クラウドで司法を守る: Predictice と AWS が法務業務を変革

生成 AI の登場により、さまざまな分野の専門家は、より迅速かつ容易に、知識を収集し、この情報を役立たせることができるようになりました。中には、このような作業には基本的な AI プラットフォームさえあれば十分という人もいます。しかし、情報が高密度かつ複雑であり、厳格なセキュリティと倫理の枠組みが適用される分野においては、AI をデプロイし、それを効果的に活用することは困難です。この課題は、法務分野において最も顕著です。

Predictice は、明確なミッションを掲げて 2016 年に設立されました。そのミッションとは、「ドキュメントレビュー、法務調査、文書の起草などの付加価値の小さいタスクを自動化し、専門家が専門分野に注力できるようにする」ことであると Predictice の Content Marketing Officer である Vivien Douard 氏は述べています。AWS との連携により、同社は顧客向けにセキュアで高度に専門化されたソリューションを生み出し、法務分野で働いている人々が AI の恩恵を享受して、「法務業務をより迅速かつ効率的に」行えるようにしています。

AWS とのパートナーシップは、極めてセキュアなソリューション、迅速なデータベース統合、スケーラビリティの必要性から 2024 年に始まりました。Predictice にとって、フランスとルクセンブルクの顧客ベースの期待に応え、データ保護およびセキュリティ関連規制に準拠するために、AI モデルとデータを欧州でホストできることが重要でした。

Predictice は、Amazon Bedrock 上の Anthropic Claude に移行し、検索エンジンに Amazon OpenSearch Service を活用しました。また、Amazon SageMaker JumpStart 上の Cohere Embed v4 を採用し、Amazon OpenSearch Service でインデックス付けされ、ベクトルとして保存されるドキュメント処理埋め込みを生成しました。

Predictice は、移行前から、法務分野における検索拡張生成 (RAG) の活用における先駆者として、着実なスタートを切っていました。2023 年には、法務専門家に特化した RAG AI プラットフォームをリリースした、フランス初の企業となりました。AWS とのコラボレーションを通じて、Predictice は、他の分野で働いている人々が既に経験しているような AI の変革的影響を実現する包括的な法務ツールボックスを構築しました。また、重要なことに、法務専門家が自信をもってこのテクノロジーを導入および利用するために必要となる高度なセキュリティと専門的な機能セットも提供しています。

申立て却下: AI 統合の課題

法務分野で働く人々は、法の支配を守り、権利を保護し、司法へのアクセスを提供し、効果的なガバナンスを促進することで、社会において重要な役割を果たしています。しかし、他の専門職とは異なり、このグループ (弁護士、裁判官、パラリーガルなどを含む) は、母語だけでなく、第二言語でも業務を行っています。「法律用語」は何世紀にもわたる法の歴史に根ざしており、ラテン語、古風な構造、日常会話でははるか昔に使われなくなった言い回しなどが含まれています。このようなコミュニケーション方法は正確性と形式的な厳格さを実現しますが、同時に文書が技術的で複雑になる可能性があることも意味しています。「法務分野はデータが豊富ですが、従来のツールでは十分に活用されていません」と Douard 氏は述べています。

この分野は歴史的に AI の導入が遅れています。その理由の一つは、文書への依存と正確性の高い情報の必要性です。意思決定は特定のテキストに概説された先例に基づいて行われ、新しい規則、改正、解釈は絶えず進化しています。インフラストラクチャのセキュリティも重要です。「当初の主な課題は、AI が信頼できるものであると納得していただくことでした」と Douard 氏は述べています。

このような環境においては、二重の課題がありました。法務専門家は膨大な量の文書をモニタリングし、これらにアクセスできる必要があります。同時に、利用するテクノロジーは、業界固有のデータを解釈し、問い合わせに対して検証可能な回答を提供できるものでなければなりません。Predictice の顧客にとって、AI ツールは高度なセキュリティを備えており、フランス語圏の市場 (そして法律用語!) に合わせてカスタマイズされている必要があります。

法務の複雑さを実用的なインテリジェンスに変換

Predictice は AWS と連携し、この課題を解決するソリューションを生み出しました。このプラットフォームは、6,000 万件を超えるドキュメントのデータベースへのアクセスに加えて、ユーザー独自の社内データベースへの接続も提供します。「当社はこれにより、関連性および信頼性の高い結果データを法務専門家に提供できます」と Douard 氏は述べています。AI を利用する検索エンジンを備えたこのプラットフォームは、情報の発見、分析、要約、レポート作成などの重要なプロセスを容易にし、これらはすべて単一のソリューション内でアクセスできます。このテクノロジーはデプロイも容易です。「Predictice は弁護士が既に使用しているツールに直接統合します」と Douard 氏は述べています。そのため、「お客様の作業環境において、直接かつシームレスに AI を統合できるおかげで、最適なユーザーエクスペリエンスをお客様に提供できています」。

Predictice は、この地域で事業を展開するフランス語圏の顧客のニーズを満たすために、カスタマイズされたアプローチを提供しています。「汎用 AI とは異なり、当社のアシスタントはフランスの何百万もの法的な決定、規制、労働協約に基づいてトレーニングされています」と Douard 氏は述べています。また、重要なことに、このプラットフォームは翻訳ツールも備えており、法務チームは世界中の情報源から得た情報を正確に解釈できます。「例えば、ドキュメントや契約書をダウンロードして、約 10 秒で 30 の言語に翻訳できます」と Douard 氏は述べています。

セキュリティのための「完全なソリューション」

Predictice がプラットフォームの構築に着手した際、セキュリティは優先事項でした。「セキュリティは非常に重要です。お客様からデータが漏えいすることは絶対に許されません」と Thibaud 氏は述べています。同社が EU でソリューションをデプロイするには、General Data Protection Regulation (GDPR) などの厳格なデータ保護関連法令やプロトコルを遵守する必要がありました。一方、域外へのデータ転送には、特定の法的保護措置が必要です。Predictice の従来のインフラストラクチャではこの点で限界がありました。そのため、今年初めに Anthropic の Claude Sonnet 4 が Amazon Bedrock でリリースされた際、同社はこれを AWS に移行する絶好の機会と捉えました。「Claude は欧州で多くのユーザーを獲得しています!」と Thibaud 氏は述べています。

Claude Sonnet 4 は、次世代の自律型 AI エージェント向けに設計されたハイブリッド推論モデルです。Amazon Bedrock を利用することで、「モデル間の切り替えが非常に簡単になりました」と Thibaud 氏は述べています。これは、セキュリティを最優先に考えながら、プラットフォームを強化することを可能にしました。法務専門家がドキュメントをアップロードすると、そのデータはプラットフォーム上に保存されます。「当社がすべてのデータを AWS に移行して転送したのはこのためです。すなわち、セキュリティのためであり、保管中のデータを暗号化できるためです」と Thibaud 氏は説明します。Amazon Bedrock 上に構築することで、この機能に加えて、転送中のデータの暗号化やセキュリティツールの提供が可能になりました。このことは Predictice が顧客の信頼を高めるのに役立ち、同社は「マーケティングと商業上の優位性」を獲得することができました。

この重要な要素は、国際標準化機構 (ISO) から (AWS でホストされている顧客データについて) ISO 27001 認証を取得したことでした。これは、インフラストラクチャが厳格で世界的に認められた安全性とセキュリティのフレームワークに準拠していることを実証するものです。「認証は非常に複雑で、多くのドキュメントが必要です」と Thibaud 氏は述べています。Predictice は、AWS のサポートを受けてこの複雑な状況を乗り越えました。AWS は「完全なソリューション」と「セキュリティハブ」を提供し、同社が「すべてのデータが本当にセキュアであることを証明する」ことを可能にしました。「その点に感銘を受けました」と同氏は続けます。「AWS なしでは、認証を取得することはできませんでした」。

進化する期待に迅速に対応

Predictice の成長に伴い、データ要件も増大しました。そのため、同社は Amazon OpenSearch Service を導入し、大量のデータをほぼリアルタイムで保存、検索、分析できるようにしました。「移行は非常にスムーズでした」と Thibaud 氏は述べています。また、Predictice は AWS Migration Acceleration Program を通じて利用できる販促クレジットを利用して AWS ソリューションのコストを相殺できたため、コスト効率も高まりました。AWS は「当社の移行を支援してくれ、技術的なアドバイスも提供してくれました」と同氏は付け加えます。「AWS との関係は非常に良好でした」。

Predictice は、16,000 トークンずつを含む 700 万件の裁判例の文書を含む大規模なデータベースの管理を任されています。このデータベースをベクトル化するために、Predictice は、機械学習 (ML) ソリューションのデプロイを加速するために設計された ML ハブである Amazon SageMaker JumpStart を介して Cohere Embed v4 も使用しています。

Amazon OpenSearch Service への移行により、劇的に Predictice の運用速度が向上し、複雑さが軽減されました。「以前はクラスターの管理が簡単ではなく、チームは 2～3 週間ごとにクラスターを検証してアップグレードする必要がありました」と Thibaud 氏は説明します。「OpenSearch では、ボタンをクリックするだけです」。OpenSearch を利用すると、スケーラビリティも高まります。「典型的な例は」と Thibaud 氏は述べています。「今朝のことです。新しいデータベースを統合したかったのですが、空き容量がありませんでした」。同氏は続けます。「以前は、この作業を行う必要がある場合、新しいマシンと新しいサーバーに指示を与え、待機し、インストールする必要がありました。約 2 日間かかっていました」。現在、OpenSearch へのスペースの追加は「非常に高速」であり、タイムラインは「数分」に短縮されています。

Amazon Bedrock は最新の AI モデルで定期的に更新されており、Predictice はソリューションをさらに強化するのに役立っています。同社は現在、法務関連の RAG 検索サービスを改善するために、Claude Sonnet 4 への移行を進めています。

判決: AI の成功

今日では、「5,000 人を超える法務専門家が日々 Predictice を利用しています」と Douard 氏は述べています。これらの人々は「あらゆる法的な質問に回答できる生成 AI 検索エンジン」の恩恵を受けています。AWS ソリューションを選択し、数百万のドキュメントのデータベースを統合することで、同社はチームが求める「回答の質に真の変化をもたらすことができる」ようになりました。

Predictice の顧客の約 60～70% は法律事務所であり、個人事務所の弁護士から大規模な組織まで多岐にわたります。しかし、このスタートアップは、特に保険業界をはじめとする企業部門において、ソリューションの需要が高まっていると認識しています。このような状況においては、市場での認知度の向上が重要な役割を果たします。Predictice は、AWS から、欧州最大のスタートアップおよびテクノロジーイベントである VivaTech でプレゼンテーションをする機会を与えられ、大きな成果を上げることができました。

Predictice と AWS の継続的な関係は、同社の顧客の将来のニーズを満たすためにプラットフォームを進化させるという同社の野心を支えています。「法務 AI への期待は高まり続けるでしょう」と Douard 氏は述べています。AWS ソリューションを利用することで、同社は「透明性、パフォーマンス、セキュリティを最優先に考慮した、監査のための高度な機能を準備できます」。適切なソリューション、サポート、スケーラビリティの可能性により、Predictice は「市場にあるいくつかの一般的なツールとは異なり、法務分野の専門家の業務の安全性確保に大きく貢献できる」ことを、合理的な疑いを超えて証明したと Douard 氏は結論付けています。