ラスベガスで開催されているアマゾン ウェブ サービス初のグローバルユーザーカンファレンス「AWS re: Invent」。Jeff Bezos(Founder&CEO, Amazon)、Andy Jassy(Sr. Vice President, Amazon Web Services), Werener Vogels(CTO, Amazon)をはじめ、NASA/JPL、SAP、Pinterest、NetflixなどといったAWS のお客様による講演も行われるカンファレン ス、そして日本からのre:Inventツアーの模様を現地からレポートいたします。
最終日(29日)の基調講演には、Amazon CTOのWerner Vogelsが登壇。まずはじめにAmazon.comのインフラリソースがオンプレミスで運用されていた頃、インフラが有効活用されていなかった点を例にあげて話が始まりました。 当時、特にブラックマンデーの月は月末だけ大量に処理量を利用するため、このピークにあわせてリソースを調達すると、非常 にリソースの利用効率が悪かったとし、その後Amazonは2010年にすべてのWebサーバをAWSへ移行し、以来効率的な運用をし続けていると語りま した。
21世紀型のアーキテクチャにおける4つの掟
Amazonの新しいアーキテクチャは、「安全性」、「スケーラビリ ティー」、「耐障害性」、「ハイパ フォーマンス」、「費用対効果」を必要とするものであり、それを実現するためには、データセンター、ネットワーク、ストレージなどのすべてのものがプログ ラムで操作可能なものである必要があり、そうすることでリソースへのフォーカスが、ビジネスへのフォーカスへ転換できる、と説明しました。
Wernerは、こうした21世紀型のアーキテクチャにおける4つの「掟」として以下を示しました。
- Controllable : すべてのリソースがソフトウェアによりコントロール可能である状態。
- Resilient : 顧客の情報を守り、顧客への影響を与えないように柔軟にシステムを変更することが出来る仕組み。
- Adaptive : 前提や環境が異なっても容易にデプロイでき、かつミスがあったとしても即座にやりなおすことができる状態。
- Data Driven : システム品質とビジネスの品質を測定するためのすべてのデータを蓄積し、そしてそれを生かせる状態。
新たな2つのEC2 インスタンスタイプの登場
ここで、Amazon EC2の進化を紹介するゲストスピーカーとしてANIMOTOのCTOが登場。動画エンコーディングに使用したEC2インスタンスの進化を説明した後、 Werenerが新たに新しいEC2インスタンスタイプを2つ発表しました。それは、それぞれ240GBメモリ、120GBのSSD2基搭載する「クラス ターハイメモリ」インスタンス、117GBメモリ、合計48TBとなる24基からなるHDDを搭載する「ハイストレージ」といった内容のもので、今回の re:Inventで前日のAndy Jassyから発表されたデータウェアハウスサービス「Amazon Redshift」のバックエンドとして利用されるものになります。従来にはない大容量のメモリ、ハードディスクを搭載するため、ビッグデータ分析に有効 な発表となりました。
データワークフローを簡単に構築可能となる「AWS Data Pipeline」の登場
そして、4つの掟の中の最後にあげられた「Data Driven」の説明の中で、既存のデータソースから異なるデータソースへの橋渡しをするライトウェイトなサービスとして、「AWS Data Pipeline」と名付けられた新サービスが発表されました。
これは、例えばDynamoDBからEMRを使ってデータを取り出し、S3へ格納するといったデータのワークフロー を簡単に構築出来るサービスで、データソースとしては、既存のAWSの各種サービスおよび、オンプレミスのデータソースもサポート。またワークフロー構築 のインターフェースのデモが行われ、ドラッグアンドドロップで簡単にデータフローを定義出来ることを実際の画面で紹介しました。またテンプレートも用意さ れており、よく利用されるデータ連係については、テンプレートを利用する事でより簡単にデータフローを構築出来るという内容でした。
「すべてのリソースはプログラムで制御できる」と位置付けられた次代のアーキテクチャ特性
最後にWerner氏は、「Everything is a programmable resource」という標語を掲げ、すべてのリソースをプログラムで制御できる重要性と、それを使用した次世代のアーキテクチャの特性について改めて説 明しました。そして、最後に「Thou shalt turn off the lights(汝明かりを消すべし)」とし、プログラマブルで制御できるインフラ時代、どこからでも電源は落とせるのだから、使用しない無駄なリソースは 消しいくことを提案し、セッションを締めくくりました。
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今回のre:Inventでは、最終日にAmazonのCEOであるJeff Bezosも登壇することが決定し、この日の朝の基調講演で登壇したWerner Vogelsとのトークセッションが行われました。
Kindle とAWS のビジネスは似ている
まず、Kindleのビジネスはハードウェア販売で利益を作っているのではなく、お客様に長くKindleを使ってもら い、コンテンツを販売するビジネスであり点を強調した話題から、基調講演がはじまり、AWS、Amazonのビジネスについて、以下のようなポイントが語 られました。
Kindle同様、AWSもお客様にハードウェアを買ってもらうのではなく、従量課金モデルで提供するクラウドサービスを使って頂く、ハイボリューム・ローマージンのビジネスという観点で非常にKindleと似ている
ハイマージン・ビジネスはそれ自体は選択の一つであり悪いことではない。しかし、その問題点を挙げるとすれば、そのビジネス自体が効率的である必要が無いので、改善が難しい。
一方で、Amazon自身は18年間、ハイボリューム・ローマージンのビジネスのみを行ってきており、それ以外のやり方をしない。それはAWSも同じで、非常に節約し、効率的である必要があり、これはお客様にとって価値があることである。
そして、Jeffは、AWS の最近の成長には驚くべきものがあり、特に、政府系や教育系といった最新のテクノロジーをとりいれるのに抵抗を感じるような業界にも非常に早く浸透してきたという点に非常に驚いていると話しました。
10年変わらないものを追いかけるべき
こうしたAWS、Amazonにおけるビジネスに関しての話があった後、Wernerからの10年後に何が変わっているか という話題に対して、Jeffは、10年後に何が変わっていないかという質問を受けることは無いが、じつは変わらないものの方が大事であると話しました。 そして、以下のポイントを話しました。
- 不変的なものの周りにビジネスを作るのがコツ。例えば、リテイルのビジネスでは、低価格、迅速なお届け、広いセレクションが大事、これは10年たっても変わらない。AWSの場合も、低価格、信頼性、ファスト・イノベーションなど変わらなく顧客が求めるものがある。
- AWSの顧客は、スタートアップとエンタープライズの両方があり、かけ離れた2つの世界を相手にしていると考えられ ているが、じつは、「低価格」、「信頼性」、「ファスト・イノベーション」を求めているという共通点がある。リーンスタートアップの考えにもあるように、 「Uncertainty」 (不確定な世界)を扱うという観点では、スタートアップとエンタープライズの世界も同じ。
- イノベーションに大事なのは、まずイノベーションをしたい人を集めるべき。競合を倒そうと考えるような人では無く、 インベント(日々の発明)をすることが好きで、世界を変えたいと思っている人。そして「Rate of Experimentation」(実証実験の速度)”を高めることが非常に大切。それを高めるような組織作り、人のオーガナイズが求められている。実証 実験の速度が2倍になれば、その会社のイノベーションの速度は2倍になる。
- リスクをとるのが起業家の大事なところであるのは知られているが、じつはリスクをシステマティックに毎日取り除いていくのが大切なのはよく知られていない。AWSは、実証実験の加速、資本投資の削減、開発者のエンパワーメントにつながり、しいては成功につながる。
- 考える時間軸を考える、つまりロングタームで考えると、そうしないと出来ないようなことが可能になる。時間軸を変えると同じ問題でもチャレンジが全く異なってくる。1万年時を刻む時計や、宇宙旅行への取組もそうした試みの一つ。
- NetflixがAmazonのビデオのビジネスと競合しているのは確かであるが、AWSの非常に重要な 顧客であり、その競合関係において心配したことはない。AWS にとっては、Amazonすら特別扱いしない。AWS は標準化したサービスを全顧客に提供し ているだけであり、その点ではAmazonも一顧客と同じ。
アントレプレナーとしてのアドバイス
最後にWernerから、成功したアントレプレナー(起業家)からの未来の起業家へのアドバイスについて聞かれると、 Jeffは、流行りものを追いかけるのではなく、自分が情熱を持てるものを追及し、波がくるのを待つことが大事であり、また、顧客から立ち戻って何を創れ ば良いか考えるカスタマーセントリシティが最も大事という、「情熱」と「顧客至上主義」の二つをあげて基調講演を締めくくりました。
最終日も、日本からのツアーのお客様だけのためのジャパンセッションを実施。最終日は、AWSの各サービスにかかわるメンバーからのセッションを中心に同時通訳つきで行われました。
Amazon VPC における複数IP付与、動作不良のインスタンスの別のセキュリティグループへの移動、多階層ウェブアプリケーションのセキュアな構成、テンプレート を使った異なるリージョン間の接続という特徴的な4つのデモを中心に、クラウドにおける仮想ネットワークのセッションをEric Schultze、Steve Moradの二人が、モバイルアプリケーションでAmazon DynamoDBを活用する際に有用なSDKのデモをBob Kinney(Mobile SDE, AWS)が、「自分たちのシャンパンを飲む」(Drinking our own champagne)と題して、世界最大のECサイトを運営するAmazon.comの流通システムをAWSへどのように移行したかをLaura Grit(Principal Technical Program Manager, Amazon.com)が紹介するなど、よりAWSのプロダクトにフォーカスした内容が紹介されました。
さらに、電話やSMSの機能のWebAPIとして開発者向けに提供するスタートアップ企業・米Twilioからは、Jeff Lawson(CO-Founder & CEO,Twilio)がジャパンセッションのために登壇。アントレプレナーの視点でプラットフォーム・オン・プラットフォームを作るというコンセプトの 重要性と同社が同コンセプトをもとに世界展開で急成長を遂げている背景にあるAWS の重要性についてプレゼンテーションを行いました。
Werner Vogels(CTO, Amazon.com)による基調講演(英語)
Jeff Bezos (Amazon CEO)と Werner Vogels(Amazon CTO)による基調講演
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