28 種類以上
内製開発のシステム数(5 年間)
半期 3 件以上
内製開発のシステム提案数
10 名
内製開発のメンバー数
チャレンジ精神の醸成・定着
エンジニアのモチベーション向上
概要
県内唯一の地方銀行として、地域経済の発展に貢献する株式会社山梨中央銀行。同行は、地域社会・お客さま・同行自身の DX の実現に向けて、2020 年よりアマゾン ウェブ サービス(AWS)支援による内製開発に取り組んでいます。2024 年 6 月時点で 28 種類以上のシステムをリリースし、行内業務の効率化に貢献。2022 年には AWS の デジタルイノベーションプログラム(DIP)によるワークショップを実施し、顧客起点のサービスデザインにチャレンジしています。
ビジネスの課題 | 地方の金融機関を取り巻く環境変化に対応するために内製化を推進
長期ビジョン「Value Creation Bank」の実現に向けて、2025 年 3 月までの中期経営計画「TRANS3(トランスキューブ) 2025」を推進する山梨中央銀行。AX(アライアンス・トランスフォーメーション)、DX(デジタル・トランスフォーメーション)、SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)の 3 つを変革ドライバーに、持続可能なビジネスモデルの構築を進めています。
DX については、「攻めの DX」「守りの DX」「支える DX」により、銀行自体を変革することを狙いとしました。「経営の安定とビジネスの拡大を見据えた時、自ら生み出す力がなければ環境変化に追随できません。そのためにも内製化の推進は必然でした」と語るのは、常務取締役(取材時)の田中教彦氏です。
IT 人材の育成の観点からも内製化には高い期待が寄せられていました。一般的に銀行の IT 部門の役割は上流工程が中心です。結果として、このことがモチベーションの低下につながる懸念がありました。そこで、スキルを発揮できる場を作ることがポイントになりました。システム統括部 システム開発課 課長代理の重友秀真氏は「ベンダーコントロールが重要であることは理解しているものの、自分で開発したいという思いは常にあり、内製化の転換は絶好の機会でした」と振り返ります。
「当行が AWS 活用で得たノウハウを、当行を利用するお客さま、同業他行、さらには地域社会に還元し、山梨から豊かな未来をきりひらいていきます」
田中 教彦 氏
株式会社山梨中央銀行 常務取締役
ソリューション | プロトタイピングプログラムを活用し、AWS のベストプラクティスを習得
同行が内製化に初めて取り組んだのは 2017 年のことで、九州地方の銀行と協業しながら営業店の窓口支援システムを開発したのが始まりです。その後、2018 年に AWS 関連のパートナー企業に同行のエンジニアが出向したのを機に AWS を試行し、2020 年から AWS による内製開発を開始しました。
「AWS を採用した理由は情報量がケタ違いに多いからです。無償教育プログラムも多く、オフィスアワーで AWS メンバーに直接相談ができたり、E-JAWS などの顧客企業コミュニティも充実していたりと、欲しい情報がすぐ入ることが決め手となりました」(重友氏)
以来、同行が AWS を活用して内製した行員向けの業務支援システムは、2024 年 6 月時点で 28 種類以上が稼働中で、IT 部門から提案したシステム件数は、半期で 3 件以上にのぼります。2023 年には専任の内製化チームが発足し、現在は 10 名のメンバーで開発を進めています。
「2020 年当初は私を含めてメンバーが 2 名しかおらず、業務部門に対して“困りごとがあれば開発させて欲しい”とお願いして回りました。開発の専門家でない私たちが作るシステムを不安視する声もありましたが、コスト面などのメリットが浸透し、今では業務部門から開発依頼が殺到しています」(重友氏)
内製開発の中で象徴的なのが、業務用スマートフォンを活用して営業店舗の帳票類を画像化して行内に取り込むシステムです。内製チームはサーバーレスを活用し、セキュリティを考慮して閉域側とインターネット側での境界を意識しながら開発しました。その際、AWS が要件整理やプロトタイプの開発を支援するプロトタイピングプログラムを活用し、短期開発を実現しています。
「これまでは自己流で開発を進めてきたため、品質に不安がありました。AWS の担当者に相談したところ、プロトタイピングプログラムを紹介いただきました。AWS の開発ノウハウは目から鱗で、私たちの意識も大きく変わりました」(重友氏)
導入効果 | DX や内製開発の取り組みがニュースで取り上げられ注目度が上昇
内製開発の推進は、同行の内外にさまざまな変化をもたらしています。外部に対しては、DX や内製開発の取り組みがニュース等で取り上げられ、注目度が一気に上がりました。
「これまでの地方銀行になかった新しい活動として高い評価をいただき、他行から視察を申し込まれる機会も増えています。リクルーティングにも波及し、当行の IT 部門に関心を寄せる大学生も増えました」(田中氏)
内部においては、IT 部門のプレゼンス(存在意義)が高まりました。2024 年 5 月には自行で開発した「個人ローン進捗管理システム」に関して外部の IT 企業と協業ビジネスの検討を開始するなど、新たな動きも出ています。
「IT の専門会社に認められたのは感慨深い出来事でした。当初は部門内でも“何で開発やっているの?”といった目で見られることもありましたが、現在は部門全体で応援してくれています」(重友氏)
エンジニアのマインドセットも変わり、開発を楽しめるようになったことやチャレンジ精神が醸成されたことも大きな成果です。
「例えていうなら部活動と同じ感覚です。私は高校時代に水球をしていたのですが、とてもきつい練習をしているのに、それが楽しいという感覚です。仲間とともに開発し、営業店に貢献できることがやりがいになっています」(重友氏)
AWS との関係も深まり、重友氏はユーザーグループ(JAWS-UG)の山梨支部の立ち上げをリードし、2024 年 6 月から運営メンバーとして AWS の活用を推進する活動を開始しています。
AWS とのコミュニケーションの中では、2022 年に新規事業創出に向けて顧客起点のサービスデザイン手法を学ぶ DIP によるワークショップを実施しました。これには部門の垣根を越えて 10 名の行員が参加。Amazon の Working Backwards に関するレクチャーを受けながら活動を続けました。2023 年 1 月には参加メンバーが練ってきた事業アイデアを発表し、経営層や部門責任者の審査により 2 つの企画が表彰されました。その 1 人である経営企画部 経営企画課 主任の松土梨歩氏は次のように語ります。
「DIP に参加した理由は、都会に出た友人の中で唯一 U ターン就職した私が山梨を盛り上げたいと思ったこと。また従来シニア層等には受容され難かったデジタルサービスが、お客様の中に徐々に浸透していく潮目を窓口係として肌で感じていた中で、今度は自らデジタルの活用を企画する立場でお客さまに貢献したいと思ったことです。Amazon 創業者のジェフ・ベゾス氏の著書を読み、徹底した顧客志向の考え方に感銘を受け、参加を決めました」
松土氏の企画はワークショップ終了後も新事業としての検討やブラッシュアップが重ねられ、形になりつつあるといいます。
「私が DIP で学んだのは顧客起点の商品やサービスづくりです。お客さまとの会話から「事実」を引き出し、事実から「感情」を推測する、というユーザーインタビューの手法を用いて、お客さま自身も気付いていない課題を解決するサービスの検討を進めています」(松土氏)
山梨中央銀行は、今後も AWS で習得したノウハウを、システムを利用する行員と同行のお客さま、地方銀行を中心とした他行、地元の企業を中心とした地域社会と、3 種のお客さま起点で還元していく考えで、AWS には継続的な支援を期待しています。
「地域の社会課題の解決という最終的なビジネスモデルの構築に向けて、ヒト・モノ・カネをつなぐプラットフォームは重要で、その中心となるのが AWS です。今後もお手伝いをいただければと思います」(田中氏)
企業概要 株式会社山梨中央銀行
1877 年(明治 10 年)に第十国立銀行として創業。「地域密着と健全経営」を理念に、地域社会の発展への貢献を目指している。創業 150 年となる 2027 年を控え、長期ビジョン「Value Creation Bank」を策定。中期経営計画「TRANS3 2025」では「山梨から豊かな未来をきりひらく」をパーパスに掲げている。
田中 教彦 氏
重友 秀真 氏
松土 梨歩 氏
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