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株式会社八十二長野銀行の AWS 人材育成: 4 ヶ月間の伴走支援型人材育成で実現したクラウド人材の輩出 (AWS Certified Solutions Architect – Associate に 17 名合格)

本稿は株式会社八十二長野銀行と AWS Japan の共同執筆により、AWS 人材育成プロジェクトを通じて得られた成果と今後の取り組みをお伝えするものです。

はじめに

株式会社八十二長野銀行 (以下同行) は、長野県長野市に本店を置く地域密着型の金融機関です。同行では「クラウドファースト」を掲げ、AWS を活用したシステム開発案件が年々増加しています。こうした流れの中で、分散系人材を増やし、クラウド技術を担える人材の育成が喫緊の課題となっていました。

この課題に対して同行と AWS は、2025 年度にシステム部門の新入行員 21 名を対象とした Enterprise Skills Transformation の Guild Incubator (以下 EST) というプログラムを実施しました。

EST とは、AWS が提供する伴走支援型の人材育成プログラムです。一般的な短期間の研修プログラムとは異なり、専任のインストラクターがお客様に付き、組織の状況や課題をヒアリングした上で、人材育成のゴール設定からカリキュラム設計、研修の実施・改善までを支援します。

本記事では、4 ヶ月間にわたる EST の取り組み内容と、そこから得られた成果を共有します。

EST 実施の背景

同行では、上述の人材育成の課題を抱える中、分散系人材育成に向けた第一歩として、AWS の EST プログラムの導入を決定しました。

EST の実施内容

今回の EST では、専任のインストラクターが同行の状況や受講者のスキルレベルを踏まえ、以下の研修プログラムを設計・実施しました。

イノベーションカルチャーの体感からスタート

研修の初日には、AWS が提供する「New Builder Session」を 1 日かけて実施しました。New Builder Session とは、アマゾンのイノベーションカルチャーを体感するプログラムです。お客様を起点に考える「Working Backwards」をはじめとする、AWS のサービス開発の根幹となる考え方やメカニズムを、ワークショップ形式で学びます。

技術的なスキル習得に先立ち、「なぜクラウドを学ぶのか」「お客様にとっての価値とは何か」という本質的な問いに向き合うことで、受講者が主体的に学ぶためのマインドセットを醸成し、その後 4 ヶ月間にわたる研修の土台を築きました。

注: EST プログラムの中で、New Builder Session を必ず実施するというわけではありません。

New Builder Session 実施中の様子 1/2 New Builder Session 実施中の様子 2/2

研修設計の基本方針

本研修は 4 ヶ月間にわたり、「知識」「実践」「姿勢」の 3 つの軸で設計しました。同行には週あたり約 10 時間の学習時間を確保いただき、単なる座学による知識習得にとどまらず、実際に手を動かしてアプリケーションを開発する実践力の養成、そして主体的に学び続ける姿勢の醸成を目指しました。

ブレンデッドラーニングによる学習設計

学習の主軸は AWS Skill Builder によるデジタル学習としました。AWS Skill Builder とは、600 以上のオンデマンド動画で AWS について学習できるウェブサービスです。動画コンテンツのみならず、実際に手を動かして学ぶ AWS Builder Labs や、チームで AWS 環境の課題解決をすることでポイントを競い合う AWS Jam などのコンテンツがあります。これらは Skill Builder 側で用意されている AWS アカウントを使用するため、お客様の AWS アカウントを用意せずに利用できます。

有償のサブスクリプションに加入いただくことで、これらすべてのコンテンツに無制限でアクセスでき、受講者は自身のペースで体系的に学習を進めることができます。

受講者は AWS Skill Builder を活用し、AWS の基礎から応用までを体系的に学習しました。一方で、動画視聴のみでは理解が難しい領域については、インストラクターによる対面でのオンサイト研修で復習・補強する構成としました。

さらに、習得した知識を実際の AWS 環境で活用するハンズオンや、上述の AWS Jam といったイベントも実施し、知識の定着と実践力を鍛えました。

このように、セルフラーニング (動画視聴による個人学習) とグループラーニング (オンサイト研修でのチーム学習) を組み合わせた「ブレンデッドラーニング」の設計を採用することで、個人で考えて調べながら学習する時間と、チームでの議論によって別の意見を聞いたり、自分の考えを発信することで理解を深める仕組みにより、高い学習効果の実現を目指しました。

知識: 中級相当の認定資格取得を目指す

知識面では、初級相当の認定資格ではなく中級に相当する Associate レベルの認定資格である AWS Certified Solutions Architect – Associate (SAA) の取得を目標に設定しました。4 ヶ月間にわたり週 10 時間の学習時間を確保いただけるからこそ、AWS 初学者の多くが最初に目指す初級レベルの認定資格にとどまらず、あえて中級レベルの資格まで手を伸ばす構成としました。

認定資格対策としては、受講者がオンサイト研修以外の隙間時間にも繰り返し練習問題に取り組めるよう、生成 AI を活用した学習支援アプリケーションを開発し、同行の環境にデプロイする形で配布しました。受講者には日常的に SAA の練習問題に取り組んでもらうことで、知識の定着を図りました。

実践: チームでのアプリケーション開発

本研修の大きな特徴として、認定資格の取得にとどまらず、チームでのアプリケーション開発を通じて「実践力」を鍛えるプログラムを組み込んだ点が挙げられます。

チームごとに自由に開発ができる AWS のサンドボックス環境 (Amazon SageMaker Studio の Code Editor) で、Amazon Q Developer を用いて、”現場での課題” を解決するデモアプリケーションの設計、開発に取り組みました。

初学者ながらも、AWS のベストプラクティスを参考にして、初期段階からセキュリティやコストを意識したアプリケーションの開発手法を学びました。

研修中の様子 1/2 研修中の様子 2/2

姿勢: 主体性を引き出す研修設計

今回の研修は、受講者の主体性を最大限に引き出すように設計しました。発表会をはじめとするアウトプットの機会を複数用意し、受講者全員、必ず一度は全体で発表をする機会を設けました。また、進捗が早い方はどんどん先に進められるように、追加のコンテンツも用意しました。

一方で、研修の中盤以降、受講者間で理解度に差が生じてきたため、フォローアップミーティングを実施し、理解に苦しんでいる方へのフォローアップにも注力しました。全員を置き去りにしない丁寧なサポート体制を整えることで、受講者一人ひとりの成長を支援しました。

EST の成果

学習への取り組みについて、受講者全員が AWS Skill Builder で 70 時間以上の動画学習を完了しました。これにより、受講者全員が AWS の基礎的なスキルを身につけ、クラウド人材としての第一歩を踏み出したといえるでしょう。

認定資格の取得

SAA に 21 名中 17 名 (合格率 80%) が合格しました。

グループ開発の成果

グループ開発では、4 チームがそれぞれ部内の課題を調査し、その解決策となるアプリケーションを開発・発表しました。RAG (Retrieval-Augmented Generation) を活用した社内ドキュメント検索アプリケーションや、PowerPoint スライドの自動生成アプリケーションなど、いずれも実務に即した実用的なテーマが選定されました。

各チームが開発したアプリケーションはすべて実際に動作するものであり、非常に質の高い成果物となりました。成果発表会では、同行の幹部から「全くクラウド経験やスキルがないところから、4 ヶ月でここまでできることに感動している」とのコメントをいただきました。

成果発表会の様子 1/2 成果発表会の様子 2/2
各チームが開発したアプリケーションの概要

参加者の声

研修後のアンケートでは、受講者から以下のような声をいただきました。

  • 「知識のインプットはオンデマンドがメインであったため自分のペースで確実に進めることができ、オンサイトではアウトプットがメインであったため、学習サイクルを効率的に回すことができた。効果的に知識とスキルが定着したと感じた」
  • 「研修前はクラウドが何か分からない状態でしたが、4 ヶ月の研修で実践的な知識と技術を身につけることができました。知識をインプットするだけでなく、実際に AWS を操作する機会が多かったため、スキル面でも成長を感じることができました」
  • 「AWS 含め、クラウドの概念さえ知識がないところからのスタートでしたが、チームでのアプリ開発ができるまで知識・技術が身についたため、とてもよかったと感じています。Amazon Q Developer などの生成 AI の活用方法についても学ぶ機会となり、AWS 研修開始前よりも AI を使ってできることが増えました」
  • 「講師の方が用意してくださったコンテンツが非常に面白く、最初から最後まで楽しんで学習することができた。また、ただ話を聞いているのではなく受講者同士の意見交換の時間が非常に多く効率的な学習につながった」
  • 「AWS とホスト開発の研修を並行して進める中で、AWS のメリット・デメリットだけでなく、ホストシステムについて客観的な視点でより理解を深めることができた。クラウドについて学ぶことで、今後のキャリアや自分のやりたいことを見つけていくことに非常に役立ったと感じる」

また、今後の意欲として「AWS Certified Solutions Architect – Professional 取得を目指したい」「今後も AWS を活用してアプリケーションを開発したい」といった声も多数寄せられました。

受講者が研修終了後もさらなる高みを目指す意欲を示していることは、本研修が知識やスキルの習得だけでなく、クラウド技術への興味・関心を深く醸成できた証拠であると考えています。

研修責任者の声

研修後、本研修の責任者から以下のような声をいただきました。

  • 「行内研修では見たことがないくらい参加者が楽しそうに学んでおり、新しい発見があった。今回の人材育成を AWS に任せてよかった。」
  • 「AWS は単なるインフラサービスではなく、AWS を活用することで銀行が自ら DX に向けた内製開発に取り組めるようになると感じた。」

今後の取り組み

今回の EST を通じて、クラウド技術の基礎を備えた若手人材を育成しました。しかしながら、ここがゴールではありません。同行では今後、以下の取り組みを検討しています。

まず、今回育成した若手人材が研修で培ったスキルを実務で発揮できるよう、AWS 活用案件への参画など実践の機会を積極的に設けていくことです。知識を現場で活かすことで、さらなるスキルの定着と成長が期待できます。

次に、リーダー・中堅層やクラウド育成担当者を含めた、より幅広い層へのクラウドスキル浸透です。若手層だけでなく組織全体のクラウドリテラシーを高めることで、分散系人材育成をより確実なものにしていきたいと考えています。

まとめ

今回の EST を通じて、同行はクラウド人材育成において大きな一歩を踏み出しました。

一般的な短期間の研修プログラムでは、あらかじめ決められたカリキュラムを数日間で実施し、研修後のフォローは受講者に委ねられます。一方、EST は研修の実施だけでなく、お客様が目指す組織変革に合わせたゴール設定やカリキュラム設計から始まり、研修期間中も受講者の理解度に応じ専任インストラクターが柔軟にコンテンツを調整しながら伴走する人材育成プログラムです。

今回の研修においても、中盤以降に受講者間で理解度の差が生じた際には、フォローアップ体制を迅速に整えることで、全員を置き去りにしない支援を実現しました。こうした伴走支援があったからこそ、AWS 初学者 21 名から SAA 合格率 80%、そして全チームが実際に動作するアプリケーションを完成させるという成果につながったと考えています。

AWS では、クラウドの人材育成経験豊富なインストラクターが、研修プログラムと様々な育成アプローチにより、企業や教育機関のクラウド人材育成をご支援します。ご興味をお持ちの方は、ぜひ AWS アカウントチームまでお問い合わせください。