データ収集・蓄積、AI、BI、IoT の機能を実装した建設デジタルプラットフォーム
2019 年 5 月より、建設デジタルプラットフォームの検討を開始した同社は、クラウドを前提にインフラを検討し、複数サービスを比較した中から AWS を採用しました。デジタル室 先進デジタル技術グループチーフソリューションクリエイターの美里晋一氏は次のように語ります。
「当社では 2025 年を目処にグループ全体の業務システムをオンプレミスから AWS に移行を進めており、クラウドリフトと建設デジタルプラットフォーム双方の観点で採用を決めました。既存システムの移行のしやすさ、市場シェア、クラウドサービスとしての持続性、AI、IoT、ビッグデータ等のデジタルトランスフォーメーション(DX)に求められる先進サービスの充実度などを総合的に評価して AWS を採用しました」
2020 年 4 月から構築を開始し、要件定義を経て基盤構築、データ収集と進み、2021 年 11 月より運用をスタートしました。建設デジタルプラットフォームは、データ基盤と DX のためのアプリケーション群の 2 つで構成されています。
データ基盤は、建設プロセスにおけるプロジェクト業務や人事・経理など、事業にかかわるすべてのデータを管理・分析するためのものです。データ収集・蓄積基盤は、Amazon Simple Storage Service (Amazon S3)、Amazon Relational Database Service(Amazon RDS)、AWS Glue を活用。人工知能(AI)基盤には Amazon SageMaker、ビジネスインテリジェンス(BI)基盤には、従来より同社で利用しているツールに加え、Amazon Redshift も採用しています。
IoT 基盤は Amazon Kinesis を利用し、データ収集・蓄積基盤や AI 基盤とのスムーズな連携を実現しています。
「データ基盤は、AWS のマネージドサービスを積極的に活用し、データ量の増加や機能追加に柔軟に対応できるようにしました」(美里氏)
一方のアプリケーション群は、ユーザーがデータを業務で活用するためのものです。デジタル室が業務部門と連携しながら試行的に開発を進め、2020 年 9 月頃には一部をリリースしました。松本氏は「初めて作ったアプリケーションは、作業計画を作成するために技能労働者の労務工数の予定と実績を可視化するものでした。その後も、PC ログをベースに働き方を可視化するなど、2022 年 11 月までに約 25 のアプリケーションをリリースしました」と語ります。
アプリケーションの中で象徴的なものが、施工管理に必要な人員数を予測・シミュレーションする『人員山積みの予測アプリケーション』です。工事の概要データと、施工実績のデータを学習し、ビルの施工に必要な人的リソースを予測します。これまで支店ごとに Excel などを用いていた人員予測が、統一した基準で算出することが可能になりました。デジタル室 先進デジタル技術グループの山西利明氏は次のように語ります。
「人員山積みの予測アプリケーションは、過去の実績を教師データに Amazon SageMaker で機械学習を実行して予測モデルを作成しました。初期段階の建築工事に対してこのモデルを適用して人員数を予測しながら BI でデータを可視化しするものです。データ収集・蓄積基盤と AI 基盤の連携の作り込みを工夫しながら、セキュリティにも配慮しました」
建設デジタルプラットフォームの構築中は、AWS の担当者から定例会や個別の質問を通して設計レビューや改善提案などさまざまな支援を受けました。その中でも、効果を発揮したのが AWS のトレーニングでした。北原氏は「プロジェクトメンバーの半数以上が初めての AWS 体験でしたが、トレーニングを通して底上げを図った結果、スムーズにプロジェクトが進むようになりました」と語ります。