基調講演のメッセージや新発表のサービスに関する情報等を日本の皆様にお届けします。
今年で第 6 回目を迎える AWS のグローバルカンファレンス「AWS re:invent 2017」。11/30(水)のキーノートでは Werner Vogels(CTO, Amazon.com)が登壇し、「21st Century Architectures re:Imagined」をテーマに、初めて re:Invent が開催された 2012 年からのアプリケーションを取り巻く変化を振り返りつつ、Voice User Interface、開発、アーキテクチャ、機械学習におけるイノベーションについて語り、デバイス、ユーザー、スキル管理ツールを備えた職場のための Alexa である Alexa for Business や、コード作成、実行、デバッグのための完全マネージドのクラウド IDE である AWS Cloud9 、全てのユーザーが Function を公開・取得することができる AWS Serverless Application Repository などの新サービスおよび機能が発表されました。
また、ゲストスピーカーとして Netflix 社の Co-Author "Chaos Engineering" and Senior Software Engineer の Nora Jones 氏、MAPBOX 社の CEO である Eric Gunderson 氏、DigitalGlobe 社の CTO and Founder の Dr. Walter Scott 氏、AGT International 社の Founder である Mati Kochavi 氏、Intel 社の CVP and GM, Artificial Intelligence Products の GroupNaveen Rao 氏が招かれ、AWS を活用したアーキテクチャや取り組みなどを紹介しました。
11/30(木)の KEYNOTE(基調講演)は Amazon.com の CTO である Werner Vogels の登壇で幕を開けました。
Werner ははじめに、本日のキーノートは「自分の最も大切な時間」であり、昨日の非常に多くの新サービスが発表された Andy によるキーノートとは趣を異にするものであると述べました。さらに今年 re:Invent は 6 回目の開催となり、その間多くのお客様が自身のアプリケーションを reinventing していく様を見てきたと述べ、今回のキーノートでは、この 5 年で起こった多くの変革を振り返り、学んだことや得られたことを来場しているお客様に共有したいと語りました。
2012 年のキーノートで Werner は、「21st Century Architectures」と題して Controllable、Resillient、Adaptive、Data Driven という 4 つのキーワードを強調しました。これからは変わらず重要であるものの、それから 5 年間で、 AWS は 3,959 の新しい機能やサービスをリリースし、これらによりアプリケーション開発をとりまく環境に起こった大きな変化は Werner も予測できないものだったと語りました。そこで、本キーノートのテーマは「21st Century Architectures re:Imagined」 とし、それらの変化を振り返ると共に、これから 4~5 年の間で起こりうる変化を可能な範囲で予測していきたいと説明しました。
Werner は Amazon 及び AWS の重要な DNA の 1 つに、サービスチームがロードマップを内部のみで策定せず、お客様の要求によって決定している点があると述べました。例えば Amazon DynamoDB はお客様から開発中に頂いていた要望を含まず最低限の機能でリリースした結果、実際に使ってみたお客様からはリリース前では想像していなかった別の機能の要望が多数を占めたという例を示し、これが素早いイテレーションを回し、お客様が望む開発のためのツールを提供するための方法であると説明しました。
次に Werner は、今日のソフトウェア開発のあり方を変革している 4 つの技術的なドライバーを挙げました。1 つ目はデータで、クラウドにより全ての企業や人がデータや分析へのアクセスを獲得し、それによってビジネスに変革が起こったと説明しました。例えば GE は製造の会社から分析の会社へと自身を変革し、 predix などの競争力のあるサービスを生み出し、S&P 500 の中に生き残ったと指摘しました。次に IoT、Amazon EC2 P3 Instance、Deep Learning Framework を挙げ、特に P3 Instance と Deep Learning Framework により誰もがリアルタイムに、自身でニューラルネットワークを構築し推論できるようになり、デジタルシステムへのアクセス手法に完全な変革をもたらしたと語りました。
Werner は今日までの機械の操作はキーボードやマウスによるものでしたが、それは機械に合わせて私達が学習し利用できるようしてきたと歴史を振り返り、将来的にはヒューマンセントリックが可能になり人間にとって自然なインターフェースによる操作が可能になるだろうと語りました。現在私たちは既に音声認識と自然言語解析の進歩により、音声による機械の操作を手に入れ、学習すること無く誰にでも自然なインタフェースでやりとりする事ができ、全ての人がデジタルシステムを利用できるよう開放したと語りました。
現在は Alexa の領域はホームオートメーションだと語り、私たちはあなたの家庭やホームオートメーションのような自然なやり方で声をかけることだけを考えていたのですが、実際に職場で使うことができるものを作りませんか?と問いかけ、Alexa for Business を発表しました。Cisco、 Creston 、Polycom との会議システムとの統合、Office365、G-SUITE、オンプレミスの Exchange との統合がされ、音声によるカレンダーやスケジュールの調整が会議室にいながら Alexa 経由で行えるようになったと紹介し、RingCentral、Salesforce、Concur、SAP SucessFactors、Splunk、Acumaticaとの統合がされ、従来は Web ページを開かなければいけなかった作業が Alexa 経由で行えるようになった事を紹介しました。また、高級ホテルの Wynn ではプライベートスキルを利用し、従来はリモコンで操作しなければ行けなかったブラインドの上げ下げ、音楽の再生、テレビの操作等ができるようになった事も紹介しました。
AWS 上で Alexa for Business をセットアップするためには、デバイスの管理とプロビジョニング、会議室の設定、ユーザがどのスキルを使えるのかの管理し、そしてカスタムスキルの構築し配置すれば使え、これらの事を構築するためのパートナーコミュニティがあると紹介しました。最後に Werner は、音声によるコンピュータの操作は、私達が提供するディープラーニングツールによって引き起こされつつある破壊的な変化であると強調しました。
Werner は「21st Century Architectures」に話を戻し、Admin plane、Control plane、Data plane という 3 つの異なる Operational Planes を意識することが重要であり、それぞれに異なる権限やセキュリティの要件があると指摘しました。アーキテクチャの例としてビデオストリーミングとテレビストリーミングを提供するクアラルンプールの iflix 社を紹介すると共に、アーキテクチャをより良くすることを手助けするために 2、3 年前に Well-Architected Framework プログラムを立ち上げたと説明しました。その後、Well-Architected Framework は非常に成功し、AWS の ソリューションアーキテクトは数千のお客様においてこのフレームワークによる分析を実施し、非常に多くの知見を得たと話しました。最初は単一のドキュメントであったが、 現在は Operational Excellence、Security、Reliability、Performance Efficiency、Cost Optimization という 5 つの Pillar に分けて非常に深いアドバイスと知識を提供するとともに、High-Performance Computing Lens とServerless Application Lens という特定分野にフォーカスしたものも提供していると話しました。
Well-Architected Framework ではより良い設計のための Principles を提示しており、「キャパシティ需要を見つめることをやめる」などのいくつかの全般的 Principles について言及した後、今日もっとも重要な要素の 1 つである Security について権限の一元管理や暗号化の重要性を説明しました。暗号化の重要性と適用範囲について「Dance like no one is watching. Encrypt like everyone is」という比喩を話しました。5 年前には暗号化を行うのに使いやすいツールや環境が世の中に整っていなかったが現在は暗号化の機能は十分に AWS サービスに統合され使いやすくなっており、あらゆる場面でデータを暗号化する「Ubiquitous Encryption」という考え方を説明しました。
セキュリティは今や全ての人が意識しなければならず、こんにちの新しいセキュリティチームの中心にいるのは開発者であり、イノベーションのペースとセキュリティを両立する最良の方法は自動化であると説明しました。CI/CD パイプライン自体のセキュリティだけでなく CI/CD パイプラインの中にセキュリティのプロセスを統合することができ、デプロイメントなどのイベントの前にセキュリティやコンプライアンスのチェックをする Pre-event と 重要な API の濫用など、何かおかしなことが起きたときに検知し対応がなされる Post-event という考え方を説明しました。自動化の助けとして、AWS Trusted Advisor、AWS Config、AWS Config Rules、Amazon Inspector、Amazon Cloudwatch、AWS CloudTrail、Amazon Macie、Amazon GuradDuty などのサービスを紹介しました。
開発者がセキュリティを意識することが重要になったという話をうけて、開発自体がどう変化してきたかに話は移ります。Werner は、開発はよりコレボレーティブになり、チームのメンバーは世界中に散らばり、より多くのプログラミング言語が状況に応じて使い分けされるようになっていると話しました。そして、素晴らしいプラットフォームには素晴らしい IDE がつきものであると話し、AWS Cloud9 の一般提供開始を発表しました。AWS Cloud9 は完全マネージドのクラウド IDE であり、AWS Cloud9 上でコードを書いて、実行し、そしてデバッグすることができると説明しました。
AWS Cloud9 についてもっと詳しく知ってもらうために、Werner は Amazon Web Services の Senior Software Engineer の Clare Liguori を壇上に迎えました。Clare は、AWS Cloud9 はブラウザから操作することができると話し、AWS Cloud9 の実際の画面をスクリーンに映しました。例として曲に対して投票したりすることができる簡単な DJ アプリケーションのコードが取り上げられています。AWS Cloud9 は、完全なターミナルが統合されており、見た目のテーマを明るめや暗めのものにカスタマイズしたりキーマップを Emacs などに変更することもでき、シンタックスハイライトなどの機能に対応する言語は多岐に渡っており Javascript や Ruby、Python、Go なども利用できると説明しました。Amazon S3 からプレイリストのファイルをダウンロードし、開いてみせました。
また、AWS Cloud9 を使うと Lambda 関数の開発イテレーションを非常に高速に行うことができることに言及しました。IDE 上で Lambda Function の Blue Print (Lambda Function のコードの雛形)の一覧を表示・選択することができるので Lambda Function の開発を簡単に開始することができると話しました。ここで、パーティのために食事を注文することができる Lambda アプリケーションを例にあげ、ボタンを押してピザを注文する概念実証をやってみると話しました。この Lambda Function を Importし、ピザの配送先の設定のコードをこのキーノートの会場である MGM GRAND に変更し、ブレイクポイントを配置してローカルでデバッグ実行ができることを実際にデモしました。変数の状態を覗いてコードの修正が意図通りに反映されていることを確認し、ローカルでのテスト実行が問題なく完了することまで確認してみせ、あとは本番の環境に公開すればいいと説明しました。それから、最も気に入っている機能の 1 つとして、他の開発者の AWS Cloud9 の環境にアクセスしペアプログラミングやコードレビューができる機能を紹介しました。2つの端末それぞれに同じコードが表示され、IDE の画面右のペインにアクセスしている2人の名前が表示されており、それぞれのカーソルの位置がコード上に表示されるのでお互いが見ているコードの箇所がすぐに分かると説明し、一方のスクリーンでコードの数行を選択すると他方のスクリーンにもそれがすぐに反映されて表示される様子を実際に見せました。
ここで一度 Werner が戻り、IDE のチャット機能での指示に従い実際にコードの修正を行いました。注文内容にビールを 2 つ追加し、その際コードの補完が機能している様子を実際に見ることができます。その後、この Lambda アプリケーションを Production 環境にデプロイし、それをリモートから実行してみせました。しばらくすると Werner はピザを持って登場しそれを Clare に渡しました。ここまでで AWS Cloud9 のデモは終了し、 再び Werner がキーノートを進行します。Werner は、AWS Cloud9 の特長と機能を振り返るとともに、AWS CodePipeline、AWS CodeDeploy、AWS CodeCommit、AWS CodeBuild などのサービスと AWS Cloud9 との統合について紹介し、この話を締めくくりました。
続いて話題は可用性(Availability)に移ります。誰もが 100% の可用性を実現したいものですがそれは難しく、Werner は数年前「everything will fail all the time」と指摘しました。Werner は可用性について考える際は、 Well-Architected Framework に従うことを推奨するとし、リカバリプロセスをテストすること、キャパシティの推測はやめることなどの原則を説明しました。続いて Werner は信頼性 (Reliability) の基礎について説明を始めました。99%、99.9% といった形で語られるアプリケーションの信頼性は他のコンポーネントに依存性がある場合や冗長化をした場合でどう計算できるかを説明し、可用性を高めるためには冗長性が非常に重要であると強調しました。このような考え方も Well-Architected Framework でまとまっており、その原則は Availability Zone (AZ) や Region に代表されるようにAWS 自身のサービスにも適用されていることを明かしました。更に Werner はスロットリングや Exponential fallback によるリトライなどの分散システム(Distributed Systems)のベストプラクティスを紹介し、重要性を説明しました。
実際の可用性要件に関して、Werner は可用性はコストとのトレードオフであるため、ビジネス要件により決定されるものであると指摘し、AWS 上のシステム構成図を明示しながらマルチ AZ などの構成パターンと具体的な可用性を示しました。その中では前日に発表された Amazon Aurora Multi-Master や DynamoDB Global Table の活用シーンに関しても言及しました。更に AWS サービスの可用性デザインターゲット値を公開し、より詳細な情報は Well-Architected Framework の reliability pillar を参照するよう付け加えました。
次に Werner はテストの重要性が高まっていることを強調し、意図的に障害を発生させて可用性や復旧に関して重要な知見を得る Amazon の Game day や Chaos Engineering の考え方を紹介し、この領域の第一人者と言える Netflix 社の Nora Jones 氏をゲストとして迎えました。
Jones 氏は Netflix の「Watching previously」欄に稀に心当たりのない作品が表示される動作を例とし、Chaos Experiment の結果として正しく処理できない場合でもエラーではなくフォールバックとして別の処理を行うするような仕組みが Netflix には多く含まれている事を紹介しました。よく知られているテストの形式には単体テスト、結合テストがありますが、これらは共にインプットに対して人間が期待したアウトプットが行われるかという観点のテストであるとし、それに対し Chaos Experiment は分散システムに障害や遅延を日常的に注入するが、フォールバック等の仕組みによりサービスに何も起こらないような弾力性を確かめる手段であると説明しました。そういう意味で Chaos Experiment はこれまでのテストを置き換えるものではなく、できるだけ高い可用性のサービスをお客様に提供するために相補的に使用するものであると Jones 氏は強調しました。
Jones 氏は同僚と執筆した Chaos Engineering の書籍の中で Netflix における Chaos の実践や他のタイプのビジネスにおいてどのように適用できるかを説明していることに触れ、Jones 氏も以前在籍したこともある Startup における経験を語りました。ある時 1 日サービスが停止するような障害が発生し、それはもしも普段から Chaos Experiment を実施していたら発見できるような問題であったと振り返りました。Jones 氏はそれをきっかけに Chaos の考え方を導入し Greceful Restart や Degradation を取り入れたが、システム全体にうまく適用することができず、QA 環境を 1 週間ダウンさせてしまったこともあると触れました。それからクリティカル性が低く安定したシステムからオプトインしていく形で導入に成功したと説明しました。
続いて Jones 氏はその後のステップとして Targeted Chaos, Cascading Failure を紹介し、Chaos によって本番環境での発生以前に問題を発見できることにより文化が変わった事を紹介しました。それは、「もしも (IF) 障害が起こったらどうなるか」ではなく「障害が起こった時に (WHEN) どうするか」という視点の変化であると指摘しました。
その後 Jones 氏は Netflix に転職しますが、 幸運にも Netflix は既に同様の文化を持っていたと語りました。Netflix では Failure Injection が行われており、サービスオーナーが簡単に事前定義された障害や遅延を注入してクライテリアを満たしているか確認することができると紹介しました。ここで Jones 氏は Failure Injection において重要なのは安全性とモニタリングであるとし、そのために開発した Chaos Automation Platform(CHAP)を紹介しました。最後に Jones 氏は現在はミーティングを重ねて決定している Chaos Experiment の最適なポイントを、アルゴリズムにより自動的に決定したいという将来の展望に対して現在取り組み中である事を述べ、「Chaos は障害を発生させるのではなく、明らかにするものである」という言葉で締めくくりました。
素晴らしいプレゼンテーションをした Jones 氏への感謝を伝え、Werner は 70 年代のシステム研究者である GALL'S LAWの「How Systems Work & Especially How They Fail」の内容について触れ、失敗するシステムに共通するのは、最初から複雑なシステムとして構築されたものである事を紹介しました。先日行われた Andy の基調講演で多くの素晴らしい新サービスの発表がされた事に触れ、ntpサービス、Amazon MQ、ロードバランサー、StepFunction、ECS、API ゲートウェイ等のコンポーネント利用することにより、サービス管理がシンプルになり、本当に書くべきビジネスロジックだけに焦点を当てることができるようになったと述べました。
Amazon.com が 2000 年代にサービス指向アーキテクチャを採用し失敗した経緯を紹介し、マイクロサービス化していく事でスケーラビリティ、独立性の高いデプロイメント、セキュリティの点で全体的に改善され、フォールト・アイソレーションが向上した事例を紹介しました。
Werner から世界的なコンテナ専門家として、Abby Fuller(AWS Senior Techical Evangelist)が紹介され、登壇しました。2014 年に振り返り、コンテナユーザの課題であるクラスターマネジメント、コンテナオーケストレーション、ロギングや監視システム等の AWS との統合を解決するために ECS が開発され、Werner が言及していたシステムのマイクロサービス化を推進することができるようになったと説明しました。
Abby は、ECS 上でミッションクリティカルなワークロードを稼働させている数多くの顧客事例をスクリーン上で紹介し、スタートアップ企業からエンタープライズまでありとあらゆる分野の企業で使用されいてる事を紹介しました。個別の事例の紹介として、まずは金融企業の CapitalOne が ECS と Docker を活用し、早いペースでのデプロイメントを実現していることに触れ、BI ツールや CRM で活用するモバイルデータや Web トラッキングデータを収集するマーケティングシステムのスタートアップのSegmentが殆どのサービスを ECS 上で動作させている事を紹介しました。Segment では月間 160 億件の分析イベント、最大で秒間 27 万イベントを処理しなければならないワークロードを 25,000 タスクに分解し、382 のサービスにまたがって処理している事を解説しました。イベント処理だけではなく、ECS 上で ETL ジョブを実行するため、実行するデータを収集できる事を説明し、1 日に 50 万のコンテナを通じてデータを収集し、Redshift と PostgreSQL に保存しているデータボリュームの多さも紹介しました。
次に Abby は ECS だけがコンテナを提供する方法ではなく、Kubernentes on AWS の事例として英国を拠点にしているモバイルバンキングの monzo について話し始めました。monzo はクラウドネイティブなアーキテクチャを採用し、350 のマイクロサービスで構築されている事を紹介しました。金融サービスを提供する monzo は高可用性が重要であることを述べ、ダウンタイムが発生すると問題になるため高可用性の実現が不可欠であり、マルチマスタ、スケーラビリティのあるワーカーを持つ事が可能なスケーラビリティのあるインフラを選択したと説明しました。monzo は 2016 年にサービスを開始し、当年は 80、2017 年に167、2018 年には 350 のサービスとなるまで成長する中で高可用性のある kubernetes を求めている事がわかり、それに耳を傾けた AWS は、マネージドの kubernetes である EKS を開発したことを紹介しました。EKS はマネージドサービスであり、シームレスに AWS サービスに統合され、この活動はオープンソースコミュニティに貢献される事を述べました。
Abby は更に本当に大事なことに集中し、継続的にインテーグレーションするには Fargate が良いことを説明しました。インフラストラクチャの管理を削減し、簡単にローンチでき、一瞬でスケールし、ドロップが可能、コンテナに必要な様々な機能を管理でき、そしてリソースベースの課金であることを紹介しました。Abby は Fargate でサンプルアプリケーションをデプロイするデモを 1 から数十秒かけ実施し、最後に本当に大事なことに集中するために将来は Fargate は更に進化し、コンテナを起動するための最初のワークロードは無くなるだろうという言葉で締めくくりました。
Werner は 「これほどまで素晴らしい女性の Rock Star Engineer はいない」と Abby に最大級の賛辞を送り、Abby が言及した Werner が考える未来について、あなたが書かなければいけないコードはビジネスロジックのみとなる、と語りました。AWS Lambda や Amazon ECS、Amazon DynamoDB、Amazon Aurora といったマネージドサービスがスケールや可用性を提供するため、ユーザーはビジネスロジック部分のみに注力することができると Werner は説明しました。Werner は、その中でもサーバーレスが重要な役割を担うと指摘し、サーバーレスにより、ユーザーはサーバーの管理や可用性向上、 I/O キャパシティなどの悩みから解放されると強調しました。更に Werner はサーバーレスが大企業や大規模システムにも急速に浸透していることに触れ、その例としてビジネスロジックを全て Lambda で実装しサーバーレスを実現している Zocdoc 社のアーキテクチャを紹介しました。
続いて Werner は iRobot 社を取り上げ、非常に厳しいコスト抑制に対する要求を、使えるマネージドサービスを全て活用して満たしている事例を紹介しました。保険ビジネスを展開する Agero 社では運転がうまく行われているかを監視し事故が起きた時は検知するシステムを Lambda で構成しており、米国の自動車の 3 台に 1 台には Agero 社のソフトウェアが搭載されている事を紹介しました。次に Werner は HomeAway 社を取り上げ、月に 600 万枚にも及ぶ画像の処理パイプラインをサーバーレスで実現しているアーキテクチャを紹介しました。
Werner はアーキテクチャの原則に話を進めました。Werner はもしも複数の Function を使用してサービスを構築したい場合は、データベース等が不要でイベントドリブンなステートマシンを構成できる AWS Step Functions を利用することを推奨しました。ここで Werner はこれまでも提供してきた Lambda、Amazon API Gateway, Step Functions を改めて紹介し、サーバーレス分野におけるパイオニアであり続けるために様々な取り組みを続けている事を強調しました。その中で、 Werner は API Gateway VPC Integration, Concurrency Controls, 3GB Memory Support, .NET Core 2.0 Support(pre-announce)の 4 つがサポートされたことを発表し、これまで多くのお客様から頂いていた追加機能要望を満たすことができて喜ばしく、ぜひ利用して欲しいと述べました。
更に Werner は、グローバルの中で既に一部の人々はサーバーレスに関して深い知見を蓄積しており、誰もが彼から学ぶことができるようにしたいと切り出し、新サービスである AWS Serverless Application Repository を発表しました。Werner は、Serverless Application Repository により、全てのユーザーが Function を公開や取得することができ、それにより他者の知見を獲得することができるようになると説明しました。更に Splunk や Twilio といったパートナーが公開する Function により、それらの仕組みを簡単に自身のサービスに組み込むことができると付け加えました。
Werner はサーバーレスはシステム開発だけでなく IoT や Machine Learning といった分野でも重要な役割を果たすと指摘し、実際に膨大なイメージと多くのの素晴らしいアプリケーションを AWS 上で展開している DigitalGlobe 社の CTO である Dr. Walter Scott 氏を招きました。
DigitalGlobe で収集する衛星画像は人々の暮らしを支えてる事例を紹介し、そのボリュームは膨大で毎日 80 テラバイトの情報をダウンリンクされている事を紹介しました。当初は自社のでデータセンターに収容していましたが、100 ペタバイトもの総データ量に先が見えなくなり、AWS へ全て移行する決断をした語りました。大規模なデータを移行する 3 つのステップを Scott 氏が紹介しました。1 つ目は、昨年の re:Invent で発表された AWS SnowMobile による移行で、DigitalGlobe は SnowMobile の最初の顧客である事を紹介しました。2 つ目は、このデータをコストを最適化し 100 ペタバイトのライブラリへのオンデマンドアクセスさせる方法を検討し、最終アクセス日から 180 日以内をキャッシングする方法について紹介しました。しかしながら、数年後に画像の表示のキャッシュヒット率を計算した結果、ヒット率は約 70% から 40% に低下している事に気づき、機械学習に目を向けたと語りました。
3 つ目のステップとして Scott 氏は Amazon SageMaker に目を向けキャッシングセージメーカーとして採用し、顧客のアクセスパターンとの関連性を見つけるためにキャッシュアルゴリズムを訓練させ、次のアクセスがある可能性のある使用パターンに基づいて予測し、Amazon Glacier から事前にロードする方法を採用した事により、キャッシュヒット率が 83% となった事を紹介しました。
Scott 氏は GBDX 地理空間ビッグデータプラットフォームを AWS 上に構築したと述べ、jupiter notebook framework を通じて GBDX へアクセスすることで、開発者はとても簡単に機械学習パターンへのアクセスが可能になると説明しました。SageMaker とともにトレーニングを推奨するので、DigitalGlobe.com/reinvent にアクセスしてみてほしいと語り、プレゼンテーションを締めくくりました。
続いて Werner は Machine Learning が与えるインパクトに関して語り始め、例えばセキュリティの分野では Amazon Macie、Amazon GuardDuty といったサービスが Machine Learning を利用していると紹介しました。また例えば Comprehend、Translate などの新サービスを組み合わせることで、ほぼビジネスロジックを書くことなく多言語解析環境を構築することができたり、re:Invent でデモが展示されている 737 Flight Simulator もクラウド側の仕組みでは Amazon EC2 P3 instance、Amazon Polly、Amazon Lex など Machine Learning が多く取り入れられていると紹介しました。また trainline 社では Machine Learning により電車チケットの価格予測が実施されている事例にも触れた後、IoT と Machine Learning の活用に取り組んでいる AGT International 社の Founder である Mati Kochavi 氏を迎えました。
壇上に登場した Kochavi 氏は、人々は古くから Story を語り、そのための新しい方法を常に探してきたと話を切り出しました。そこでステージは暗転し、あるデモンストレーションが開始されました。それは多くのデジタルデータが付与された格闘技の試合でした。Kochavi 氏は、2 分の試合の中で 70 の新しい洞察が生まれたと話し、それらは選手のパッションやパワー、戦略までもカバーすると語りました。ここで Kochavi 氏は AGT International 社はスポーツやライブイベントを革新的な方法で提供する企業であると紹介を行いました。Kochavi 氏は続けて AGT 社は世界でも最大手のスポーツエンターテインメント企業である WME IMG 社と提携し、IoT を用いた新しいスポーツの語り方を探求していると語りました。
Kochavi 氏は先ほどの 70 もの洞察に話を戻し、その仕組みを語り出しました。Mati 氏は会場のセンサーや小型ながらエッジ検出に優れたカメラ、動作や圧力を分析できるマットなどがデータを取得していると説明しました。またグローブにはパンチの強さやインパクトを計測できるセンサーが付いていると実物を紹介しました。Kochavi 氏はセンサーは分析の仕組みと組み合わせると偉大な Storyteller になると話し、先ほど紹介したようなセンサー群からのデータは AGT 社の中心的な製品である World Graph に集約され、ここで全ての物理現象や選手の過去のデータなどを含めて表現されると紹介しました。
壇上に戻った Werner は、前日の Andy によるキーノートで発表された数々のサービスの中から AWS DeepLens にフォーカスを当て、2012 年のキーノートでも共に Machine Learning について講演した仲である Dr. Matt Wood を壇上に招きました。
Matt はエッジに拡がる Machine Learning について語り始めました。Matt がお客様と対話する中で聞く Machine Learning に関するニーズとしては、1 つは大規模な学習や推論ワークロードが挙がるが、2 つ目には推論モデルをコネクテッドデバイスにデプロイして実施するエッジ処理があると述べました。Matt はエッジ処理に関しては現在は半導体への焼き込みや Lambda のようなサービスをはじめ様々な手段で実現されているとし、このやり方は遅延の小ささやオフライン処理が可能という観点では有効だが、より強いトレンドとしてクラウドとエッジの統合があると述べました。そしてそれはまさに Amazon が Echo や Alexa で取り組んでいるアプローチであると指摘し、Echo の Wakeword を受けたら音声ストリームをクラウドに送り、クラウドが処理を行う仕組みを説明しました。
DeepLens のアプローチもまた同様である、と Matt は語り、デバイスの図を投影しながらテクノロジーの詳細を説明し始めました。Matt は DeepLens は世界初の開発者のための Deep Learning 対応ワイヤレスビデオカメラであり、開発者がこれを使い Machine Learning スキルを研鑽するのを支援するのが使命であると強調しました。Matt はその仕組みはまさにデバイスとクラウドのハイブリッドのリファレンス構成となっているとし、Greengrass Core が稼働する CPU, モデルを動作させる GPU, 画像処理を行う IPU などで構成される内部構造や AWS IoT をはじめとするクラウドサービスとの連携について説明しました。更に Matt は DeepLens は Kinesis Video Stream のストリーム生成も可能であると紹介し、リアルタイムにデバイス上で実施した画像処理や推論の結果をクラウドに送り、例えば Amazon Rekognition Video と組み合わせることで、洗練された顔認識システムを構築することができると説明しました。
次に Matt は Machine Learning モデルを DeepLens にデプロイする手順について語り始めました。Matt は SageMaker により S3 上に保存したデータを使用して学習した後、ただボタンをクリックするだけでデバイスに Over the air で配信することができると紹介しました。更に、配信が行われる前には、モデルのデバイスに最適な形への変換、推論を実行するのに不要なニューラルネットワークノードの刈り取り (Pruning)、32 bit から 16 bit への変換 (Quantization) が実施されている事を説明し、これらが自動的に実施される事で開発者はモデルの改善に集中することができると強調しました。
ここで Matt に招かれた本プロジェクトで密に連携したパートナーである Intel 社の Naveen Rao 氏は、 DeepLens に搭載されている Intel Atom プロセッサの特徴や優位性に関して説明し、DeepLens の登場を改めて歓迎しました。
Matt に感謝の言葉を送り壇上に戻った Werner は、モダンコンピュータの祖の 1 人である Dijkstra の言葉を引用して自身の AWS サービスに対する深い思いを表現しました。
最後のパートとして、 Werner は今年の re:Play パーティーのゲスト DJ として DJ SNAKE が招かれることを発表した後、Voice、Security、Reliability、サーバーレスといった本日の内容を振り返り、"Go Build" の言葉をもって約 3 時間にわたるキーノートを締めくくりました。