で行っている帳票記入作業も年間 320 時間削減されました。さらに、PC への入力作業では基幹システムを参照するため 1 日 4 時間ほどかかっていたところが一気になくなり、年間 960 時間の削減となりました。「これらを合計すると年間 2,040 時間の工数削減となり、およそ 350 万円のコスト削減効果となります。サンフーズにとってはかなり大きな金額です」(藤村氏)
また、現場の働き方も変化。従来は現場担当者が原材料の種類と数量を自分で計算していましたが、約 20 か所に分散する保管場所それぞれで必要なものを見つける作業は、ベテランでも容易ではありませんでした。
新システムでは「どこの保管場所にある、どのロットの原材料をどれだけ使用する」という指示が出るため、入社して間もない人でもすぐにわかるようになっています。事務作業の負担軽減も顕著で、基幹システムを見て確認していた作業や、各現場に電話したり足を運んだりすることが減っています。藤村氏は「空いた時間で人が足りないところを手伝うことができています」と業務配分の最適化を実感しています。
𠮷田氏は事業への影響について、「国内の外食産業市場が縮小する一方で、管理レベルを上げる必要があります。ものづくりに関わらない仕事を AWS 上のシステムに任せたことで、本来のものづくりに集中できる環境ができました」と強調し、トラストと AWS に対しては「率直に申し上げて 100 点です。私たちに寄り添っていただいたシステムができました」と評価します。藤村氏も「トラストに相談すると、AWS の機能を踏まえて翌週、翌々週には解決策を提示してくださいます」と大きな信頼感を示します。
サンフーズは今後、手間のかかる排水管理・監視での AI 活用や、従業員教育プログラムのデジタル化を検討しています。𠮷田氏は「DX 推進は、中小中堅企業には必須の課題であるものの、本気で取り組むのはとても難しいです。今回のように、システムが企業に寄り添う形だと導入にもストレスがなくなります。パートナーのトラストが当社に寄り添いながら低コストで従量課金の AWS を活用し、当社に合った仕組みを実現いただいた点は非常にありがたいです」と語っています。
従業員がシステムに合わせるのではなく、システムが現場に寄り添う形で DX を実現できました。AWS の柔軟性とトラストのサポートにより、中小企業でも大企業と同等のシステムを手の届くコストで導入できています
𠮷田 武史 氏
株式会社サンフーズジャパン 代表取締役アーキテクチャ
株式会社サンフーズジャパン
京都府宇治市に本社を置く業務用食品 OEM 専門メーカー。1985 年の創業以来、「お客様の想いをカタチにし、歓びの輪を広げる」というコンセプトを掲げ、外食産業向けにカレー、スープ、ソース、ドレッシングなどを三温度帯(常温・冷凍・チルド)で製造。自社工場による一貫生産体制と柔軟な対応力を強みに、安定供給と品質管理の徹底により取引先から高い信頼を得ている。
AWS アドバンストティア サービスパートナー: 株式会社トラスト
「新潟発 利益のタネ 共創カンパニー」をモットーに、お客様に寄り添い、きめ細やかな対応力を提供し、AI、IoT、サーバレステクノロジーなどの高度な技術スキルを持つ AWS パートナー。お客様のニーズに合わせてカスタムソリューションをクラウドネイティブで提供し、ビジネスプロセスの効率化や競争力の向上をサポート、お客様のデジタルトランスフォーメーションを成功に導いている。
取組みの成果
- 120 時間:年間の入庫処理作業の削減
- 960 時間:年間の帳票入力作業における削減
- 約 350 万円:年間のコスト削減効果
- 賞味期限管理の正確性向上
- 従業員の DX に対する意識向上
本事例のご担当者
𠮷田 武史 氏
株式会社サンフーズジャパン 代表取締役
藤村 智哉 氏
株式会社サンフーズジャパン SCM 部 次長
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